タイトル : 思い出抱えてアイにコイ!!
ブランド : HOOKSOFT


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 13h)

キャラクター・シナリオ
「ヒロイン全員が幼馴染」というコンセプトの元、軽快なギャグと魅力的なヒロイン達で描く青春学園物として描かれた今作。

物語の冒頭にはプロローグとして、主人公やヒロイン達の幼少期にあたる「過去編」が用意されており、主人公が街を離れるまでの幼馴染のヒロイン達との日常が描かれていた。そして時を経て、大きな変貌を遂げたヒロイン達と再会することとなる、というのが共通シナリオ部分の入り口となっている。
その後の日常シーンではキャラクター紹介の形を交え、幼少期と成長後のヒロイン達のギャップを感じさせつつ、新たに生まれた魅力ある一面を描き出していた。
共通部分ということもあって全ヒロインが集結しているため、ギャグシーンなどを中心に賑やかで豊富な展開が見ることができ、幼馴染特有の軽快なやり取りが複数のキャラクターと成立するという今作のコンセプトを最も活かしていた部分といえる。
こうした部分はギャグのおかげもあってかシナリオのテンポも良く賑やかで、話の展開自体もサクサク進むのは魅力の一つに挙げられるだろう。
ただし、途中には細かな選択肢が何度も出現していて、こうした部分はヒロイン達の色々な反応が楽しめる一方で、シナリオの流れをせき止めてしまう作用もあり、好みの分かれるところといえるかもしれない。

今作の特色の一つとして挙げられるのが恋愛部分だろうか。
共通ルートとなる日常編の後、特定のヒロインと関係を進める『進展編』という事で、気になるヒロインと一緒に下校したり、放課後のスマホでのやり取りをしたりと、学園物ならではのシーンが詰め込まれている。
どのキャラクターとも幼馴染の恋愛だからこそ劇的な変化はないものの、親密度が高まったがゆえに関係が変化するという過程を丁寧になぞっていた印象が強い。
ただ、どのシナリオも共通した流れがパターン化されており、恋人関係に至るまでの流れに差分が全くなくなってしまった、という不利益もあった。
ここはもちろんコンセプトと関連しているのだろうが、恋心へと変化するその過程自体は、恋愛学園物においても重要な要素の一つともいえるため、そうした部分が余り綿密に描かれていなかったのは残念な所だった。

共通ルートで幼馴染同士のギャグを交えた賑やかなシーン、個別では各ヒロインの魅力を堪能、作品の中で住み分けができていて評価できる部分があるのは確かだが、恋愛学園物としては全体的に”これ”というオススメの要素が無かったのもまた率直な印象であった。
そんな中で今作の評価をひっくり返したのが兎鞠√の存在である。
詳細は彼女のシナリオ評価で(ネタバレをしないように)語っているが、他の√とは全く違う話の様相に戸惑いながらも期待し、そしてキャラクターへの想いを馳せていると、流れるBGMとの相乗効果もあり、思わず涙してしまうシーンもあった。
今作の作品コンセプトからは少し外れた位置にある内容だけに、かなり好みが分かれる部分でもあったが、シナリオの流れ自体は個人的にかなり好みだった事もあって、ただの萌えゲー・ギャグゲーからより一歩踏み込んだシナリオとして高く評価し、全体的な評価を一つ押し上げた結果となっている。


共通√【 ★★★☆☆ 】  5h
幼少期となる過去編がプロローグとして全体の3割ほどを占めており、残りは学園編となっていた。
コンセプトが「全ヒロインが幼馴染」という事で、幼少期から学園編に至るまで複数ヒロインとの掛け合いがかなり多くなっており、それこそがこの共通ルートシナリオ部分の最大の魅力といえるだろう。
今までのHOOKSOFTよりも、よりギャグに重きを置いているように感じられるシーンも多く話もサクサク進むのだが、一方でそうした幼馴染達と過ごす日常シーンには時折細かな選択肢が出現するため、どうしてもテンポは悪くなってしまっている。
この辺りに関しては好みが分かれるところといえるかもしれない。

内容自体については、個人的には幼少期シーンが印象深かった。
ストーリーは比較的オーソドックス、ギャグは単純と余り褒めるところがなさそうではあるものの、そのシチュエーション自体の強さでストレートに泣ける内容になっており、事前情報が無ければないほど気になるヒロイン達の変貌など、シンプルな内容ではあるものの、コンセプトとしてある「ヒロイン全員が幼馴染」という強みを最大限に生かせる内容だったように思う。


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栗山 兎鞠√【 ★★★★★  1.5h
家庭的で理想的な世話焼きな女の子へと成長した同い年の幼馴染。
子供の頃は泣き虫で、いつも主人公に面倒を見てもらっていた兎鞠。再開したのちはその恩を感じているためか、再会後は”ママ”を自称して何かと主人公の世話を焼こうとしている。
兎鞠自身が基本的に常識的である事に加え、騒動の中心にいる事は少ないため、ギャグシーンにおいてはツッコミ役に回ることが多い。

今作のセンターヒロインと言っても過言ではない兎鞠の個別シナリオに関して、ネタバレになるため深くは語らないが、シナリオの性質やその出来自体は他の√と一線を隔していた。
まずは前半から中盤にかけて。
ここは二人の想いを育むシーンに注力されており、ある意味手は他のヒロイン√と肩を並べていると言ってよい。
からかえば照れて、逆にこちらを慌てさせるような発言をすることもある兎鞠の反応は、とにかくその一つ一つが可愛いく、CVを担当した実羽ゆうきさんとの相性も非常に良かったように感じる。
本領を発揮したのは後半だった。
兎鞠の抱えていた「ある問題」を過去の出来事と絡め、彼女自身の想いをしっかりと描き出し、その感情としっかりと向き合うことで、より物語に深みを持たせた展開となっている。
その終わり方(展開のさせ方)に賛否が出るのかもしれないが、純粋に感動できる内容で合ったことは確かで、兎鞠自身の魅力をさらに高めていたように思う。
幼少期編でも存在感が抜群だった兎鞠だけに期待感はあったのだが、それに見事答えてくれたと言ってよいだろう。
ギャグ・萌え・感動の3点が上手く融和した秀逸なシナリオであったと個人的に高く評価している。


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洲郷 千聖√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
ヤンチャなガキ大将から、皆の憧れる美人なお姉さんへ。
親友の姉であり、幼い頃からグループの姉として皆を引っ張ってきた千聖だが、そんな過去が黒歴史となるくらい現在では男子の憧れる高嶺の花に。
それでも主人公たちといるときは、昔ながらのお茶目で悪戯好きな所も見せてくれており、主人公はよく手玉に取られている。

個別シナリオでは好意をもった千聖が主人公へ強くアピールする展開に。
唯我独尊で王女様気質な所は少し残しつつも、それでも初々しさを感じさせる千聖との恋愛シーン、人気がある千聖と付き合うからこそのイベントなど、姿は変わっても騒動とは切っても離せない所も魅力の一つだろう。
終盤は変わりゆく時代の中で、それでも変わらないもの、変えなくないものをテーマとしており、「変化」が大きなモチーフとして含まれた今作の中だからこそ印象的な内容だったように思う。


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所沢 郁√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
まん丸ぽっちゃりな幼少期から一転、スポーティな部活少女へと変貌を遂げた郁。
ヒロインの中では見た目において、最も変化したといえるものの、人懐っこくどこかマイペースな所は相変わらずである。
主人公を兄のように慕いついて回る事もだが、主人公との約束を果たす為に、頭脳を犠牲にしつつもバレー一筋で頑張り続けている姿からは忠犬のような印象を受ける。

恋人はバレーボールと公言するほど恋愛に興味が無く、周囲からは王子様として扱われている郁。
個別シナリオにおいてはそんな彼女と主人公が少しずつお互いに意識してゆく様子が描かれていた。
恋愛におけるはっきりとしたターニングポイントとなるようなシーンが存在しなかったのが印象的で、親密さが高まった結果として関係が変化したような印象を受けるシナリオであった。
そんななか郁の魅力としてコロコロ変わる表情が挙げられる。
普段の王子様のような態度と主人公の前で見せる我儘で甘え上手な部分におけるギャップ、可愛いと褒めると照れてしまうところなど、何事も素直に感情に現れる郁だけに一つ一つの反応がとても愛らしかった。


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春ノ原 優菜√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
幼少期は負けず嫌いな同い年のライバルであり、悲劇のヒロインでもあった女の子。
再会した後、成長はしたものの短い身長など見た目に幼さが残り、いまだに子供に間違えられることも多い優菜。だからこそ、少し大人っぽいオシャレをする女の子に。
幼少期の体験が原因で男性にたいして苦手意識を持っているものの、その頃の主人公に救われたことからヒーロー視しており、そのため主人公に対してだけは気おくれせずに接することができる。

個別シナリオでは、いじられキャラという事もあってか主人公からからかわれることも多いものの、元来負けず嫌いで元ライバルという事もあってか、他のヒロインよりも対等な恋人関係を築いているように感じられるシーンが多い。
また後述の後半部分もそうなのだが、男性が苦手な優菜の為に主人公や幼馴染のヒロイン達が協力して行動したりと、付き合った後も周囲とのつながりがしっかりと保たれていたことも個人的に好印象だった。
後半では優菜の成長に関してスポットが当てられており、過去の約束を絡めつつ憧れだった存在に対し、並び立つように努力しようとする優菜の姿が描かれている。
エピローグで明かされる小さな設定も読後感をよくしており、個人的には評価したい。


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西渓 静流√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
主人公が引っ越していく直前に引っ越してきて仲間になった同い年の少女。
幼少期から引っ込み思案であったため、引っ越した後に友人となってくれた幼馴染たち―特に主人公に対しては恩義を感じている。
大きくなっても性格話変わらず照れもあるようで、どうしてもツンツンとした態度をとってしまうが、そうしたところを含めて幼馴染達からは可愛がられている。

幼い頃と同様、恥ずかしがりで人見知りな静流。
今作のヒロインで最も幼少期からの変化が少ないキャラクターとして描かれていたのだが、だからこそ、友達から恋人へ関係が変わることで、変化してゆく静流の姿がより大きく感じられる内容となっていた。
心を許した人に対してはとことん素直になれる静流、恋人となってからそれがとても顕著に表れ、子犬のように素直に甘えてくる静流を堪能できる。
その性格を活かし、可愛さを前面に出したシーンの数々は流石という他ない。


[主人公] 酒匂 晴輝
面倒見が良く、困った人がいると放っておけないタイプの青年。
幼少期は兎鞠や郁、千聖といった幼馴染達と過ごしていたが、両親の転勤で引っ越すこととなった。
その後、何度か引っ越しを繰り返す中で、部活に所属できないが故に多種多様なアルバイトをおこなっており、人よりも多くの社会経験を積んでいる。
今回、良心の海外転勤を期に、大学受験に備えて幼少期を過ごした町で一人暮らしをすることとなった。


【推奨攻略順:郁→千聖→優菜→静流→兎鞠】
特に制限もないため好きなキャラからの攻略で問題ないだろうが、兎鞠√に関しては個人的に最後に回すことを推奨したい。


CG
細くしっかりとした線で淡めの塗の絵。
CGの枚数に関しては質も比較的安定しており、Hシーン関連が半分以上を締めてはいるものの、枚数自体は十二分といえるだろう。
立ち絵に関しては5キャラとキャラ数が多めだが、幼少期を含めそれぞれにしっかりと複数種類が用意されており、目パチ、口パク機能もついていた。


音楽
BGM27曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
全体的に穏やかな楽曲が多く、朝をイメージさせる「クロワッサンいっぱいのバスケットから」や「あなたとの毎日に祈りを込めて」など、どのシーンでも使える汎用性の高いものがそろっていた印象が強い。
そんな中、こちらの予想を遥かに超えてきたのが今作のOPのピアノアレンジ曲だった。
純粋に櫻川めぐさんの歌うOP「春は詩と共に」自体が素晴らしい物だったのだが、このアレンジBGMは一つ一つの音が優しさに溢れており、特定のシーンにおいて真価を発揮する楽曲となっていた。
シナリオと合わせて聞いてみてほしい本当にイチオシの楽曲である。


お勧め度
HOOKSOFTらしいギャグと萌えに注力した青春学園作品…なんですが、その中で異色だった兎鞠√を受け入れられるかどうかが、今作の評価を大きく分けていると言っても過言ではない。
それゆえに、純粋に萌えやギャグのみを楽しみたい人にはお勧めしにくい作品にもなっており、その部分を考慮してお勧め度を一つ下げた形となっている。


総合評価
ギャグは自体は多少弱めだが、キャラクタ―の魅力はしっかりと描かれており、何よりもシナリオ部分に関して、好みは別れるところだが個人的にシナリオが好みだったこともあり、少し高めのこの評価としている。


【ぶっちゃけコーナー】
同系列のブランドだから比較してしまうけれど、正直、最近のSMEE作品とHOOKSOFT作品の評価が私の中で入れ替わりつつあった。
そして今作でそれが決定的になりましたね。
HOOKSOFTはギャグが洗練されてきたし、何よりシナリオ部分の伸びが素晴らしい。
上記まででも折に触れて話題にだしているが、今作のキーポイントとなっているのは兎鞠√。
彼女ノシナリオに関しては、前半に伏線自体は存在していたものの、それをどう処理するかは個人的にあまり予想出来なかった。というのも、多くの萌えやギャグを主体とした作品ならば流してもおかしくない程度の物だったので、これを扱う事は無いんじゃないかな、と半ば諦めの気持ちでいたほど。(ただ、それは完全に杞憂だったわけだが)
個人的にすごく好きな話だった事を抜きにしても、あの話を入れてくれたこと自体に関して評価をしたい。
もちろん兎鞠のシナリオだけではなくて、優菜のビジュアルについてとか、色々と作りこまれていたところも評価している。

ただ、何度も蒸し返すようだけど、兎鞠√の話はハッピーエンドではないよなぁ…深く考えると結構ビターなエンディングだった気がする。
”彼女”の想いとかを考えると特に「めでたし、めでたし」と素直に言えない自分がいて、悲しい話があるからしっかりと幸せを感じられたような気がしている。
その中でエンディングの入り方も特別感があってよかったなぁ…。

純粋にギャグと萌えだけをこの作品に求めていた人にとっては、そうした部分がすごく後味悪く感じてしまって、評価が悪くなってしまうんだろうけどなぁ…。
この辺りは本当に難しい所だけれど、個人的な好みという事で、高めの評価を付けさせてもらった。
そこが合わないのなら、この作品に関して私がした評価もあまり信用しないほうが良いだろう。