タイトル : 天ノ少女
ブランド : Innocent Grey


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]
(総プレイ時間 : 15h)

キャラクター・シナリオ

そして、星は巡る――

2008年に発売された『殻ノ少女』をエピソードIとして合計三部作の予定で世に送り出された『殻ノ少女シリーズ』、2013年に続く2作目『虚ノ少女』が、そこからさらに7年以上の時を経て発売となった最終章の今作。

もちろん続編となるため内容は『虚ノ少女』の続きとなっており、天恵会の一連の事件が一応の解決を迎えたその後を描いている。
その為、舞台や登場人物等は一貫して踏襲されており、今までの作品と同様に探偵としていくつかの事件の謎を追うことになる。
一部シーンでは2作目のように真崎視点で進むこともあるものの、基本的には『殻ノ少女』と同様に主人公である時坂玲人視点で物語が進むことや、他にも、時折差し込まれるMAP選択によるシナリオ分岐や、殺害現場の証拠集め、推理失敗によるBAD分岐なども健在。

シナリオ自体はエンディングはBADも含めて14種類からなり、1週目では一連の事件についてを、2週目では大筋をなぞりつつもいくつかの違う展開を経てGRAND/TRUE ENDとして各真相などが語られ、3週目ではそれぞれの週で語られなかった視点で物語が綴られる、という周回前提のシナリオとなっている。
攻略時間自体も14時間(1週目だけで7時間)程度と大ボリュームである事に加え、推理小説もかくやといったほど、内容も充実している。

今作でメインとなる事件についてやその後の流れに関してはネタバレになるため多くを語ることはできないが、事件自体の規模は今までの物と比べるとそこまで大きくない。
もちろん事件自体が独立している事、そしてそれらの事件が今までの事件と絡んでいる事は確かなのだが、今作においては事件自体よりもむしろ、それぞれの抱える偏執にスポットを当てさせるような展開になることが多い。
それは主人公だけではなく周囲の人々も対象であり、全てのエンディングを通して今作の発端となった「殻ノ少女事件」に巻き込まれた人たちの人生を描き切ってくれていたように思う。

また今作では『天罰』と言うのが今作の一つのキーワードとして挙げられるが、それに関連して作中の各章にダンテの神曲における天国篇にをモチーフにしたタイトルがつけられているなど―当方の知識ではすべてをはかり知る事は不可能だが―テキストの表面部分だけでは分からない箇所にまでメッセージ性が込められており、推理物らしくクリアした後にわかる伏線なども多い。
分かりやすいものではOP等も挙げられるが、いずれにしても作品の細部に至るまで作りこまれた作品であることが伺える。
そうした要素が集まって『殻ノ少女』シリーズの雰囲気が作り上げられており、完成度の高さにより一層の磨きがかかっているといえるだろう。


【推奨攻略順:Unsolved case→Grand END→TRUE END】
基本的に作品を2周することが前提となっており、上記の順番自体がロックとして存在している。
そのほかにENDが11種類存在しているため、最後か合間に取得していくとよいだろう。


CG
原画を担当されたのはイノグレではおなじみの杉菜水姫さん。
美麗な絵から殺人現場におけるグロテスクな絵まで、その繊細な絵は『殻ノ少女シリーズ』の根幹部分を担っているといっても良く、その完成度は言うまでもなく最高レベル。
またキャラクターの絵以外にもカットインCGなども豊富で、そのあたりも今作において没入感を高めるために一役買ってくれていた。
なお続編という事で登場キャラクターや舞台等は同じだが、作品自体や作中でも年代が経ている事もあってその多くが刷新されている。


音楽
BGM40曲、Vo曲6曲という構成。
Vo曲ではGrandED曲「輪廻の糸」はその歌詞はもちろん、静かな曲調の中の中にどこまでも響き渡るような、霜月はるかさんの透き通るような声質との相性も良い。
そして何と言っても、シリーズを通してプレイした人ならば誰しもが感慨を抱くであろう、TRUEED曲として用意された楽曲も推しておきたい。


お勧め度
シリーズ作品の最終章という事で、単体で楽しむことは不可能に近く、殻ノ少女シリーズ―殻ノ少女、虚ノ少女―のプレイは必須となる。
また作中では振り返り等が殆どなく、加えて作品自体の発売も期間が開いており、それぞれの事件も要素として深く関わっては来るので、内容を忘れている人にとっては復習なども行う事が必須となる。
そういう意味でハードルが非常に高い作品であり、評価を一つ下げているものの、このシリーズが好きな人、ひいてはイノグレ作品のファンにとって名作である事は変わりない。


総合評価
シナリオ・CG・音楽が組み合わさって圧倒的な世界観を作り出した作品であり、続編という事を鑑みても全体的に高いレベルでまとまった名作といえ、この評価。


【ぶっちゃけコーナー】
作品自体への評価自体はかなり高く、その内容は上記までに十分書いたので、それ以外のマイナス要素について。
作品としての完成度が高い部分が多い一方で、勿論マイナス要素もある。
特にプレイに関してはシステムがかなり旧世代であることが目立ち、演出の為もあるのだろうが全体的に動作がもっさりしている印象が強く、他にもテキストジャンプ等が無いのも辛く、選択を間違えると酷い事になっていたりもする。
私自身はそうしたプレイはしていないのだが、主人公の音声を切ると訳の分からないシーンができてしまったりと、ユーザービリティの低さが目立つところもあり、作品自体の評価には大きく加えてないものの、プレイのしやすさ自体も十分な要素の一つといえるので、そのあたりはやはり改善してほしかった所。

以下はシリーズ完結に関してのコメント。

この作品でついに終わりという事で、ずっと待っていたような、終わることが怖かったような不思議な気持ちであった。
TRUEENDを迎えた時、どんな気持ちになるのかは想像もできていなかったのだが、あの”曲”を聞いた瞬間に不思議と涙が止まらなくなってしまった、それが感動だったのか、喜び、安堵、それとも悲しみだったのか。
他にも泣いたシーンは一応あるのだが、やはり泣きゲーに分類するのは難しい、というより自身でもなぜ涙が出たのかが説明できない。

今作で登場人物のそれぞれの偏執の果てに待ち受ける展開が何なのか、それ自体はぜひプレイをして確かめてほしいが、多くの好評の声は散見される。
それ自体は10年以上前に『殻ノ少女』という作品をプレイした瞬間に、プレイヤーが持った『エンディング』への偏執が解れた証といえるのではないだろうか。