タイトル : ハッピーライヴ ショウアップ!
ブランド : FAVORITE


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 15.5h)

キャラクター・シナリオ
とある切っ掛けから「ソフィー」と出会い、初心者の彼女の為に魔法を教えることとなった主人公。公園での地道な練習の最中、大道芸を披露する少女「ルー」と出会い、彼女の発した『一緒にライヴをやろう!』という一言から物語が始まってゆく。

この作品では魔法が存在する世界観が採用されているが、今作においてはあくまで観客を楽しませる特技の一つとしてのみ使われており、今作では魔法以外にもそうした観客を楽しませる特技を持つ人々が活躍する架空の街『ライカスク』にある『ライカスク学園』が舞台となっている。
ライカスク自体はロシアをイメージしたであろう架空の国『ラーシャ』にあり、作中では他にも日本を意識した『ヤポン』であったりと、今作固有の名称でありながら、現実から転用した設定が多く登場しており、独自の設定が多くある中でも素直に世界に入り込めたのはこのあたりが理由の一つとして挙げられるだろう。

物語は大きく第一幕と第二幕に分かれており、一幕ではヒロインたちとの出会いや、ライヴのためのチーム結成、そして初めてのショーまでを描いた共通部分に、二幕では仲間たちと共に列車で旅する様子が描かれ、関係の進展や各個別√への分岐部分となっている。

テンポが特段早い物語ではないものの、イベントには事欠かず、全体的に見ると長めの物語ではあるが常に新鮮な気持ちでプレイできる作品となっていた。
特に序盤ではライヴ開催にのためのメンバー集めから、ライヴ自体の内容の決定やその練習、そして初心者のソフィーに関しては魔法の手ほどきまで…ライヴに向けての課題が山積みとなっている中で、特色あるヒロイン達に囲まれて、退屈だったはずの日常がライヴに向けて少しずつ変わっていく過程が色鮮やかに描かれており、学園を舞台とした青春物ならではの雰囲気が形作られている。
加えて第一幕部分では各ヒロインについても結構踏み込んだ内容を描いている部分が多かったのも特徴的で、他の作品であれば個別√に入りそうな内容を描くからこそボリュームも多くなっているが、それだけに登場人物たちに深く感情移入できる下地が作られていたように思う。
また主人公を介して以外の部分での交流が描かれるシーンも作中では多く登場しており、そうした描写があったからこそ作中に登場人物がしっかりと息づいているかのような印象を受けることもあった。
第一幕に限らずだが、それぞれが変化や成長を繰り返し、掛け替えのない仲間として絆を紡いでいく、その過程が描かれていたことに関しては青春物として高い評価をしている。

一方で個人的に少しだけ評価を悪くしてしまったのが第二幕からの展開。
第一幕を踏まえ、第二幕の存在を知った時は非常に期待感が高く、実際序盤の滑り出しは見事なものだったのだが、各個別に入ってから折角作り上げた世界観が一気に小さくなってしまっていた。
これまでは一つのライヴを成功に導くため、それぞれが力を合わせて目標に向かっていたものの、恋愛にファクターが当てられると共に、ライヴの扱いが軽くなってしまい、同時に他のヒロインの扱いも粗雑になってしまっていた。
個別シナリオの特性上これ自体は仕方がない事でもあるのだが、今までに登場していた伏線や設定の数々が物語の動きを鈍くしていた印象が強く、加えて取り扱わなければいけないテーマも多くなってしまっていて、各個別に入った時にヒロインについて深く描いていても、それ以外の部分がなおざりになってしまっていた。
それゆえにどうしても全体的に締まらず、良い中身であったとしても微妙な評価になってしまっていた。
それぞれの√ではヒロインの可愛さはもちろん、攻略対象キャラ以外の失恋のワンシーンがしっかりと描かれていたりと、個別シナリオの中でも評価できるシーンは確かにあり、一概に悪い内容だったとは言えないものの、個人的に大好きだった第一幕での一体感みたいな青春成分が霧散してしまい、二度と戻ってくることがなかったのが残念でならなかった。


共通√【 ★★★★★  6h
ライヴ開催までを描いた第一幕部分がメインとなっている。
ライブを成功させるために集まった登場人物たちが努力し、ときには時に意見をぶつけあってはケンカし、最後には仲直りして仲間たちの絆が深まっていく、そうして最終的に一つの目的に向かって協力する姿を描いている。
共通ルートという事で主人公を除いたヒロイン同士の掛け合いも多く、そうした描写がしっかり存在している事もこのハラショウの世界観を作る一助となっていたのだろう。
また序盤によくある各ヒロインの紹介イベントとは別に、それぞれの内面にまで踏み込まれて描かれているシーンも存在している。
明るい日常シーンとそのシリアスなシーンとで起伏がしっかり作られ、分量自体は長いが世界観に引き込まれるように、時に悲しみ、時に感動し、時間を忘れてプレイ出来る内容となっていた。
舞台や世界観がが変わっても、変わらぬ魅力をもって存在する古き良き青春学園物であったといえる。


event_13
ソフィア・トゥーリナ√【 ★★★★☆ 】  3h
ライカスク学園普通科に通う恥ずかしがり屋の二年生。
本来であれば幼少期に見つかるはずの魔法の才能が、大きくなってから発現した珍しい人物。とある切っ掛けから主人公が魔法使いであることを知って、自身を変えるため弟子入りを依頼した。
何も特技のない自分にコンプレックスを抱えており、何事にも弱気で引っ込み思案な性格をしているのだが、自身の好きな事となると暴走しがちなことも多い。

序盤から想いを寄せていたソフィアだったが、一向にその想いに気づく事のなかった鈍感な主人公。
ジャンの発言をきっかけに彼女の想いに気づき行動することを決意するものの、ソフィアの控え目な性格や二人の過去、主人公と魔法の関係についてが複雑に絡み合い、なかなか一歩が見不出せない二人の描写が際立つ恋愛シーンとなっていた。
恋人どうしになってからもイベントは豊富で、特に後半からは新キャラクターであるミヤビも登場し、物語は他の√とは違ったテイストの内容にしあがっている。
前半から後半に至るまで物語の起伏が多く、どの局面においても目の前に壁となるような問題が発生し、恋愛や夢に対して進む中で思い悩んでしまうようなシリアスシーンが用意されていて、今まで以上に『表現者』としてあるべき姿について等に言及していた。
直面する問題に対し、今まで紡いできたポカポカのメンバーとの絆が未来に進むための力となって、ソフィアが成長し一歩ずつ前進していく展開は、思わず胸に来るものもあり、今作のグランド√のような内容になっていたといえる。


event_02
カーレンティア・ヴェリーベル√【 ★★★★☆ 】  1.5h
ライカスク学園音楽科の二年生で、旧貴族であり音楽の名門一族の一人娘。
幼い頃から親に娯楽を厳しく制限され、ヴァイオリンを弾くだけの日々だった。そのためヴァイオリンの関しては国内でも指折りの実力の持ち主ではあるのだが、それ以外の部分に関しては経験がかなり乏しいお嬢様で、良くも悪くも純粋な女の子。
また周囲から勝手に距離を開けられてしまうため友人が全くおらず、友人と遊んだり皆で何かを成し遂げることに強い憧れを抱いていた。

個別シナリオでは不注意により列車の旅から置いて行かれてしまい、カーチャと二人旅を行う事になるという展開に。
主人公に対し運命を感じ、その好意を受け入れてくれた主人公に積極的に好意を示してくれているカーチャ、その姿は無邪気ながらも妖艶でした。
他シナリオと違って、物語の流れ的に他のヒロインが出てくる機会が少ないものの、その分カーチャ自身について掘り下げて描かれるシーンが多く、特に旧貴族であるヴェリーベル家の事情、父親を始めとした家族との関係について触れられており、カーチャ自身の成長が丁寧に描かれている。
また共通√で多く見せていた明るく天衣無縫な様の他に、主人公の闇を受け入れてくれるような包容力あるシーンも見せてくれており、彼女の個別√ならではの魅力がつまっている。


event_07
ルー・マオ√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
ライカスク学園普通科に通う1年生。
いつも明るく深く考えるのが苦手で直観的に行動するクセがある、よく言えば天真爛漫、悪く言えば気分屋で脈絡のない行動を起こすハチャメチャな女の子。
ジャグリングを始め多くの大道芸を身に着けており、その腕は中々の物らしく、放課後や休日は近くの公園でストリートライヴを行って、自身の芸を磨いている。
主人公とソフィーの魔法を見たルーが「いっしょにライヴをやろう」を声をかけた、その何気ない一言が全てを巻き込んでいく事となる。

今まで気ままに生活していて恋とは無縁の生活を送っていたルーだが、彼女の個別シナリオでは、純真無垢で素直な所に惹かれた主人公がルーへアプローチするという流れとなっている。
なかでもルー自身が恋心を自覚するまでの過程に重きを置いて描かれており、自分の中に生まれた主人公への好意によって生まれる動揺や羞恥、そして恐怖といった感情に振り回されつつも、それを受け入れてゆく様子が丁寧に描かれていた。
また恋愛描写と重ね合わせる様にルー自身の成長についても触れられており、なぜ彼女が大道芸を続けているのか、そのルーツとあわせて多少シリアスな設定も交えて表現されている。
きびしい指摘をするならば、作品のテーマの着地点が多少ありきたりだったり、物語の終盤に勢いが死んでしまっている事も挙げられるが、それでも共通√では決して見られず想像もつかなかった恋するルーの姿、その破壊力はとてつもなく、補って余りある魅力だったといえる。


event_04
クラリス・クローニャ√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
ライカスク学園芸術科のバレエコースの1年。
生真面目で多少気難しい所はあるものの、バレエに対しての熱意は本物で、努力と練習を欠かさない勤勉さのある人物。
バレエの腕前は特待生で入学できるほどの実力の持ち主なのだが、男性に対し強い恐怖を抱いており、それが原因で男性とパートナーを組む必要のあるバレエの「パ・ド・ドゥ」も上手くできず、現在はスランプに陥っている。

クラリスに対し「好きにならない」と約束する事で距離を縮めることが出来ていた主人公だが、個別シナリオではその約束自体がお互いの枷となっていく。
他の√でも主人公に対して浮かんだ淡い想いを胸に秘めていたクラリスだが、個別シナリオではそうした恋愛感情について振り回される彼女の姿がメインでがかれていた。
あと一歩が踏み込めずにもどかしい思いをしたり、友人に対して嫉妬し、得意のバレエにまで影響を出してしまう。二人きりでで夜明けの太陽眺めたりと、ロマンチックなシチュエーションも多くある一方で、恋愛をする中で見えてしまう自分自身にある醜い部分に振り回される姿が印象的。
付き合う過程までが比較的重めに描かれており、恋愛描写に関しては良いシーンも多かったのだが、付き合ってからの展開は予想しやすい展開で少し短かったのが残念であった。


event_08
ペチカ・モニカ√【 ★★★★☆ 】  1.5h
ライカスク学園普通科に通う演劇部部長の3年生。
普通科では珍しい演劇部に所属していたが、気の短い性格が災いし部員とはケンカ別れしていて、現在は一人で過ごす毎日を送っていた。
演劇に対して強い熱意を持っていたが故の不和なのだが、彼女自身の演技力はそこまで高くなく、練習を何度も行う必要もあり、アドリブ力は高くない。
背の小ささと幼い見た目にコンプレックスをもっており、その事をからかわれると烈火のごとく怒り狂ったりと、ドゲのある態度に隠れがちだが、意外と面倒見はよく、気は強いが繊細な一面もある女の子で、ツンツンした態度をとっては後から後悔してしまう事も。

ペチカの個別シナリオではペチカに好意を抱いていた主人公が、毎夜行われるペチカの酒盛りに付き合ううち、なし崩し的に告白してしまうという流れ。
今までの経緯もあり自己肯定感がかなり低くそれゆえに暴走してしまうペチカと、それに対して確かな愛でこたえようとする主人公の姿が描かれている。
また物語の後半では共通ルートでも出ていたペチカの抱えている過去のわだかまりについてがメインとなっていて、ペチカがずっと抱いていた悲しみや苦しみのわだかまりが解けていく過程を、ペチカ自身の将来と絡めて描いている。
シナリオの中で明かされずじまいだった設定や一部シーンにもう一押しが欲しかったな、と気になる点もいくつかあるものの、終盤のシーンの盛り上がりも良く、√中には思わず涙してしまうシーンもあり、良い内容だったといえる。


event_06
ミヤビ√【 ★★☆☆ ☆ 】  0.5h
主人公の過去に関連する人物であり、共通ルートでもその存在自体は示唆されていたものの、主にソフィア√の後半にて登場する。
彼女については公式でも明かされている部分が少ないため、
サブヒロイン√らしく内容は短く、問題の多くも未解決のまま終了しているため、クリアしても多少のしこりが残った形となっていたのは残念。


[主人公]アキト・ユキハラ
ヤポン人の父とラーシャ人の母を持つハーフ。
元はプロの魔法使いとしてライヴを行っていたりもしたが、諸事情があって魔法を使うこと自体を嫌って引退している。
現在は憧れだった学園生活を謳歌するためライカスク学園に入学したが、2年生になった今でも同じ留学生であるジャン以外の友人ができず寂しい想いをしている。


【推奨攻略順:クラリス→カーレンティア→ルー→ソフィア→ミヤビ→ペチカ】
ミヤビ√のみソフィア攻略後に解放される。
内容的にソフィア√は後半に回した方が良いのだが、上記の理由に加えミヤビ√の読後感が悪い事から、ソフィア以外のキャラクターを一人、最後に攻略する順番を推奨したい。


CG
優しいタッチで描かれた淡い塗りの柔らかな印象を受ける絵。
全体的に質は安定して高いレベルを保っていた。
枚数に関してはイベントCGはヒロインが5人となっているため、一人当たりの数がシナリオの量のわりに数が少なく感じてしまうが、ただプレイしていて気になるほどではない。
SD絵も数多く存在しており、こちらもSD絵でしか出せない柔らかさを感じられてよかった。


音楽
BGM曲、Vo曲4曲(OP2/ED1/挿入歌)という構成。
BGMに関して驚くべきはやはりその数だろう。もちろんバレエ曲や各Vo曲のアレンジBGMなども含まれており、純粋なBGMとして数えるなら多少圧縮されるものの、それでもなお大容量。
落ち着いたイメージの楽曲が多いものの、各ヒロインをイメージしたBGMからステージ上で使われるものまで、シナリオ内で舞台が大きく変わる今作の演出にとっては欠かせない存在となっていた。
Vo曲はどれも好きなのだが、やはり今作の主題歌といえる山本美禰子さんの歌う「MAGICAL∞SHOWTIME!!」がイチオシ。
特に転調が多い楽曲となっていて、Bメロ部分から雰囲気を盛り上げていきサビ部分へと繋いでいく部分は個人的にも好きな部分だった。


お勧め度
魔法が存在する少し特殊な世界を舞台にした話ではあるものの、大道芸やバレエに演劇、そして音楽や魔法といった各分野のエンターテイナーが集いライヴを開催するに至るまで、時に喜びを分かち合い、時に意見を違え、時に失敗し、それでももう一度絆を紡ぎ、切磋琢磨して前に歩き出す、その全容は王道の青春物といえ、共通部分の第一幕に関しては自信を持ってお勧めできる。
一方、各個別シナリオからの内容は決して悪いとはいえないものの、それらと比較するとどうしても威力不足に感じる部分が多く、折角の世界観や雰囲気を活かしきれていなかった印象も強かった。


総合評価
全体的に高いレベルで安定した作品といえる一方で、シナリオにおいては一長一短の部分があった。
しかしながら良作の範疇に十分当てはまる作品であるという事でこの評価としている。


【ぶっちゃけコーナー】
序盤の滑り出しから二幕の最初の方まではすごく好きだったんだけどなぁ…各個別に入ったあたりから急に心が離れていってしまった。
各個別の内容が嫌いってわけではないんだと思う、キャラクター的に一番だったクラリスを抜いて個人的にはペチカ√とかが内容ではすごく好きだったし。
自分なりに難でそう変わっていってしまったのか、一つはシナリオ評価部分にもあるテーマや設定がまとまり切っていなかった事で、もう少し長い物語になっていたら別なのかもしれないけれど、各個別は意外と短いからやっぱり恋愛に傾倒してしまっていて、第一幕であれだけ頑張ってたライヴができ等になってたのがすごい寂しかったし、折角の世界観を使いこなせていないようにも感じたんだろうなぁ。
あともう一つは今作の主人公は過去に傷のある主人公ということで、前半部分ではわりと受け入れられていたのだけれど、後半からはちょっと苦手になってきたかもしれない。
決定的だったのがソフィア√だったかな…ほかのシナリオでもまぁそうなのだけれど、決定的なシーンでの行動力が結構弱いので、本格的に追い詰められないと行動しない(この辺りはジャンにも指摘されてたけど…)と言う所に頼りなさと、もどかしさを感じてしまった。
ソフィア√自体は結構グランド√みたいなものだから、もっと今までを巻き返せるような爆発力が欲しかったというのもあるんだけれどね、どっちかというと個別シナリオにアフターシナリオをくっつけたような内容になってしまっていたからなぁ。
世界観も独特で、内容も決して嫌いじゃないし、最後まで飽きずにプレイできるとは思うけれど、じゃぁ他の名作レベルにまで上り詰めているかというと、色々な所が物足りなく感じてしまう、そういう作品でした。