タイトル : LUNARiA -Virtualized Moonchild-
ブランド : Key


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★★ [5/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]
(総プレイ時間 : 3.5h)

シナリオ

キミと翔ける。奇跡だけを信じて

Keyが制作する全年齢対象のキネティックノベル

舞台となるのは少し未来月面開発事業が進み、VR空間の充実した、

今作の主人公となるのは『Skyout』と呼ばれるVRバトルアクションレースにおいて、一匹狼として静かに情熱を燃やす天才ゲーマー「T-BIT」こと「狼代 旅人」。
そんな彼がある日、不思議な空間に迷い込み、「LUNAR-Q」(以下Q)と名乗る一人のAIに出合ったことから物語が始まる。

近未来を舞台としたSF作品で、作中ではバーチャルとリアルの両方から対比するように物語が描かれている。他に設定的な所でも「月と地球」「AIと人間」「兎と狼」といったような対比が美しく作られている作品のように感じた。

ロープライス作品という事もあり文章量は少なめだが、作品のシナリオは作中に出てきた『Skyout』のレースを彷彿とさせるほどスピード感あふれる展開が持ち味。
ただし勢い重視なため多少強引な展開が多く、SF部分に関しては所々ご都合主義のように感じられるかもしれない。

序盤から中盤にかけてはヒロインであるQを描写しつつも、主人公の『Skyout』のレース描写が中心になっている。レースの描写自体が微妙だったのは多少残念ではあるものの、あくまで主体はボーイミーツガール、主人公とヒロインが恋するまでを丁寧に描かれている。
主人公は斜に構えてキザ、ヒロインは純粋無垢と恋に向かない二人であり、加えて文章量も短めという難しい状況ではあったものの、文字以外の所において、恋に落ちていく過程をしっかりと伝えられるように作られており、気が付けば二人でいる事が自然になっていた。
感じられる確かな信頼と絆、これがあるからこそ後半に向けて、物語が盛り上がったといえる。
特に「384,400kmを繋ぐラブストーリー」と公式に銘打たれていたが、その「距離」の大きさをここまで切実に切なく表現してくれるとは想像だにしておらず、演出の勢いもあって後半のシーンでは思わず何度も涙が溢れてしまった。

ヒロインのQに関しては本当に魅力あふれるキャラクターで、本島は語るべき事柄も多いのだが、ネタバレを考慮すると言及することができず、これ自体が今作の魅力の大きな部分にもかかわっているので、ここに書き記せない事が残念である。
ただ一言、2週目で感じ方は変わるかもしれないという事だけ付け加えておきたい。

なんにせよ、SF作品としては多少の粗も見えるものの、純粋な恋愛物として
短編でここまで感動させてくれる作品はそう多くない。ブランドとしてのゲタを履かせる必要もなく、名作となりえるシナリオと言ってよいだろう。

キネティックノベル…株式会社ビジュアルアーツが制作するWindows用ゲームソフトの一形態、ノベルゲーム。

【推奨攻略順:作中に選択肢無】

CG
原画担当はふむゆんさんと佐伯ソラさん。
柔らかな印象を受ける線にテカりを感じる塗りで作られた美麗な絵。
立ち絵とCG共に枚数も十分で全体的にレベルが高い、加えて背景描写もかなり力が入れられており、舞台となるSF空間を想像するための一助になっていた。
プレイ中にも多いと思っていたのだが、イベントCGの半分以上が作中のレースに関係する物だった事には少し驚かざるを得なかった。


音楽
BGM24曲、Vo曲3曲(OP1/ED2)という構成で、Keyならおなじみの折戸さんを始め、 水月陵さんやどんまるさんなど、錚々たるメンバーが揃っている。そんな中、今作のBGMの多くを担当したのが「天休ひさし」さんというお方。私個人としては初耳なのだが、今作に含まれている楽曲の素晴らしさを鑑みると、作品を支えた立役者の一人と言っても過言ではない。
BGM自体に関しては緊迫したレース描写で使われるBPMの高めな楽曲や各ヒロインのテーマまで用意されており、ロープライス作品とは思えないほど引き出しが広く、どれも素敵な楽曲なのだが、その中でも特に特に気に入ったのが、レースに使用されている「SKYOUT FOREVER」や逆転を想起させる「DAUNTLESS CHASER」、素直に涙腺を刺激する「A.I.」「I.D.」であった。
Vo曲は3曲存在し、その全てを担当したのは全て月乃さん。
今作で初めて歌声を聞いたのだが、高音が安定して綺麗に出ていると感じ、特に今作のVo曲では最も気に入っているED「Swing by」との相性も良く感じた。対照的にポップで明るい2つのOPも合わせてぜひ聞いてほしい。


お勧め度
近未来を舞台としたSF作品である今作、Keyブランド作品という事もあって私のような鍵っ子なら言わずもがな、多くの興味と期待を背負った作品となっているのだが、そんな期待にもしっかりと応えてくれる作品になっていた事が、まず一つ今作のお勧め度としての評価を押し上げてくれている。
テーマとしてSFが占める部分も大きいものの、個人的には純愛作品として今作を推しておきたい。
またこうした作品に多くあるプレイするためのハードルに関しても、ロープライスかつ全年齢対象ということで、この分野の作品に慣れていない人にとって手に取りやすく、なおかつプレイして後悔がでないであろう内容となっていた事も高評価の一因となっている。


総合評価
シナリオに関しては多少言及すべきところはあるものの、美麗なCGや心揺さぶるような音楽の手助けもあり、素直に感動したことを鑑みると、名作といえるこの評価が相応しいだろう。


【ぶっちゃけコーナー】
最近はやりのVtuberみたいなの(正確には違うけれど)を取り扱った最新テーマを取り入れている事、作品に登場したサブキャラの魅力など、語らねばならないシナリオの良さは尽きないものの、一方で、悪さ部分にあまり触れていないなーと思うのでそこに少し触れたい。

まずはシンプルにSF部分の描写が弱い。
それは世界観の構築に大きな影響を及ぼしていたはずだし、展開の説得力の弱さにもつながっていたはずだ。シナリオの分量的に触れられない事は多いため、多少は仕方がないものの、TIPSを使用したりと創意工夫次第で改善できたのかもしれない。
もう一つ挙げるなら、シナリオ部分でも少し指摘したレース描写の拙さだろう。
レース描写には主人公のカッコよさを見せる以外にも、Qとの絆を感じさせるシーンも多くあり、それ自体は大いに機能していたように思う。本格的な燃えゲー程の物は望めないとしても、肝心の描写が曖昧だったり、稚拙だったりしたため、どうしても物語の雰囲気に乗りにくく、あと一歩のギアを挙げられなかったのも確かで、この辺りは描写に向き不向きがあるので難しい所だろう。

ただやはり、個人的にはそうした部分が占める部分が多いことは認めつつも、そこを主体とした作品ではなかったのではないかな、と受け止めていて、むしろそう思わせてくること自体が伏線というか…。
ただ単純にボーイミーツガールの恋愛物として捉えてみた時に、二人が凄く純粋に「会いたい」「一緒にいたい」と想い合っている事がこちらにまで伝わってくる、だからこそ最後の展開は多少強引なれど、展開の方向性自体に文句を言う人は少ないだろうし、プレイし終えた後の読後感が凄く良いんだろうな、と思った。

作品を終えてもう一度会いたいな、キャラの続きが見たいなと思える作品は少なく、さらにはその幸せを願ってしまう作品は稀有である。
Key作品の多くはそうした作品が多い気がするが、この作品もそれに漏れず、やはりプレイしてよかったと心から思えたことを文末であるが書き記しておきたい。