タイトル : Monkeys!¡
ブランド : HARUKAZE


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★★ [5/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 7.5h)

キャラクター・シナリオ
とある切っ掛けで自身が通う男子校が廃校の危機に直面している事を知った主人公『浮木々 猿吉』はそれを阻止するため、生きることに飽きた少女『月島 カラス』の手引きで、共学化に向けて男子のイメージ向上のため、女装をしてお嬢様女子校に通うこととなる。

シナリオを担当したのは同社作『ノラと皇女と野良猫ハート』でもおなじみの「はと」さん。
かなり特殊な設定の作品ではあるのだが、実はシチュエーションを細かくすると珍しくない。ただ、そこにプラスアルファされていく要素の一つ一つがHARUKAZEの作品らしさを作りあげているように感じた。

その一つは作品が会話中心で組み立てられている事だろう。
今までの作品でもそうした傾向はあったが、今作でも地の文が少なくなっていて、ギャグを中心とした軽快な掛け合いがメインとなっている。加えて、マンガのようなコマ割りがなされたCGをつかった演出効果もあり、全体の雰囲気がコミカルに仕上げられていた印象が強い。
こうした走り抜けるようなテンポの良いシナリオに仕上がっていた一方、シナリオ自体がかなり短く、ただでさえ短いプレイの体感時間は更に短くなっており、加えて勢いのみ進んでいく展開も多く、説明が少なくて分かりにくい場面に直面する事も多かった。
ギャグシーンが続いたかと思えば唐突なシリアスシーンに突入し、かと思えばギャグに立ち戻る等、起伏が激しい物語にもなっており、非常にクセが強く感じられる作品でもある。
それらに対して、自身の中で流してしまうのか、かみ砕くか、いずれにしても受け入れる作業が必要となるのだが、こうしたところが良くも悪くも今作の特色の一つとなっていた。

もう一つは作品に込められたメッセージ性。
ヤンキーの集う男子校とお嬢様学校、不良少年とお嬢様達、カラスとサル、嘘と本当、男と女…どの√でも事あるごとに意識させられる対比となっている、裏返しの関係。
今作の当初の目的は男子校と女子校の共学化なのだが、異なる立場、異なる性、異なる考え、異なる生まれ、そんな人が集まって「仲良くする事」というのはどういうことなのか、言及した作品となっていた。
上記でもすでに述べたが、一つの√を見てみた時にもシーン転換が唐突でぶつ切りに感じるのだが、各ヒロイン√を眺めても主張はバラバラに見える。
ただそうした一つ一つの話を拾い集めて、俯瞰で見ると一つの物語、一つのメッセージとして成立するところが今作の面白い所だろう。

またシナリオに直接関連している部分ではないものの、大きく寄与した要素として今作の演出も欠かせない要素の一つだろう。
コマ割りにすることで枚数をそのままに、より多くのシーンをヴィジュアル的に表現したCGや、重要なシーンで感情に最後の一押しを加える主題歌「明日を漁れ」の存在、カラスCVを担当した(美天羽礼)の名演等々、今作を盛り上げてくれていた要素を挙げれば暇がない。

そうした要素の一つ一つが、クセのあるシナリオを、涙あり笑いありの学園物に昇華させてくれていたといえるだろう。


共通√【 ★★★★☆ 】  2h
主人公がカラスと出会い、目的達成のため硝子ノ宮に通う日々がメインとなっている。
ヤンキー出身の主人公がお嬢様学校に潜入するという特殊なシチュエーションにおいて、女装がバレない様に活動しながら、学園で次々と出会う特殊なヒロイン達に振り回されることになる。
シチュエーションもさることながら、登場する各ヒロイン達の濃い個性に慣れる必要もあり、加えて主人公自身もかなり特殊な事情を抱えていたりと、説明は少ない割に設定自体が多い。
個人的には序盤から新鮮味溢れる演出や掛け合いなどが多く、今作の主たる魅力ともいえるギャグシーンにおいてもかなり笑えるシーンが多く、高い評価をしている。ただライター特有のシーン展開が続くため、この作品の作風に合うか否かの、ある意味では篩となっていると評することもできる。

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霧灯 ユキ√【 ★★★★☆ 】  1.5h
演劇部に所属する常に男装をしている麗人。
女の園である硝子ノ宮の女子からは憧れの存在として評価も高く、本人もその期待を裏切らない様、まるで王子様のように立ち居振る舞いを行っている。
劇では主に男役をこなしており、男性の身体のつくりに興味を示している。次回演じる劇の役作りのため、男らしい(というか男だが)主人公の姿を見て興味を抱く。

ユキに興味を持たれた主人公が、彼女の内面に触れることで、次第にお互いについて考えるようになるという流れに。
恒例の女装バレシーンなどはかなり淡泊だったものの、代わりに女装した男子と男装の麗人の恋という部分にスポットが当てられており、
恋愛描写に関しては、素直になれない両者が男性役としてどちらがリードするかを争ったりと、恋愛シーンにおいてもユキらしさを活かしつつ、共通ルートからは想像できないヒロインの魅力を引き出している。そうして最終的にはギャグシーンとしても昇華させていたりするので見事という他ない。
中盤から後半にかけてはお互いの家族関係についても時折触れられており、描き切るにはいささか短いシナリオではあったものの、メッセージ性もある程度あり、今√のもう一つの軸にもなっていた。


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硝子ノ宮 硝子√【 ★★★★☆ 】  1.5h
名家のお嬢様で、全会一致が原則のお茶会を仕切る生徒会長。
誰よりも硝子ノ宮を愛してやまない一人で、常にその生徒の模範たろうとしており、学園生たち妹と呼び慈しんでいる。
新しくやって来た主人公(ジュリア)に、硝子ノ宮恒例の試験の為にお嬢様としての立ち居振る舞いや知識を叩き込む。

全生徒の模範として完璧な姿を見せていた硝子、そんな彼女が主人公と関わる事で少しずつ綻びを見せてゆく。
共通でも少しだけあったが、個別シナリオではそれがより顕著に。
一見すると包容力のあるお姉ちゃんって感じで、共通からの流れと合わせて硝子が学園を愛しているのも伝わってくる。そんな大好きな学校だからこそ、共学化に対しても反対をし続けている、そんな彼女をどうやって説得するかが物語のテーマの一つとして存在している。
中盤ではシンデレラを彷彿とさせる展開もあり、物語としての最大瞬間風速がここにあったと言っても過言ではない程の名シーンとなっていた。
付き合った後も尽くしてくれる家庭的な女の子でありながら、それでもお嬢様特有の高飛車な所が出てしまったり、主人公についてノロケる姿が可愛かったり、コロコロと変わる表情がとても可愛いキャラクターでした。


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メバチ√【 ★★★★★  1h
硝子ノ宮の夜学へと通う女の子。
お嬢様が通う学園にそぐわない風貌や立ち居振る舞いをしているが、元々は紛争地で育ったており、実家が突然裕福になった事で硝子ノ宮に入学した。
戦闘に関する各スキルが高く、特にナイフの扱いにも長けていて、日夜道を踏み外しそうな友人の護衛をしている。

ぶっ飛んだ面子がそろっている硝子ノ宮の中でも輪をかけて異色のヒロインであり、共通ルートでは全く全容のつかめないメバチ。そんな彼女の個別シナリオでは、戦闘能力の高さを見込まれたメバチが一人で主人公の男子校へ偵察へ行くという流れに。
始まりから終わりまで恋愛描写がかなり少なく、メバチ本人にスポットを当てた内容となっていたのが印象的で、中盤から終盤にかけては完全に予想出来ない展開の連続となっており、正しく怒涛と表現してよいだろう。
それだけにシーン間の繋がりが少しだけ雑になっていたが、最後までプレイした時に突き抜ける感情は確かにある。個人的好みもあるものの、本当に素晴らしい話だっただけに、物語がかなり短かったのだけが残念でならない。


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月島 カラス√【 ★★★★☆ 】  1.5h
月島グループの正真正銘のお嬢様。
美人で聡明、 礼儀、礼節、マナーについても完璧で文句の付け所が無いのだが、
そんな境遇の中で現在の生活に飽き飽きしており、飽きすぎて死にそうになっていたところを主人公に起こされた。
主人公を人形扱いしながらも女子校へと手引きし、共学化にむけて男としてバレないようサポートしてくれる。

個別シナリオは他の3人のヒロイン√で起こった主要な出来事がすでに起こり解決した後の展開として綴られている。
カラスの可愛いシーンという意味では他の√でも垣間見える”お嬢様らしくない”反応の数々が挙げられるが、彼女のシナリオではそうした部分がより恋愛描写を絡めて描かれており、やはり可愛い。
シナリオ自体の内容も非常に良く、他のヒロイン√をすべて終えていてもなお予想だにしない展開がなされていた。しかし一方で、主要なシーンであっても話が前後していたりと、とにかく状況説明となる文が少なく、理解し辛くもなっている。
こうした部分をどうかみ砕くかが今作を楽しめるかにかかっているといっても良いだろう。
後半は盛り上がるシーンも目白押しで、彼女自身の境遇も絡めて主人公への深い気持ちが伝わってくる描写は特に印象的。
共学を目指すという事、女子と男子が一緒に仲良くするという事、そうした意味について、今作で伝えたい事がしっかりと詰まった正に集大成といえる内容となっていた。


[主人公]浮木々 猿吉
ケンカが強く、単純明快、真っすぐな性格をした今作の主人公。
いつも明るく、少し喧嘩っ早いが、情には厚く、困っている人を放っておけない。
その武力と性格から男子校では絶大な人気を誇っているのだが、そんな男子校を廃校の危機から救うため立ち上がる。
女子に対しての理解は極端に浅く、お嬢様の価値観は理解できていない。
いつも正直で、それ故に耐性のないヒロイン達を時に傷つけ、時にキュンとさせている。
実家は青果店を営んでおり、その家庭環境はかなり複雑らしい。


【推奨攻略順:ユキ→硝子→メバチ→カラス】
カラスのみ攻略順にロックが掛かっている。
その他のキャラは好きな順番からの攻略で良いだろう。


CG
全体的に線が固く濃い塗の絵。
立ち絵とイベントCGでの統一感もあるのだが、一部軽い違和感を覚えるようなテイストが違うCGなども交じっている。
なんと言っても特徴的だったのはマンガを彷彿とさせるコマ割りCGだろう。
これらは本作のCGの大部分を占めており、そういったCGであるためか各CGにおける差分を含めた際の枚数は少ない。
ただそれを考慮したとしても、まだCG数は多く、さらに作中では各コマを少しずつ見せていく方式となっていたため、実際の枚数以上にCGの枚数を感じられた。


音楽
BGM41曲、Vo曲5曲(OP1/ED1/劇中歌3)という構成。
とにかく多いBGMはお嬢様女子学校とヤンキー男子校、それぞれの雰囲気を作り出すためにフル活用されており、他にも「口笛」のような日常シーンのものから「シルバーロード」のような情緒たっぷりな楽曲など、今作の演出において重要な役割を果たしてくれていた。
Vo曲は各曲素晴らしく鑑賞画面でFull.Verが聞けるのも好印象。その中でもやはり日南めいさんの歌う主題歌(OP)「明日を漁れ」が本当に素晴らしい。
今作の内容がテーマになった楽曲なのだが、今作における主要シーンでは必ずと言っていいほど使用されており、またその効果が絶大であった。
全体的な質が高く量も豊富でBGMとVo曲、そのどちらもを合わせて今作の屋台骨となっていた。


お勧め度
生粋のヤンキーが女子校に女装して潜入する…という今作、似たシチュエーションの作品は確かにあり、そうしたものが好きという方であっても、それ単体でお勧めはできない。
勢いを重視したギャグ中心の物語が好きで―なにより次々と入れ替わり立ち替わるシリアスとギャグシーンに自身の心がついて行けるかが、今作を受け入れられるかの分岐点となっている。
演出・シナリオ・楽曲、それら一つ一つの要素を挙げて素晴らしい作品ではあることは揺るがないが、過去のHARUKAZE作品に触れた事がある人、好きな方にとっては慣れたものなのだが、人を選ぶクセの強い物語であることも否定できずこの評価としている。


総合評価
シナリオが短い事を始め欠点はいくつかあるものの、それ以外の部分に関してが弱点を補って余りあり、独自性と主張性のある名作として高く評価したい。


【ぶっちゃけコーナー】
良い作品は多くても、鮮烈なインパクトを与えてくれる作品は多くない。
そういう意味では今作はずっと記憶に残り続ける物語になっていて、そういう所はすごく高く評価したいんだよなぁ。
それぞれのシナリオでクライマックスシーンが分かりやすく存在していて、それら一つ一つがすごく印象的だった。
プレイを終えた今でも何度も反芻するくらいにいいシーンが沢山あって、もちろんプレイ中に何度も涙を流している。
いや「書き方を工夫すれば、もっと…!」みたいなシーンも確かにあるにはあったんだけど、それも含めてこの作品の魅力なのかなぁとおもった。

あとセンターヒロインともいえるカラスがずっと可愛いんだよなぁ。
完璧なお嬢様然としているところから、少しはみ出た本音みたいなシーンが所々あるんだけど、その時が声優さんの演技もあって本当に可愛い。
こういう部分はシナリオだけで普通に表現できる可愛さじゃないから、素直にすごい部分だと思っている。

あと今までに書いた部分でもあるけど、基本的にシーンは唐突で、中でも顕著だったのがHシーンかなぁ。選択肢次第でシーン自体が分かれていたりと、数をかさ増しする工夫も取られていて、結構物語の流れの中で無理やり入れられている印象が強く、そういったところは全年齢版を意識しているのかなと思った。

プレイしながら作中に出てきた女子校と男子校、どっちの学校も特色がかなりあって、どっちの学校行きたいかと考えていたんだけど、やっぱり男子校かもしれないなぁ。
命がいくつあっても足りなさそうだけど。