タイトル : 我が姫君に栄冠を
ブランド : みなとそふと


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 18.5h)

キャラクター・シナリオ
企画・シナリオはタカヒロさん、原画はwagiさんという、みなとそふとの安定したコンビで送るは異色のファンタジー作品。

舞台となるのはハイクーン大陸、北にはグランスター帝国、南にタリオ連邦、西の島が天魔が棲むランケイジ。偶然にも、それぞれの勢力で若い女性が統治者となった「姫君の世紀」、嫁を探すために冒険に出た主人公の話となっている。

物語は3人のヒロインについて、大きく帝国編、連邦編、天魔族編の3つに分けて描かれており、またそれぞれに付随する形でかなり短いもののサブヒロインのシナリオも存在する。
帝国編をクリアすることで連邦編が、連邦編をクリアすることで天魔族のいるランケイジの話が読める形になっており、物語を進めるごとにハイクーン大陸の核となる部分へ近づく作りとなっている。
上記のように分岐数が少ないが一つ一つのボリュームは普通の作品の半分ほどがあり、総じて見た時のボリュームは十二分になっている。ただ後記にあるようにサブヒロインのシナリオがかなり短いため、あくまで3人のヒロインについての作品だと考えるとよいだろう。

異世界が舞台の作品という事もあって、今作には『天眷』という特殊能力や様々な魔獣、『大禍時』といった独自の設定が多く組み込まれている。
そうした部分についての解説は旅の初心者である主人公が覚えるという形で説明されている事に加え、そもそもが勢いが中心の作品でもあり、深く気にしなくてよいシーンが多い。また各用語はTIPSにて詳しく説明もなされており、プレイを一時中断しないと(TOP画面に戻らないと)閲覧ができないという問題はあるものの、十分に気を配られているといえるだろう。

舞台の異色さはあるものの、豊富なキャラクターが登場する賑やかな雰囲気やサクサクと進む会話の中心の描写によりテンポよく進む展開、繰り広げられる会話自体もキャッチボールが弾んでドンドン読み進んでいけるタカヒロ作品らしい良さが出ており、懐かしさを感じる部分でもあるだろう。
特にキャラクターに関してはヒロインやサブヒロインを除いても数十キャラ登場しており、それぞれにしっかりとしたキャラ付けがなされている。
そうしたキャラクター達が帝国編では敵に、天魔族編では味方に、とシナリオによって立場や状況が大きく変わり、それによって接し方が変わり見えてくる部分も変わってくる。
展開されてゆく物語の中でキャラクター同士の掛け合いで物語を形作ってゆく、そうした部分こそがこの作品の良さでありタカヒロシナリオの真骨頂ともいえる部分だろう。

一方で戦闘描写には難もあり、相変わらず雑でエフェクトや勢いに任せてしまっている部分があった。バトルシーンがメインの作品ではないため、そのあたりを気にするかは人次第ではあるものの、魅力の一つとして生かしきれないのは少し残念と言える。

またファンタジーが舞台の作品という事もあってなのか、それぞれのシナリオ自体の評価は決して高くない。
それはやはりシナリオ自体の緩急はあるものの、そこに深さが無いのが原因の一つとも考えられるが、テンポよく物語が進むゆえにシリアスシーンも長く続かず、また「結局は何とかなるであろう」という雰囲気もあるために、絶望感も深くなかったのかもしれない。
ただこうした点を挙げたとしても、長い目で見た時のシナリオは悪くなく、そうした理由の一つが主人公の天眷である『ミンジャラ』の存在だった。
ミンジャラ自体については主人公の説明欄にもあるように、旅の出発地点で出会う人造神なのだが、彼の人格の変化というのが、終盤において心動かされるシーンの原動力となっており、作品最大の山場となっていて、個人的には予想だにしなかった今作の魅力の一つとなっていた。
キャラクターを魅せるタカヒロシナリオとの相性とも良く、だからこそ今作の総集編ともいえるシナリオだった事を除いたとしても天魔族編の評価は今作の中で一つとびぬけた形となっている。

良い点と悪い点、玉石混淆ともいえるシナリオながら、舞台の新鮮さと雰囲気の懐かしさもあり、作品自体は終始楽しめるものになっていたように思え、平均評定ではあるもののそれ以上に評価している。


共通√【 ★★★☆☆ 】  7.5h
共通部分ではあるもののシナリオは序盤で大きく「帝国編」「連邦編」「天魔族編」に分岐しており、それぞれで大きく違った展開となっており、その後に各キャラクター分岐が出現する仕様となっているため、全体に対して共通ルートが占める割合は非常に大きいといえる。
また攻略順自体も帝国→連邦→天魔族といった順番で固定されており、帝国編では敵だったキャラクターが、別のシナリオでは味方や攻略ヒロインになったりと、登場キャラクターの人物関係の変化が大きくなることも特徴の一つだろう。

舞台がファンタジー物という事ではあるものの、主人公は田舎から出てきた世間知らずという設定でもあるため、世界設定の説明の多くが分かりやすく、かつ自然になされているのは理想的といえる。
ただ設定の深い説明などはTIPSに頼っているので、問題は無いのだが、プレイ中にそれらが読みにくい(タイトル画面に戻る必要がある)などの課題もあり、作品理解のためにはシステム的にもうすこし助けてほしかった所もある。

また作品の特徴として、サクサクと展開していく物語の中で、序盤から終盤に至るまで多くのキャラクターが一気に登場し、場を賑やかに盛り上げてくれているのだが、反面、それぞれの人物描写などが希薄というデメリットもあった。


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ノア・グランスター√【 ★★★☆☆ 】  3h
グランスター帝国42代皇帝。
政治の方はからっきしだが剣の腕は歴代最強であり、それが彼女自身の自信にも表れている。
カリスマ性があり、立場の垣根を越え誰とでも仲良くする陽気で人なつっこい性格をしているが、反面、悪気はないものの、時々皇族としてのマウントをとってしまう事も。

作品では最初に攻略することになる今作のメインヒロインの一人。
物語では皇帝であるノアに気に入られ、彼女を公私ともに助けてゆく事になるのだが、グランスター一族に纏わる様々な思惑や果ては戦争等と刻々と変化してゆく状況に絡めとられる二人を描く。
ノア自体はリーダーシップのある少し猪突猛進な姉といった感じで、タカヒロシナリオとしては非常にオーソドックスなキャラクターだったといえる。
素直クールともいうべきか、いい感じに主人公とも純真な所が共通しており、終始純粋な気持ちで二人の恋愛が見られるのは良い所だろう。
しいて言うならば、物語の展開や多くのキャラクターを動かすことに終始していたため、ノアとの描写が乏しく、彼女の内面にあまり踏み込めていないような気がしたのが、ノア自身とても魅力的なキャラクターだっただけに残念と言える。


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ウルシュラ、エスクド、フォル√【 ★★☆☆☆ 】  0.5h
それぞれ帝国編にて出会うサブヒロイン達であり、ノア攻略後に攻略可能となる。
しかしながら全編合わせて30分ほどのシナリオしかなく、内容がかなり希薄なものとなっている。
どのヒロインも共通ルートから登場しており、それぞれにしっかりとした魅力があるので、分量が乏しい事は残念の一言に尽きる。


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エリン√【 ★★★☆☆ 】  3h
タリオ連邦の元首代理。
プライドが高く出不精なエルフ族の女性ではあるものの、変わり種のエリンは急逝した元首の代理として積極的に各地を回っている。
一見するとクールで美人、外交力も高くビジネスライクにも見えるが、話してみると親しみやすい性格をしており、特に無類の酒好きという事もあってお酒を交えるとそうした側面が強く出てくる。
ざっくばらんで適当なようで見えて意外と努力家であり、日々選挙活動で忙しくしている。

連邦へ向かう事にした主人公が「コルミージョ」に所属することになり、エリンの選挙活動を手伝う、というのが連邦編における展開であり、選挙戦を勝ち抜くために連邦の各地を回っては諸問題を解決すると同時に、その背景にある”とある陰謀”と対峙してゆくことになる。
エリンと個別シーンはどうしても少なく評価自体は高くし辛いのだが、エリンやコルミージョの面々と共に眺める連邦の景色は帝国編で想像していた物とかなりかけ離れており、ある意味ではファンタジー要素のより強い内容になっている。
エリン自体が主人公をからかうことで楽しむお姉さんといった感じであるのだが、恋愛描写に関してもそうしたキャラクター性がよく前面に出ており、だからこそ逆に主人公が押すようになってからの初々しい反応も破壊力が高かった。


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ヨークシャ、ガルデニャ、レイズ、シュカ√【 ★★☆☆☆ 】  0.5h
帝国編では序盤に完全なかませ役として登場したコルミージョ、エリンの私兵部隊である彼女たちも連邦編ではサブヒロインとして大活躍をしている。
シナリオ自体は帝国編のサブヒロインズと同様、エリン√からの分岐という形になっており、各√ではエリンとの出会いが語られていたりもするものの、とても短い内容となっている。
個人的に好きなシュカなどはもう少しシナリオを読んでみたかった所。


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クロネ√【 ★★★★☆ 】  3h
ランケイジに住む天魔族の猛者たちを束ねる絶対王者、天魔王。
力は絶大であるものの天魔族としては経験が浅く、好奇心旺盛で純粋なゆえに本能に赴くがままに行動することが多い。反面、天魔族に多くあるように戦いや祭りが大好きで、戦いとなると命を軽く扱事も。

例のごとくクロネとのシーンはかなり短めなのだが、なんにしても『ランケイジ』という今まで多くが謎だった場所が舞台となる話だけあり、作品へ引き込む力はしっかりとある。
シナリオ自体も帝国編、連邦編をクリアすることで到達できるルートであるため、主人公の隠された設定やミンジャラについてや、この作品の世界設定に及ぶような伏線回収もあり、今作における総集編のような内容になっていた。
中盤からの総勢50にも上るキャラクターの描写は壮観であり、また終盤においては意外なシーンで思わずホロリと来てしまう、緩急のしっかりとしたシナリオに仕上がっていたといえる。


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エビータ√【 ★★☆☆☆ 】  0.5h
聖域で捨てられていた所をピガロに拾われ、主人公と共に育てられた。
兄妹のように育った主人公の事を「兄ぃ」と呼び慕っており、離れることが考えられないために今回旅に出る主人公と共についていく事にした。
料理が得意であり、いつかは自分の料理で一旗揚る事を目指している。

ランケイジに存在しないサブヒロインの代わりという形で攻略可能な義妹キャラ。
一緒にお風呂に入ったりとお互いに性を気にしない程に密接に繋がりを感じられるキャラクターではあるものの、例のごとくサブヒロインという事でシナリオは短い。
ただ描写自体は今までのシナリオでもかなりの分量があるといえ、これまでのシナリオにおいても意外性の高いキャラクターであったが、彼女自身のシナリオでも意外な設定が明かされることとなる。


[主人公]シャオン・ベルナルド
捨て子だったが、大天眷であるピガロに拾われ、妹のエビータと共に霊域で育った。
山育ちであるため世間を知らない純粋であると同時に、世界に強い興味を抱いており、見分と嫁を探すために旅に出る事になった。
その出発前に古の人造神『ミンジャラ』と契約をすることで、常人ではありえない天眷を二つ持つことになった。
その天眷の威力はすさまじいものの、3日のインターバルで3分しか使えないという制限もある。


【推奨攻略順:ノア→帝国サブヒロイン→エリン→連邦サブヒロイン→クロエ→エビータ】
最初は帝国編であるノア√が固定となっており、その後連邦、ランケージと順次攻略できるようなり、また各メインエピソードをクリアすることでサブヒロインも攻略可能となる。
サブヒロイン√もかなり短いので、回収できるときに回収してしまうのが良いだろう。


CG
原画はカワギシケイタロウ(wagi)さん。
しっかりとした線に、少しだけのっぺりとした濃い塗の絵。
一般的に見ていても受け入れやすいシンプルなCGが多く、テイストも昔の作品とあまり変わっていないため、以前の作品の画風が好きな人にも受けが良いだろう。
CGは勿論なのだが、数多くのキャラクターが登場する今作、多くのキャラクターに立ち絵が付いていた事も賞賛するべきだろう。


音楽
BGM40曲、Vo曲4曲(OP1/ED3)という構成。
とても多くの楽曲が今作を支えてくれており、それぞれ風習も雰囲気も違う3ヵ国の旅を演出してくれている。
その中でも印象に残るBGMといえば、優しい曲調の「我が友」が随一。BGM自体も良いのだが何よりもそのタイトルがダメ押しである。
Vo曲はメインヒロインの3人に個別のEDがあったりと意外に豊富なのだがどうしても印象が薄く、個人的に推したいのはAirotsさんの歌うOP「FORWARD!」。
イントロはタイトル画面でも流れていたが、「これから冒険が始まる」という物語の動きだしを感じさせてくれる。

お勧め度
タカヒロ×wagiという安定した作品という事もあり、期待している人も多いのだが、それゆえに求められるものも多かった。色々と懐かしい部分もあるにはあるが、過去作品と比べると一つ物足りない作品になっていた事は確かで、ファンである人にとっては中々素直にお勧めしづらい。
一方でファンタジー物が好きな人、勢いある作品が好きな人にとってはストレスなく楽しめる作品としてお勧めしやすい作品に仕上がっている。
前提知識なしでプレイすることを推奨したい作品といえるだろう。


総合評価
それぞれの分野で良い所と悪い所があるため、全体的な評価としては平均となっているものの、その評価以上に中身の出来はよいといえる。


【ぶっちゃけコーナー】
原画とのペアで考えるとやっぱり真剣恋シリーズが頭に浮かぶが、ファンタジー作品ということで、最初の方はハードルみたいなものがあった。
だけれどもプレイしてみるとサクサク進められて、特にタカヒロ作品は今まで何作かプレイしていたからかもしれないけれど、プレイしていて「ああ、この雰囲気は~」とか「ああこのテンポは~」みたいなシーンが結構あった。
エフェクトというか音で戦闘シーンを勢いのまま何とかしてしまうあたりも、悪習というべきかなんというべきか…しかしまぁ、だからこそ他の部分に焦点が当たってよかったのかもしれないな。
特に今回はかなり登場キャラクターも豊富で、それが3つの勢力でしっかりと分けて立ち回っていたから、キャラクターに深みが出ていたように思う。
でもこれって、メインシナリオライターではなく企画として参加していた「辻堂さんの純愛ロード」にも結構似た構図があったし、そういう意味では今までの作品をファンタジーで焼き回ししたという感じなのかもしれない。

なんにせよ懐かしさが良い点に働いたところもあれば、逆に「あの作品はもっと…!」みたいな感じで過去の名作たちと比べられて、ハードルが上がったせいでどうしても今作の点数が必要以上に下がってしまった気もしてしまう。
それはやっぱりライターの色が強いから起きた現象だとは思うのだけれどね。
個人的に最後のミンジャラのシーンで結構ぐっときてしまって、評価を高くしたい気持ちなんだけれども、ファンタジー作品ならもっと…と求める気持ちもあって、その中間をとって平均評価にしてしまった感じかも。
だからもう一つ上の評価でもよかったかもなーと想いながらずっと感想を書いていました。