タイトル : 花鐘カナデ*グラム Chapter:4 綾世奏 -最終章-
ブランド : NanaWind


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 4.5h)

シナリオ

かこが奏でる悠久の調べ――、
あなたとひらく花とココロの学園物語


ALIA's CARNIVAL!』から『春音アリス*グラム』、そして本作へと続く「アーケン」と共に描かれる近未来を舞台とした、SF恋愛アドベンチャー作品。
作品としては今回初めて各ヒロインのルートを独立して順次発売する4部構成をとっており、本作はその集大成となる第4作目にして「最終章」に当たる。全4作に渡る物語の構成は以下の通りだ。

本編に触れていく前に『春音アリス*グラム』と本作の関係について...

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『春音アリス*グラム』とはNanaWindが過去に制作し、萌えゲーアワード純愛金賞を受賞した作品であり、本作との関わりも非常に強い。そのためこの作品と合わせて下記以降ではシリーズ作品と称することもあるので注意。

『春音アリス*グラム』は、NanaWindが過去に制作し、萌えゲーアワード純愛金賞を受賞した作品だ。そのルーツは同社の『ALIA's CARNIVAL!』に遡る。同作では「アーケン」と呼ばれる未来科学による特殊能力と異能力バトルに重きが置かれていたが、『春音アリス*グラム』では「秘密アリスグラム」の解明へとその焦点が移された。

本作はその雰囲気や世界観を継承しつつ、「もっとHに、低価格で、気軽に遊べるように」というコンセプトで製作された。『春音アリス*グラム』から8年後の世界を舞台とするスピンオフ作品であり、主人公とヒロインを一新している。舞台設定こそ共通だが、一部のキャラクターを除き、新たな世代による物語が展開される構成だ。
秘密アリスグラム」の解明を物語の軸とする点は前作と同様で、全4作品を通し作中に秘められた謎に迫っていくミステリアスな構造こそ、本作の魅力と言える。

なお、各作品には付録として『春音アリス*グラム』の共通ルート(1章~6章)が収録されており、シリーズ未経験者でも最低限の世界観を補完できる仕様だ。

さて肝心の物語部分。シリーズ全体のメインライターは葉月サイ氏が務めていたが、今作も3作目と同様に同氏と池田コント氏が共同で執筆を担当。
構成としては、序章から始まる選択肢のない一本道の物語で、本編攻略後に「アナザーデイズ」として2編のエピソードが解放される仕様も、これまでと同様だ。
ただし、本作には最大の特徴として、特別ルートである第7章以降の「終演のカナデグラム」が存在。 これは綾世奏のアナザーデイズをクリアすることで解放され、これまで伏せられてきた「秘密アリスグラム」の真相へと一気に迫っていく。

全体のプレイ時間も約4.5hと、これまでのChapterに比べて大幅なボリュームアップ。 なお、この特別ルートは『Chapter:4』単体でのインストールおよびクリアでも到達可能だが、物語の性質上、前3作を未プレイの状態で挑むことは推奨されない。

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Chapter:4 綾世奏(CV:森谷こころ)

さくら花咲く春の成稜学園――最後に拓くのは色褪せた物語。主人公・後代灯は黄昏部に入部してから様々な体験をしてきた。
『――もうすぐ卒業だ』
始まりと終わり。鐘(かこ)は託され、全ての精算の刻がやってくる。少年と少女たちのココロを繋ぐ未来とは果たして――。


今作『Chapter:4』の主役を担うのは、黄昏部で部長を務める二年生、綾世 奏。
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成稜学園の三年生にして、黄昏部の「影の部長ラスボス」としてこの部を再開させた少女。
成績優秀、眉目秀麗。 聡明で頭の回転も速く、誰もが認める美少女。その上、実家は由緒正しき武家という超ステータス持ちだが、その性格は実にミステリアス。人前に出るのを嫌がる社交性の低さゆえに友達は少ないが、一年生の頃からの腐れ縁である主人公に対してだけは、ジョークを言い合えるほどに心を許している。

部内では好んで推理小説を読み耽る一方、なぜかココアは大嫌いという極端な一面も。また、過去の黄昏部部長・凛堂耶々とは唯一面識があるなど、シリーズの根幹に関わる謎を多く抱えている。

灯への純粋な想いと、彼女が握り続けてきた「精算」の刻。そのココロの奥底に何を秘め、何を目的として主人公をこの物語へと誘ったのか。始まりと終わりを繋ぐ彼女との「決着」こそが、ついにこの最終章で明かされることとなる。

学園の最終年度を描いた他ルートとは異なり、本作は主人公の入学時点、すなわち奏との出会いから物語が幕を開ける。廃部していた黄昏部が復活するまでの軌跡が仔細に描かれる一方、中盤以降の他ヒロイン加入等のイベントは駆け足気味。最終的には卒業までを駆け抜ける構成となっている。
ただし、本編中盤までは「アーケン」や「秘密アリスグラム」の核心には意図的に触れられず、あくまで奏との関係性に主眼が置かれる。

素直に感情を表現できないツンデレ気味の彼女と距離を詰め恋人へと至る過程、交際後に愛情表現がより直接的になる所などは、奏ファンにとっては嬉しい展開韃靼ではないだろうか。 キャラにフォーカスした「イチャラブ特化」の様相は他Chapterと同様、全6章+アナザーデイズという形式で完結する。

しかし、本作の真価はその先に待つ第7章以降の「終演のカナデグラム」にある。
奏ルートの続編でありつつ、これまで各Chapterの冒頭で提示されてきた不可解な断片を繋ぎ合わせるグランドルート。特に『Chapter:3』(コトナ√)で見せた彼女の謎めいた行動の真意がすべて明かされる。終盤にはアーケンもしっかりと絡んでおり、謎が明らかになるカタルシスは、シリーズを追いかけてきたプレイヤーへの最大の報酬ともいえ、前作『春音アリス*グラム』ファンへのサービスとなるようなシーンが挿入されていたり、本作「秘密アリスグラム」と相対する解決までの展開は、長らく伏線を張ってきた分、相応の盛り上がりを見せた。

シリーズのシナリオ総評として、完結編に相応しい面白さと、ある種の感動を覚える一作であったことは間違いない。過去作との繋がりを感じさせる演出も好印象だ。ただし、物語に「驚き」があったかと言えば、首を縦に振るには躊躇いがある。 予想を裏切る衝撃というよりは、予定調和の範疇に収まってしまった感は否めない。

結局のところ、本作(Chapter:4)は1〜3作の積み重ねがあって初めて成立する。しかし、その個別ルート群のクオリティがキャラゲー・萌えゲーに寄りすぎ、「真相を知りたい」という渇望を抱かせる牽引力に欠けていた点は、最後までシリーズの弱点として残り続けた。 伏線が露骨すぎて「謎」としての深みに欠け、消化不良感を抱えたまま進まざるを得なかった構造的な問題といえるだろう。

「いい話」ではある。評価できる点も多い。ゆえに本作単体の評価はシリーズ最高位とするが、4作品分の不満をすべて覆し、評価を爆発させるまでのパワーには至らなかった。 期待値を超えられず、惜しくも伸び悩んだというのが正直な結論だ。

【推奨攻略順:作中に選択肢無し】
上記でも説明したが作中に選択肢はなく、攻略後に「アナザーデイズ」にアフターシナリオが2編追加され、さらにその後に「終演のカナデグラム」が解放される。


CG
原画はシリーズを通してあゆま紗由氏がメインを担当。当然ながら、グラフィックのテイストに大きな変化はなく、安定したクオリティを維持している。
特筆すべきは、最終章としてのボリューム増加に伴うCG枚数の拡充。イベントスチル26枚、SD絵1枚と、前3作に比べてイベントCGが4枚増量されている点は見逃せない。
一方で、Hシーンが全6シーンという内訳は他のヒロインと共通。「低価格で気軽に」というコンセプトを鑑みれば、十分に納得感のあるボリュームと言える。


音楽
楽曲構成についても1作目(『Chapter:1 小桜結』)、2作目、3作目と全く同じであるため、本作での詳細な内容は割愛する。評価についても同様に準じる形としたい。


お勧め度
前作『春音アリス*グラム』未プレイでも、付録の共通ルートで世界観を補完できる点は入り口として親切。ロープライスかつ気軽に楽しめる強みは、最終章でも健在だ。

ただし、物語の真相解明まで堪能するなら、シリーズ全4作のプレイが事実上の絶対条件。 本作に真相が含まれている以上、事実上のセット購入が前提となるが、現状では一括のセット販売がなく個別に買い揃える必要がある。この点は、「ライトに楽しむ」という当初のコンセプトとは相反する印象を禁じ得ない。

システム上、Chapter:1〜3は順不同でプレイ可能だが、物語の構造上、本作(Chapter:4)を最後に据えるべきなのは明白で、基本的にはChapter:1から順を追うことを強く推奨する。
個別ルートの完成度がキャラゲーに寄りすぎている点から星は抑えているが、奏との決着と甘い時間を一気に駆け抜けたいユーザーの他に、シリーズの幕引きを見届けるという意味でも、避けては通れない作品といえる。

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総合評価
完結編としての盛り上がりやファンサービスは評価できるが、4部構成の歪みが最後まで尾を引いた印象。真相ルートの満足度は高いものの、シリーズ全体の停滞感を覆すほどの衝撃はなく、平均的な良作に留まった。

【ぶっちゃけコーナー】
正直、3作目まで終えた時点では不安を払拭できる要素がなかったが、最終章である本作(および第7章以降)は、これまでの停滞感を払拭しようとする気概は感じられた。特に終盤の展開は、これまで伏せられてきた断片がようやく一本の線に繋がっていく感覚で、シリーズを追いかけてきた身としては相応の盛り上がりが感じられて、前作ファンへのサービスも含めライター陣の意地を見た気がする。

ただし、作品の販売方法と趣旨が上手く噛み合っていない印象は拭えない。伏線はChapter:1からあからさまに散りばめられていたが、結局この4作目に至るまでその正体は霧の中。そもそもSF設定ゆえに「なんでもあり」な側面が強く、伏線から真相を予想して楽しむタイプの作品ではなかったようにも思う。 情報の出し方がぶつ切りすぎて、続きを予想したいと思わせるフックが弱い問題は、最後までこのシリーズの喉に刺さった棘のようだった。
最終章にすべてが詰め込まれているのは構成上致し方ないとはいえ、Chapter:1〜3が不可欠な物語である以上、キャラごとの個別販売という体裁は単なる「分割商法」の言い訳にしか感じられず、非常に残念。

個別ルートのクオリティがキャラゲーに寄りすぎ、伏線が露骨すぎて「驚き」というより「確認」に近い読後感になってしまったのは否めない。「いい話」ではあるし、奏の正妻感あふれるイチャラブも悪くはなかった。しかし、4作品分のリソースを投下して描いた物語として、これまでの評価をすべてひっくり返すほどのカタルシスがあったかと言えば、答えは「NO」に近い。

結局のところ、シリーズを追い続けたファンへのご褒美としては及第点。だが、一つのSFアドベンチャーとしての完成度を問うならば、やはり伸び悩んだと言わざるを得ない。