タイトル : 星空鉄道とシロの旅
ブランド : しらたまこ


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 5.5h)

シナリオ

この旅は、 彼女のなかに なにを残していくのだろう――。

冴えないアニメーターの主人公『鐘城 暁』がある夏の日に飛び乗った夜汽車の旅。
夜風に吹かれ心地よい一人旅の中で出会った可愛い車掌さんと、気のいい仲間たち、そして猫耳をはやした不思議な女の子『ノワール』だった。

今作のメイン原画を担当されている「しらたま」さんの企画により制作された同人作品、シナリオを担当されたのはさかき傘さんという事で、ストーリーは偶然乗り合わせた客と行く先もわからぬまま汽車の旅を楽しむという内容になっている。
ビジュアルにもある夜汽車のイメージから宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を彷彿とさせるような内容となっており、作りこまれた世界観は舞台となる汽車での幻想的な旅の中にながれる、ゆったりとした時間を楽しむことができる作品であった。

謎の猫耳少女がいたり子供が車掌をしていたり、設定には多くの謎を含んでいるものの、序盤から中盤にかけては旅行を楽しむ様子がメインに描写され、女の子―特にノワールの一挙手一投足がとても可愛いく描かれており、柔らかな女の子として描き出されたヴィジュアルと合わせて破壊力が非常に高い。
こうした部分が作品のアピールポイントとして紹介できる一方で、ゆったりとした場面が作品の7割近くを占めており、加えて同人作品という事もあってかシステム回りが必要最小限で、各エフェクト等がクリックで飛ばせなかったりと、動作自体がもっさりしている事もあって、中だるみ状態になっていたのも確かだ。
また所々に伏線などもあり、察しの良い人ならば物語の大筋も予想できてしまうことも、そうしたマイナス部分へ寄与してしまっていた。
この部分を純粋に楽しめるかどうかで、この作品の評価が大きく変わってくるのは確かだろう。

上記のような懸念点はあるものの、終盤にかけての流れは秀逸の一言。
特に、この作品に込められたテーマやメッセージ性といったものの良さが顕著であり、それを伝えるための物語の動かし方や重要なシーンにおける演出など、この部分に関しての良さを挙げれば暇がないほど。
ほんわかした雰囲気から一転して、誰しもが涙を浮かべてしまう程に切なく、心を締め付けるように悲しい、それでいてどこか暖かい物語に仕上がっている。
先ほどは半ば酷評に近かった前半部分に関しても、その幻想的で童話的な流れと後半において描かれる真実との対比としてみると、物語をより一層色鮮やかに浮かび上がらせてくれている。

星の中を進む夜汽車のように、煌びやかな宝石の中を進む一筋の希望の物語として、読んだ人の心に残るシナリオとなっており、その読後感の良さと合わせて高く評価をしたい。


【推奨攻略順:- 】
作中に選択肢はあるもののシナリオ分岐はしないため、好きなものを選ぶとよい。


CG
今作の企画でもあるメイン原画担当のしらたまさんによる絵。
幼く白く柔らかい女の子の質感、そのこだわりぬいたそのイメージへの熱意がこちらまで伝わってくるようなCGたちは1枚1枚が至極の域で、枚数自体は平均的であるものの、その質に関しては類を見ないレベルとなっている。
また背景はわいっしゅさん担当という事で、ヴィジュアルを通して今作を支える綺麗な世界観をより強固な物へとしてくれていた。


音楽
BGM?曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
鑑賞画面が無いため曲名は不明なものの、その数に関しては10曲前後というところ。
Vo曲は保科めぐみさんの歌うOPの「スタートリップ」がとても繊細で、星空の中を旅する旅客列車を想起させてくれた。


お勧め度
有名な原画家が企画した作品という事で、まずはその原画部分に関してはその熱量を感じられる内容になっている事を保証できる。
加えてのシナリオの完成度も高く、また内容としても広く受け入れやすいものとして、有名メーカーが作成したものではないものの、全年齢でミドルプライスというハードルの低さも鑑みてこの評価にしている。


総合評価
幻想的な雰囲気を持った作品として全体的に完成度の高い作品であり、特に絵とシナリオの完成度に関しては群を抜いている。


【ぶっちゃけコーナー】
しらたまさんの可愛い絵というだけで強いアピールポイントととなる作品であるが、そこにさかき傘さんという強い助っ人が加わった。
ハードルとしてはかなり高いものがあったので、正直中盤の中だるみに関しては結構しんどい部分もあった…けれど、そんな評価をひっくり返してくれるほど終盤の展開が良かったんですよね。

序盤から中盤にかけては本当にキャラを愛でることが中心になっているものの、それ以外にも色々な伏線があったから、展開に関してはある程度想像つく人もいただろう。
私個人でも中盤の後ろの方でぼんやりと形ができていたくらいなのだが、それであっても後半は泣けた。テーマや主張といったものが良い内容である事はもちろんなのだが、それくらいストレートに作品にいつの間にかのめり込んでいたのだと思う。
この作品は背景にわいっしゅさんを迎えていたりと、作品の雰囲気を形作る事に関しては低価格帯という事を忘れるくらいに力を入れてくれている。
そうした甲斐もあって一緒に旅をすることでノワールの事が、そして一緒に乗り込んだ乗客の一人一人が好きになっていって、だからこそ終盤の展開では涙が溢れてしまっていた。

ネタバレもあるため内容自体には詳しく踏み込むことはしないけれど、純粋に前半は女の子の可愛さと作品の世界観を楽しんで、後半にこの物語が伝えたかったことを体中で感じてほしい。