タイトル : 根暗なクラスメイトが俺の胃袋を掴んで放してくれない
ブランド : エンターグラム


シナリオ : ★★☆☆☆ [2/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★☆☆☆ [2/5]
総合評価 : ★★☆☆☆ [2/5]
(総プレイ時間 : 2.5h)

シナリオ
株式会社ビジュアルアーツが開催する『キネティックノベル大賞』、その第1回の大賞作品である『ホーリーアンデッド 〜非モテでぼっちの死霊術士が、聖女に転生してお友達を増やします〜』に続き、同小説部門にて大賞を受賞しキネティックノベルとなったものが本作である。
今までとは違い販売はエンターグラムとなっているものの、ビジュアルアーツと開発を行ったキネティックノベルであり、「小説家になろう」で公開されている原作からの調整も行われている。

作品のキャッチコピー(テーマ)は
クラスの中で地味根暗少女が、
主人公たちと付き合うことで変わっていく……。
ということで、新学期に初日にヒロイン暗野あんの 木陰こかげの胸を触ってしまった主人公・成田なりた 日向ひなた(CV:広瀬裕也)は、成り行きのままに彼女の手料理を振る舞ってもらい、そうして彼女と友達になることになる—―という物語の始まりとなっている。

シナリオは選択肢のない1本道の物語で分量は2.5h程で、木陰と日向の学戦生活を中心とした恋愛模様を描いた作品となっている。
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暗野あんの 木陰こかげ(CV:立花日菜)
本作のヒロインで暗く地味な印象を受ける女の子。
顔にあるそばかすを気にしており、それを隠すために前髪を長くしている。
人と関わるのが苦手で、クラスでは目立たないように過ごしており、ゲームや小説など現実逃避できるものが好き。

序盤は前髪でそばかすのある顔を隠している木陰だが、、、
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物語の中ではテーマ通りに主人公と関わることで変化していく。
あるあるではあるが、正直そばかすが問題にならないほどの美少女だ。
上記にあるようなビジュアル的な変化はもちろんだが、テーマにもある通りにヒロインである木陰の変化が重要視されている。そのため物語の中では木陰視点からの描写も多く、彼女の心の動きが良く分かるような作りになっていた。

他の登場人物も紹介しておく。
作中におけるヒロインや主人公以外の主な登場人物は3人で、日向の友人として斉藤さいとう 秋人あきと(CV:安田陸矢)と彼に思いを寄せる陽キャ少女前田まえだ 美冬ふゆみ(CV:鈴代紗弓)、更には日向たちの担任教師である青木あおき 栞乃しおの(CV:櫻庭有紗)なども登場シーンが多かった。20250518151830物語序盤では馴染みがなかった冬美も最後には…?
主人公や木陰と比較すると登場場面は限られているものの、学園シーンにおいては欠かせない存在となっている。
特に物語序盤では木陰に関する問題が取り扱われたシリアスなシーンもあって、そういった場面では担任の栞乃の存在感を強く感じられる流れになっていた。
ただ、今作はどこまでも木陰にスポットを当てた作品というふうに作られており、中でも恋愛描写を主軸としているため、全体的には明るい雰囲気の作品になっているため、上記のシリアスシーンも一時のものとなっていた。

本作の気になる点としてあげられるのは、主人公の掘り下げが全くと行っていいほどない事だろう。
上記までにもある通りヒロインの木陰に関してはかなり描かれているのだが、反面主人公に関しては説明がかなり乏しい。
普遍的に描けているといえば聞こえは良いが、恋愛経験があまり無くそれでも学園生活を謳歌している陽キャ…という印象を受ける程度のものに収まっていて、どうしても感情移入がしにくい点には注意が必要だろう。
こうした点を鑑みると、日向を主人公…と表記するのは少し疑問符が残り、むしろ木陰を主人公としたストーリーと捉えたほうがスッキリするかもしれない。

もう一つ惜しいと思ってしまったのが恋愛描写部分。
上記で言及した主人公の問題点も含めてだが、主軸であるはずの恋愛描写に関しては起伏が少なく、恋愛描写で最も甘酸っぱいはずの「付き合うまで」を描いた作品として、ドキドキ感があまりにも少なすぎた。
その原因の一つが恋愛感情の「起こり」を作中で描けていなかった事で、お互いの感情がどこから起因するのかが明白でないため、どうしても理想のシチュエーションに持っていくための強引な展開の要に思えてしまう。
Webで公開されている原作を考えると、本作で描かれた物語は半分程度で、物語としてはまだまだ途中という段階ではあるものの、物語の求心力も弱かった。
タイトル通りのテーマで描いた恋愛学園物ではあるのだが、シナリオとしては評価しにくい部分も多い。

キネティックノベル…株式会社ビジュアルアーツが制作するWindows用ゲームソフトの一形態、ノベルゲーム。

【推奨攻略順:選択肢なし】
本作に選択肢は存在せず、1本道の物語となっている。

CG
原画・キャラクターデザインはmarumaさんが担当。
イベントCG数は20枚となっていて、多少バランス軒になるものも存在しているものの、総じて美麗な絵といえるだろう。
他にもSD絵も20枚ほど存在しており、こちらはこもわた遙華さんが担当されていた。


音楽
Vo曲3曲(OP/ED/挿入歌)とBGM16曲が収録。
BGMについてもキネティックノベル大賞の音楽部門にて大賞を受賞した天休ひさしさんがが担当されている。
全体的に尖ったところのない音楽で特筆すべき点はないのだが、メインヒロインのテーマを主軸にしたアレンジBGMなどは意外と多かった。
Vo曲は驚きの3曲で特にOPの「未完成アンサー」やED「ひだまりの方へ」などは良曲に感じていて、特に後者は透明感あるサビが好みだった。
挿入歌として使用された「ギクシャク」も楽曲自体は良いのだが、使われたシーンとの相性に関しては疑問符が残る。


お勧め度
全年齢対象のオーソドックスな恋愛学園物。
根暗だった美少女がとあるきっかけで男の子との恋愛を楽しみ始める、その序盤の様子を描いた作品で、シチュエーション部分はタイトル通りのものになっているが、いかんせん各要素が軽い。
シナリオにあまり見どころはなく、絵や音楽部分のみ標準的な作品のレベルと感じられる。
こうした経緯から、ロープライスで手を出しやすい作品ではあるが、プレイするかは少し慎重担ったほうが良いだろう。


DLsite で購入
駿河屋 で購入

総合評価
繰り返しになるが全体的な評価はそこまで悪くない。ただしシナリオについては気になる部分が多く、その部分を重要視して作品評価を平均より下げている。


【ぶっちゃけコーナー】
根暗なヒロインという触れ込みの木陰だが、実は根がアクティブ…というか中盤からは結構積極的。
いやまぁ、そうしないと消極的な主人公が物語を動かしてくれない(シチュエーションが結構受け身ばかりだし)ので、仕方がないのですが…。
そうなると魅力というか特徴部分が一つ亡くなってしまい、テーマがぶれてしまうなぁ…と。

料理で~という展開も確かに多く入っているのだが、それにしてはそうした部分の描写が結構弱いと言うか、料理の描写や作る過程、彼女の料理への頑張りとかをもう少し書いても良かったのかな、と思う。
今作をプレイした印象だと、あくまで料理はただのきっかけに過ぎなかった、と捉えてしまっても仕方がない内容だ。

この2つの点を考えると、かなりテーマが薄い作品だったな、というのが率直な印象だ。
恋愛描写部分も特筆すべき点がなく、読んでいてワクワク感が少なく多少強引な展開が目立っていたので、どうしても義務感のように仲が進展しているように感じた。

あと決定的だったのは、序盤の主人公の行動。
非現実的でも主人公にはもう少し主体性が欲しかった、と思うくらいに何もしていない。
上記でも書いたが、お互いが好意を持つに至る段階というか、せめてヒロインが主人公に好意を抱くに至る展開部分はもう少し丁寧に描くべきだったのではないだろうか。