
2022年に発売された数々の作品の中から個人的にお勧めしたい作品をランキング形式でご紹介します。
当方がプレイした2022年発売の作品リストはこちら
第1位 ヘンタイ・プリズン
Qruppo (2022-01-28)
――ここは、変態の流刑地。
「抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?」(通称ぬきたし)で波乱を呼んだ、エロゲー界の風雲児Qruppoが次に制作した作品。
変態たちが集う特殊な刑務所「チューリップ・プリズン」を舞台に、露出を芸術を考える主人公「湊 柊一郎」が自身の信念を掛けて脱獄を目指す物語となっている。
今作でも『ぬきたし』で培った淫語ワールドは健在で、癖になる独特の世界観と名作映画「ショーシャンクの空に」をオマージュしたストーリーとが、思いがけない化学反応を引き起こす。
作中で主人公を襲う寄せては返す波のような困難、それらを乗り越えた先に再度現れる苦境。まさに艱難辛苦と言っても過言ではない状況を、予想だにもしない方法で乗り越えていく。痛快で爽快感あるストーリーと熱く盛り上がる怒涛の展開、独自の世界観で綴られる物語はとにかく熱く、面白く、そして感動できる作品に仕上がっている。
内容的にも、こうしたコンテンツでしか表現し得なかった物語、という事で唯一無二の価値を生み出していたのだが、後半の物語に込められたメッセージ性の強さも評価を一つ押し上げた要因で、他にもシナリオ部分の以外のCGや声優の演技、SEといった演出といった各々の要素が高いレベルで共存し、作品を一つ総合芸術として域にまで押し上げてくれていた。
本筋となるTRUE√の出来はちろん至高だが、各個別ヒロイン√の完成度の高さも負けておらず、サブキャラに至るまで非常に良く作り込んでおり、どこをとっても批判すべき点が見当たらない。
2022年を代表する名作の一つとして、ぜひ広く知ってもらい、多くの人にプレイしてほしい作品となっている。
第2位 ジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world-
きゃべつそふと (2022-07-29)
「意志(ジェム)」と呼ばれる宝石を発現した者のみが入学できる「フリギア王立ジュエリー・アカデミア」、そのペガサス組に集った6人の少年少女たちが紡ぐ、異能バトルありの青春学園ファンタジー作品。
メインライターに冬茜トムさんを迎えた、1位と併せて2022年の双璧をなす名作。
異世界を舞台とした圧倒的な世界観の中で描かれる、宝石によって発現する異能を駆使したバトルと、息をつかせぬ展開の数々、その中で描かれる登場キャラクターの意思と遺志―尻上がりに加速していく物語に、読む人はだんだんとジュエハの世界へと引き込まれていく事になる。
今作の最大の見所が意志と意志がぶつかり合うバトルシーン。
なかでも、そこに至るまでの過程や背景設定は良く練られており、互いを研磨するようにぶつかり合う想いを表現した心理描写は秀逸の一言に尽きる。加えて感動的な楽曲も数多く用意されており、上記にあるような要素に効果的な演出を行っており、とても涙腺を刺激するシナリオにも仕上がっていた。
こころに深く刺さるようなシリアスシーンと、燃え上がるようなバトルシーンというシナリオの強弱はもちろんなのだが、ライターの特色である後半の種明かしの存在も大きく、その伏線の存在を気付かせない程に巧妙に隠された真実は、驚愕の内容であったと同時に、シナリオにおける大きな転換点にもなっており、さらにストーリーに深く引き込まれていく。
燃えゲーと泣きゲーでの両方の資質をもった本作は、シナリオを中心に全体的なレベルの高い作品だったが、本編ストーリーに力を入れ過ぎた結果、個別√については消化試合の様に内容が薄くなっていたという問題点も存在。
ただし、それを補って余りある骨太のシナリオはやはりアピールポイントとして大きく、2022年を代表する名作としてこの順位としている。
第3位 イハナシの魔女
フラガリア (2022-08-13)
同人ゲーム制作チーム「フラガリア」のが手掛ける王道ボーイ・ミーツガールの恋愛作品。
沖縄の離島である渡名喜島を舞台とした物語には、土着信仰やファンタジー要素も絡められており、プロローグを含めた全4篇構成の作品となっている。
序盤は田舎を舞台とした作品にありがちなスロースタートなのだが、物語を進めることで徐々に明らかになっていく設定の数々には強く心を惹きつけられていった。
同時にヒロインのリルゥに関しても好感度が上がっていき、最終版にてその感情は爆発することとなる。
書きたいものを書きたいように、ストレートに描いたメッセージ性のわかりやすい物語はシンプルながらも力強く、忘れた感情を思い出させてくれる。
同人作品ということで音楽を始めとする一部素材はフリー素材(一部有料素材)なども使われているが、それらは非常に良く作品にもなじんでいたことも評価点の一つで、この点に関しては心配は一切不要だと断言したい。
全年齢ということで手を出しやすく、SteamやSwitchといった多数のプラットフォームでも展開されているため、気になった方はぜひプレイしてみてほしい。
第4位 夏ノ終熄
CUBE (2022-08-26)
シナリオをかずきふみさん、原画をうみこさんが担当した終末世界が舞台の短編作品。
世界的な伝染病が流行する世界において、田舎でサバイバル生活をして過ごす主人公と、海へ向かおうとする少女『ミオ』が出会う所から物語が始まっている。
緊迫した世界観と田舎の村、生きていくための生活とヒロインのミオの明るい性格、ゆっくりと芽生える恋心と、静かにやってくる死の足音といった、感情の動きや周囲の情景と合わせた対比が素晴らしく、描写がとにかく秀逸であった。
また今作のBADENDについても、込められたメッセージ性がストレートに伝わってくる質の良い物となっていて、個人的にも評価が高い。
この作品をプレイをした後、大きく心の中を抉られると共に、去来する想いは一体何だったのか。
いつかは出るだろうと思っていた現代の問題「コロナ禍」を意識した短編で、短編という括りでみるのならば、2022年の最優秀賞はこの作品と太鼓判を持って言える作品である。現代を生きていく人たちの心の動きすら大きく変えうる作品だったとして、堂々のこの順位とした。
第5位 終のステラ
Key (2022-09-30)
人類衰退後の荒廃した世界を舞台としたSFジャンルの全年齢対象のキネティックノベルで、「運び屋」"ジュード"と人間になりたいアンドロイド"フィリア"の旅を描く。
シナリオを担当されたのは田中ロミオさんということで、彼の得意分野でもあることから、その本領が遺憾なく発揮された作品となっている。
道中は徘徊する機会に襲われたりと危険と隣り合わせの旅程であり、そんな終末世界でも世間知らずで天真爛漫なフィリアに対し、序盤の主人公との仲は険悪となっていたが、様々な困難を乗り越えていく仲で絆が形成されていく様子をメインで描いている。
終盤では主人公の過去や、世界情勢、依頼者の思惑といった様々な要素が絡み合い物語が加速していくこととなっており、全5h程度のボリュームながら、プレイすればすぐに世界観に引き込まれるほどの濃密な時間が味わえるだろう。
また、シナリオ部分と合わせて描かれる荒廃した世界観も魅力で、雰囲気がしっかりと形成されていた。こうした部分も作品評価に大きく寄与しており、短編ながら堂々のこの順位とさせてもらった。
第6位 AMBITIOUS MISSION
SAGA PLANETS (2022-05-27)
『アンビシャス』という十二の宝石を巡る怪盗活動に参加する事となった主人公の物語。
シナリオライターにさかき傘さんを迎えて制作された作品で、「盗み」という手法を使っているものの、近年の作品にもあるルパン三世や怪盗キッドのような勧善懲悪的なストーリーが主軸で、その展開や手法に興奮させられると同時に、爽快感も強くなっていた。
またそれ以外にも舞台である北海道文化がモチーフとして用いられていたり、「時間」や「経済」といった幅広い分野の話題を絡めたシナリオは読みごたえも十分で、最終版に用意されているTRUE√も非常に良くできている。
また学園における日常シーンでは、サガプラ作品らしい特徴あるヒロイン達の魅力も十分に引き出してくれており、そうしたキャラクター達と時に笑い、時に泣ける、この作品ならではの面白さや魅力が詰まった作品になっていた。
各個別アフターとして「AMBITIOUS MISSION アフターエピソード1」や「AMBITIOUS MISSION アフターエピソード2」が発売されている他、今作のサブキャラクターである男の娘「つばめ」の追加シナリオパッチなども発売されている。本編が気に入った人はぜひチェックしてみてほしい。
第7位 アンレス・テルミナリア
Whirlpool (2022-03-25)
Whirlpoolの15周年作品。
森の奥に佇む社ノ宮学園を舞台に、ギフト呼ばれる異能を持つ少年少女たちが、与えられた運命に翻弄され、時に失い、時に諦めながらも、限られた世界の中で懸命に生きる姿を描いている。
ライターが近江谷宥さんという事で、同社作の人気作『pieces』とも世界観的な繋がりがあり、作品の雰囲気自体にも類似点が見いだせるのだが、序盤は謎も多く、√を巡ることで伏線を回収し、最後のTRUE√にて真相が明らかになるのだが、全体を通して少し難解であった。
ただ異能によって主人公の記憶が1つしか持ち越すことができない、という設定が物語のアクセントとなっており、物語の求心力は十分にあるシナリオであった。また、こうした物語構造でありながら、各ヒロイン√がおざなりにならなかった事も評価したい。
全体的に見ると玉石混淆で、良き点と悪い点が混在しており、上記で挙げたようなシナリオや良く作られた世界観に加え、美麗な絵と合わせたキャラクターの可愛さは、渦巻作品としての安定感も見せてくれている。
こうしたシナリオと、その他の部分のレベルの高さ、そしてそれぞれの調和の良さを鑑みて、この順位とした。
第8位 キスからはじめるエゴイズム
皐月 (2022-10-28)
スミレのサブブランドである皐月から発売された処女作。
全てを失った元ホストと、脱走中のセクサロイドとの出合いから始まる、異色のボーイミーツガール作品SF世界を舞台とする物語において、ヒロインのアンドロイドに感情はあるのか、というテーマを取り扱っている。
ロープライス作品ということもあってシナリオ自体も2時間程度の短い話が収録されているのだが、ボリュームの短さ故に世界観や設定部分への深堀りは期待できない。
一方で、強制的に身体の関係を持たされることとなった人とロボットという舞台を作りあげたシナリオの展開自体も魅力なのだが、なにより主人公とヒロインの感情の動きや関係の変化という部分に重点を置いて描いているため、最初から最後まで見るべき部分がブレる事無く、作り手側のメッセージがストレートに伝わる作品に仕上がっていた。
どうしても普遍的テーマを取り扱うが故のインパクトの弱さはあるのだが、それを鑑みても余りある魅力が随所に詰まった作品であり、起承転結がしっかりとした尻上がりに面白くなっていく作品として短編ながらこの位置とした。
第9位 放課後シンデレラ2
HOOKSOFT(HOOK) (2022-09-30)
同社作の『放課後シンデレラ』シリーズに続く、「下校」という学園イベントに恋愛物としての可能性を詰め込んだ作品である。
ナンバリングタイトルではあるものの、前作からは一部作品舞台を共有するのみに留まっており、登場キャラクター等は一新されているため、今作からのプレイでも問題は全くないという事で今回のランキングに加えている。
作品の魅力は何と言ってもHOOKSOFTで培われた可愛いヒロイン達。
日常の中で、ふとした瞬間の挙動やさりげない仕草に詰め込まれたこだわりが巧みに彼女達の魅力を引き出してくれており、物語を進めることでヒロインに対しての愛着が増す事間違いなし。
お得意のギャグシーンも強化されており、軽快な日常シーンが演出されると同時に、プレイ時の没入感が高い作品に仕上がっていた。
また今作はそれだけではなく、告白シーンや終盤の締めに入るシーン等、要所における破壊力も存在している。
軽く楽しめる内容でいながら、締めるところは締める、緩急のくっきりとした良い作品であった。
第10位 アマナツ
あざらしそふと (2022-08-26)
アマカノシリーズで有名なあざらしそふとが制作する、田舎を舞台としたラブコメ学園物。
のどかな田舎を舞台とした恋愛学園という共通項はあるが、アマカノとは制作陣が違うため作風も異なっている。
ヒロインとの二人だけの世界観を深めたアマカノに対して、今作ではサブキャラクター達との掛け合いを重視。特に登場人物達達によるギャグシーンを多く取り入れることで、明るい恋愛模様を描き出した本作はより大衆的な方向性をとったといえ、多くの人が楽しみやすい内容となってた。
ただ各ヒロインに対する踏み込みや、シナリオ自体の内容という意味ではかの作品に劣る部分もあり、一般的で埋没しがちな作品と評することもできる。
その他ノミネート作品
・マガツバライ X-rated(light)
・華は短し、踊れよ乙女(ensemble)
・1/1彼氏彼女(SMEE)
・アスカさんはなびかない(あざらしそふと)
・RE:D Cherish!(CRYSTALiA)
・ツヴァイトリガー(Orthros)
・アマエミ -longing for you-(あざらしそふと)
番外編
2022年の作品ですがシリーズ物等の初見プレイには向かない物や、リメイク作品という事で上記対象外となった名作もご紹介!
それぞれに根強いファンがいる作品なので、ぜひ興味を持った方には関連作品と合わせてプレイしてほしいです。
蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2
sprite (2022-05-27)
大空を舞台とした架空のスポーツ「フライングサーカス」による青春を描いた名作『蒼の彼方のフォーリズム』、そのヒロインの一人「鳶沢 みさき」のアフターシナリオを描いたものが今作である。
一度は解散となった制作チームが再度終結し、作り上げた至極の一本。
本編では他のシナリオと比較し、スポーツの鬱々とした面を取り上げたみさき√であったが、今作でもそうした部分は健在。
シナリオはもちろんの事だが、絵や楽曲についても全てが高レベルに纏まった作品です。
ハミダシクリエイティブ凸
まどそふと (2022-11-25)
大人気となったまどそふとの『ハミダシクリエイティブ』の続編。
魅力あるキャラクター達とのアフターストーリーが帰って来た、という部分だけでも十二分に魅力を感じる作品なのだが、今作ではさらにサブキャラであった「竜閑 天梨」のシナリオも追加。
より一層、深く掘り下げられるヒロイン達の内面はもちろん、新たなヒロインとの恋のお話もぜひ注目してほしい、本編をプレイ済みで今作をプレイしていないのは本当にもったいない、そう太鼓判を押せる作品です。
クリミナルボーダー 1st offence
Purple software (2022-10-28)
アングラな雰囲気漂う世界観と、想像を超える展開の数々が魅力の本作。
Purple software製作の連続短編物ということで、今までの販売方法や作品の雰囲気の違いに戸惑いを感じたが、そうした湧き出る不安を払拭するに十二分なクオリティとなっておりました。
連続物という事でここで紹介しているものの、今作の内容だけでも十二分に衝撃的な物となっており、プレイしたら必ず続編が読みたくなる、それくらいの求心力ある作品であった。
竜姫ぐーたらいふ3
Whirlpool (2022-10-28)
Whirlpoolが送る短編萌えゲーシリーズ作品。
ナンバリングタイトルということもあり、雰囲気はしっかりと踏襲しつつも、登場するヒロイン達もさらに増えて賑やかになった本作は、過去作と同様に楽しめるはず。
渦巻自体、最近はこうした短編タイトルをコンスタントに出してくれているので、あまりこだわらず、直観で好きそうならプレイするというくらいのスタンスで良いのかもしれない。
保健室のセンセーとゴスロリの校医 / 保健室のセンセーと小悪魔な会長
Citrus (2022-03-25 / 2022-05-27)
「保健室のセンセーシリーズ」としてCitrusから発売されている作品。
1作目の『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』では短編ながらも十二分な破壊力をみせつけてくれたのだが、アイヌ文化をテーマにした2作目や本シリーズの最終章である3作目においても、しっかりと雰囲気を踏襲しつつ、それぞれに違った魅力ある作品へと仕上がっている。
1作目の世界観が気に入ったのなら、他の2作も間違いなく気に入るという事もなのだが、3つ作品を通して伝えたいメッセージがしっかりと描かれた作品であるということで、合わせてお勧めしておく。
グリザイア:ファントムトリガー 08
FrontWing (2022-02-25)
長く続いた『グリザイア ファントムトリガー』シリーズの最終章。
戦闘関連の描写では相変わらずのグリザイア節がさく裂しているものの、シーン自体の盛り上がりはそこまでなく、最終章に向けて高まった期待を超える程ではない。それでもシーン展開のさせ方や、登場人物の極限における心情を描写することで内面を掘り下げる手法など、シリーズとしての魅力も依然存在している。
続編としてスマホ版ゲームをPC版へと移植した「グリザイア クロノスリベリオン」も発売されているので、そちらもチェックしておくと良いだろう。





















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