bfcf09e4.png
タイトル : 黄昏のフォルクローレ
ブランド : Citrus


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]

キャラクター・シナリオ
有数の名家『乙部家』の一人娘『乙部すぴか』とその従者として働く主人公、そんな二人が別邸で過ごす穏やかな日常に、夜のとばりが降りればまた命の削れる音が響きだす。

文字通り、命を賭して愛を捧げ合った主従の愛憎劇。

シナリオには『麦』や『月子』といったヒロインっぽいキャラクターも登場するものの、基本的には『すぴか』の単一ヒロイン物となっており、BADENDがある他は1本道。

作品の舞台となるのは開国から数十年の発展著しい大帝都。
大正浪漫を思わせるその情緒ある雰囲気は舞台からだけではなく、作品のいたるところから感じられる。そして、それらがシナリオ自体の気品のようなものと非常にマッチしていたように思う。

雰囲気重視のテキストは読み下しにくい部分がある反面、その中身に関してはミドルプライス作品とは思えないほど重厚かつ濃厚。
一本の物語を描いた作品としての完成度は比較的高いと言える内容になっている。
特に各キャラの心理描写に関して、描くべき部分と秘しておくべき部分をしっかりと描き分けているのが特徴的で、今作のヒロインである『すぴか』の内面は勿論、主人公でさえもその感情を読み取るのが難しい部分があり、そうした部分を類推し、楽しみながら読んでゆくことになる。
あくまでそうした心理描写等をメインに楽しむ物語であるため、展開自体にも起伏があまりなく、そういったものを求める一部の読者にとっては、退屈に感じるかもしれない。
ただ、そうした部分を乗り越えたうえで、この作品としっかりと波長があった人にとっては、終盤の展開において、カタルシスのようなものが感じられる上、それまでの伏線が回収がなされていたりすることも併せ、開放感と読後感がとても良く感じられるだろう造りになっている。

加えて今作では作品のテーマの関係もあり、非日常的な部分や全体的に辛いシーンも多くなっているのだが、小粋で一癖も二癖もあるキャラクターたちの掛け合いはこの作品においての小休止部分となっている上、非日常にある『日常』というものを強く感じられる部分にもなっている。
これらはこの世界を構成している重要なファクターとなっている部分であり、シナリオライターが好きな人にとっては、その良さを感じられるところでもある。
そうした部分も含めて、この作品に欠かせない作品魅力の一つだったと言えるだろう。


【推奨攻略順 : BAD→END1→黄昏逸話 】
『黄昏逸話』はクリア後に出現。
BADENDは後先どちらで回収しても良いだろう。


CG
細い線に淡い塗り。
立ち絵がイベントCGを含め、作品の雰囲気も非常にマッチしており全体的に非常に美麗で完成度も高い。
枚数に関してもミドルプライスということを鑑みれば十二分な量と言える。


音楽
Vo曲2曲、BGM?曲
BGMに関しては鑑賞画面がなかったため曲数等不明なのだが、ギターを使った曲が1曲あり非常に印象的だった。
Vo曲は特に美郷あきさん歌うOPの『Spider Silk』から醸し出される妖しさが、作品の雰囲気にもあっていて好みであった。


お勧め度
今までのNavel作品を想って購入するのならば少し待ったを掛けておく。
作品的には各キャラの心理描写に重きを置く作品で、展開にも盛り上がりがない。このためシナリオ重視の方にはお勧めしやすい作品だが、一般受けはし難くなっている。
基からの設計がそうなっているため、一作で綺麗にまとまっており、小説等からはみ出して少し手を出してみたいという方にはお勧めもしやすい作品となっている。


総合評価
重厚且つ濃厚で、洗練されたシナリオは1ルート分ではあるものの十二分に楽しめる内容となっており、価格帯も考えてこの評価。


【ぶっちゃけコーナー】
文字通り、死ぬまで愛し合う主従の物語。
なんといってもこの作品の魅力は雰囲気。
そこかしこから香り立つような大正ロマンあふれる物語に少し、ゴシック要素をエッセンスとして加えたような作品になっている。
シナリオ部分でも書いたように、物語の展開自体はどうしても先読み読みやすい部分もあり、やっぱりメインは登場人物たちの心理描写を想像して楽しむ作品のように思える。
伏線回収自体も結構なされた作品なのだが、物語に占めていたウェイトに関してはやはり上記のものが上だったように思える。
この作品を語る上で欠かせないキャラクターの魅力も語っておきたい。
勿論、ヒロインである『すぴか』やツンデレでどうしようもなく人が良い月子なんかも魅力的だが、特筆しておきたいのが『麦』。
彼女は主人公の同僚として、性別は違うものの気の置けない友人のような役割をしてくれていた。そんな彼女の気安さやその中にある女子としての純情や健気さがとてもよかった。
そんな彼女に『日常』を感じたからこそ、”あの”シーンにあそこまでの破壊力が出たんだろうし、個人的に想うところもあって泣いてしまった部分もある。
それだけで、さすがに泣きゲーとまでは言えないが、この作品の評価を一つ上げた原因になった部分の一つである。
あと、どこかで読後感が良いと語ったが、全てがすべて良かったか、と聞かれると難しい部分がある。
ネタバレに触れそうになるため詳細は省くがとある人物の関係が最後に少しだけ壊れてしまったりとどうしようもなく切なく、やるせない展開もある。
その辺を落とし込んで読める人にはやっぱりお勧めしたい作品です。