タイトル : 紅月ゆれる恋あかり
ブランド : CRYSTALiA


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 9.75h)

キャラクター・シナリオ

刃煌めく瞬間、少女たちは全力で駆け抜ける―

もはや同一シリーズというべきなのかもしれないが、CRYSTALiAの代表作「絆きらめく恋いろは」(以下めくいろ)や、「白刃きらめく恋しらべ」(以下めくらべ)に続く新作。

舞台となるのは1作目である「めくいろ」から十数年前の叢雲学園。
続編というわけではないので単体として楽しめるように作られているものの、オリガミを使った和風テイストな近未来バトル物という設定が同じである事はもちろん、一部サブキャラクターなども登場しているので同社作品をプレイしておくとより楽しめるだろう。
また特殊な作品設定や用語が登場するが、前作までと同様にTIPSによって作中での説明を省き、ファンにとってはストレスフリーに、かつ初見でも理解しやすい作りとなっている。

そんな今作を下記のヒロイン達が盛り上げてくれている。
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【風嶺 雪月花】
武芸科1年特甲級<篁組>の生徒で、風嶺の分家筋に生まれた双子の妹。
余り頭が良くないものの明るく素直な女の子。
刃道が大好きで、双子の姉である蛍雪を風嶺の当主にするため、朱雀院を倒すことを目標に掲げている。

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【朱雀院 紅葉】
武芸科1年特甲級<篁組>の生徒で朱雀院宗家4姉妹の長女。
頭脳派で戦術家でありながら武芸の一流、生活態度も真面目で誰にでも丁寧に接する優等生。
本来はできる限り楽をしたい面倒くさがり屋なのだが、朱雀院の面目の為に自分を偽って生活をしている。

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【九鬼 旭】
主人公の親友「九鬼隆久」の妹で、小さい頃から主人公を慕っている。
性格は真面目でお淑やかなのだが、その反面に主人公の敵となる人に対しては笑顔で脅しをするなど、毒を隠し持っている。
主人公が村雲学園にやって来たことで、それまでの担任教師を脅して<篁組>の生徒となった。

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【十部 梨々夢】
武芸科1年特甲級<篁組>の生徒で、オシャレとおしゃべりが大好きな女の子。
誰でも気さくに話しかける明るい子だが、とても自立心が強く、自分の世界観がが何かに縛られることをとても嫌っている。
自分の世界に必要が無いと思っている勉強のような地味な事が不得手。
「めくいろ」の前の話という事で今まで話にしか登場していなかった朱雀院の長姉がヒロインになっていたり、「めくらべ」登場した風祭の分家の出身者がいたり、そのほかにもいろいろと設定が濃く、なおかつ魅力的な女の子がそろっている。

同じ舞台に同じ設定と、大きな要素を踏襲しつつ、大きく変わったシナリオ部分。そこでまず最初に挙げられるのがシナリオ構造だろう。
全体的なボリュームはそのままに、前作までの√分岐方式から選択肢のない1本道のシナリオへ、より一つの流れの中身を充実させる方向へと転換させた。
ある意味ではすべてが共通ルートともいえる今作だが、その中で何よりも重要視して描かれていたのは『刃道』を通して描く青春だった。

『刃道』というスポーツを通して今作で描かれた、力と力をそして意志と意志をぶつけ合う熱い試合の数々は、思わず手に汗握る試合の中で、思わず涙してしまうシーンもあるほど。
戦闘描写そのものは特筆すべきところが無いものの、そこに行くまでの過程やシーンそのものの見せ方はとても秀逸で、バトルを取り巻く人々の感情を含めて描き出したことに関しては見事という他ない。
特に今作においては風嶺と朱雀院の関係が…というより、紅葉と雪月花の関係がとてもよく、最後の最後まで熱く燃え、時に泣かされる内容となっていた。
こうした青春学園物の王道ともいえるバトルを通しての相互理解は読んでいて気持ちよさもある。

また今作では主人公が教師と言う所も大きく違う所だろう。
戦闘に参加しないのは同様ではあるものの、同じ目線でサポートしていた今までの作品とは違い、一歩引いた位置でヒロイン達の成長を見守っている。だからこそ、バトルシーンにおける彼女たちの心理描写がより鮮明に浮かび上がっているように思えた。
特に今作では「演武祭」での試合のシーンがメインであることは確かだが、そこを目標に努力するの日々もしっかりと描かれている。
上記にあるような煌めくようなバトルシーンも、こうした部分で描かれた日々を過ごす中で変化していく関係や培われてゆく絆があってこそ。

一瞬の煌めきの中に交差する想いと想い、だからこそ生まれる絆。
『努力』『友情』『勝利』とまではいわないものの、類似要素がギュッと詰まった今作は、設定こそ異質ではあるものの、その中身は紛う方なき王道の青春学園バトル物といえるだろう。

作中では特定のヒロインと付き合う事はなく終了することになるのだが、Hシーン自体は攻略後にオマケとして、それぞれ30分ほどのHシーンが詰め込まれたアフターシナリオの形で解放される。他にもIFシチュエーションにおけるHシーンがサブヒロインの物を含めて用意されている。
個人的に好みな作りであることはもちろんだが、今作の作風を鑑みてもシナリオとHシーンを分離して作った事を高く評価したい。


[主人公] 村垣 伊織
陸自天呪特化群<武蔵>に所属するオリガミを扱う強襲兵だが、今回は”お使い”として叢雲学園の<篁組>副担任として派遣されている。
性格は生真面目だが、茶目っ気もある明るく朗らかな人柄で、成長過程を見守るのが好き。


【推奨攻略順:本編に選択肢無し】
本編は1本道のシナリオとなっており、攻略後にアフターエピソードのカタチで各キャラとのシーンが描かれている。


CG
今までの作品同様に瑞々しさと鮮やかな色使いが印象的な絵で、質も安定している。
戦闘シーンを中心に、主人公やサブキャラクターのものも含めて、枚数は十分に用意されており、SD絵も数枚存在している。


音楽
BGM31曲、Vo曲3曲(OP/ED/挿入歌)という構成。
やはりと言うべきか、今までの作品と同様に和テイストなバトルBGMが多く存在しており、使いまわしていると錯覚するほどに印象を寄せていた事には驚くしかないのだが、その中でも異色を放っていたのが「宙斬涙跡」。
流れただけで空気感を変える名曲として推しておきたい。他にも「星霜流水」などの良曲もそろっており、シナリオと合わせて「ゆれあか」の世界観を支えていた。
Vo曲はやはりNo:Rさんの歌うOP「紅ノ刃」が好きだった、和風に熱く歌い上げられたこの楽曲と作品の雰囲気の相性は言うまでもなく唯一無二の関係といえるだろう。


お勧め度
CRYSTALiAの今までの作品同様、叢雲学園を舞台としたオリガミを使ったスポーツ『刃道』をテーマにした作品。
シリーズのように続いている作品であるため、「めくいろ」等をプレイしておくとより楽しめるのはもちろんだが、作中にはTIPSなども用意されており、この作品からのプレイでも特に問題はない。
今まであった和風×近未来なバトル物という大枠を引き継ぎつつも、テーマや雰囲気等を大きく変化させ、今まで以上に青春バトル物として楽しむことができるようになっている。
一方で「絆きらめく恋いろは」にあったいくつかの要素―伝奇的部分やオリガミの詳細、何よりキャラクター萌え部分は抑えられている。
そのため今までの作品とは系統が別であり、「前作が好きだから今作も」と簡単にはお勧めしにくい点もあり、上記を考慮したうえでなおプレイを推奨したい作品。


総合評価
世界観を下支えする安定感あるBGMと美麗なCGはもちろんだが、大きく様相を変えたシナリオ部分を特に高く評価しておりこの評価している。


【ぶっちゃけコーナー】
作中には都や椿が登場していて、本編とはちがった小さな彼女たちの可愛さも宣伝しておきたいんだけど、やっぱり触れるのはシナリオ部分についてにしておこう。

いやぁ「めくいろ」や「めくらべ」を想像してプレイした人なら、2種類の反応に分かれるはず。
「こういうのを求めてなかった…!」というマイナスな反応と「待ってました!」というプラスの反応。
私はもちろん後者の人間なのだが、それは「めくいろ」や「めくらべ」に何を求めていたかが違うんだろうね。
正直、今作はHシーンも弱めだしキャラ萌えっていう意味では凄く薄いし、今まであったような命にかかわるような伝奇的な要素もなくなって、ただのスポーツバトル物となっている。
そういうのを求めていた人には、正直お勧めできないし、だからこそ各部分の評価が少しだけ下がっている。

ただ個人的にはこの変更がかなりうれしくて、今後もこの方向でいってほしい。
今まであったいくつかの要素を切り落としたからこそ、残ったのはストレートな王道ストーリーであり、シナリオが進む毎に変化してゆく人間関係や心の在りようなんかはとても青春物らしくて、今までの作品とは比べ物にならないくらい良く描けていたと思う。
だからこそ、クライマックスといえるバトルシーンでは熱く燃えながら、思わず涙するシーンもあったし、泣いたという意味ではバトルシーン以外でもグッとくるところも結構あった。
物語としては尻上がりに面白くなってゆく作品だったから、最後までじっくりと楽しんでほしい。
そして次の物語にも期待したい(たぶんFDができそうですが)