タイトル : 願いの欠片と白銀の契約者
ブランド : propeller


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★☆   [2/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]

キャラクター・シナリオ
ルートは5本、分岐は1回で3つの選択肢しかなく、それらの√全てを攻略すると、新しく分岐が増える形になっている。その唯一の分岐までが非常に長く、それぞれの√も1~2hほどしかないため、全体としてのボリュームは少なめとなっている。
ある程度の攻略順が決まっているので、その中でなら自由ではあるが、

【おすすめ攻略順 : ジェシカ→璃子→ヤン→TRUE】

CG
線は細く、淡い塗。立ち絵は味かなり独特で、基本的に出来は悪い。
イベントCGは全体的に少女漫画を連想させるタッチで、質の上下が激しいものの、枚数自体は多く、その中には上出来の物も数枚ある。

音楽
BGM26曲、Vo曲1曲(OP)の構成。
唯一のVo曲の出来はよく、それだけに他の曲も聞きたかったところ。
BGMは作風に合わせて、緊迫・戦闘シーンの物も多いのだが、それにも増して目立つのが悲しいメロディの曲。
特にOPアレンジや「切なる願い」など、その他いい働きをした物がある。

お勧め度
大雑把にいってしまえば、百合異能バトルモノ。
メインとして、ビスクドール等も出てくるので、そういったものが好きな方にはお勧め。
バトルよりも、その背景・設定・理由に重きを置いている物語として強くお勧めしたい、泣きげー要素も多分に含まれている。

ただ、グロCGはないものの、描写は多いため注意。

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総合評価
【物語について】
※この作品は15禁作品であり、エロゲではないので注意。
普通の高校生だった少女がとある古い洋館の中、あるビスクドールに出会うことから、非現実的な争いに巻き込まれて行く物語。

普通の高校生、という部分が重要で、それを印象づけたのが、日常シーンの会話だろう。
これは物語後半までそうなのだが、本当に主人公と各キャラクターの会話が自然なのである。それが、一転して非現実にのみ込まれて行くのと同時に、プレイヤーもその世界観に引き込まれて行くだろう。

先ほども語ったように、作品としては異能バトルもので、その中に恋愛要素としての百合が少し含まれている。しかし主人公となる少女が特定の誰かと結ばれるわけではない。

バトル物特有の燃えシーンはもちろん多く、バトルの描写もCGはともかく文章としてはなかなかに上手。
ただ、それ以上にその設定・背景がよい。
この作品は戦う、そのシーンや勝ち負けに主題を置いているわけではなく、「その理由」について重きを置いている。
よって、主人公の少女は常に迷いながら戦いを続け、傷つきながらも進んでいく。
この作品の最大の魅力はここにあるだろう。

その雰囲気を支えるのが主にBGMで、日常シーンは全体的に静かな雰囲気に。時には無音等も上手く使っているのだが、大切なシーンではしっかりと強弱のあるBGMを流す。

そして、主人公の周りのキャラクター達もいい味を出している。
その独特の倫理観・個性もなのだが、なによりもヒロイン・サブを問わずにその一言一言が洗練されており、非常に綺麗で重い。
だからこそ、それを受けて迷う主人公の姿がことさら印象に残る。

そのため、作品としては全体的にかなり重いものとなっており、そのため泣きシーンも、強いものから、じっとりと泣ける物まで用意されており、後半もスカッとする話、というよりは考えさせるような内容になっている。

好き嫌いはあるかもしれないが、合う人にとってはかなり心に来る作品かもしれない。

物語としての設定がこっているが故に、時折難しい解説・仕組み・感情表現等が登場する。深く理解するためには、文章をよく読みこむほか、宗教的な知識等も必要になり、難解な部分が多々あるのは否定できない。その辺りは解釈次第にもなりそうでこの作品の深さがうかがえるものとなっている。

総括
Vo曲の少なさ、コンフィグ、物語説明、その他いろいとと不完全な部分はあるのは確かだ。
そのため、万人の為の評価を考えると、どうしても評価は下げざる負えないが、作品として、主にストーリー面で強く評価したい。


コンフィグは最低限の機能はそろっているのだが、足りない機能もいくつかあり、使いにくいところも多々あった為、改善は要求したい。

【ぶっちゃけコーナー】
闘う理由をちゃんと考え続けて、それを見つめ続けたのは偉いな。だからこそ、敵も味方も非常に魅力的に見えてきた。
設定がこってるのもこれを実現するためなんだろうな。
あと、セリフの一つ一つがいいよなぁ…。ひとつ例をあげると「どんなに優しい人間でも、その優しさと同じだけの闇は抱えているわ。妬み、嫉妬、哀しみ、憎悪……優しい気持ちを支えているのは美しい感情だけじゃない……」ってのがある。このほかにもいろいろあるのだが、正直、中盤あたりのシーンで涙が止まらんかった。
百合ゲーってことも影響しているんだけど、主人公がすげぇ純真で、その周りのキャラ達もいいんだよなぁ…。ストーリーに関しては、太鼓判を押しておきたい。
バトル物というもので泣くのが久しぶり。
でも、バトルシーンとか最後あたりの終わり方とか、おしい部分もあったわけで、個人的にはもう少し作りこんでいれば、もっと評価はあげられたんだよね。