タイトル : 保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手
ブランド : Citrus


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 6h)

シナリオ
Citrusから発売されている「保健室のセンセーシリーズ」の第1作目。

主人公の目的でもある姉を探し旅の途中に、彩香町を訪れた蒼空とシロバナ。
多くの魂人が集う不思議な田舎町を舞台に、彩香女子学園で臨時の養護教諭として働きながら、学園で起こる様々な事件に立ち向かってゆく事になる。

続編としてシリーズ第2作の『保健室のセンセーとゴスロリの校医』と第3作の『保健室のセンセーと小悪魔な会長』が発売されている。

本作は選択肢がなく1本のシナリオで構成されており、『魂人』や『送り人』を始めとした独自の設定が登場する今作。
ヒロインとなるのは『シロバナ』と呼ばれる魂人―幽霊であり、作中でのHシーンなども彼女に対してだけとなっており、そうした作品の性質上、彼女を好きになれるかどうかがこの作品を評価するうえで、一つのキーとなっているといえるだろう。

シナリオ自体は大きく3つに分割でき、序盤は町に慣れてゆく様子について、中盤は町で発生した事件について、そして終盤は主人公とシロバナのシナリオについてが描かれており、それぞれが約2時間程度のボリュームとなっている。

序盤は謎も多く戸惑う事もあるものの、各種説明が簡潔且つ丁寧に行われており、田舎町を舞台としている事や作品の展開自体がとてもゆったりしている事もあって、展開についていけなくなるという事はない。
また状況や設定説明が上手い事もだが、空気感が終始一貫して保たれていたことも評価の一つ。
今作においてはモチーフとしてタンポポ、そしてその花言葉である『真心の愛』と『別離』がテーマとして扱われており、特に後半に連れてそうした部分に触れる描写が増えてゆく。
伝えるべきテーマがブレることなく、しっかりと作品に落とし込まれていたため、メッセージ性の強いシナリオになっており、この作品自体の持ち味の一つとなっていたように思う。

すっきりとしたテキストでありつつ、一つ一つのシーンはしっかりと時間をかけて描写なされているため、プレイしながらゆっくりと時間が流れていくように感じる事が多く、こうした部分があったからこそ、後半において物語が動き出した時にしっかりと読み手の心を動かすことができていたといえる。
一方で、シナリオ自体に抑揚が余りなく感じられてしまうため、人によっては飽きてしまう人もいるかもしれず、特に序盤から中盤にかけてはそうした面が強く出ていたように思えた。
ミドルプライスだからこそ、そうした面がメインとなる事はなかったが、扱っているテーマと合わせて、この辺りは好き嫌いが分かれそうなところである。


【推奨攻略順:選択肢なし】
選択肢のない1本道のシナリオ構成。


CG
柔らかい線に淡い塗の絵で、作品に合わせてか全体的に優しい雰囲気を感じる。
CGの量に関してはメインのシロバナの物が中心で、他にサブキャラクターの物がいくつかあり、ミドルプライスという事を考えると平均程度か少し少ない程度だろう。
Hシーンも彼女との物が中心となっており、合計7シーンが用意されている。


音楽
BGM17曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成
音楽鑑賞画面がないため、BGMに関しては曲数や各曲のタイトルが不明だが、全体的に落ち着いた雰囲気のものや、優しい旋律の物が多かった。
Vo曲として推したいのはOPの「Love's Oracle」だろう。
やさしい曲調ながらBメロからの流れがとても綺麗で、サビでもしっかりと盛り上がる良曲。歌詞も今作をしっかりと意識して作られているため、その部分もお勧めしておきたい。

※現在『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手 COMPLETE SOUNDTRACK』が発売されており、今作で使用された楽曲は全て収録されている。


お勧め度
世界観は特殊であるものの、田舎を舞台としたのんびりとした雰囲気や、絵とテキストからも柔らかさを感じることができ、全体的に安定感がある。
テーマとして扱われて扱われているものは比較的重めな事や雰囲気自体がゆっくりしているので、そうした部分が肌に合うかは体験版等をプレイすると良いだろう。
特にテキストを重視する方に向いている作品といえ、価格のハードルの低さも手伝ってそれ以外の人へも広くお勧めしやすい作品といえる。

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総合評価
柔らかい絵と重めのシナリオが織り成す独特の雰囲気の作品で、ミドルプライス作品としては十分に楽しめる作品の一つとして挙げられるため、平均より高めのこの評価としている。


【ぶっちゃけコーナー】
作品としては尻上がりに良くなっていく作品だった。
最初は設定こそあるものの、田舎を舞台としたゆったりとした萌えゲーなのかな、とおもっていたのだ(だからこそかもしれない)が、そうした雰囲気が後半から一転、しっかりとしたメッセージある作品へと変化してゆく様子は、個人的に驚きだった。

作品として学園物の要素もある今作、特に序盤から中盤にかけては主人公とシロバナ以外の登場人物も多く、ある意味でサブヒロインのような存在も何人か登場する。
ただ、上記まででも述べた通り、この序盤から中盤にかけてはこの作品の本質的な部分にあまり触れていない。
むしろ、終盤にかけての地盤の用意をしてくれた感じといえるのだろう。
事前情報としてシリーズ物であるという先入観が無かったため、せっかく主人公とシロバナ以外に大きく広がっていた世界観が、終盤にかけて結局二人だけの世界観に変わっていってしまい、折角の世界観を活かしきれていないように感じることもあったが、共通ルート+シロバナ√として考えるなら妥当な物語構成となっている。
こうした部分を鑑みてもシリーズ三部作の1作目ではあるものの、大作の一部分を切り取ったミドルプライス作品と受け止めるべきなのだろう。