タイトル : アサガオは夜を識らない。
ブランド : MELLOW


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 5.5h)

シナリオ

ねぇ――アサガオ、君はソラを殺したの?

海上蒸気機関しか交通手段のないこ孤島「金華島」、そこに立つサナトリウムへとやって来た記憶喪失の主人公『吉良 碧依』が出会った3人の少女―品行方正で面倒見のいい優等生『皇白 みこ』、自由奔放で孤高な不良『烏羽 小鳥』、そして何故か主人公の記憶に残る物静かで夢現な少女『緋色 アサガオ』。
彼女たち共に、雨降る夜の「夢」を思い出す為、夜を見ない生活が始まる。

『世界一濁りのない純粋な愛』をテーマに掲げ、とある閉鎖空間を舞台に愛や死についてを重めの雰囲気で描いたミドルプライス作品となっている。

本作のメインヒロインはアサガオなのだが、その他に二人ヒロインが存在しており、物語が進むにつれて彼女達の抱える問題にぶつかり、そうしたものを乗り越えて自信と向き合いつつ最後にアサガオの抱える問題へ向かう、というのが今作の大きな流れ。

作中では舞台の設定を含め、序盤から伏線で隠されている事も多く、想像を膨らませながら物語を進めることになる。
謎解き自体に重きを置いてはいないものの、推理・サスペンスの要素はあり、そうした点や取り扱っているテーマ自体の関係もあって全体的に独自の重めな雰囲気が流れている。

何よりもまず今作の魅力を伝える上で特筆しておきたいのはエンディング。
その内容について直接触れるのはノーマナーであるため避けるが、2種類あるエンディングのうち一つはエンドロールも流れない簡易的なものとなっているため、実質今作のTRUEENDといえるのは残りの一つといえる。
このエンディングにおける展開が、今作のテーマを直接表現しており、作品における象徴的なシーンにもなっていた。
ある意味ここにたどり着くための作品といっても過言ではないほどで、作中で最も盛り上がるシーンともいえるのだが、あくまで演出は簡素に、だからこそ表現したい内容のみが真っすぐ伝わり、シンプルで美しいと感じることができる。
エンディング後の展開を含めて、この存在があったからこそ独特の読後感を作り上げることができており、私自身の評価をプラスル

本作最大の魅力についてはこれくらいにして、シナリオ自体の評価部分に戻るとする。
物語のテンポは軽快でサクサクと展開していき、シナリオとしてのボリュームは大きく感じられた。ただし、価格帯故か描写不足の部分も見受けられ、そうした点が今一歩踏み込み切れていない様に感じるシーンも多かった。

他に特徴を挙げるならば作中に多く登場するHシーンもある。
ともすれば抜きゲーかと思えるほど挿入されているのだが、物語の性質上一本道のシナリオではあるものの、そうした関係もあってか登場するヒロイン達と主人公は幾度も関係を持ってしまっていたのだが、そうした描写にハーレム作品特有の雰囲気はなく、あくまでシナリオの流れによるものという印象は強かった。
これを幼さゆえの暴走と表現してしまうのか、それとも強い感情と性行為は密接に関連していると、作品のテーマと絡めて考えるかは人それぞれだろう。
ただ、いささか唐突に流れが変わってしまっていた事や、その描写自体も少し執拗であったように思え、全体的に低い所でまとまっていた作品から浮いていた印象があったのは確か。
性描写自体はテーマの一つになりえるはずのもので、シーン描写自体は十分だったので、それを活かしきれていなかったのは少し残念な所。

またヒロインであるアサガオについて、作品の性質上、彼女について語られるシーンは序盤において殆どなく、そうした中で主人公が強い執着心を持ってしまっていたのだが、読み手としてはその心を上手く受け入れきれず、物語が進んでしまうように感じられた人もいるのではないだろうか。
この作品はアサガオをいかに受け入れられるかが、作品全体の評価にも絡み、伝えるべきテーマの衝撃にもつながると考えられるため、そのあたり、もう少し工夫して描写が増やされていれば、と思う

またシナリオに直接関係はないものの、演出はもう少し凝っても良いのではないかと思うシーンも多くあり、終盤のシーン演出はともかく、盛り上がるはずの部分もかなり簡素になっており、折角の挿入歌なども生かしきれていないように感じるシーンもあった。
テンポも良いため、中盤が中だるみしているとは言わないものの、全編が魅力になりうる素質を秘めた作品であったため、少し勿体なく感じてしまう。

各ヒロインで取り扱われている問題やテーマは異なるものの、雰囲気の統一感があり、総じて一つの作品としてみた時に、主張が一貫したまとまりのあるシナリオになっていた。
合う合わないの個人的趣向を排せば、比較的完成度の高いシナリオであったと評せる。


【推奨攻略順:END2→END1(TRUE)】
作中に選択肢は存在するものの殆ど1本道の物語で、最期の選択肢によって終盤の展開が分岐している。END1が短くEND2自体が非常に綺麗なため、物語の完成度を優先させるなら先に攻略するのもありだろう。


CG
しっかりとした線に濃い塗の絵。
全体的な分量は多めなのだが、メインであるアサガオ以外の一般イベントCGは少くなっており、HCGに比重が多く撮られている。Hシーンについては1キャラにつき4-5シーン存在し、合計で13シーンととミドルプライス作品としては豊富と言える。
作品の性質上、一部には流血CGなどもあるため(というかタイトル画面だが)、グロさはないものの注意は必要。


音楽
BGM24曲、Vo曲3曲(OP/ED/挿入歌)という構成。
フルプライスの物といわれても驚かない程バリエーションに富んだBGM、のどかな日常から重めなシーン用のものまで満遍なく存在しているが、全体的に落ち着いた印象の物が多い。
中でもピアノの旋律が印象的な曲が多くタイトル画面で流れる「Tonight」や「夜の誓いを」などが非常に雰囲気もあって好み。
Vo曲はOPの「アイを識らない。」も好みだが、最も作品の雰囲気に溶け込んでいたという印象から夢乃ゆきさん歌うED「虹色の愛」をイチオシしておきたい。


お勧め度
ミドルプライスという手の出しやすさはあるものの、舞台や「死」や「愛」に関連した重めのテーマを掲げた作品であり、全体的に暗めのの雰囲気が決して万人受けする作品ではない。
また作中では流血表現があったり、他にも主人公が複数のヒロインと関係を持つ展開にもなっているので、そういった内容を忌避する人には注意が必要。
上記の点や終盤の展開を含めて人を選ぶ作品であるのは確かだが、ハマる人にとっては忘れられない作品になりえる。

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総合評価
全般的には高いレベルで作られているものの、一部表現や演出では気になる所もあり、テーマの性質もあってもろ手を挙げて名作と評することもできないのだが、ミドルプライスとしては目を見張るところもありこの評価。


【ぶっちゃけコーナー】
タイトル画面からして不穏な今作でしたが、まぁ内容もかなり暗めなものになっていましたね。
ただシチュエーションに任せた暗い作品というわけではなく、シンプルに伝えたい事を伝えてくれた作品という印象。
特にTUREENDともいえるあの終わり方は、賛否両論ありそうですが好みだったし、個人的には衝撃を受けたかな。

割とよい所が多かっただけに各ヒロインが少し薄かったのも気になる所。
ただこれはもう仕方が無いよなぁ…ミドルプライスという尺もそうだし、作品的に各ヒロインにあまり深く踏み込み過ぎると、今度はアサガオが薄くなるし…。
それならせめてアサガオにもう少しファクターを当ててみても良かった気がするが、やっぱりその辺が足りなかった気がする。
全体的な分量としては十分なんだけどなぁ。

あと気になる所はやっぱりHシーンかなぁ…この作品でも決して軽くは扱っていなかったけれど、やっぱり扱っているテーマ的に「性」と「愛」そして「死」は切っても切れないものだと思うし、無視していい内容じゃない。
少なくともエピローグとしてああいうシーンを持ってくるならもう少し表現があっても良かったのでは…と思わなくもない。
そういう思いがあったからこそ、どうしてもシーンの多さや作中のやり取りで上手く生かしきれていない気がしたんですよね…本筋とHシーンを書いた人が別だったりするのだろうか、作品と繋がっていない、流れの中に無理やり挿入されている気がしたのはそういう理由なのかな。

上記のようにチョコチョコ気になる表現とかはあったのだけれど、ミドルプライス作品でこれを表現しえたのなら、まぁ十二分に良い作品だったと評していいのではと思いました。