タイトル : LOOPERS
ブランド : Key


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★★ [5/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]
(総プレイ時間 : 2.5h)

シナリオ

本当の宝物を探しに行こう

Keyが制作する全年齢対象のキネティックノベル

GPSを使った宝探しゲームに熱中する主人公・タイラは夏休みのある日、今日という一日を無限にループする運命に囚われてしまう。そこで出会った同じ“ルーパー”の少年少女たちと力を合わせて、永遠に続く牢獄から抜け出そうとするが――。

シナリオを担当したのは竜騎士07さん。
今作は世に多くあるループ物というジャンルに対して「宝探し」というテーマを加えたロープライス作品なのだが、これが見事に合致したといってよいだろう。

プレイ当初からヒシヒシと感じられる「LOOPERS」という独特の世界観の中、描かれる展開はループ物という事もあって衝撃も大きい。そんな中で序盤のスピード感のある展開にグングンと世界観に引き込まれてゆく。
ロープライスという作品の尺を考えたためなのか、物語設定の複雑さに対し説明を極力省きサクサクと読める様になっていたのも功を奏していた。
作中では序盤から伏線のような描写がいくつか登場するものの、作品の雰囲気の一つに紛れ込んでいる上、その内容自体が比較的分かりやすい物だったため、読む障害とならなかったのも大きな要因といえるだろう。

物語を進める中で感じる“ルーパー”の面々の魅力も今作に欠かせない魅力の一つだろう。
ルーパーの中核であるミアやサイモン、中盤でメインとなるヒルダやレオナ、そして何より今作の主人公でもあるタイラのキャラクターは、描写こそ少なかったもののともすれば絶望感溢れる「LOOPERS」の世界で輝く希望となっている。
だからこそ中盤や後半では思わず感情移入をして涙を流してしまうシーンも一つや二つではなく、短い物語の中に、これだけ濃密な時間を描けた事には脱帽するほかない。

物語としては読みやすくある一方で科学SF作品としては穴も多く、作品ボリュームも足りないため掘り下げる部分が少なかったのも確かだろう。
がっつりとシナリオを楽しみたい人にとっては今一つ乗り切れいない作品になってしまうかもしれないが、一方でライトに作品を読み切ってしまいたい人にとっては十二分に楽しい時間を過ごせるシナリオだったといえる。

最期に今作の魅力をもう一つだけ挙げておくと、この作品に欠かせない「宝探し」というテーマに対して、ループ物の親和性が予想以上に良かった点だろう。
ループする隔絶された日々を送ったからこそ感じる、過去から未来へと続く時間の大切さ。その流れを宝探しの過程になぞらえ、見つけた…あるいは見つけようとしている宝物に対して想いを込める。作品を終えた時に来る独特の読後感と一欠けらの疑念と共に、そのメッセージ性はプレイ後もしっかりと心に残る物となっていた。


キネティックノベル…株式会社ビジュアルアーツが制作するWindows用ゲームソフトの一形態、ノベルゲーム。

【推奨攻略順:選択肢無し】
本作に選択肢は無く、1本道のシナリオとなっている。


CG
原画担当は望月けいさん。
シンプルな線と色数の少ない塗りで形作られた近代的なイラストのテイストで纏められている。
立ち絵と背景、もちろんイベントCGも統一感があり、「LOOPERS」の強烈な世界観を形作る上で効果的な役割を担っていた。


音楽
BGM23曲、Vo曲3曲(OP/ED/挿入歌)という構成。
ミドルプライス作品の楽曲数としては十二分なほどだが、関わった人員が折戸伸治さんやどんまるさん等々、確かな実力がある方々によって作られたBGMのレベルの高さは言うまでもないだろう。
特にVo曲のアレンジBGMはそれぞれに違う特色を持っていて、各重要なシーンにおいて素晴らしい演出を行ってくれていた。
Vo曲はスタイリッシュなOPの「千夜一夜VORTEX」もとっても好きなのだが、作品を終えて聞いたときの「君との宝探し」の破壊力も劣らず魅力的で、個人的に一押ししておきたい。


お勧め度
Keyというブランドで竜騎士07が手掛けたループ物ということで、多くの人にとっては様々な思いが錯綜するだろうが、個人的にお勧めしやすい作品という印象。
ループ物でこのイラストという事で多少取っ付きにくさがあるのだが、物語自体が短いためにシナリオ掘り下げが少なくなっていて、作品全体としてはマイルドになっていた。
加えて全年齢でロープライスという事もハードルを下げてくれており、多くの人に広く楽しめる作品になっていたように思う。


総合評価
シナリオ・CG・音楽の親和性も良く、ロープライスで実現しにくいループ物というジャンルの作品を、この完成度で作り出せたことには素直に賞賛出来る。


【ぶっちゃけコーナー】
今回はかなり評価としては割れそうな作品なのかな、ってのが最初の印象。
個人的には中利好印象だったんですけど、その理由はすごく簡単で、素直に泣けるシーンがいくつもあったから。
あと後半では燃え上がるシーンも結構あったり、LOOPERSという作品だからこそ演出できるシーンが沢山散りばめられていたからなんですよね。
今作って結構暗めの作品だと思うのですが、それでもそういうイメージが余りなかったのって、タイラという軸がぶれないカッコイイ主人公がいたからなんだろうなぁ。
こうした魅力的な登場人物がいたのが一点、そして対するヒロインのミアの魅力もありました。
彼女はまぁ色々あるキャラクターですが、それでもタイラと過ごして恋に落ちてゆく様子は、それという表現が無いにもかかわらず、こちらにもしっかりと伝わって来ていたのがすごく好み。
他の登場キャラクターもかなり魅力的なのだけれど、やっぱり尺不足で書き切れていなかったのは正直な所だろうなぁ…。
特に後半ではこうした部分が大きく響いていて、そのあたりで置いて行かれた人もいるのかもしれないなぁ…。
ただ掘り下げていけばいくらでもありそうなキャラばかりだったので、印象は変わったのかもしれないけれど、読みやすさという点では現状の状態がベストだったのだと思っている、というのもループ物という時点で結構読みづらい作品なのに、今回はそうした忌避感を感じそうな部分が廃されていた、というのを個人的な評価の一つにしているから。

そしてラストの展開…あれはは好みが分かれそうね…。
私個人も「え、結局どうなの!? え!?」ってなったけれど、それこそがこの作品の魅力なのかもしれないし「宝探し」というテーマにも合致しているかもしれない。
まぁ、どんな結末だったのかは語れないので、ぜひプレイして確かめてほしいし、時間を使って確かめる価値がある作品だったと思う。