タイトル : まおかつ! -魔王と勇者のアイドル生活-
ブランド : Wonder Fool


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 4h強)

キャラクター・シナリオ
駆け出しのアイドルプロデューサーとして働いていた主人公。
そんな彼が突如として異世界召喚され、周囲に望まれるままに魔王を討伐する…、そんなありふれた異世界転生物から一転、秘密裏に仲間に引き入れた魔王たちをトップアイドルとしてプロデュースするというお話。

企画・シナリオを担当しているのはあの名作「アオナツライン」でも有名な冬野どんぷくさんで、以前にもCOSMIC CUTEの「雲上のフェアリーテイル」において企画・シナリオを担当されている。

しかしながら、今作は”異世界”という舞台設定こそ重要な立ち位置にあるものの、作品のメインになっているのは異世界において『アイドル』という職業を開拓していく過程であり、その中で垣間見えるヒロイン達の強い輝きが最大の魅力となっている作品である。

今作において最大の欠点といえるのがシナリオの分量だろう。
Hシーンを除くと各ルート1hほどのシナリオとなっており、共通ルートを含めても全編で4時間ほどで読めてしまう物語となっている。
サクサクと読める作品である事を鑑みたとしても、フルプライス作品とは思えない分量となっていて、どの部分でこの分量の制限が付いたのは謎だが、この尺の短さ自体が各シナリオにおける完成度に関連しているとあっては減点せざる終えないだろう。
こと純粋な異世界転生物とするには主にこうした点を含めて、色々な描写が足りない作品となっており、そういう意味では異世界物としての作りこみも甘い作品といえるだろう。

『アイドル』に比重をおいた作品であるというのは前述の通りだが、そのアイドルとしての活動が現実に即しているものかは、当方の経験不足もあり分からない。
ただそこに向き合おうとするクローマやメテオール―作中に登場するアイドルグループの名称―の面々の姿、そこに宿る輝きは確かに描かれいた。
アイドルとして活動する傍ら、個別√で重要となる恋愛描写もまた素晴らしい。
特にハーレム物としてイチャラブシーンのみを描くのではなく、しっかりと選ばれなかった者の心の描写が描かれている点は個人的好みもあるのだが、それぞれのヒロインがどの√においても忘れられていない事が伺える。
それ以外にも個別√でしっかりと攻略ヒロイン以外のヒロインの登場シーンが用意されており、共通ルートと変わらず作品をにぎやかにしてくれていた。
確かに手放しで褒めることができるか、と問われると様々に突っ込む要素はあるものの、締めるべきところは締める作品であるために緩急があり、いつの間にか心をつかまれているシーンもいくつかある。

シナリオの総評として、各ルートで光るシーンはあるものの、総じて分量不足という大きなマイナスポイントもあり、それらが全体的な評価を大きく下げているというものになっている。


共通√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
メインで描かれているのは主人公が異世界においてヒロインの2人と『アイドル』という存在を作り上げていくまでの過程であり、そこに至るまでの主人公の異世界転生やヒロインである魔王の3人との出会い等々はかなり割愛されている。
日常シーンはギャグもありつつハーレムテイストではあるものの、前述の通りアイドルとして頑張っているヒロイン達の姿をプロデューサーとして眺める事になるシーンが多く、それぞれのヒロインとしてのイベントシーンがあるというよりは『クローマ』として一人一人の魅力を引き出している印象が強い。


20210301001716
リゼ・クラウド√【 ★★★☆☆ 】  1h弱
元・空の魔王。
クールで竹を割ったような性格の持ち主で、クローマのメンバーの中では最も真面目で、主人公には勝負をして負けてから以後は素直に従っていたりと、義理堅い所もある。
他のメンバーのように愛想を振りまくのは苦手だが、その代わり戦場でも味方を鼓舞するのに使っていた歌が得意であり、最大の魅力となっている。

個別√ではソロ活動を始めたリゼとそれを支える主人公という形で二人の仲が深くなってゆく。
恋愛というものに一切触れていなかったリゼの初々しい感情の発露が伺えるシーンが魅力の一つではあるのだが、もう一つ裏にあるテーマとして「アイドルとしての恋愛」というある意味革新的な部分にも触れたシナリオとなっている。
短いシナリオではあるものの、それぞれの問題提起にそれなりの答えを見せており、読み応えもあって純粋に良い内容となっていた。


20210301001733
イヴリン・デヴォルガード√【 ★★★☆☆ 】  1h弱
元・陸の魔王。
当初から謎に包まれていた存在で、世界征服よりもアイドル活動の方が面白そうということで協力関係になる等、気分で行動する事が多い。
基本的になんでも出来ることに加え、全てを包み込むような包容力を併せ持つことから、皆のお姉ちゃんとして立ち回ることが多く、主人公の事も弟として扱っている。

個別√では、何でも器用にこなせるイヴリンが最初にソロ活動をするメンバーに推挙される所から始まり、イヴリン自身の「姉としての立場」をテーマにクローマとの面々との関係に触れた内容になっており、短いもののメンバー同士の絆が良く表れた内容となっていた。
物語の中盤から後半にかけては主人公に起きたある”問題”を主軸として話が展開してゆき、姉として弱さを見せないイヴリンの弱さなども見える内容となっていた。
シナリオの短さや展開の予想のしやすさなどの問題はあるものの、多角的にヒロインの魅力を表現するという意味では、及第点を挙げられる内容となっている。


20210301001731
カレン・アオイ√【 ★★★★☆ 】  1h
元・海の魔王。
カレン自身は温厚な性格で争いを好まないものの、生来の資質により海の巫女として崇められ、魔王として扱われていた過去をもつ。
頑張り屋な彼女だからこそ、アイドルをする事になってからは、何事にも一途に努力をし続けており、当初は感情の動きも少なかったが、クローマの面々と触れ合う事で徐々に改善され成長していっている。

ソロデビューを果たし順風満帆なカレン、個別√ではそんなカレンが主人公の前世では「アイドルが恋愛禁止」だったという事実を知る所から物語が展開してゆく。
アイドルという仕事と恋愛の間で揺れるカレン、意識し合うのギクシャクする様子など、短さの中にも、本作では一番といっていいほど恋愛描写がなされており、カレンの優しい性格と共に今まで見られなかった魅力を伝えてくれている。
後半は一転して予想もつかない展開となっており、短い尺にこれでもかという程の展開が詰まっているが、それでも要所要所の描写力は確かであり、思わずぐっと来るシーンもあった。


[主人公] 本多 御言
シャルロッテとイーリスによって異世界召喚された本作の主人公。
元々は駆け出しのアイドルプロデューサーだったが、異世界召喚後は勇者として活動し、魔王討伐を終えた後は再びプロデューサーとして再び活動することとなる。
性格は真面目で、特に仕事に関しては熱い情熱をもって取り組んでいる。


【推奨攻略順:リゼ→イヴリン→カレン】
選択肢が1つしかなく、それが各キャラシナリオの分岐となっている。
シナリオの性質上誰から攻略しても良い物となっているが、個人的にはカレンを最後に攻略してほしい所。


CG
前作に引き続きぼに~さんがメイン原画担当しつつ、「アサヒナヒカゲ」さんという方も加わった今作。
しっかりとした線に濃い塗の絵、その質に関しては大きな変化はない。
ヒロインが3人という事もあって一人一人の枚数に関しては前作より多くなっているものの、総じてのHシーン数やCG枚数に大差はなく、個人手にはもう少し分量が不得手も良かったのではないのかなと思ってしまう所。
前作同様にSD絵も多数存在している。


音楽
BGM10曲、Vo曲1曲という構成。
Vo曲のアレンジを含めればもう少し増えるBGM、何より問題なのはその量で、中には「In Other Words」のような良曲もあるが、やはり全体的に寂しい分量といえる。
Vo曲は夢乃ゆきさんの「Let's ミラクルSHOWTIME!」で、異世界の中―ゲーム世界イメージさせるような電子音を使ったハイテンポの楽曲が素晴らしい。


お勧め度
シナリオライターが冬野どんぷくさんである、という事でお勧め度を高くしているのだが、如何せんそれ以外の部分でマイナス点もあり、純粋にお勧めしにくい作品にはなっている。
特に作品の雰囲気としてもガラリと変わっており、それが唯一無二として好まれるか、有象無象の作品の一つとして捉えられるかは人次第だろう。
ただしシナリオに光る部分があるのは確かで、そのシーンに感動をしてしまった一人としては、お勧め度だけでも高くしておこうとこの評価になっている。


総合評価
シナリオに見るべきところはあるものの、同時に欠点を抱えている部分もあり、そのほかにも純粋に評価を高くしにくい内容もあり、全体を鑑みてこの評価となっている。


【ぶっちゃけコーナー】
シナリオについて個人的な意見をもう少し含めるなら、期待していた部分から外れた感じではあるものの、そのなかでも予想を超えてくるシーンはあるという印象だったかな。
というか異世界物としてみるよりアイドルが成長していく過程を描いた作品としてみると、凄くしっくりきた作品なんだよなぁ。
何度も言うけどフルプライス作品としては短めの作品だったというのが最大の欠点で、だからこそ要素がごっちゃになり過ぎていた今作との相性も悪かったように思える。
中でも異世界要素は作中でも消化しきれてないところがあって、この作品の魅力というべきところが異世界である事と全く関係なくなっているのがその証左ともいえ、何故異世界でなければこの作品は成り立たなかったのか、そこを描くにはやっぱり尺足らずと言うのが正直な感想。
ただ一つ一つのシーン自体に破壊力は確かにあって、今までのマイナス分を全てカバーしきれないものの駄作かといわれてしまうと、そう断じてしまうには惜しい所が多い作品であったというのもまた正直な感想の一つである。