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タイトル : 空に刻んだパラレログラム
ブランド : ウグイスカグラ


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]

キャラクター・シナリオ

憧れも、楽しさも、努力も、苦しみも、不協和音もそれら全てが煌めいている。

クオリアという特殊な力を使うことで空を飛ぶことができるようになった世界感において、空中で行われる架空のスポーツ「テレプシコーラ」をテーマとした作品。

音楽も合わせて悲壮感溢れる設定、そして試練の続く展開が印象的な今作は全編を通して割と暗めの展開が多い。
スポーツをテーマにした作品は数あるが、プレイをする上で生まれる様々な葛藤や絶望についてスポットをあてて描いた作品は少ないが、今作でメインとなるのはまさにそういった選手たちの負の感情である。

過去のウグイスカズラ作品と同様に、登場するキャラクターの心理描写においては他作を寄せ付けないほどしっかりと描き切っている。
特に今作では登場キャラクターも多かったのだが、敵側の「境 遼二」を筆頭にキャラクター達をしっかりと内部まで描写しており、それそれぞれが違った魅力を持っていたことに関しては非常に高い評価をしたい。

一方、部活をテーマにした青春物で最も盛り上がる試合シーンにおいて、今作では多くの回想シーンが入っている。
挿入される各人からの視点によるシーンはは各キャラクターの内面を描くという点では良い働きをする反面、あまり得られる情報の無い回想シーンが繰り返し挟まれているため、物語が展開するテンポを非常に悪くしている。
作品のボリュームこそ多いが、物語中盤から試合以外のシーン描写がほとんどなく、その長さに対してシーンの中身がないのもこの作品の弱点と言える。
この点に関しては読む人の相性にもよるのかもしれないが、ウグイスカズラという作風がこのタイプの青春物に対して非常に相性が悪かったような印象を受けた。

今作のテーマとなっている「テレプシコーラ」やそれに関連した描写について。
架空のスポーツということでルールなどが気になるところだが、共通ルートにおいて「空中で行われるバスケの3on3」という説明以外で特に詳しい説明はされていない。
矛盾するようなシーン展開や設定などもいくつか見つけてしまっている上、「何故この選手はこんなにも苦しいのか」「なぜこんなに絶望しているのか」そういうものが伝わってこないと感情移入することも容易ではなく、後付けのような設定が出されることも多い今作ではそのあたり気になる部分も多かった。

今作の主人公についても、もどかしく思う人が多いはず。
特に共通ルートでは冗談抜きで、本当に何もしないことが多く、用意した対応策も結局のところ時間で解決させる展開が定番となっていた。
結果的にヒロイン達が自己解決することになってしまい、主人公以外のところで物語が動いているシーンが非常に多い。
監督としての能力を余すところなく発揮せよ、とまではいわないものの、どのようなスポーツであっても監督という役割は重要なポジションなので、もう少し効果的に動かしたかったところでもある。

TRUE√を筆頭に評価すべきシーンや演出、設定があるのも確かであり、その心理描写を含めて作品として光る部分は大いにある。
だが描写すべき選手たちの内面を重視するあまり、屋台骨となっている「青春学園物」という部分がおろそかになっているのも確かであり、どうしても盛り上がりの欠ける感動しにくい作品になっていた、というのがシナリオ全体の感想である。
※この辺りは本当に人によって差が出る

誤字脱字だけではなく、表示するCGの間違いや設定の不備、音量設定等のシステム面でのバグが目立っていたことも追記しておく。


共通√【 ★★★★☆ 】  13h
第二テレプシコーラ部内のトーナメント終了までが描かれている。
ここに至るまで恋愛的な描写はほとんどなく、中心となるのは「テレプシコーラ」という架空の競技について。

練習を含め描かれているテレプシコーラの風景も多く、分量としては目を見張るほどで、特に試合中に挿入される各キャラの過去やそのシーンにおける葛藤等の心理描写が中心となっている。

基本的に登場するキャラを虐められるような設定が何度も登場し、全体的に暗く重たい雰囲気が漂う内容となっている。
それらの障害を乗り越えるシーンはあるものの、どうしても次に来る絶望を大きく描いているのでフラストレーションが溜まりがちな内容となっている。

まったくもって王道から外れて入るものの、心理描写に重きを置いたその演出やシナリオはもう一つの青春物としての在り方を示す。
ある意味幻想をもってプレイした人にとってはつらい部分にもなる。

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彼杵 柚√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
主人公と死別した幼馴染に似た少女。
純粋で真っすぐな性格をしており、空を飛ぶためだけに葛切学園に転入してきている。
テプシコーラに関してはまったくの素人であり、運動神経――特に反射神経には目を見張るものがあるが、物語の序盤では空を飛ぶことすらままならなかった。
しかし、空を飛ぶことが大好きで、どんな苦境に立たされても諦めない鋼のメンタルを持つ。

個別√では第一に君臨する「境遼二」という最強のキャラを中心とした話がメインとなっており、最後まで読むことで彼に関しての印象がガラリと変わる√でもある。
恋愛描写を含め主人公と柚の話は後半部分のみで、軽く未来を向いて頑張ってゆくような無難な内容になっている。


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有佐 里亜√【 ★★★☆☆ 】  1h
とても優しい性格をした面倒見の良い女の子なのだが、、物心つく前からの幼馴染である主人公にだけはツンツンとした態度をとることが多く、「嫌い」と公言している。
第二に所属するが、誰ともチームを組むことなく1年を過ごしていた。
オラクルの生成量は少ないが操作は上手く、非常に綺麗なフォームで飛ぶ事ができる。

個別√では主人公と里亜の心に残る「紅」についてがテーマになっており、そこにサブキャラである留学生のイーリスを絡めた√となっている。
恋愛描写については本当に短いのだが、里亜の魅力はなんといっても終始崩されることなく貫き通されたツンデレキャラであり、その部分が好きな人は多いはず。


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宝生 玻璃√【 ★★★☆☆ 】  1h
控えめな性格をした主人公の妹。
気弱で人見知りをするタイプだが、頑固な一面もある。
加速を持ち味とした個人プレーの技術は中等部では敵なしと言われるほどだったが、その反面チームワークを必要とする場面は苦手としている。

個別√ではガラス細工のように繊細だった玻璃の精神面についてを中心としたシナリオになっているが、共通√で取りあげていたとある人物への感情が軽く流されるなど、内容としては薄いと言わざるを得ない。
恋愛面についてはもちろん兄弟の恋愛についてもテーマになっているのだが、そちらについては軽く触れるだけにとどめられ、基本的には甘々な内容。


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藍住 ほたる√【 ★★★☆☆ 】  1h
第一に所属する先輩で、過去には主人公とチームを組んだこともある。
実力も確かなのだが、最近は不調に喘いでいるが、クールな表情からはそんなことを一切感じさせず、猫のように掴みどころが無い性格。
第一に所属しているだけあり、そのテクニックは非常に高いといってい差し支えない。

短い個別シナリオの中でほたると主人公の関係をかけがえのない物として描いている。
今まで登場したキャラクター達の背景も少しだけわかり、大きく印象が変わって見えるのもこの√の大きな特徴と言えるだろう。
恋愛描写においては、いつも感情を表現に出すことがないほたるが、真っすぐに主人公に好意を示し、そして甘えてくるシーンは非常に貴重。


TRUE√【 ★★★★☆ 】  4h
1周目から攻略できる、今作の集大成ともいえる√。
当然だが共通ルートの続きの内容となっており、共通ルート+TRUE√が今作の全体と言っても過言ではないだろう。

今まで溜めることになったフラストレーションを解放できる部分でもあり、盛り上がるシーンも今まで以上に多く、それだけに終盤のシーンなどは演出も含めて今作最大の見どころと言える。
この√だけを抜き出して考えるならば、青春部活物としての
依然として試合シーンのテンポは悪く、一部にCG表示ミス等や、テレプシコーラについて詳しく記載しなかったからこそできる後出しの設定等々もあり、素直に称賛できない部分があるのも確か


[ 主人公 ]
かつては空を自由に翔る選手だったが、とある事故により選手をあきらめることに。
今作では監督としてヒロイン達の成長を促す立場。
基本的に本当に何もしない放任主義が持ち味。
時折行動することもあるのだが、ヘラヘラと笑うのみでその心はだれにもわからず、つかみどころがない。


【推奨攻略順 : ほたる→玻璃→里亜→柚→TRUE 】
TRUEは1周目から攻略可能なので、本作をさくっとやりたい方はそちらを先に。
各個別は好きな順番で構わないが、TRUEの一部ネタバレを含む。

CG
細く繊細な線、淡い塗りの絵。
立ち絵やイベントCGは共通してふんわりとした雰囲気が漂う。
枚数も多く、時折バランスやパースが気になるものもあるものの、総じて安定した質の絵が多い。過去回想では水彩みたいな絵が多いのも印象的。


音楽
Vo1曲(OP)、BGM22曲という構成。
BGMは全体的に落ち着いたものが印象に強く、とくに「蛍火」などどこか不安も漂うBGMはウグイスカズラならではと言えるだろう。
OPの「クオリアの輪郭」は疾走感あふれ、プレイ後に聞くとシナリオを想起させる良曲が採用されている。


お勧め度
架空のスポーツ「テレプシコーラ」をテーマにした青春部活もの。
ウグイスカズラのらしく心理描写に重きを置いており、一般的なスポーツをテーマにした作品とは大きく違った雰囲気を持つ。
公式HP等をみて王道の青春物を想起してプレイしようという人はもちろん、ウグイスカズラにとっては挑戦の作品でもある為、今までの作品が好きだった人にとっても賛否が分かれそうな内容になっている。
設定を聞いて「蒼の彼方のフォーリズム」を想起してプレイする人は、かの作品とシナリオの趣向が大きく違うため特に注意が必要。


総合評価
スポーツにおける葛藤を描いた心理描写はさすがという他なかったが、青春物とそうした描写の相性が悪く感じられ、テンポが悪い作品になっていた印象も強くこの評価に。


【ぶっちゃけコーナー】
あまりこういうことはしてはいけないのだけれど、同じ空を舞台とした架空のスポーツとして「蒼の彼方のフォーリズム」がある。
かの作品とくらべると物語の展開や試合の描写はお粗末というほかなく、描写されるCGですらも比較すると劣る。
かの作品は努力と友情と勝利という、王道でいて誰でもわかりやすい名作をつくっており、個別√にて様々なバリエーションを出していたが、今作は個別√の内容もなく、主軸となっている物語もコンセプトこそ異色だが、青春学園物との相性が非常に悪いテキストであり、最終的なTRUE√において、どうしても感動に至ることができない内容になっている。
今までの持ち味だった後半にかけてのガラリと物語の印象を変える伏線、そういうウグイスカズラならではの魅力がなかったのは非常に痛い所といえる。