タイトル : 月の彼方で逢いましょう SweetSummerRainbow
ブランド : tone work's


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★★ [5/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]
(総プレイ時間 : 6h)

キャラクター・シナリオ
前作『月の彼方で逢いましょう』(以降、本編や前作と表記)のFDでありスピンオフ作品となる今作。
ヒロインとなるのは『佐倉 雨音』であり、本作では本編のスクール編とアフター編、それぞれのアフターを描いた作品となっている。

スクール編のアフター(SSRスクール編)ではサマースクールに参加し雨音の故郷であるサンフランシスコで過ごす二人の恋人同士の二人を、アフター編のアフター(SSRアフター編)では6年後、新しい家族として二人の娘である「つきこ」が5歳になった頃を描く。

それぞれの内容に関しては下記の個別感想を参照してもらうとして『月虹の先にある、幸せの物語』と銘打たれた今作のシナリオの全体的な部分について触れたい。
前作の雨音√はこの『月の彼方で逢いましょう』という作品の根幹にかかわるSF的要素を含むシナリオであり、そしてその多くの部分に関しては既に語りつくされているのだが、そうした前提があっての今作となる。
もちろん今作においてもSF的な系譜はしっかりと引き継がれているものの、メインとなっているのは『家族』というテーマであった。

SSRスクール編において語られた本編で触れられることのなかった雨音と両親との断片的な記憶、この部分だけを見れば、不足要素を付け加えるだけの普遍的なアフター作品として受け入れられる範疇だったがこちらの予想を大きく超えてきてくれたのがSSRアフター編である。
今ある溢れんばかりの幸せを考えると『過去改変』という禁忌を犯すこともできず、そもそもその奇跡すら終わっている現状で、登場人物である雨音や主人公はもちろん、この作品を楽しんでいる多くの人にとっても心残りとなっているあの展開についてが触れられている。
主人公の創作活動を通して物語をもう一度動くこととなる物語、変わるはずのなかった過去が変わることがあるのか、SSRスクール編をも巻き込んだその展開は、前作にも負けない感動を引き起こしてくれた。

特に今作では主人公や雨音という閉じた世界系の問題にすることなく、家族という大きい括りをさらに超え、周囲を巻き込んだ展開にしており、そうしたおかげもあり登場人物の一人ひとりが確かな繋がりをもって、一つの物語の執着に向けて動く一体感のようなものを感じる事が出来きていた。
そうした雰囲気こそがプレイヤー自身の感情移入にも作用していたといえ、この作品の評価を一段も二段も引き上げていたことは想像に難くない。

前作でも、もちろん『家族』という要素は十二分に含んだシナリオであったが、それに今作のシナリオを加える事で、より指向性のある内容となっており、両編を合わせることで真に一篇の物語となって『家族』というものの素晴らしさを再確認させてくれる、そう感じさせるほどの名作だった。

シナリオ自体は非常に短いのだが、多くが語られた後に付け加えている物語を考え、またFD作品であるという事を鑑みると、他に類を見ないほどよくできた内容であったといえる。


gallery_cg_2
SSRスクール編√【 ★★★★☆ 】  3h
本編のスクール編の後、3年生になってからの主人公と雨音を描いており、夏休みに開催されるサマースクールに参加することとなった主人公たちは雨音の故郷でもあるサンフランシスコで1か月過ごすこととなる。

基本的には一般的なアフター編作品と同様に甘い恋人同士の日々を描いている部分が強いが、同時にサマースクールの活動として映画のトレーラー制作を行う中で、再び振り返る事となる雨音の両親についても描かれている。
雨音の口から語られる過去と、その思い出に対して複雑な思いを抱く彼女、そうした様々な不安と制作活動を絡めたシナリオは、前作より更にもう一歩、雨音やその両親についてを知ることができる内容となっており、アフター編の繋がりも綺麗に描いた良いシナリオだったといえる。


gallery_cg_8
SSR アフター√【 ★★★★★  3h
本編のアフター編より6年後の1年間を描く。
エンデュミオンによってもたらされた奇跡が終わり、主人公と雨音の娘である"つきこ"を加えた3人家族の日常。
まさしく月虹による祝福を感じるような幸せな日々の中で、それでも雨音が両親への小さな後悔を抱えていることを感じる主人公。
そんな彼に6年前に執筆したあの不思議な物語の続編を手掛ける転機が訪れる。

アフター編のさらに後のシナリオということで、恋人同士の甘い日々というよりは幸せな家族のやり取りがフォーカスされており、特に娘であるつきこを中心とした生活は慌ただしさの中にそれでも溢れんばかりの幸福を感じる。
これこそが雨音の求めていた『家族の団欒』ではあるのだが、だからこそ本編や今作のSSRスクール編における一連の物語が小さなシコリとして残っていた。
そうした読者の気持ちを掬い取るようにした展開は正に秀逸の一言であり、特に主人公の手掛ける物語と主人公地震が歩む人生がリンクしていくような表現はならではといえる。
特に終盤に関しては家族の感動ストーリーという安直な表現しか見つからない自分自身を責めたいほどで、今作を合わせて真のエンディングと表現するのにふさわしい内容といえる。


【推奨攻略順:SSR(スクール)→SSR(アフター)】
選択肢はあるものの物語への影響はなく、選べるシナリオは前作のダイジェスト(スクール/アフター)と今作分(スクール編/アフター編)の合計4編となっている。
既プレイ組の人ならダイジェストをプレイしなくても良いだろう。


CG
本編同様にしっかりとした線に濃い塗りの立体感を感じる絵。
FD作品という事もあって枚数自体は、シナリオの分量に合わせてどうしても少なめになっているが、各CGの差分などは多く、質も良い。
またSD絵も数枚存在している。


音楽
追加BGM0曲(?)、Vo曲3曲(OP/ED/挿入歌)という構成。
BGMに関しては基本本編のものが使いまわされており、追加といえるものは見当たらなかった一方でVo曲はFDとは思えないほどの量が追加されている。
特に雨音のイメージソングについては、前作で曲自体は搭乗していたものの、今作では声優であるくすはらゆいさんが歌ったものが追加されており、それを合わせると4曲に。
もちろん、どれも良曲と言って良い物なのだが、その中でも特にOPの「Rainbow Days」はAメロとBメロの流れにとても躍動感がありお勧めしたい。


お勧め度
前作プレイ済みで雨音√が好きだった人は勿論、問答無用で推奨したいほどFDとしては抜きんでた内容であり、前作と今作を合わせて初めて一つの作品といっても過言ではないだろう。
また今作では前作である本編『月の彼方で逢いましょう』をプレイしていない人様に、本編のスクール編アフター編をダイジェストで見られる√も存在している。
内容として抑えるべきところがしっかりと収録されているため、ここをプレイしていれば本作をプレイするのに困らないだろう。
しかしながら他の√も素晴らしい事を含め、真に物語を楽しみたいという人はやはり前作をプレイしてからを推奨しておきたい。


総合評価
FDとしては文句をつけるところがほとんどないほど優秀な作品であり、自身をもってこの評価をつけることができる。


【ぶっちゃけコーナー】
正直、全部終わった話とおもってたくらい雨音の√って話を広げる余地がない部類だと思ってた。
むしろこのキャラやるくらいなら灯華やうぐいすの方がよっぽどかけることは多い、と個人的には思ってた。
それだけにこのヒロインでアフターを作るとは…って感じだったんだけど、本当にいい意味でド肝を抜く内容でしたね。
本編がうぐいす√の印象が強くて、タイトル回収こそあったものの雨音√の印象はやっぱり薄かった。それにあの展開については、やっぱり少しだけ心残りだったからね、それをスッキリ解消させてくれるのは素直にうれしい。
今作で掲げた『家族』というテーマ、SSRの3人家族を意識した作品なのかな、と勝手に考えていたんだけど、最後までやるとこのテーマがどれほど大きな意味をもって掲げられていたのかがわかるのも本当に良い。

そういえばサブキャラについて、先に挙げた灯華とうぐいすはやっぱり出なかったね。
いや、彼女たち出すと色々とややこしいから仕方がないけれど、それ以外の面々が全員出ていたのが本当によかったし、彼女たちを巻き込んでしっかりと展開してくれていたのも本当に嬉しい部分。
雨音√ってどうしても彼女の家族だけの話になって、どちらかというと閉じた世界系のはなしだったから、ここまで話を大きく広げてくれると、全体的な印象も変えてくれていた。
今作を合わせて、本編の評価も大きく上げていいんではないだろうか、それくらいの力を秘めた内容だったように思いました。