タイトル : まいてつ Last Run!!
ブランド : Lose


シナリオ : EX!!    [-/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : EX!!    [-/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]
(総プレイ時間 : 18.5h)

キャラクター・シナリオ
シナリオ構成としては同会社制作の前作「まいてつ」(以下無印)にプラスして「まいてつ Last Run!!」として各アフターシナリオや新規シナリオが追加されている形となっていて、そのため今作からのプレイでも問題ない仕様となっている。

一部修正はあるものの既存のシナリオに大ききな修正はなく、今作でメインとなるのはメインヒロイン3人のアフターシナリオと一部サブヒロインのアフターシナリオ、それに大きく加筆修正されたグランド√、そして新規シナリオとして「ニイロク」「仲国」シナリオが追加されている。
それぞれに相応のシナリオが用意されているため、単純なプレイ時間は軽く1作品分を超えている事も評価の一つに加えられるだろう。

各シナリオ自体の評価に関しては下記で詳しく述べているものの少しだけ触れておきたい。
総じて粒ぞろいと言ってよく「鉄道」という大きなテーマの中でしっかりと差別化しつつ、それぞれメッセージ性のある内容にもなっていたのだが、中でも特筆すべきはやはりオリヴィという新しいキャラクターを加えたハチロクアフターシナリオだろう。
あえてメインヒロインではなくオリヴィというキャラクターを加えて表現したこと、もちろんそれ自体はプレイして確かめてほしいのだが、オレンジ色に染まってゆく世界の中で流れる「明日へと」の歌に感動して涙を流さない人はいないだろう。

特に心理描写を含めて各描写が丁寧になされていることが印象的で、だからこそ重要なポイントにおいてしっかりと感情移入することができた。
結果として多くのシナリオで涙をして感動することができ、プレイ後の読後感も非常に酔う作品に仕上がっていた。
この部分の効果としては特にグランド√についてが顕著で、そうした部分も踏まえつつ、前作で不満が出た所を綺麗につぶしており、さらに加えて今作の要素をしっかりと加えてくれているので、より総集編としての完成度が高くなっており、個人的にはより良くブラッシュアップで来ていたように思う。

今作のプレイを終えてシナリオについて言えることは、鉄道というものに対して確かな愛をもって作られた作品だと感じられたという事。
各ルートから多面的に見た「鉄道」というテーマ、それは驚くほどに多様で無限のように思える程で、ただの移動手段や輸送手段の一つとしてではない可能性を秘めているという事、それらを無知な人間に教えてくれる、人一人の価値観を変えることができる作品だったという事、線路が繋ぐのは駅だけではなく、「人」や「未来」といったものをこそ繋ぐものであるという事、そうしたしっかりとしたメッセージをプレイして受け取ったように思う。
そうした感慨を受けるのはこの「まいてつ」というコンテンツ、作品だからできた事であり、そうした作品を生み出せたという事自体が無二の価値であるといえるだろう。


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ハチロクアフター√【 ★★★★★  5h
無印ハチロク√から数年後、みかん鉄道から御一夜鉄道にやって来た新しい仲間・冥国製の汎用型レイルロオド・オリヴィのお話。
小さく健気な彼女だが、その年齢はハチロクよりも年上の100年選手ということで、稼働限界が近いオリヴィの為に、主人公たちは『レイルロオド』の寿命を伸ばす方法探し始めるシナリオとなっている。

序盤から中盤にかけて、諸問題を乗り越えて少しずつオリヴィがなじんでゆく様子を描いており、かなりゆったりとした雰囲気で展開してゆく。
そうしたしっかりと感情移入する土台ができているからこそ、後半からの展開はそうなると分かっていても、涙を止める事ができずにボロボロと泣いてしまった。
各シーンにおける描写もただひたすらに綺麗で丁寧、回想シーンなどを巧く組み込んでいる事もそうなのだが、なんと言っても挿入歌『明日へと』との相性が素晴らしい。
込められたメッセージ性も「まいてつ」というコンテンツにあるべき形を示してくれており、世界観に沿ったものとなって、こちらの心にも暖かな灯をともしてくれた。
今作を代表するシナリオと言ってよいだろう。


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日々姫アフター√【 ★★★★☆ 】  2.5h
本編の日々姫√アフターシナリオとして、市長兼デザイナーとして奮闘する日々姫と、それを支える主人公。
さらなる鉄道の発展の為に日々を重ね、立ちはだかる問題に立ち向かってゆく毎に大きく成長していく日々姫、そんな彼女とその姉である真闇の関係に迫ったシナリオとなっていた。

ボリューム自体はそこまで多くないのだが、展開のテンポが良かった。それでいてゆったりとした雰囲気を失う事無く、丁寧に描かれたストーリーは読んでいるだけで楽しい。
まるで軽快に進む蒸気機関に乗って、車窓から景色をゆったりと楽しむかのように物語を楽しむことができる。
物語として大きなヤマこそないものの、この√のテーマである「繋がり」というメッセージ、その温かさが真っすぐ伝わる内容になっていた。
こうした部分は、今作の「鉄道」というコンテンツにもとても合致しており、合わせて評価したい部分となっている。


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ポーレットアフター√【 ★★★★★  1.5h
ポーレットと主人公、少しおねえさんになったれいな、そして二人の愛娘ひかり、四人で向かったの鳴呼への列車旅を描く。

短いシナリオではあるものの、楽しい旅の中でもひかりを中心に一つ一つの出来事に一喜一憂し、反省して、そしてそれらの経験を糧に成長してゆく家族の様子が描かれている。
なかでも「伝えることの難しさ」、「伝えようと思うことの大切さ」、「触れ合う事の愛しさ」がひかりの成長を通して丁寧に描かれており、個人的に『家族物』、ことさら『子供』の話には弱く、思わず涙するシーンが何度もあった。
プレイ後には思わず、遥か未来まで続く線路を夢想してしまう程に、心温まるストーリーはアフター√として良きシナリオになっていた。


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凪、ふかみ・凪&ふかみアフター√【 ★★★★★  3.5h
本編の凪&ふかみ√のアフターシナリオとして、「修学旅行」の日々によってそれぞれに成長し絆を深めてゆく3人を描く。
三人穏やかな日々を過ごしていたが、三人でいつづける難しさに気が付く日がやって来たその時、3人がどういった選択をするのか…かけがえの無い親友同士、双方の想い人、幸福で完全だった三角形が再び結びつく事で描かれる新しい形。

シナリオ自体は前半において、共通部分となる修学旅行の日々が描かれて、後半において3√分の選択肢で分岐する形をとっている。
分岐部後は比較的短いので3つのシナリオを一気に評価してしまっているものの、それぞれの恋愛描写は素晴らしく、なかでもそれぞれのシナリオにおいて選ばれた者と選ばれなかった者の心情がしっかりと分かるような内容が個人的にも好みであった。
自身の大好きな親友のためを思う心と自身の恋心をあきらめる瞬間、そうした煌めくような一瞬を切り取り表現できているのはさすがという他ない。
ハーレム√に関しては救済的な立ち位置でもあるものの、投げやりな内容にはせずにしっかりと一つの「答え」を提示してくれている。
こうしたところもくわえて評価したいところであり、どの√も短さという問題はあるものの後半の描写力の高さから涙してしまうシーンもあり、高い評価となっている。


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ニイロク√【 ★★★★☆ 】  0.5h
帝鉄の解体、大廃線時代を舞台に描かれる赤井宮司とニイロクの過去。
本編ではどちらもサブキャラクターとして登場していた二人、とくにニイロクに関しては最新鋭のレイルロオドながら色々と問題を抱えていることが明かされていた。
そんな彼らの物語は正に”繋ぐ”為の物語と言って過言ではなく、激変してゆく環境とその中でも輝き続ける確かな希望を感じられました。
短いながらも本当に切ないシナリオに仕上がっていて、終盤のシナリオに「繋いでいく未来」のBGMが流れた瞬間に涙腺が崩壊しました。


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グランド√【 ★★★★★  3h
鉄道事故により生きる力を失ってしまった右田双鉄、自らを持たぬ生を重ねていた彼が御一夜で出会った、ハチロク、日々姫、ポーレット、れいな、真闇、稀咲、ふかみ、凪―少女たちと重ねる時間によって、ひとつひとつ、閉ざされていたこころを開放し、繋いだ絆によって御一夜を、九州を、そして全国を巻き込んで一つの未来へ向かって邁進してゆく様子を描く。

本編にもあったシナリオが大幅に加筆修正されて帰って来た形となっている。
今回は双鉄の過去についても大分触れられており、だからこそ心に響く内容となっているシーンも多い。
それぞれの個別√を回収する形ではあるものの出会ったヒロイン一人一人とのシーンも良く描かれていて、ヒロイン達はもちろんなのだが何よりも少しずつ変化してゆく双鉄の気持ちがよくわかるのも良かった点といえるだろう。
辿り着けなかった終着駅への道筋、未来へ続くレールを描いたシナリオとして、「まいてつ」という作品だからこそたどり着けた境地。
これこそ至極の鉄道シナリオといっても過言ではない、少なくとも多くに胸を誇ってよい、そうしたレベルにある傑作となっている。


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仲国√【 ★★★★☆ 】  2.5h
衰退の一途をたどる仲国国鉄に対して案を出すため、仲国に招聘された双鉄と日々姫とハチロク。
彼らを迎えたのは仲国国鉄東富4型2000専用レイルロオド『西瓜』だった。

物語としてはグランド√のアフターとして、広大な仲国を舞台に日本とは違う文化に触れ刺激を受ける3人が描かれている。
シナリオ自体にしっかりとした厚みがあり、読んでいて純粋に面白い。
テーマとしても一端の終わりを見せたグランド√の先にあるものということで、レールが終わる事無く続いていく事をしっかりと伝えてくれており、さらなる未来を、二つの国をつなぐレールを夢見させる双鉄の良さがはっきりとわかる内容となっていた。


【推奨攻略順:ハチロクアフター→日々姫アフター→ポーレットアフター→凪アフター→ふかみアフター→凪・ふかみアフター→ニイロク→グランド→仲国】
※無印版をプレイしている人向けの攻略項目となっています。
グランド√然り、最低限の攻略順に関してはロックが掛かっているので、無印のプレイ如何に関わらずその範囲内で自由にプレイしていくのが良いだろう。


CG
絵の質に関しては言わずもがな一級品。
とくに立ち絵からイベントCGまでe-moteを導入している部分に関しては無印と同様で、CG自体も追加部分のみに焦点を当てた場合にそのCG枚数という意味では多少不足感を感じるものの、無印版の物を含めて考えると、一作品としては破格の物量となっている事も言うまでもないだろう。
一方、Hシーンなどにも期待していた人も多く、そういった意味での追加シーンは”比較すると”少な目だったので失望感を感じた人もいるかもしれない。


音楽
BGM200曲以上、Vo曲33曲という異次元な構成。

もしもシナリオ以外にこの作品の最大のアピールポイントを上げろと言われたならこの部分を迷いなく推すことができる。
Vo曲は無印でも多かったが、今作において追加された楽曲だけとってもまた十二分に多い。
どれか一つを紹介してしまうのが惜しいほど粒ぞろいなのだが、やはり今作ではkkさんの歌う「明日へと」が思い出深く、涙しながらシナリオと合わせてぜひ聞いてほしい楽曲の一つである。
一方でVo曲同様BGMについても無印で十二分量が用意されていたが、今作でもVo曲のBGMアレンジを含めて大量に追加されており、その総量は破格の一言。
そのどれもが質の良い物なのだが、特筆して紹介しておきたいのは「繋いでいく未来 piano solo」だ。
新規追加されたニイロクのED曲としても使われているもののBGMアレンジなのだが、この主旋律がとても綺麗で切なく、赤井宮司とニイロクの気持ちがダイレクトに伝わってくる良曲である。
シナリオと合わさったときの破壊力は言うまでもないだろう。


お勧め度
「鉄道」というテーマのもとに作られた作品。
可愛く綺麗な絵で、幼い容姿のキャラクターが出てきたり、豊富な楽曲であったりと魅力は多くあるのだが、そうしたところに惹かれがちな今作において私が推しておきたいのはやはりシナリオ。
前作も勿論素晴らしかったのだが、その部分をさらにブラッシュアップして帰って来た今作のシナリオは正に珠玉と言っても差し支えないレベルに仕上がっていた。
なお作品自体は同会社制作の前作「まいてつ」の続編にあたる作品であるものの、その内容には無印分を含んでいるためこの作品からのプレイで問題ない。加えて、プレイ済みの人間にとってはその部分を飛ばしてプレイできるなど、比較的ストレスも少なくプレイできるのは利点の一つ。


総合評価
無印を含めずに評価したとしても評価を変える必要はないほど、音楽とシナリオが高レベルに纏まった作品となっており、「鉄道」というコンテンツに対しての情熱を感じる名作に仕上がっている。


【ぶっちゃけコーナー】
まず初めに今作の評価について、今作について色々な騒動があったものの、この評価に関してはそうしたものとは別に純粋に「泣けたかどうか」を重視しつつ評価している。
そのため、純粋にこれまでの部分も下記の部分に関しても、純粋に作品についてのみを語っているので、その部分をご了承願いたい。
※なお、それに関してサブヒロインに追加シナリオが加わる可能性が示唆されており、そうした部分があれば再度追記していきたいと思う(2020/12/02)

この作品を評価する時に様々な視点があるように思えるが、特にシナリオ部分を重視してみた時にその分量やシナリオの質に関しては文句なしに良い作品だったといえる。
また楽曲に関してもかなり追加曲が多く、既存曲も合わせてシナリオが合わさったときの破壊力は言わずもがな、かなりの破壊力があった。
特に今回で追加になったアフターシナリオはただのFDのようなアフターとして描かれることなく、線路をつなげるように、地続きの物語として描かれていた事が好印象だった。
無印から変わらずこの作品は単に鉄道の知識を羅列した作品でも、鉄道に纏わる話というだけでもない、そこに息づく人たちの笑顔や情熱、未来への希望、各ルートで状況が変わっているため、伝えるべきメッセ―ジはかわっているものの、その本質的なものこと「鉄道」の魅力、そこに息づく人の優しさや想いと言ったものは焦ることなく輝き続けていた。
それは例えばオリヴィの笑顔であったり、ひかりの勇気であったり、右田姉妹の想い合う心であったり、ニイロクや赤井宮司が託した気持ちなのかもしれない。
形を変え何度も何度もこちらの心へ語りかけてくるような、そうした物語は確かに人の心を変える力のある作品に仕上がっているように思えた。
裏にしっかりとした思いがあるからこそ、こちらはそれを本気で受け取ることができ、だから作中でキャラクターが心を動かされれば、こちらも心を動かすのだろう。楽しければ喜び、悲しければ落ち込む、キャラクターと共に一喜一憂する、それこそが正に感動と言うべき情動であり、そういう意味で今作は感動できる作品といえるのだ。
書くのは簡単だが、そうしたことができる内容を保ちつつ、テーマに沿って物語に落とし込むという作業は非常に難しい。
そうしたことを成し遂げる事が出来たのは、圧倒的な鉄道への知識と情熱と何より深い愛あってものだろう。
そうした魅力をこちらにまで感じさせる今作は、やはり歴史に残る名作の一つに加えても良いのではないだろうか。