ランキング用

2023年に発売された数々の作品の中から個人的にお勧めしたい作品をランキング形式でご紹介します。

当方がプレイした2023年発売の作品リストはこちら


第1位 彼方の人魚姫
Wonder Fool (2023-10-27)


夏、誰かの原風景

大切な友を失って十年目の夏、主人公は溺れたところを人魚に助けられるシーンから始まる、九州最南端の小さな村「龍宮村」を舞台としたひと夏の物語を描いた作品。
企画・シナリオは「ユキイロサイン」と同じ冬野どんぶく氏で、共通√と3人のヒロイン個別√で計10h程のボリューム。
田舎の情緒あふれる雰囲気と人々の温かさが丁寧に描くことで、郷愁を誘い作品テーマの一つである「原風景」を見事に表現し、亡くなった幼馴染「大和綾音」にまつわるエピソードを中心に、大切な人を失った人々の心の空白と再生を描いたヒューマンドラマが持ち味となっている。

登場人物たちの心情描写を中心とし、群像劇のように多角的な視点から心の機微を描き出すことで、ささやかな日常の中で揺れ動く感情を繊細に表現されていて、登場人物たちのぶつかり合いや絆が深まる様子に強く心を動かされる緻密な心理描写がとてつもない魅力となっていた。
「人魚」という要素をスパイスに、起伏の少ない日常の中でも各キャラクターを深く掘り下げ、その感情が鮮明にすることで、読み手の共感を引き出す部分は作り手のこだわりと卓越した技術が感じられる。
個人的最大瞬間風速が日輪√にあり、その部分を多角評価してこの順位にしているのだが、なによりも「プレイしてよかった」と素直に思える泣ける作品ということで、本ブログ趣旨と合致するため、2023年の1位とした。

第2位 ヒラヒラヒヒル
ANIPLEX.EXE (2023-11-17)

大正初期、死者が蘇る奇病『風爛症』に立ち向かう青年医師「千種正光」と、あるきっかけでこの病に関わることとなった学生「天間武雄」の二人の視点から描かれる物語。
「キラ☆キラ」などで知られる瀬戸口廉也氏がシナリオを担当下作品で、ロープライスながら10時間弱のボリュームは十分。
物語は、高い語彙力で綴られた硬質な文章が特徴で、静かな印象ながら、現実の精神疾患や障碍にも通じる普遍的なテーマを扱い、「誰しもが同じ人間である」というメッセージを根底に、個人の個性や社会環境の問題を提起してくれていた。
極限状態における愛の危うさや人間の脆さを描き出し、物悲しさや切なさを強く感じさせる。一方で、前半の重い雰囲気があるからこそ、後半の展開で大きなカタルシスが得られるという対比も魅力だった。
読後感は人それぞれになるだろうが、それでも与える衝撃が小さくないことは確かで、限りなく上質で最高に近い作品であることは間違いない。
1位と悩んだほどに2023年を代表する作品の一つと言って間違いないだろう。


第3位 天使☆騒々 RE-BOOT!
ゆずソフト (2023-04-28)

普通の高校生「谷風李空」のもとに突然現れた自称天使によって魔王の生まれ変わりだと告げられるところから始まる本作の物語。
現代を舞台にした学園ラブコメで、ゆずソフトらしい魅力的なヒロインたちを軸にしつつ、異世界や前世といった特殊な設定が物語に広がり与えている。しかし、あくまでも主軸は各キャラクターの魅力を描き出すことにあり、その点は終始一貫していた。
もちろんキャラクターの作り込みは高く評価出来る上で、物語の構成も巧みで特殊な設定ながらも親しみやすいストーリーは高品質。
個人的には、物語の重要な要素である前世に関する描写がもう少し深く掘り下げられていれば、さらに良かったと感じてはいるものの、シナリオに並ぶ絵、楽曲も魅力で、総合力が高い萌えゲーとして幅広い層におすすめできるとして、この順位にした。


第4位 GINKA
FrontWing (2023-10-26)

5年ぶりに故郷の島へ戻った主人公が、幼い頃に失踪した少女と再会し、共に過ごすひと夏の物語。
伝奇的要素も含まれた本作のストーリーだが、特筆すべきはヒロインのギンカだろう。彼女の様々な面と触れ合うなかで、彼女が持つ純粋で無邪気な言動の数々に思わず心が掴まれるシーンも多かった。
そうした中で彼女が抱える『想い』を受け取ることが本作のテーマとなっていた。
物語として現世と異界の対比や深みのある物語構成は作りての技量の高さを感じられて評価できたのだが、一方で演出や都合主義的な展開、回想シーンの多用による読みにくさもあった。
好みが少しわかれるシナリオではあるものの、6h程にまとめられたシナリオは全体的にクオリティが高く、価格帯も含めて手に取りやすい販売形態となっていたことも評価に入っている。


第5位 プリマドール 冬空花火/雪華文様
Key (2023-04-28)

Keyによるメディアミックスプロジェクト『プリマドール』は「歌と人形」をテーマにキャラクターたちの想いと成長を描いており、アニメ化などもなされていた。
本作はキネティックノベル(ノベルゲーム)としての第1作目となっており、『冬空花火』と『雪華文様』の各1.5h程の分量のショートストーリー2編が収録されている。
前者は主に灰桜、後者は鴉羽にまつわるエピソードが描かれていたのだが、特に雪華文様は感動させられる内容となっていた。
短いシナリオの中でここまで心揺さぶるものが描けるということに関しては感服の極みである。
短編であることはもちろん、ロープライスの全年齢対象という事もあって、4位の作品と同様に幅広い対象が手を出しやすい作品ということも評価に寄与した。

以前は公式HPで公開されていた小説が元となった作品という経緯があり、本作だけでもプレイは可能だが、アニメ等を視聴してからのプレイだと内容が更に分かるようになるのでオススメだ。


第6位 dROSEra ~レディ・バッドエンドの初恋~
Tily (2023-07-28)

HOOKSOFTのサブブランドである「Tily」のブランドデビュー作品で、いわゆるメリーバッドエンドがシナリオのメインテーマとなっている。
ハッピーエンドとバッドエンドのそれぞれの魅力をヒロインと主人公の間で論ずるストーリーは『物語』というものについて考えさせる内容になっていた。
全体量が4h程と短くいものの全体的な造りは丁寧で、物語が進むにつれて変化する作品に対する考え方と恋愛描写が密接に絡み合あっていく。
メインヒロイン意外のキャラクターも個性があって面白みはあるが、テーマ的に好き嫌いは分かれそうな作品ではある。
個人的に物語への向き合い方みたいなのが自分の感覚とすごく合っていて、腑に落ちるような表現や考え方が多かったということもあり、この順位とした。


第7位 コイバナ恋愛
ASa Project (2023-09-29)

男子校とお嬢様学校の合併を伴う共学化をきっかけに始まるドタバタのラブコメ学園物。
アサプロらしいギャグシーンを主体としたテキストは、掛け合いを中心とした会話シーンが多くサクサクと読める所が魅力。
「恋バナ」がテーマとなったストーリーでは男女間の「恋愛における理想と現実のぶつかり合い」が取り上げられており、主人公とヒロインだけではなく周囲でもカップリングが出来ていく所が特徴。
群像劇と呼んでも差し支えないような、多彩な人間関係を軸にした物語は新鮮味も多くギャグ展開に広がりを持たせてくれていた。
基本的にシリアスシーンは少ないのだが、個人的にはこころ√で描かれたサブキャラクターミツオの告白シーンが涙腺に来るほどに秀逸に感じられ印象に残っている。
本編に続きFD「コイバナ恋愛 ミニファンディスク アフターフェスティバル」も販売されているので、合わせてチェックしておくとよいだろう。


第8位 遥か碧の花嫁に
Lump of Sugar (2023-07-28)

海に転落した主人公らが偶然にたどり着いたのは海底都市だった、というファンタジー要素もある恋愛物で、舞台は海底だがケモミミ少女たちがメインヒロインに並んでいる当たりは角砂糖らしいというべきだろう。
最初こそ抵抗感のある設定だったが、受け入れられるようになってからは、丁寧に作られた世界観であることが感じられる。
異種族との恋愛ではなく、異文化交流という部分にファクターを置きつつ描かれる恋愛描写は粗も目立つが、他ヒロインの失恋描写を描いていたりと情緒深い部分もあった。特にイリオネーラ√はそうした部分が顕著。
手放しで褒められない所があるのも確かだが、リィル√が心温まるストーリーとなっていたりと、良き点も加味してこの順位としている。


第9位 俺の瞳で丸裸! 不可知な未来と視透かす運命
Hulotte (2023-07-28)

体の弱かった主人公が幼少期に『魔女』へ弟子入りし、それから十数年後にその魔女討伐するという名目でヒロインの一人である”リュシイ”がやってくるというお話。
上記の通りファンタジー要素も含まれた学園物となっているのだが、基軸にあるのはラブコメを中心とした萌えゲー作品で、話自体もサクサクと展開するので読みやすい他、一部シナリオは設定のファンタジー要素を絡めた読み応えのあるものもある。
ファンタジー要素と絡む部分だけ特殊な関係のヒロインもいるが、その他のヒロインは幼馴染であったところも特徴の一つ。
ビジュアル面はもちろん、シナリオにおけるキャラクターの可愛さについても、その完成度に安心感を覚えるほどで、特殊な設定を含めてHulotteらしい作品に仕上がっていた。


第10位 恋にはあまえが必要です
HOOKSOFT(HOOK) (2023-03-31)

HOOKSOFTの24thとして制作された作品。
設定自体は学園を舞台としたオーソドックスな恋愛物なのだが、さらに特徴的なのは展開が途中から「ヒロインに甘える」ものと「ヒロインに甘えられる」に分かれているところだろう。
それぞれのヒロインに用意された両展開はどうしても一般的なシナリオと比べると短く放っているが、それぞれの展開でなければ見ることのできないヒロインの一面を描き出してくれており、結果的にそれが内面部分の掘り下げにつながっている。
また対象となるヒロインも学園内だけでなく、他の学校や年上の社会人と幅広かった点も物語にバリエーションを与えてくれていた。
突飛な展開や大きな感動こそ無いものの、HOOKSOFTらしいヒロインの魅力を余すこと無く表現する事に注力した作品といえる。
ちなみにFDとして4人のヒロインの「ヒロインに甘えるFD」と「ヒロインに甘えられるFD」が分割で販売されている。


その他ノミネート作品
瑠璃櫻
乙女の剣と秘めごとコンチェルト
・妹と彼女 それぞれの選択(当方未プレイ)


番外編


2023年の作品ですがシリーズ物等の初見プレイには向かない物や、リメイク作品という事で上記対象外となった名作もご紹介!
それぞれに根強いファンがいる作品なので、ぜひ興味を持った方には関連作品と合わせてプレイしてほしいです。


サクラノ刻 -櫻の森の下を歩む-
枕 (2023-02-24)

2015年発売の前編となる『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』に続く後編であり、数年を経て発売された本作は枕にとっては至極の1作と呼べるレベルまで昇華されている。
本作自体は全6章構成。3章部分にて各個別√に分岐があり、4章以降はTURE√とシナリオ構成も特殊で、前作と同様に芸術がテーマに深く関わるシナリオは深く美しい。
一方で難解さもあるテキストは読み流すことに向いておらず、好みの差があるであろう作品なのはたしかだが、前作が好きな方は間違いなく今作も気にいるだろう。
続編やFDに類する作品ということでこの場所になってしまっているが、そういう基準なしのランキングなら間違いなくトップ争いをする作品であることは間違いない。

アマカノ2+
あざらしそふと (2023-04-28)

あざらしそふとが贈る恋愛学園物の金字塔「アマカノ2」の続編となるFD作品で、秋を舞台とした本編から半年後の初夏を舞台とした物語となっている。
大団円の本編アフターを描いた本作は装いも新たになったが、新規追加要素として新1年生のヒロイン『咲來』も登場。
安定感ある充実の恋愛描写はそのまま高クオリティに仕上がったうえで、各個別シナリオでも新規登場の彼女が物語の良い起爆剤として働き、アマカノ2の世界観に新風を吹き込んでくれていた。
シリーズ物でなければ今年のランキングの上位争いに絡んでいたことは言うまでもない。


ましろ色シンフォニー -Love is pure white- Remake for FHD
ましろ色シンフォニー SANA EDITION

ぱれっと (2023-06-23)


2009年に発売された作品のHDリメイク作品と、当時のPSP版のみで発売されていた作品に収録されているヒロインの一人”乾 紗凪”のシナリオがHD版としてリメイクされたものが同時発売されている。
作品的にはリメイクということでランキング外にしたが、もしもランキングにいれるなら確実にトップ争いに入ったであろう作品。
時代が変わっても変わらぬ良さがある純愛と感動的シナリオが詰まった作品ということで、プレイしたことがない人を中心に2023年野中の名作の一つとして紹介しておく。


クリミナルボーダー 2nd offence
クリミナルボーダー 3rd offence

Purple software (2023-05-26/2023-11-24)


前年に発売された「クリミナルボーダー 1st offence」に続く2作目、3作目が、ロープライス作品ということで1年間でそれぞれ発売となった。
テーマが痛快犯罪活劇ということでPurple softwareとしては珍しい刺激的な内容が特徴で、1作目の「萬屋 ひな」に2作目では「勅使河原 琴子」が3作目では「メリル・ハサウェイ」が攻略対象となっている。
短いシナリオではあるが、1作目の負けず劣らずの驚きの展開が詰め込まれており、特に3作目の衝撃度凄まじく、4作目への期待も俄然上がった。
現在は4作目も発売さてシリーズも完結を迎えている。4作がセットになった作品も発売されているため、今からプレイする人はそういったものを買い求めるとよいだろう。


あまいろショコラータ3
きゃべつそふと (2023-11-24)

2020年発売の「あまいろショコラータ 」からナンバリングタイトルを重ねて3作目。
今作も新規のけもみみヒロイン達とゆるふわっとした優しい日々を描いた作品になるかと思っていたのだが、その予想を覆したのがコハナ√で過去作の伏線をしっかりと回収しつつ展開する物語は、まさにあまショコにおけるTRUE√的内容になっており、終盤では涙腺が思わず緩んでしまったほど。
シリアスシーンがある本作は過去の2作と比べても異質で、2023年で最も驚かされたシナリオといえ趣旨に反した人もいたかもしれないが、個人的には高く評価している。