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タイトル : 流星ワールドアクター
ブランド : Heliodor


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]

キャラクター・シナリオ
舞台となるのは多くの人種が入り乱れる第七共和国、その多様性が日夜複雑な事件を発生させいる。
そんな国で働くダメ刑事の主人公・ルカ、そして新米刑事として配属されてきたやる気たっぷり(?)エルフ族のクラリス、そんな異色の二人が数々の事件に対面し解決に向けて奔走する物語。

設定こそ特殊だがすっきりとしたテキストは読みやすく、何よりもグイグイと世界観に引き込まれてゆくような展開の連続は流石という他ない。
特に気だるげな主人公や登場するヒロイン達の魅力も合わせ、今作の世界観に関しては非常によく作られており、こうした部分がシナリオに寄与した部分は非常に大きかった。
発生する事件と示される伏線の数々に翻弄されつつも、サクサクと進む物語。そうした一連の流れや内容は非常に洗練されている。

一方、物語の後半―特に個別√や共通√の後半においては、一部事件が未解決のままで終わる打ち切りENDのような尻切れトンボのような展開が目立つ。
前半の数々の伏線が魅力に溢れ、そうしたものを活かした後半が期待させるようなシナリオになっているだけに、後半の投げっぱなしの設定は一気に評価を落とした。
そこにはある種、続編ありきのようなシナリオの作り方にもなっており、評価を二分させる原因にもなっていると考えられる。
加えて階段分岐シナリオの御多聞に漏れず、今作において√間の誤差もひどい。特に今作では登場する多くの伏線において未解決のまま終了していることも手伝って、そうした点が非常に感じられやすくなっている。

この作品の最大の魅力ともいえるのが発生する数々の事件に対し、なんだかんだ言いながらも挑んでゆくルカの存在である。
今作の主人公は基本的に人間の屑のような設定で作られており、そのため多くの人間から蔑まれて日々を生きている。そうした人間がここぞというときに、頭脳と力の両面で活躍することで読む人へのカタルシスになっているように思える。

それらシーンを構成するうえで欠かせなかったのが頭脳面の描写だろう。
ここに関しては各シナリオにおいて回収されなかった伏線があるなどの問題点を覗けば十二分に描き切っていたと言え、だからこそある一定の評価が得られている。
戦闘シーンにおいては、今作においてメインではないためかシーン自体の数は少ないものの、活躍するシーンはしっかりと描けており、描写自体も白けさせるほどでなかった。

ただ、今作においてルカの描写が非常に拙かったのが恋愛方面について。
この辺りに関しては各個別に入ってからになるが、そのどれもが急展開ともいえる強引なものであった、その中にルカ自身の意志があまり反映されているように感じられず(少なくとも自然ではなく)違和感を抱いた人も多いはず。
この作品の評価に関わる部分として、ルカにどこまで感情移入できたか(少なくとも、心を寄り添わせることができたか)と言う部分が占めるウェイトはデカい。
ともすればオマケのように感じてしまうヒロインとのシーン、キャラクターの魅力をしっかりと描くという意味で、共通√における事件の描写だけではなく、そのあたりにもう少し注力して描かれていれば、もう少し違う作品になっていたのかもしれない。


共通√【 ★★★☆☆ 】  8h
実力はあるはずなのに過去の出来事が原因なのか、何かとサボろうとする主人公のルカ、そして真面目なようで定時になるとすぐ帰る、口煩い新人刑事のクラリス。
いくつかの謎を孕んだまま、凸凹コンビともいえる二人が様々な事件に巻き込まれてゆく様子が描かれている。

近未来のSF世界のようでありながら、荒廃的で退廃的な雰囲気も少し孕んだ独特の世界観を舞台としたシナリオは引き込む力も十分。
特に共通ルート序盤から中盤にかけての描写力は読む手が止まらなくなるほどで流石という他ない。

物語の構造事態は階段分岐シナリオとなっており、一つの事件が片付くと次の事件の話へと移っていき、クラリス√に向けて各キャラヒロイン√が途中で枝分かれするような形になっている。
そのため共通部分が一番比重の重く、そういった造りになっていることから、各話で挿入される伏線のようなワンシーンが積み重なってゆくことになる。
そうした伏線自体が多く存在しているものの、回収されるものとされないものも多く、あったところがこの部分の弱点の一つである。

またこれは性質的なものではあるが、描写としては事件を追うシーンが多く、アクションシーン等の派手なシーンは少なめなのも特徴的といえる。


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クラリス√【 ★★★☆☆ 】  2h
本名、クラリス・ツァインブルグ。
十三課に新しく配属された新米刑事、係長の采配もあってルカ付きの部下となったが、そのやる気のない姿に軽い絶望を覚えている。
やる気自体はあるが、定時を超える仕事はしたがらず、しかしながらお金にはがめついため、特別手当が出るとやる気を出す。
種族的な特徴として風の魔法を扱う事が出来、機動力と防衛力は高め、一方で純粋なエルフ族ではあるものの生まれは第七共和国であり、世間知らずな事も多い。

個別√では、とある事件を切っ掛けにルカの過去に迫る様な内容になっており、√の存在的にも今作のグランドルートに近い内容になっている。
恋愛描写に関しても今作では最も注力して描かれており、初対面の最悪の印象から恋人となるまでのシーンは割と物語と絡めてしっかりと描かれている。
ただ、多くの張り巡らされた伏線や着手した謎が途中で終わってしまっていることもあり、読後感事態があまり良くないのは確か。


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メル√【 ★★★☆☆ 】  2h
暗殺者から逃げている所をルカとクラリス保護された少女。
実は別の国の王女であり、祖国で発生したクーデーターから亡命してきた人物であり、信念が強く、そのクーデターで父を始め家族の多くが殺されているものの、悲観せずに今できることを頑張っている。
保護者として常に、近衛兵であったハールソンが付き従っている。

個別√の始まり自体は食堂で発生した少額の窃盗事件など、割と設定とは無関係なところから始まるが、中盤から後半にかけてはメルとその祖国の話が中心になっており、戦闘シーンなども比較的多めになっている。
いくつかの伏線が回収されるのは勿論なのだが、同時に多くの伏線が張られた√にもなっている。
しかし、この√において解決されることはなく、基本的にサクッと終られる印象が強い。
恋愛描写において、素直にルカを慕う姿は可愛いものの、他キャラ同様割と急激なイメージがあり、特にルカに関してはあまり心が読めない行動をしているように思える。


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シフォン√【 ★★★☆☆ 】  2h
本名シフォン・マクドゥーガル。
主人公の隣の部屋に引っ越してきたセグイットの少女で、例に漏れず驚異的な身体能力を持ち、武具―特に刀を扱う能力に優れている。
基本的に真面目ではあるものの、純真であるがゆえに考えなしに行動することも多く、また常に金欠気味。
今回はとある事件の容疑者にあがるのだが――。

個別√に入ってからは、とある切っ掛けで主人公の部屋に世話になることになったシフォン、彼女の種族としての特徴である寝相の悪さを解決するため、主人公は様々な策を講じることになる。
主人公の性質もあるが、二人の関係の進展方法はどうしても強引な展開となっている。
そのため両者の好意が見えにくくなっており、Hシーンこそ多いものの、恋人同士としての描写が少なくなっているのは残念な所。
また、彼女の話ではとある一つの事件が同時進行として裏で描かれており、後半の展開に深く絡んでくるのだが、比較的伏線等を投げっぱなしにした内容となっている。


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四ノ宮 小町√【 ★★★☆☆ 】  2h
四課に所属する婦警。
常に好条件のイケメンを探しており、合コンに命を懸けているようなギャルなのだが、仕事自体は正義感をもってやっている。
また皆が避ける十三課の人間―ルカとも差別することなく付き合ってくれる。
ルカの後輩ではあるものの、そう感じさせないほどライトな付き合いができる所も魅力。

個別√では小町の友人がとある事件の被害に遭ったことから、主人公共々巻き込まれてゆくことになる。
相対する謎を解き明かす事に新たに深まってゆく謎と背後に潜む大きな存在、サスペンス要素たっぷりの展開は見ている側を飽きさせない。ただ、終盤の展開には賛否がありそうであったのも確か。
恋愛描写に関してはやや粗雑で急な印象を受けるものの、同じ時間を過ごすことで徐々に信頼が深まってゆく部分も描かれており、特に後半の小町に関しては序盤とのギャップもある非常にかわいい反応を見せてくれるのが魅力だろう。


エピローグ【 S 】  数分
全ルート攻略後に選択可能。
内容としては自作の繋ぎのようなものとなっており、中身自体はあまりない
ただ雰囲気自体は悪くなく、良くも悪くもこの作品を象徴した内容。


[ 主人公 ]日流 ルカ
仕事に対しては情熱がなく不真面目、またことあるごとにサボろうとする怠け者であり、問題児が多く集まる十三課においても、さらに問題児であるアウトロー。
一方で、豊富な知性や冷静な判断を行うことができる一面もあり、そういった点を評価する人がいるのもまた事実であるものの、人間のクズに近いのも確か。
キーパーではあるものの特殊な理由があり、あまり明かしていない。


【推奨攻略順 : シフォン→小町→メル→クラリス→エピローグ 】
クラリスは他の3ヒロインを攻略後にのみプレイ可能。
階段分岐シナリオであるため、基本的には上記の順番での攻略が良い。


CG
細い線にパステルのような塗り。
彩りをあまり感じさせない絵である一方、その一枚一枚に非常に勢いを感じる絵で、その独特の描写力に関しては単体で売り物になるといってもよいほど。
枚数や質も非常に安定しており、この作品の世界観を支えた重要なキーであるといえる。
UIに関しても非常にこだわっており、もっさりとした動作による使いにくさはともかくとしておしゃれであり、こだわりを感じる。


音楽
BGM57曲(inst等を含む)、Vo曲3曲(OP1/ED2)と言う構成。
Vo曲のInstやアレンジを除いたとしてもかなりボリュームの多いBGM、広く集められているイメージが強いもののやはり個人的には『THEME OF WORLD ACTORII』のような、こうしたサスペンス物に欠かせず、それでいてメインを張れる明るいテンポの曲を推したい。
Vo曲はやはりDaisy×Daisyさんの歌うOP『蒼い月』が秀逸、特にサビから歌い上げられる勢いあるメロディは中々の物。


お勧め度
物語の前半から中盤にかけては秀逸という他ないが、シナリオを全体的に見た時の評価は各所で書いている通りに悪くなってしまう、竜頭蛇尾という言葉がしっくりとはまるシナリオ。
ある種、衣笠シナリオのある種の特徴でもあるのだが、体験版等だけで判断してしまうと痛い目を見ることもある作品であり、素直におすすめはできない。
そうした点を鑑みて、過去作等で慣れている人にプレイされるべき作品。

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総合評価
全体的な完成度としては悪くないのだが、やはり終盤のシナリオ展開が足を引っ張っており、その他の秀逸な部分と合わせてこの評価となっている。


【ぶっちゃけコーナー】
今作のシナリオライターである衣笠さんのシナリオには過去作を含め、広げた風呂敷をしまいきれない傾向にある。
これは続編が出てもさらにその続編に向けたような伏線が敷かれてしまうため、途絶えることがない。
一方で独特のテンポと作りこまれた世界観による描写力に関しては他の追随を許さないほどであり、この点のみを評価した場合はランクが2-3上がるだけでは済まない。
この点に関しては多くの人が意見を一致させるところだろうが、中盤までの展開で期待させられたからこそ、終盤の展開で落胆するのである。
期待させるだけのシナリオが描けているという点においては正しく評価すべきだろう。
少なくとも、続編を期待させるほどの内容がここにはある。
楽しみ方にコツが必要であり、この辺も含めて衣笠ワールドとさすべきなのだろう。
ただ、やはり今作においての読後感と言うものも大切であり、やはり投げっぱなしになった設定の数々、尻切れトンボの展開、強引な恋愛描写等、シナリオ部分の不備を挙げれば暇がない。
続編へ続くかも、という言い訳は勿論できるものの、単体として出したのならば、単体として完成させられていなければならない。今作においてはそうした意識があまり感じられないのも確かで、評価を大きく下げている部分でもある。
評価される部分がある一方で、大きく下げる要素がある、そんな癖のある作品なので評価も二分されてしまうのだろう。
過去作等で彼の作品が好きになっている方にはプレイを推奨しても良いのかもしれないが、体験版等によって興味を持っただけなのならもう一歩踏みとどまったほうが良いだろう。
こうした評価も二作目等が作られれば覆る可能性がある。
そうした例も過去にはある為、期待して待つのも良いのかもしれない。