タイトル : アマカノ2
ブランド : あざらしそふと


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★★ [5/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]
(総プレイ時間 : 12h)

キャラクター・シナリオ
「アマカノ」「アマカノ ~SecondSeason~」「アマカノ+」「アマカノ ~SecondSeason~+」に続くアマカノシリーズの5作目となる今作。
舞台となるのは前シリーズをプレイしている人にとってはおなじみ、金沢をモチーフとした『白鷺市』で秋から冬にかけてを描いた王道の恋愛学園物となっている。

まず初めに前シリーズとのつながりに関して触れておきたい。
今作の舞台となる『白鷺市』や『黒瀬温泉』などの地名に関しては前シリーズでも登場した場所であり、また各ヒロイン√においては過去作のヒロインが登場するシーンがあったりすることなどから、世界観を共通としていることが分かるが、シナリオ的な繋がり自体は無く「アマカノ2」単体として楽しめる作品に仕上がっている。

シナリオの構成は今までのシリーズと同様で、共通部分においてはMAP選択によって各ヒロインとのショートイベントが発生し、毎度おなじみのヒロインの好感度を表した「アマカノグラフ」も同時に変化する仕組みになっていて、そしてその選択(数値)によって各個別ヒロイン√へ分岐する形となっている。

この作品のみに関わらずだが、アマカノシリーズにおいて徹底して描かれていたのは、王道の恋愛学園物――つまるところ「人と人が出会い恋に落ちるという」特殊な物語の起伏のない普遍的なものである。
しかし、ただそれだけの物語に古から多くの人が心惹かれていた、その理由の一端がこの作品にあるのではないだろうか。


共通部分においては、主人公とヒロインが恋に落ちる過程をメインに描いており、学園イベントなどを通して「同じ時間を過ごして親しくなる」「秘密を共有してさらに仲良くなる」「互いを意識して告白にいたる」という恋愛物における基本とも言える実直なストーリーがそこにあるのだが、そのステップの一つ一つが「アマカノ」らしくキャラクターの魅力と共に丁寧に描かれている。
特に互いが恋に落ちてゆく描写ではヒロイン視点も多く取り入れられており、お互いがどんな想いをもって惹かれ合っていくかという心の動きをしっかりと感じることができる。
だからこそ、今作における前半の山場といえる告白シーンではこちらも感情移入し、思わず泣けてしまうのだろう。
また今作も告白シーンでは挿入歌を使用した特殊な演出が行われており、特に使用された楽曲はどの√においても印象的であるが、中でも玲√に関しては格別のものといえるだろう。
詳細はプレイして確認してほしいが、直接シナリオと関連した部分ではないものの、作品を構成する大切な部分の一つとして、高く評価しておきたい。


各個別√では学園が冬休みに入っていることもあり、主人公とヒロインの二人だけの世界に入ってしまうシーンが多くなっている。
ある種の蜜月ともいえる暖かさが全体に溢れたシーンの連続、そうした中で見事なのは、同じ「恋人」という関係の中でも形がかわっていく様子をしっかりと描いていたことで、「新しい所を発見して、さらに好きになっていく」という過程を主人公と同じように重ねていける部分はこの作品ならではだろう。
深く触れるからこそ、露わになってゆくヒロイン達の想いや問題に対面し、それをお互いの協力で乗り越えていく、扱っているテーマは各ヒロインでもちろん違うが、やはりここでも描かれる大まかな流れは普遍的なものであったといえる。
それでも確かに、ここには熱く焦がれるだけの想いではなく、想うだけで心が温まるような関係が表現されており、だからこそラストシーンではどのヒロインにおいても驚くほど爆発力のあるシーンを演出で来ていたと考えている。
特にそれが顕著だった結灯√に関しては、個人的にもお勧めしておきたいポイントとして挙げておく。


最後にもう一つこの作品の魅力としてあげたい部分として、季節を活かしたシナリオ演出がある。
主に共通部分では季節を秋としており、綺麗な緋色に染まる白鷺市の風景は雅で、見ているだけでも楽しくなるのだが上記でも述べたように、この部分では登場人物たちの恋の様子が描かれており、気持ちや関係が鮮やかに変化してゆく。
加えて告白シーンを含めた重要なイベントは夕暮れ時に描かれていることが多かった。
勿論学園物なので、イベントの多くが放課後である事を考えると当然ではあるのだが、気持ちの変化と秋の紅葉、そして夕暮れのリンクはシナリオ的にも視覚的にも関係的にも全体的に『緋』のイメージで統一されているように感じた。
そして各個別√では季節がうつろい冬の季節となる。
所々に紅葉を残しながらも雪化粧をする白鷺市と共に、恋人たちの関係は恋から愛へと変わってゆく。
気温の下がる季節だからこそ、肌と肌を寄せ合う事でより感じられる互いの体温とその存在の大切さ、濃密に描かれた恋人との蜜月は冬の寒いイメージを塗り替える程で、やがて来る春へと思いを馳せながら過ごす日々は心温めてくれる。
こうした描写もあって、シナリオ的にも大詰めとなる部分である終盤のシーンではより深くお互いの心へと踏み込んでゆくこととなる。
語りつくすことのできない魅力が詰まったシナリオ構成であるが、こうした文章の綺麗さを存分に味わえるのも今作の魅力だろう。


共通√【 ★★★☆☆ 】  3h
各ヒロインとの出会いや一部イベント等、秋口から城白祭あたりまでを描いており、城白祭を節目として個別分岐する形となっている。
特に選択肢によっては「告白される展開」と「告白する展開」が用意されているところも、前シリーズと同様となっており、それぞれ主人公とヒロインの感情が揺れ動くシーンの描写は見どころの一つといってよいだろう。

共通部分における主な描写として、ちとせとの従来の日常や、押しかけて来た玲によって変わる新鮮な生活、そして隣の席にやってきた結灯とのシーンなど、それぞれのイベントシーンが用意されており、そこに加えて先に挙げた「城白祭」などを主軸とした学園物としてのシーンが描かれている。
しかしながら、そういった部分は共通としてのウェイトはあまりなく、今までの作品同様にMAP選択による個別ヒロインシナリオ部分のボリュームが大きくなっている。
その為、共通ルートにおいてはどうしても各ヒロインシナリオ部分が印象的になりがちなのだが、それでも特筆してあげておきたいのは玲との描写についてだろう。
同じ部屋で暮らす主人公と過ごし、彼の想いの温かさに触れてゆくことで、その関係を『家族』へと変えてゆく様子が描かれる。なかでも主人公を家族として認めるシーンの空気感の名状しがたい良さがあり、個人的な最大の魅力といえる。
※個人的には玲の個別√に含めても良いのではと考えていたのだが、部分的には共通ルートなのでこの部分で評価した。


20200505180623
黒姫 結灯√【 ★★★★★  3h
恋をしない女の子。

新幹線で偶然隣の席になった少女だったが、偶然が重なり、翌日に隣の席へやってきた転校生として再開することになった
よく笑う人当たりが良い優等生で、人の役に立とうと行動することが多いが、一方で主人公にとっては違和感を感じる行動も多く謎の多い部分も。

最初から好感度が非常に高い結灯だが、彼女は非常に多くの謎を抱えている。
それゆえに彼女のシナリオに関して、深く触れれば触れる程ネタバレに抵触する可能性があることを先に述べておかなければいけない。
※以下ではできるだけその部分に触れないようにしているが、プレイ予定の人は読み飛ばしても良いだろう。

共通部分からして他のヒロインとも一線を隔す結灯との物語。
幾重にも重なった偶然によって露わになってゆく彼女自身について、深く触れれば触れる程、主人公と同じように彼女についての興味が増してくる、そうしたシナリオは秀逸という他ないだろう。
主人公視点と結灯視点の両方から歩み寄るように、その「偶然」を愛によって「必然」に昇華させてゆく過程はアマカノシリーズだからこその表現といってよいだろう。
特に結灯視点の物語に関しては、彼女の気持ちを考えるととても胸が締め付けられるようなシーンも多く、思わず涙を流すことも1度ではなかった。
端的に言えば恋に落ちる過程を描いた部分ではあるのだが、今作においては最も起伏のある所と言っても良く、同時に今作…いや、このアマカノシリーズ中で最もこの作品を楽しめる所と言える。

個別シナリオに入ってからはもちろん甘いシーンで構成。
それまでの経緯もあって一挙手一投足が可愛く仕上がっており、特に彼女に関しては様々な”面”を見せてくれる部分に関しては、ほかのヒロインよりも嬉しさにおいて勝っている状況もあり、そうした部分は特に印象的だった。
また終盤では、結灯の抱えた最後の”ある問題”を主軸に「自分と他者を尊重する」という恋愛という枠を超えたテーマをシナリオに加えている。
多くの悩みを抱えている彼女だからこそ、終盤のあのシーンでの感動はすさまじい。
出会ったときに「宝物を探しに来た」と零した結灯に対する回収と合わせて、ある種のメッセージ性の強い内容にもなっていた。


20200505180726
蔦町 ちとせ√【 ★★★★☆ 】  3h
恋を知らない女の子。

隣の家に住む一つ年上の幼馴染。
主人公にとっては姉のような存在であり、ちとせ自身も主人公の事を弟のようにかわいがっている。
容姿端麗で成績も優秀、温厚で誰にでも優しく、家庭的な事も手伝って学園では絶大な人気を誇るが、主人公との距離が近すぎるため浮いた話は今まで一切なかった。
放課後は家庭科部の部長として活動している他、実家が喫茶店『緋衣亭』を営んでいるため、看板娘として手伝いをしていることも多い。

スキンスップなど、まるで付き合っているかのような姉弟として接していた二人。
個別シナリオではそんな二人が小さな切っ掛けを重ね、それまでの「家族」という枠組みではなくお互いを「異性」として意識し合うまでを描いている。
傍にいるのが当たり前だった、その何気ない大切さに気付きそして失いたくないと願う、ちとせ視点を通して描かれるそうした彼女の想いは繊細に表現されていた。
また付き合ってからの新しい関係にドキドキしながら照れるちとせなども魅力の一つで、恋愛初心者らしい初々しさのあるやり取りなど、恋人同士になったからこそ見られる新しい表情をいくつも見せてくれていた。
物語の後半は卒業するちとせの立ち位置からか「これから」という未来をテーマとした内容となっている。中でも彼女が抱える複雑な心中と合わせて描かれた主人公の行動は今作でも屈指のイケメンシーンとなっており、見所の一つといえるだろう。


20200505180953
氷見山 玲√【 ★★★★☆ 】  3h
恋に興味がない女の子。

クールな性格で主人公の従妹。
前は実家から学園に通っていたが、思いのほか距離が遠かったため、親戚である主人公の家にやってきた。
合理的なことを好み、色々なことにも興味を持ってマイペースに行動しているため、普段は一人でいる事が多い。
また趣味でピアノを嗜んでいる。

物語の前半は、マイペースで合理主義な玲の性質が前面に出た部分になっているが、そんなクールな彼女が笑うと、一転可愛らしさあふれる表情になるのも見所。
更に『恋愛』に対して興味のなかった玲が初めて抱く主人公への不合理な『感情』に戸惑う所が扱われており、その想いに触れるように一つ一つを確認し、愛情を深めてゆく様子を玲視点などを活かして丁寧な心理描写をもとに描かれていた。
特にその集大成ともいえる告白シーンはサプライズ演出も合わせて、このシナリオの最大の見どころともいえるだろう。
物語の後半はとにかく甘いシーンの連続となっていて、落ち着いた玲の言葉の一つ一つから気持ちが伝わるその描写はもちろんのこと、普段の彼女からは想像できないほどに甘えてくるシーンなど、玲の可愛さを武器としたシーンの数々は、恋人とやりたいことが全て詰め込んでいるといっても良いだろう。
シナリオテーマとして「合理性」と「浪漫」を恋愛と絡めた表現も美しく、全体的な完成度も高いものとなっていた。


[ 主人公 ]和倉 賢一(名前は自由に設定可能)
ながれ茶屋街に住む心優しい青年。
隣の家にすむ『蔦町 ちひろ』には弟同然に可愛がられており、それゆえに学園ではある意味有名で、そんな彼女の家族が営む『緋衣亭』や他の旅館でもアルバイトをしている。
他人と距離を取るのが上手く、世話焼きな性格もあって誰とでも仲良くなれる。
また自身の言葉を素直に口にする所があり、自然と歯の浮くようなセリフを口走ってしまうことも。


【推奨攻略順:玲→ちとせ→結灯】
攻略順に指定はないものの、EDでのネタバレを防ぐという意味では玲を最初にプレイしてほしい所。
個人的なお勧めとしては、ちとせと玲は「想いを伝えられる」シナリオを結灯は「想いを伝える」シナリオを楽しんでほしい。
(勿論どちらをプレイしても十分に楽しめます)

CG
しっかりと下塗りに、どこか艶やかさすら感じるCG。
ヒロインが3人という事で枚数自体は少なめになっているものの、今までのアマカノシリーズの雰囲気を踏襲しつつ、さらにレベルアップしたピロ水さんの美麗すぎるCGは、誰しもが満点をつける以外にないだろう。
SD絵も豊富に存在している他、もちろん立ち絵には前シリーズ同様に目パチ・口パク機能も付いている。


音楽
BGM22曲(inst等を含む)、Vo曲5曲(OP1/その他4曲)
Vo曲のinstなども多く純粋なBGMとしては数が若干少なめだが、全体的に落ち着いた温かみを感じる楽曲は作風とも非常にマッチしている。

Vo曲に関しては、アマカノシリーズでは常に良い楽曲を世に送りだしていたが、今作はその中でもさらに名曲揃いといってよいだろう。
特に挿入歌として扱われる「coincidence」やアイベヤで使用された「5センチ」のDucaVerなど、ある種のバラエティにも富んだ内容は、単体として聞いても十二分に楽しめるが、本作の内容と合わせた時の破壊力は筆舌に尽くしがたい。
追記として、多大なネタバレを含んでしまうため多くを語れないのだが、とある√で流れる楽曲を採用してくれたことに最大の賛辞を贈りたい。
本当に、ありがとうございます。


お勧め度
シリーズ作品ではあるものの、単体として完成している作品であるため、今作からのプレイでもさしたる問題はない。しかしながら、もちろん前シリーズをプレイしている人にとって楽しめるところもあるため、シリーズ作品のプレイは推奨もしておきたい。
作品としては恋愛学園物であるため、万人にとって受け入れやすい作品ではあるが、特に物語としての大きな山場があるわけではなく、ただ実直に恋愛の様子を描いた作品にもなっているため、合わない人にとっては退屈な作品にもなりえる。
ただ、今までの「アマカノ」をプレイしてきた人にとっては、あの雰囲気をしっかりと踏襲したうえでさらにレベルの上がった作品に仕上がっている、と自信を持ってお勧めできる作品であり、未プレイの人にとっても、魅力的なヒロインや綺麗なテキスト、丁寧な心理描写や綺麗なCGなどアピールポイントが多い作品なので、そうしたところに惹かれた人も含め、多くの人にお勧めしたい作品となっている。


総合評価
テキストだけに限らず、CGや音楽などの魅力の多い作品であり、個人的評価としてはアマカノシリーズ作品の中で最高の出来だと考えており、この評価としている。


【ぶっちゃけコーナー】
いやぁ…いい作品でしたね、と素直にそう思えるくらいいい作品でした。
特に各個別シナリオに関しては今までのアマカノシリーズの雰囲気がしっかりと残っているうえで、さらにその内容を一段も二段も深めていっているのに驚いた。
もちろん、そこにあるのは現実的な恋愛もので、不思議な力とかそういうのが一切出てこない話。
だからこそ展開にも限界があるんだけど、それでもこのヒロイン3人のシナリオで魅せてくれたという事に驚きを隠せない。
色々と言い部分は語ったけど、悪い部分が個人的には思い当たらなくて、だからいい所を加えておくと、空気感みたいなものの使い方がすごく上手になっていた。
これはもちろん、そのシーンに至るまでのテキストも重要なんだけど、BGMとかCGとかそういう演出部分の力も強いんだろうなぁ。
こういうことをできる作品は最近減ってきたので個人的に嬉しい所。
後やっぱり素直に、各ルートで泣けたってのが評価が高い理由の一つかも。
告白シーンとかで泣けるのは本当にこのシリーズ作品くらいだし。

告白シーンと言えば挿入歌の質が今回は異常でしたね…。
とくに玲であの楽曲を使うのは本当にズルイって言いたくなるレベル、いや大好きなんですけどね、ありがとうございます(何
個人的に挿入歌としては結灯のラストあたりで流れるものも好きで、やっぱりあのあたりのシーンも泣いてしまった…。

振り返ってみると、ちとせ√に触れていない印象も強いけど、彼女の√でもラスト付近の主人公とかすごくカッコいいのでお勧め。
というか、今回の主人公は全体的にカッコよくて好きでした。
やっぱり主人公が好きになれるかどうかって重要ですからね…。

さらに加えておくなら、遊びがあるのもこの作品の良い所。
特に「アマカノグラフ」に関しては今作もなかなか面白い動きをするので、個人的にはその部分も注目してほしいかな。
最初に出てきたときはそこまでだったんだけど、ここまで作りこむ…とは違うけど、作品に組み込むと、それはそれで違う面白さが出てくる部分があって新鮮でしたね。