
タイトル : タユタマ零
ブランド : Lump of Sugar
シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG : ★★★ [3/3]
音楽 : ★★★★☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 6.5h)
シナリオ
あなたと ひとつになるまえの はじまりのおはなし
本作はLump of Sugarの20周年記念作品であり、2008年発売のブランド代表作『タユタマ -kiss on my deity-』(以下、無印)の前日譚にあたる。
この無印は原画・萌木原ふみたけ氏、シナリオ・史方千尋氏によって「人間と太転依の共存」が描かれた作品で、以降も2009年のFDや、2016年から2017年にかけて発売された続編『タユタマ2』シリーズへとその系譜は受け継がれていた。
そんなシリーズの原点へと繋がる本作の舞台は、無印から遡ること数千年の戦乱期。
主人公は、無印の主人公・泉戸裕理の祖先にあたる修験僧の景玄だ。
彼が師である天海から、強大な力を持つ太転依「白き獣」の調伏を命じられたことで、その運命を大きく変えていくことになる。
続いて、物語の鍵を握るヒロインについて触れておく。

綺久羅美守毘売(CV:松田理沙)
太転依の首魁であり、葦原国の土地神。
物語当初は「白き獣」として現れるが、景玄との出会いを経て人と太転依の共存を志すようになる。
その後は中津村を統治し、人々からは「媛」と仰がれる存在へ。
実は彼女自身も無印版に登場していた他、無印ヒロインである「泉戸ましろ」のルーツにあたる存在となっており、設定としては逆輸入のような形にはなっているが、その内面には彼女に通じるものが色濃く感じられた。
何と言ってもその包容力から始まり、たおやかでおしとやかな物腰でありながら、それでいて武芸に秀でた一面や、少々頑固なところなんかもよく似ている。
「白き獣」としての小柄な姿は、無印本編へのリスペクトも感じさせる。序盤でしか拝めない貴重な姿だが、それだけにHシーンが用意されていないのは少々惜しいところか。
本作のシナリオ分量は約6.5時間ほど。ロープライス作品と考えればしっかりと充実して描かれた印象だが、全体の構成を振り返ると後半はやはり駆け足に感じられた。ライターが無印とは異なるためか、一部の設定に不整合や矛盾も散見されるため、本作はあくまで「現在の解釈で再構築された、もうひとつの始原」という認識でプレイするのが正解だろう。
無印では、綺久羅美守毘売らが封じられていた遺跡を壊したことから物語が始まっていたが、本作は彼女が「白き獣」として活動していた頃から始まり、無印の序盤へと繋がる前日譚として描かれている。
無印では伝承の中の存在として語られていた綺久羅美守毘売や景玄だが、実際に今作をプレイすることで、主人公・ヒロイン共に受ける印象は大きく変わった。
この二人の物語はもちろん、無印でも大きなテーマとして掲げられていた「太転依たちとの共存」について、本作はそのルーツにスポットを当てた話にもなっている。
そのうえで、矛盾点や設定面で無印の綺久羅美との差異も大きく、無視できない部分となっていたのは確かだ。だからこそ評価は分かれるかもしれないが、強引さやわがままな性格は無印のヒロインにも通じるところがあり、そうした繋がりを感じられたのは良かった。
かつては神話の存在としてどこか神格化されていた彼女が、本作では非常に地に足のついたキャラクターとして描かれており、不足点があるからこそ、可愛らしくて守ってあげたい魅力が生まれていたように思う。
それは景玄も同様で、伝説の男として強い印象があったが、実際は意外にも不自由で、ひどく人間らしい。だからこそ、序盤の恋する綺久羅美のいじらしさや、後半にかけて彼にぞっこんになっていく彼女の姿も、どこか無印を彷彿とさせて、恋愛描写として楽しめた。
また、無印で「三強」と称された鵺と応龍の登場シーンが多かったのは純粋に嬉しいポイントだ。応龍については、続き物として捉えると矛盾も大きく感じられるが、単体で見れば「頼れる兄貴分」のようなスッキリとした好キャラクターだった。
物語終盤の展開は、これまでの穏やかな空気から一転して救いがなく、非常に鮮烈だった。
正直、ここまで凄惨にする必要があったのかは疑問だが、だからこそりんと鵺との間で「絆」が紡がれていくシーンが最高に映えていたのも確か。このシーンでは高ぶって思わず涙が溢れそうになったし、個人的に好きなキャラクターである鵺がしっかりと扱われていたことも含め、今作で一番の名シーンだと言える。
作品の違和感について触れておくとすると、主人公の師匠である天海や崇伝といった史実上の人物についてだろうか。正直なところ舞台装置以上の役割がなく、彼らの暗躍の意図が作中で深掘りされることもなかったため不可解さが残った。いっそさっぱり切り捨てた方が物語がスッキリしたかもしれない。
また、「太転依」を悪く描かないための配慮か、明確な悪として「化生(妖怪)」という存在を登場させていた。今作ほどに太転依と人間が通じあえてしまっていると、現代編に至るまでの流れも大きく変わりそうということで、状況を大きく動かしたかったのかもしれないが、この存在が設定をややこしくし、結果として無印との乖離を広げたようにも感じられた。
色々と不整合や不可解な点も挙げたが、最後に無印の2nd OP「瞬間スプライン」が流れると、不思議とすべてを許したくなってしまう。この演出はズルいと思いつつも、笑顔でプレイを終えられる一作だった。
【推奨攻略順:-】
作中に選択肢はあるものの、どれを選んでも物語は分岐せず、1本道の物語となっている。
CG
メイン原画はシリーズを通してお馴染みの萌木原ふみたけ氏が担当。無印から変わらない柔らかなキャラクター描写は、シリーズファンにとって非常に安心感のあるものだ。
CG枚数は23枚。これに加えて、無印でも印象的に使用されていた水墨画風の演出絵や、戦闘シーンを盛り上げるカットイン用のCGが数枚用意されている。SD絵は5枚、Hシーンは4シーンという構成だ。
鑑賞モードではこれらのCGに加え、物語の舞台を彩る背景絵もじっくりと堪能できるようになっている。
ロープライス作品という枠組みの中では十分なクオリティに仕上がっていると言えるだろう。
音楽
Vo曲2曲(OP/ED)とBGM26曲が収録。
楽曲は全体的に舞台に合わせた和風の楽曲となっており、特にOPのサビは物語の幕開けを華やかに、そして厳かに彩ってくれる良曲だった。
特筆すべきは、「せつない恋心」や「悲恋」、「追憶」といった10曲以上のBGMが、無印からそのまま引き継がれて使用されている点だ。これらの聴き馴染みのある旋律が流れるたびに、無印をプレイした当時の記憶が呼び覚まされ、まさに20周年記念作品にふさわしい、シリーズの歴史を感じさせる構成と言えるだろう。
お勧め度
DLsite専売ということで、入手方法に限りは在るものの、それでもロープライス作品ということもあり、プレイハードルはフルプライス作品と比べると低い。またシリーズ未経験であっても単体の物語として十分に成立しているため、ここから「タユタマ」の世界に触れるのも一つの選択肢となっている。
一方、無印をプレイ済みのファンにとっては、前日譚としての繋がりや懐かしいBGMにニヤリとするシーンが多いのは間違いないものの、これまで述べてきた通り「現在の解釈」による再構築という側面が強いため、無印の設定やキャラクター像を完璧に重視したい人にとっては、細かな相違点や矛盾がどうしても気になってしまう可能性がある。
「20周年を祝う、もうひとつの始原」として広い心で楽しめるかどうか。そこが本作を最大限に堪能できるかどうかの分かれ目になりそうだ。
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総合評価
ブランド節目の年に、初代「タユタマ」の前日譚として制作された本作。シナリオ自体の完成度は悪くないものの、実際の繋がりに矛盾点も散見される。ただし、最後のファンサービスを含めシリーズへの愛を感じる演出に救われる側面も強く、設定の乖離を「再解釈」として受け入れられれば、と思ってしまう1作になっている。
【ぶっちゃけコーナー】
正直なところ、「化生(妖怪)」という新設定を今さら追加する必要があったのか? という疑問は最後まで残った。無印のように「制御下にない太転依=化生」という扱いで十分だったはずだし、実際そう描きたかったようにも見えただけに、設定を分けたことでかえってややこしく、無印との乖離を広げてしまった印象は否めない。
また、黒幕として登場した崇伝があまりにも一瞬で退場したのには驚いたし、天海も天海で正義とは言い難い「黒幕感」が漂っていた。結局のところ、どちらも物語への寄与度が低く、「いっそ居なくても良かったのでは?」と思ってしまったのが正直なところだ。
一方で、キャラクターの掘り下げについては嬉しい発見も多かった。
特に鵺は、今作を通じて本当に愛されるキャラクターになったと思う。初登場時の不気味な印象とは裏腹に、彼女が「子ども」たる所以となるシーンが描かれたことで、無印での印象にも納得がいったし、ここは文句なしに好きなポイントだ。
あち自由に遊ぶ鳳凰の姿も、まさに「解釈一致」でした。
ただ、応龍に関しては、無印のアメリルートで重要な役割を担っていただけに、綺久羅美守毘売と同じレベルで設定の不整合を感じてしまった。作品の根幹に関わる部分だからこそ、シリーズファンとして違和感は拭えない。
本作を「単体の作品」として見れば良キャラ・良シナリオとして受け入れられるだろう。だが、作品の成り立ちを考えれば無印と切り離して考えるのはナンセンスであり、だからこそ「シリーズ物」として見た時の評価は、ファンによって大きく分かれる一作になるだろうと感じた。
正直なところ、「化生(妖怪)」という新設定を今さら追加する必要があったのか? という疑問は最後まで残った。無印のように「制御下にない太転依=化生」という扱いで十分だったはずだし、実際そう描きたかったようにも見えただけに、設定を分けたことでかえってややこしく、無印との乖離を広げてしまった印象は否めない。
また、黒幕として登場した崇伝があまりにも一瞬で退場したのには驚いたし、天海も天海で正義とは言い難い「黒幕感」が漂っていた。結局のところ、どちらも物語への寄与度が低く、「いっそ居なくても良かったのでは?」と思ってしまったのが正直なところだ。
一方で、キャラクターの掘り下げについては嬉しい発見も多かった。
特に鵺は、今作を通じて本当に愛されるキャラクターになったと思う。初登場時の不気味な印象とは裏腹に、彼女が「子ども」たる所以となるシーンが描かれたことで、無印での印象にも納得がいったし、ここは文句なしに好きなポイントだ。
あち自由に遊ぶ鳳凰の姿も、まさに「解釈一致」でした。
ただ、応龍に関しては、無印のアメリルートで重要な役割を担っていただけに、綺久羅美守毘売と同じレベルで設定の不整合を感じてしまった。作品の根幹に関わる部分だからこそ、シリーズファンとして違和感は拭えない。
本作を「単体の作品」として見れば良キャラ・良シナリオとして受け入れられるだろう。だが、作品の成り立ちを考えれば無印と切り離して考えるのはナンセンスであり、だからこそ「シリーズ物」として見た時の評価は、ファンによって大きく分かれる一作になるだろうと感じた。


























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