タイトル : 冥契のルペルカリア
ブランド : ウグイスカグラ


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 11h)

キャラクター・シナリオ

―I<アイ>は未来を求めない。

芸術の街ニュクスで繰り広げられる、誰かのための青春と恋愛と幻想奇譚。

シナリオライターはウグイスカグラの作品でもメインライターを務めたルクスさん。

物語は段階的に表れる選択肢によって各ヒロイン√へと分岐していく、いわゆる階段分岐の形式をとった作品となっており、その構造は大きく3つに分けられ、前半であり共通ルートでもある劇団『ランビリス』に入団し、そして一つの劇を作り上げていくまでの青春譚、各ヒロインと恋仲になる恋愛譚の中盤、終盤のそして物語の核心部分に触れる事になる幻想奇譚から成る。

序盤は独自設定はあるものの語られることは少なく、伏線の関係もあって多くの謎のシーンが挿入されているため、一部展開には不可解な物があったり、そうした疑問が残ったまま物語が進んでいくため、心地よく作品を読むことは許されていない。

そんな前半において多くを占めるのが『演劇』についてであり、これは今作の重要な要素の一つとなっていた。
作中ではシェイクスピア作品やサン=テグジュペリ、北欧神話から果ては中原中也の詩までが取り扱われており、それらに対しての解釈はもちろん興味深かったが、なによりも演劇というものに対して全身で挑み芸術へと昇華させてゆく、そうした姿や熱量のあるいくつものシーンにこそ青春を感じられ、今作で最も評価している部分といえる。
またシナリオとは多少関係ないものの、これらのシーンによってかなり重要になったのが各声優さんの匠な演技であった事にも触れておきたい。
キャラクターによって下手な演技から真に迫ったものまでを演じ分ける、その技術に驚きながら作品の世界観に没頭するための舞台装置として、重要な役割を果たしていたといえる。

そうした中で中盤からにかけて肝心の個別√が非常に簡素なものになっていたのはやはり残念だった。
物語の構造上、BADENDのような形になってしまうのは仕方が無い事なのだが、せっかく作りこんだキャラクター達を活かすことなく、ただの選択肢の消化として描かれているように感じる事も多く、TRUEへの橋渡しとはいえ、もう少し内容を充実させて良かったのではないかと思うヒロイン達も多かった。

また今作の特色でもあり、同時に弱点でもある、その過去回想シーンの多さについても触れておきたい。
作中では終始、各キャラクターが独白するような形で過去回想シーンが多く入っており、作品キャラクターの内部形成をするとともに、作品の根幹をなす伏線を明かすシーンなども盛り込まれていた。
こうしたシーン自体は過去作でも似たものがあったが、こうしたシーンが作中の半分以上を占めているため、丁寧に作品が作り上げられている印象を受けると共に、必然的に作品のテンポ自体はかなりゆったりとした内容となっている。
その為、文章量と比較するとシナリオの展開はあまり大きくなく、作品自体が重く暗めの内容であったことも合わせて、結果的に起伏のあまりない作品となっている。
こうした部分がシナリオとして特色になっているのは確かだが、同時に作品としての薄さや伝わりにくさといったマイナス要素を生んでいるのも確かで、こうした部分が過去作同様に『玄人志向』と呼ばれることも多い。
少なくとも、シナリオメインで楽しむ人にとっても人を選ぶ文章であることは確かだろう。

そうした中でたどりつくTRUEシナリオについても、そのネタ自体があまり大きくなく、かといって鬱ゲーとしての絶望感や伝えたいメッセージ性が強いわけでもない。
序盤から中盤にかけて膨らませられた期待感は萎み、残った奔流する文字の中にプレイヤーは置いて行かれ、主体性が曖昧なままの舞台の中で、登場人物たちが空回りしてしまった作品であるような印象を受けることとなった。

今作はある意味で悲劇を主軸として、現実と演劇が曖昧になってゆくその様子や、繰り広げられる愛憎劇等がメインコンテンツといえるだろう。
ただそれを表現するための雰囲気ある文章と独りよがりな文章とは紙一重であり、読み手がどう受け取るかはその人次第といえるだろうが、それでも前者と捉えてしまう人がいても仕方がない内容になってしまっていた。


共通√【 ★★★☆☆ 】  5.5h
本編は第1幕から5幕までプロローグから主人公たちの劇団『ラビリンス』の入団までを描く前半、後半は最初の公演を終えるまでを描いた内容となっている。

序盤から一部伏線などのためか、多くの部分で不明瞭な設定などがあり、読みにくさがかなりあるものの、そういった所を除外して考えると演劇をテーマとした青春物と捉えられる。
純粋にそう分類するにはいささか乱暴な内容であったといえる。
長さのわりに多くが主人公を含む登場人物たちの過去描写などであり、物語の起伏自体はあまりないのだがそれでも驚きの展開なども含まれており、読みごたえのある内容となっていた。


冥契のルペルカリア-ウグイスカグラ4
天使 奈々菜√【 ★★☆☆☆ 】  1h
●●●なだけの少女。
個別√で描かれるは一人の願いによって上書きされた世界であり、安寧が支配する白い部屋の続き、”天使”が幸福になるための物語。
階段分岐の最初のENDという事もあって多くの内容が不可解なままなので、正確な評価が難しいが、個別√比べるとかなり短い内容であり、物語の展開自体も急であった事、多くの説明が放棄されたまま物語が進むこと、物語の締め方を含めてBADENDのような内容という事ができる。
奈々菜の可愛さや意外な部分などを見られるのは確かなのだが、彼女の全てをこの内容で生かしきることができたとはいえず、少し残念な内容だったともいえる。


冥契のルペルカリア-ウグイスカグラ3
箱鳥 理世√【 ★★★☆☆ 】  1h
元役者で劇団事務担当の少女。
不器用でポンコツだけれど真面目な性格をしており、面倒見も良いため劇団ではまとめ役になることも。
主人公とは過去に知り合っており、多少気があるものの、素直になれないでいる。

個別√にて紡がれる、茜色に染まる幻惑の物語。
理世と主人公がたどり着いた終着点。
幸せに満ちたその日々における理世の可愛さは破壊力抜群でいわゆるツンデレのような彼女だからこそ、付き合ってから見られるデレた姿には思わずグッときてしまう。
また自身が弱いからこそ相手の弱さも包み込み許してくれるような、暖かな包容力に満ちた彼女の姿もまた印象的で、そんな彼女との日々は確かに存在したであろうことを感じさせてくれる。


冥契のルペルカリア-ウグイスカグラ2
匂宮 めぐり√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
劇団『ランビリス』の看板女優。
才能に加えて、幼少期からの努力によって身に着けられた演技力は圧倒的で、底知れない演技力を持つ琥珀や、過去に子役として活躍した主人公には興味をもっており、小悪魔のようにからかってくる。

めぐりとの日々は共通でも比較的多く描かれており、そうした部分にプラスした要素としていくつかのシーンが描かれているが、彼女個別シナリオはモチーフとして比較的有名な作品である『銀河鉄道の夜』が取り上げられており、加えて今作の背景などがその過程で多く明かされたこともあって、今までのシナリオと比べると内容が分かりやすくなっている。
グルグルと同じところを廻りつづける幸せが「ほんとうの幸い」なのか、描かれる幸せなシーンとは対照的だが執拗にその問いかけをこちらへ投げかけてくる内容となっている。


冥契のルペルカリア-ウグイスカグラ
架橋 琥珀√【 ★★☆☆☆ 】  1h
伽藍堂の空虚なクラスメイト。
夜の公園で一人演劇を真似していたところを主人公に見られてから、その実力を買われて劇団『ランビリス』に入団することとなる。
経験は少ないものの演技に関しては別格の才能をもっており、乾いたスポンジのように何でも吸収してどんな役でも演じてしまう。

これも等しくBADENDであり、必要な役者たちは去り月のない宵闇の中、行われる虚しき二人芝居。
二人が演じる逃避のための世界はアベコベでボロボロになってしまって、その振る舞いは傲慢で見ているだけで不快感を感じる人もいたはず。
徒爾に時間だけが過ぎていくだけの浪費、けれど演じる者が止めない限りは、たとえ意味がなくとも続いてしまうのだろう。


冥契のルペルカリア-ウグイスカグラ5
TRUE√【 ★★☆☆☆ 】  1h
全ての選択肢の果てにたどり着く一つの終わり。
TRUEとなってはいるものの、今までの伏線もあってか展開も予想できる内容となっており、触れられなかった各キャラの心情が明かされる他はに目新しい物はない。
今まで膨らませてきた話の総括ではあるが、比較的終わり方も平坦なので、残される傷がある訳ではないものの、かといって読後感が爽快なわけでもない。


【推奨攻略順:奈々菜→理世→めぐり→琥珀→TRUE】
いわゆる階段分岐作品なので、基本的には上記の順番での攻略になるはず。


CG
細く繊細な線、淡い塗りの絵。
立ち絵やイベントCGは共通してふんわりとした雰囲気が漂っており、目を見張るものがある一方で、時折バランスやパースが気になるものもある。
ただ枚数は比較的豊富で総じて安定した質の絵が多いので、作品の足を引っ張るほどではなく”味”の一つといえるだろう。


音楽
BGM26曲、Vo曲1曲という構成。
多種多様にそろえられていたBGMは一部を除いて全体的に落ち着いたもの暗いものが多く、「残り火」や「memories」などはその中でも代表的な曲といえるだろう
Vo曲の「ライムライトの残火」は雰囲気もたっぷりですが、歌詞自体も作品とリンクしていて、プレイ前はそうと分からないフレーズもプレイ後に再度聞いてみると、再度印象が変わるはず。
ただEDが無かったのは少し残念な所。


お勧め度
ルクル作品として前作や前々作の雰囲気が気に入っている人には安心してお勧めしやすいが、そのままで楽しむのは難しい作品であるため、初心者にはいささかお勧めしにくく、少なくとも文章に慣れ親しんだ人か、多少陰鬱な雰囲気の作品が好きな人に限ってプレイを推奨したい。
また同社の処女作である「紙の上の魔法使い」とのつながりやそのレベルを期待して、いう意味でなら、やはりお勧めはしにくいといえる。


総合評価
鬱ゲーとしては全体的に良くできた作品ではあるのだが、それでもやはり伝えるべき主張性が弱く、心に響くシーンや残るシーンもなかったという事で、厳しいものの平均的なこの評価となっている。


【ぶっちゃけコーナー】
各所触れるべきところはあるものの、やはりシナリオについてのみここでは書き記しておきたい。
ルクルさんの文章力がどうこう言えるわけではないのだが、個人的に肌に合わない事は確かだ。
だからこそ、以下の文章は肌に合わない人にとってはこう感じるという体で受け取ってほしい。

ウグイスカグラといえば、印象的なのが処女作の「紙の上の魔法使い」で、その圧倒的な展開と真に迫る心理描写に驚かされたのは今も記憶に新しい。
ただ、以降に書かれたものはネタや各キャラの心理描写も全く及ばないと言っていい。
特に今作に関しては、すっきりとさせるなら1/3に出来るんじゃないか、もしくは文章のコピペをしたのでは、と思ってしまう程に繰り返しのシーンが多い。
リフレインとも呼べるそれらのシーンは、しばしば雰囲気を高めるための重要なシーンにおいて他の作品で使われているものの、この作品では各キャラクターたちの一人語りが永遠と綴られていた。
これ自体は登場人物の把握に役立っているといえるのだが、如何せんそんなに繰り返さなくても、プレイヤーはしっかりと把握してくれるだろうし、なにより既知の話の繰り返しは相当なインパクトや思い入れのあるシーンでもないと、読んでいる人に感情を呼び起こす事ができず、結果的に今作ではそれらの多くが冗長なものとなり果ててしまっている。
それよりも綴られなかったそれ以外の面を描いていき、さらに描写を深めたほうが良かったといえるだろう。

またネタ自体もかなり平凡…というより二番煎じに感じることが多く、プレイしていて過去の作品との類似を感じざるを得ない。
テーマとして挙げられた演劇自体への向かい方はともかくとして、取り上げられた作品やその解釈、その背景にある舞台、などなど過去の有名な作品でも使われた作品/手法であるため、そこと比較してしまうと、どうしても驚きは少ない。
それでもオリジナルを超える何かがあればよかったのかもしれないが、今作においてはそうした要素が見当たらず、どうしても感情の起伏が少なくなってしまっていた。
また雰囲気としての鬱ゲーとして評価しようとしても、今作における絶望はその他多くの作品と比較するとどうしても軽く、結果として伝えたい事が薄くぼんやりとしてしまっている。

書きたいものや伝えたい事はしっかりと伝わってくる作品なのだが、各所に見られるそうしたウィークポイントが総じて書き手の独りよがりとして「芸術」とは紙一重の「退屈」を見せられた気持ちになっている。
厳しい意見ではあるものの、素直な気持ちとして書き記しておきたい。