タイトル : 創作彼女の恋愛公式
ブランド : Aino+Links


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 10h)

キャラクター・シナリオ

もう一度、君と翔ける、恋を、創作を、青春を――

元々Campusブランド所属のメンバーがあかべぇそふとに吸収されて立ち上げた新ブランド『Aino+Links』の処女作。
創作分野に関して特に力を入れた『才華学園』を舞台に、文章・絵・演技…各分野のクリエイターたちにフォーカスを当てた青春物となっている。

物語は共通シナリオで8章、個別シナリオが4人のヒロインにつきそれぞれ2章で構成されており、個別では各章の合間にEDが入っていたり、文章が読みやすかったりと作品のテンポ自体も悪くなく、最後までストレスなく読める作品には仕上がっていた。

以降では共通部分と個別部分において、いくつかの評価点と問題点を挙げていきたい。
まず共通部分においては多くの作品にあるような状況説明だけではなく、ヒロインの過去や疑似恋人関係における描写、物語の進展に伴って変化する人間関係や、クリエイターとしての挫折や苦悩なども描かれており、創作に携わる人たちなりの青春模様を作中時間の1年のスパンをかけて描き出している。
この期間をこの文章量で描いている事に関して、長いか短いかの評価は人によるだろうが、それでもヒロイン達を詳しく知ってから個別シナリオに分岐していくという形をとってくれていたのは、個人的に評価したい。
一方で、特殊な舞台かつクリエイターたちの恋愛というテーマを掲げてはいるものの、そうした設定を含めてどこかで見たことある物語となってしまっており、個別シナリオを含めて先の流れが予想出来てしまう素直なシナリオで構成されている。
クリエイターのクリエイターによるクリエイターのためのシナリオという事もあって、創作に纏わる心理描写に関しては真に迫ったものがあるものの、それ以外の部分に関しては良くも悪くも期待を大きく裏切ることがない優等生のような内容で、読んでいて忌避感こそないものの、感情を大きく動かす必要があるシーンにおいての押しが足りない。
こうしたものの、原因の一つとして考えられるのはクリエイターとしての側面を描く気持ちが前に出すぎており、主人公やヒロイン達の『強すぎる』精神面が、逆にリアリティを削いでしまっているのではないかと考えられる。
青春や恋愛を描く上で『強い』部分が大切なのは勿論なのだが、それを引き立たせるための『弱い』部分が決して不必要なわけではない。
出来れば各シーンの心理描写や展開にもっと登場人物たちの弱音や汚い部分を前面に押し出し、迷って戸惑って間違ってしまう、どこにでもいる人間としての魅力も描いてほしかったと、個人的には思っている。

豊富なイベントと共に描かれた共通シナリオと対比するように、個別シナリオはかなり簡素になってしまっていて、分量的にもそうなのだが、展開についても予想できてしまうものが多く、良くも悪くも予定調和のようなシナリオで構成されている。
驚きの無いシナリオはストレスこそないものの、同時に心を動かすことができず、最終的に物語としては良くできているが、心には残りにくくなっていた。
これは作品のTrue√にあたる逢桜についても例外ではなく、予想出来るシナリオであっても独特な世界観や圧倒的描写力などをもって表現する作品はたくさんあるものの、今作はそうしたところに重きを置いた作品ではないことは明白で、ことシナリオ部分に関してこうした問題が作品に与えた影響はとても大きい。
またシナリオに関してもう一つ問題点を挙げるなら、作中ではどの√においてもHシーンが連続して入る部分だろう。
18禁という作品の性質上、仕方がないと受け入れることもできるものの、一部√では設定的に無理がある場面でも強制的に入れられていたりと、あからさまなシーンも目につき、ライターの腕の見せ所である展開力に不足を感じてしまった。

散々に問題点を挙げたが、今作のシナリオにおいて魅力的に感じた部分もあり、それが今作のサブキャラクター達だった。
シナリオ中では主人公の友人となる獅堂兄妹(姉弟)はもちろん、過去に『才華学園』に通っていた姫子やエリカといった大人のクリエイターたちのエピソードも一部紹介されており、特に各ルートにおいては、大人のクリエイターたちの物語・歴史についてが対比的に触れられている。
そうしたシナリオからも彼・彼女たちが作品に息づいているような深みが感じられ、ぜひアナザーIFシナリオのような形で読んでみたい、と思わせてくれるほどであった。

シナリオ部分の総括として、クリエイターたちの青春と恋愛を描いた今作は、失恋シーンをしっかりと描いてくれていたりと評価したい点も多々あるものの、作品の主軸となるようなテーマや作品のキーとなりえる場面、困難な状況等の転換点となる展開をサラリと流してしまうため、どうしても一つ一つのシーンに深みが出ておらず、結果として創作に命を懸け情熱を燃やす主人公やヒロイン達の姿がぼやけてしまっていた。
そうした点が及ぼした影響も無視できず、評価としては抑え目になってしまっている。


共通√【 ★★★☆☆ 】  6h
主人公の才華学園入学からの2年が全8章構成で綴られている。
それぞれの章は0.5h-1hほどの分量となっており、クリエイターたちを育てる特殊な学園生活を中心に、各ヒロイン達との出会いや関係の進展、交わることで見えてくる各人の抱えている問題を描く。
ざっくばらんに表現すると、ヒロイン達と一つのゲームを作り上げるまでの、クリエイターとして過ごす青春の日々が大きなテーマといえる。
共通ルートとしては比較的長めではあるものの、それでも2年という月日を描くには短く、イベントも豊富なため一つ一つのシーンは比較的短く感じる程で、クリエイターとしての心理描写は真に迫るものがあるものの、一方で人間関係の変化や恋愛感情といったものが軽く取り扱われている気がしてしまう場面も多かった。
章が終わるごとにEDが流れる演出があったりとシナリオのテンポ自体はよく、豊富なボリュームであっても読み飽きることがなく、全体的に綺麗に纏まったシナリオで評価はしている。
一方で、一つ一つのシーンに良い物があっても、そこまで感情が動かされなかったため、全体的な評価自体は抑え目になっている。


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月見坂 桐葉√【 ★★★☆☆ 】  1h
声優科に所属する一年生、「月見桐奈」名義で大人気活躍中の若手声優。
性格は明朗快活。人当たりがよく笑顔が素敵な女の子で落ち着いた物腰と家庭的な印象を併せ持ち、美人な見た目と合わせて男性の理想を具現化したような女の子なのだが、色々な秘密も持ち合わせている様で…。

序盤に見せていた人気声優としての姿と、親密になっていく事で見えてくる『桐葉』としての一面とのギャップが良く、主人公以外のヒロインである逢桜やエレナとのやりとりも好みであった。
印象的だったのは、逢桜からもツンデレと評される桐葉の告白シーン。
個人的にあと一歩の押しが欲しくなってしまったものの、シチュエーション的には十二分な盛り上がりがあり、この√最大の名シーンとなっていた。
物語の後半には人気声優と付き合うからこその障害なども取り上げられており、展開自体は素直なものになっていましたが、主人公がクリエイターとして再び桐葉に向かい合うことで、今一度『月見桐奈』としての矜持を見せてくれていた所なども良かったですね。


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凪間 ゆめみ√【 ★★★☆☆ 】  1h
寿季のひとつ年下の従姉妹。
「GoldenLord」というペンネームで活動している新進気鋭のイラストレーターで、その名の通り金髪ヒロインをこよなく愛している。
コミュ力は皆無で人見知りなため、絶賛不登校中で引きこもり生活をしている。
絵に関しても現実逃避のために始めた部分が多いため、モチベーションが無いと手が進まず、仕事の締め切りも破ってしまうことも多いダメ人間気質の女の子。

主人公に心を開いてからは兄のように慕ってくれているゆめみは、ヒロインの中では唯一共通ルートにて主人公への恋心が無かったヒロインとなっている。
そんな彼女のシナリオに関して、疑似的とはいえ『兄妹』としての関係を結んだ二人の恋、という部分がメインになるかと思いきや、義妹であるため背徳感も薄かったからなのか意外と軽く流されている。
むしろ、引きこもりとしての「ゆめみ」というキャラクターにファクターが当てられており、加えて共通ルートでも感覚で絵を描いている、と触れられていたが、その伏線をしっかりと使った展開の分かりやすい内容になっている。
展開が読めており、あまり山もないシナリオなので評価がし辛かったのが残念な所。


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雪妃 エレナ√【 ★★★☆☆ 】  1h
ノベル科所属するミステリアスで美人な先輩。
北欧由来の美少女ではあるものの、感情表現が乏しく何を考えているのか分からないためか、あまり友人は多くない。
趣味で官能小説を書いているものの、その実力は壊滅的と言ってよい。時郎い参考の為によく官能小説を読んでいたりもしていて、周囲を驚かせている。

個別シナリオは逢桜の代わりにライターとして参加したエレナと共にASを完成させるまでのお話となっており、圧倒的才能を持つエレナに対して、挫折と挑戦を繰り返す主人公の姿をメインで描いている。
主人公自身の成長と共に、エレナ自身も忌避していた彼女の才能についてを絡めて描いた展開自体は良かったのだが、主軸となる主人公の創作に対してのエレナの心理描写に二面性があり、テーマとなる主軸部分がブレてしまっていた事だけが不満点として挙げられる。


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彩瀬 逢桜√【 ★★★☆☆ 】  2h弱
寿季の幼馴染で初恋の少女。
真面目で素直な性格をしており、しっかり者の常識人であるためヒロイン達の中ではツッコミに回ることも多い。
学園入学前から恋愛小説で数々の賞を受賞しており、作家としての知名度と実力を兼ね備えており、同じ物書きである主人公を互いに良きライバルとして認め合っている。

個別シナリオはセンターヒロインらしく、今作の集大成でありTRUEとと言っても良い内容に。
内容としてはどの√でも明かされることのなかった逢桜の抱えていた秘密をテーマに、クリエイターとしての生き方を描き出している。
物語の終わり方をどう受け止めるかは人それぞれだが、どうしてこの終わり方にしたのか、今作の主題となる恋愛公式部分と絡めて描くべき部分において、それをせずにこの展開にする必要があったかに関して考えると、どうしても説得力不足を感じる。
もちろん良いシーンも盛り上がるシーンもあるにはあるのだが、今までの流れや作品を締める立ち位置の関係上求められるハードルが高く、それを十分には満たせていたと言えず、評価がそこまで上げられなくなってしまっている。


[主人公]
ノベル科に通う1年生。
浅く広く嗜むタイプのオタクであり、特に声優の『月見坂 桐葉』に関しては神聖視しているほどの大ファン。
「Toshi」というペンネームで活動しており、大人気となった同人ゲーム『Create#(Number)Girls』―通称CNGにおいてはシナリオライターとして注目を浴びていたのだが、とある理由で現在はスランプ中のため物語を書く事ができなくなっている。
物書きとして逢桜には強いライバル意識を抱いている。


【推奨攻略順:ゆめみ→エレナ→桐葉→逢桜】
逢桜√のみ全キャラ攻略後に解放される。それ以外の攻略順は特にないので好きなキャラクターからの攻略で良いだろう。


CG
繊細な線と色彩に瑞々しさを感じる美麗な絵。
メイン原画を担当する有葉さんはあかべぇファンならおなじみだが、当時から高かった画力をさらに高められていた他、背景には過去のブランド作品からの絵が登場していたりと懐かしさも感じる。
ヒロインが少なめで立ち絵の差分(ポーズ)自体も数に限りがあるものの、その分衣装が用意されていたりと、個人的にはイベントCGと合わせて今作で最も評価できる分野といえる。
立ち絵には目パチ口パク機能付きで、SD絵も豊富に用意されている事も追記しておきたい。


音楽
BGM26曲、Vo曲4曲(OP1/ED3)
バラエティー豊富で様々な楽曲が集まっているのだが、全体的に美麗で落ち着いた雰囲気の物が多く、今作のタイトルにもなっている「創作彼女の恋愛公式」などはピアノの旋律がとても美しく象徴的だったといえる。
Vo曲は佐咲紗花さんの歌うOP「奇跡なんか、いらない。」をイチオシしておきたい。
一回聞いただけで良曲と分かるのだが、クリア後に逢桜の気持ちに思いを馳せながら歌詞をなぞると、また違った良さを感じられる楽曲となっていた。


お勧め度
クリエイターによるクリエイターとしての恋愛劇を描いた作品で、少し特殊な設定ではあるもののシナリオに突飛な展開が少なく流れが追いやすい。
全体的な質の高さも相まって広い層の人間にとって楽しむことができる優等生のような作品といえるだろう。
一方で、作品を多くプレイして来た人―特に今作と似た傾向の作品をプレイした方にとっては、その予想を超えられる内容にはなっておらず、あくまで『良作』の範疇に収まっている作品と捉えられてしまうかもしれない。


総合評価
CGや音楽に関しては文句なしの出来ではあったものの、シナリオ部分に関しては看過できない問題点もあり、全体評価としては平均程度に据え置きとなってしまっている。


【ぶっちゃけコーナー】
最初に言っておくけれど、私が言うよりもかなりいい作品だったと思ってはいる。
結構評価が厳しめになっていて、それについて色々理屈をこねくり回しているけれども、素直に泣けなかったから評価が抑え目なのである。
それがこのブログの評価基準の基本なのだから仕方がない。

あと創作を取り扱った作品の性質上、作中では物語への想いなんかが様々な形で語られていて、多くは頷けることも多かったのだけれど、そうして語れば語るだけ、本作のシナリオへのハードルも高くなっていく。
今作がそうしたハードルを越えられたかどうかはともかく、創作上で登場する『すごい天才』の作戦を考えるくらい難しい事だなーと思う。

そういえば、共通ルートとかは某『冴えない~(以下略)』とかなり設定が似ているらしいが、まぁ物語が沢山出てきたら多少は被るのも仕方がないと思うんですよね。
重要なのはその設定で何を表現したいかで、それが変われば作品の雰囲気も大きく変わってたはず。
多分今作でそれを表現する最大のチャンスだったのは逢桜√だったんだろうけど、やっぱりクリアした後も心に残るものが殆どなかったのが痛いかなぁ。
結局メッセージ性というものに乏しい…というより、伝えたい事は物語の中で結構ストレートに描いているから、それ自体は伝わっているのだけれど、当たり前のことを人が言われても当たり前にしか感じない様に、新鮮さがない物語に感動は起こしにくい。
その新鮮さというのは舞台設定や物語の展開なんかもそうだけれど、当たり前のことを少し見方を変えて表現していたり、普段見ている展開の中に誰もが気付かないであろう魅力を見出していたり、そういった自分にはなかったものを見つけられるから、心が動くし、物語が好きになるのだろう。
少なくとも私はそういう風にして作品に向かい合っているし、そういう作品で感動することが多い気がするんだよなぁ。