スピカの忘れ物

ゲームレビューとちょびっと小説を公開している、鍵っ子ゲーマーのブログです。 泣きゲーやシナリオゲーが大好物!



タイトル : 創作彼女の恋愛公式
ブランド : Aino+Links


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 10h)

キャラクター・シナリオ

もう一度、君と翔ける、恋を、創作を、青春を――

元々Campusブランド所属のメンバーがあかべぇそふとに吸収されて立ち上げた新ブランド『Aino+Links』の処女作。
創作分野に関して特に力を入れた『才華学園』を舞台に、文章・絵・演技…各分野のクリエイターたちにフォーカスを当てた青春物となっている。

物語は共通シナリオで8章、個別シナリオが4人のヒロインにつきそれぞれ2章で構成されており、個別では各章の合間にEDが入っていたり、文章が読みやすかったりと作品のテンポ自体も悪くなく、最後までストレスなく読める作品には仕上がっていた。

以降では共通部分と個別部分において、いくつかの評価点と問題点を挙げていきたい。
まず共通部分においては多くの作品にあるような状況説明だけではなく、ヒロインの過去や疑似恋人関係における描写、物語の進展に伴って変化する人間関係や、クリエイターとしての挫折や苦悩なども描かれており、創作に携わる人たちなりの青春模様を作中時間の1年のスパンをかけて描き出している。
この期間をこの文章量で描いている事に関して、長いか短いかの評価は人によるだろうが、それでもヒロイン達を詳しく知ってから個別シナリオに分岐していくという形をとってくれていたのは、個人的に評価したい。
一方で、特殊な舞台かつクリエイターたちの恋愛というテーマを掲げてはいるものの、そうした設定を含めてどこかで見たことある物語となってしまっており、個別シナリオを含めて先の流れが予想出来てしまう素直なシナリオで構成されている。
クリエイターのクリエイターによるクリエイターのためのシナリオという事もあって、創作に纏わる心理描写に関しては真に迫ったものがあるものの、それ以外の部分に関しては良くも悪くも期待を大きく裏切ることがない優等生のような内容で、読んでいて忌避感こそないものの、感情を大きく動かす必要があるシーンにおいての押しが足りない。
こうしたものの、原因の一つとして考えられるのはクリエイターとしての側面を描く気持ちが前に出すぎており、主人公やヒロイン達の『強すぎる』精神面が、逆にリアリティを削いでしまっているのではないかと考えられる。
青春や恋愛を描く上で『強い』部分が大切なのは勿論なのだが、それを引き立たせるための『弱い』部分が決して不必要なわけではない。
出来れば各シーンの心理描写や展開にもっと登場人物たちの弱音や汚い部分を前面に押し出し、迷って戸惑って間違ってしまう、どこにでもいる人間としての魅力も描いてほしかったと、個人的には思っている。

豊富なイベントと共に描かれた共通シナリオと対比するように、個別シナリオはかなり簡素になってしまっていて、分量的にもそうなのだが、展開についても予想できてしまうものが多く、良くも悪くも予定調和のようなシナリオで構成されている。
驚きの無いシナリオはストレスこそないものの、同時に心を動かすことができず、最終的に物語としては良くできているが、心には残りにくくなっていた。
これは作品のTrue√にあたる逢桜についても例外ではなく、予想出来るシナリオであっても独特な世界観や圧倒的描写力などをもって表現する作品はたくさんあるものの、今作はそうしたところに重きを置いた作品ではないことは明白で、ことシナリオ部分に関してこうした問題が作品に与えた影響はとても大きい。
またシナリオに関してもう一つ問題点を挙げるなら、作中ではどの√においてもHシーンが連続して入る部分だろう。
18禁という作品の性質上、仕方がないと受け入れることもできるものの、一部√では設定的に無理がある場面でも強制的に入れられていたりと、あからさまなシーンも目につき、ライターの腕の見せ所である展開力に不足を感じてしまった。

散々に問題点を挙げたが、今作のシナリオにおいて魅力的に感じた部分もあり、それが今作のサブキャラクター達だった。
シナリオ中では主人公の友人となる獅堂兄妹(姉弟)はもちろん、過去に『才華学園』に通っていた姫子やエリカといった大人のクリエイターたちのエピソードも一部紹介されており、特に各ルートにおいては、大人のクリエイターたちの物語・歴史についてが対比的に触れられている。
そうしたシナリオからも彼・彼女たちが作品に息づいているような深みが感じられ、ぜひアナザーIFシナリオのような形で読んでみたい、と思わせてくれるほどであった。

シナリオ部分の総括として、クリエイターたちの青春と恋愛を描いた今作は、失恋シーンをしっかりと描いてくれていたりと評価したい点も多々あるものの、作品の主軸となるようなテーマや作品のキーとなりえる場面、困難な状況等の転換点となる展開をサラリと流してしまうため、どうしても一つ一つのシーンに深みが出ておらず、結果として創作に命を懸け情熱を燃やす主人公やヒロイン達の姿がぼやけてしまっていた。
そうした点が及ぼした影響も無視できず、評価としては抑え目になってしまっている。


共通√【 ★★★☆☆ 】  6h
主人公の才華学園入学からの2年が全8章構成で綴られている。
それぞれの章は0.5h-1hほどの分量となっており、クリエイターたちを育てる特殊な学園生活を中心に、各ヒロイン達との出会いや関係の進展、交わることで見えてくる各人の抱えている問題を描く。
ざっくばらんに表現すると、ヒロイン達と一つのゲームを作り上げるまでの、クリエイターとして過ごす青春の日々が大きなテーマといえる。
共通ルートとしては比較的長めではあるものの、それでも2年という月日を描くには短く、イベントも豊富なため一つ一つのシーンは比較的短く感じる程で、クリエイターとしての心理描写は真に迫るものがあるものの、一方で人間関係の変化や恋愛感情といったものが軽く取り扱われている気がしてしまう場面も多かった。
章が終わるごとにEDが流れる演出があったりとシナリオのテンポ自体はよく、豊富なボリュームであっても読み飽きることがなく、全体的に綺麗に纏まったシナリオで評価はしている。
一方で、一つ一つのシーンに良い物があっても、そこまで感情が動かされなかったため、全体的な評価自体は抑え目になっている。


20211217020618
月見坂 桐葉√【 ★★★☆☆ 】  1h
声優科に所属する一年生、「月見桐奈」名義で大人気活躍中の若手声優。
性格は明朗快活。人当たりがよく笑顔が素敵な女の子で落ち着いた物腰と家庭的な印象を併せ持ち、美人な見た目と合わせて男性の理想を具現化したような女の子なのだが、色々な秘密も持ち合わせている様で…。

序盤に見せていた人気声優としての姿と、親密になっていく事で見えてくる『桐葉』としての一面とのギャップが良く、主人公以外のヒロインである逢桜やエレナとのやりとりも好みであった。
印象的だったのは、逢桜からもツンデレと評される桐葉の告白シーン。
個人的にあと一歩の押しが欲しくなってしまったものの、シチュエーション的には十二分な盛り上がりがあり、この√最大の名シーンとなっていた。
物語の後半には人気声優と付き合うからこその障害なども取り上げられており、展開自体は素直なものになっていましたが、主人公がクリエイターとして再び桐葉に向かい合うことで、今一度『月見桐奈』としての矜持を見せてくれていた所なども良かったですね。


20211220010610
凪間 ゆめみ√【 ★★★☆☆ 】  1h
寿季のひとつ年下の従姉妹。
「GoldenLord」というペンネームで活動している新進気鋭のイラストレーターで、その名の通り金髪ヒロインをこよなく愛している。
コミュ力は皆無で人見知りなため、絶賛不登校中で引きこもり生活をしている。
絵に関しても現実逃避のために始めた部分が多いため、モチベーションが無いと手が進まず、仕事の締め切りも破ってしまうことも多いダメ人間気質の女の子。

主人公に心を開いてからは兄のように慕ってくれているゆめみは、ヒロインの中では唯一共通ルートにて主人公への恋心が無かったヒロインとなっている。
そんな彼女のシナリオに関して、疑似的とはいえ『兄妹』としての関係を結んだ二人の恋、という部分がメインになるかと思いきや、義妹であるため背徳感も薄かったからなのか意外と軽く流されている。
むしろ、引きこもりとしての「ゆめみ」というキャラクターにファクターが当てられており、加えて共通ルートでも感覚で絵を描いている、と触れられていたが、その伏線をしっかりと使った展開の分かりやすい内容になっている。
展開が読めており、あまり山もないシナリオなので評価がし辛かったのが残念な所。


20211220015205
雪妃 エレナ√【 ★★★☆☆ 】  1h
ノベル科所属するミステリアスで美人な先輩。
北欧由来の美少女ではあるものの、感情表現が乏しく何を考えているのか分からないためか、あまり友人は多くない。
趣味で官能小説を書いているものの、その実力は壊滅的と言ってよい。時郎い参考の為によく官能小説を読んでいたりもしていて、周囲を驚かせている。

個別シナリオは逢桜の代わりにライターとして参加したエレナと共にASを完成させるまでのお話となっており、圧倒的才能を持つエレナに対して、挫折と挑戦を繰り返す主人公の姿をメインで描いている。
主人公自身の成長と共に、エレナ自身も忌避していた彼女の才能についてを絡めて描いた展開自体は良かったのだが、主軸となる主人公の創作に対してのエレナの心理描写に二面性があり、テーマとなる主軸部分がブレてしまっていた事だけが不満点として挙げられる。


20211214001332
彩瀬 逢桜√【 ★★★☆☆ 】  2h弱
寿季の幼馴染で初恋の少女。
真面目で素直な性格をしており、しっかり者の常識人であるためヒロイン達の中ではツッコミに回ることも多い。
学園入学前から恋愛小説で数々の賞を受賞しており、作家としての知名度と実力を兼ね備えており、同じ物書きである主人公を互いに良きライバルとして認め合っている。

個別シナリオはセンターヒロインらしく、今作の集大成でありTRUEとと言っても良い内容に。
内容としてはどの√でも明かされることのなかった逢桜の抱えていた秘密をテーマに、クリエイターとしての生き方を描き出している。
物語の終わり方をどう受け止めるかは人それぞれだが、どうしてこの終わり方にしたのか、今作の主題となる恋愛公式部分と絡めて描くべき部分において、それをせずにこの展開にする必要があったかに関して考えると、どうしても説得力不足を感じる。
もちろん良いシーンも盛り上がるシーンもあるにはあるのだが、今までの流れや作品を締める立ち位置の関係上求められるハードルが高く、それを十分には満たせていたと言えず、評価がそこまで上げられなくなってしまっている。


[主人公]
ノベル科に通う1年生。
浅く広く嗜むタイプのオタクであり、特に声優の『月見坂 桐葉』に関しては神聖視しているほどの大ファン。
「Toshi」というペンネームで活動しており、大人気となった同人ゲーム『Create#(Number)Girls』―通称CNGにおいてはシナリオライターとして注目を浴びていたのだが、とある理由で現在はスランプ中のため物語を書く事ができなくなっている。
物書きとして逢桜には強いライバル意識を抱いている。


【推奨攻略順:ゆめみ→エレナ→桐葉→逢桜】
逢桜√のみ全キャラ攻略後に解放される。それ以外の攻略順は特にないので好きなキャラクターからの攻略で良いだろう。


CG
繊細な線と色彩に瑞々しさを感じる美麗な絵。
メイン原画を担当する有葉さんはあかべぇファンならおなじみだが、当時から高かった画力をさらに高められていた他、背景には過去のブランド作品からの絵が登場していたりと懐かしさも感じる。
ヒロインが少なめで立ち絵の差分(ポーズ)自体も数に限りがあるものの、その分衣装が用意されていたりと、個人的にはイベントCGと合わせて今作で最も評価できる分野といえる。
立ち絵には目パチ口パク機能付きで、SD絵も豊富に用意されている事も追記しておきたい。


音楽
BGM26曲、Vo曲4曲(OP1/ED3)
バラエティー豊富で様々な楽曲が集まっているのだが、全体的に美麗で落ち着いた雰囲気の物が多く、今作のタイトルにもなっている「創作彼女の恋愛公式」などはピアノの旋律がとても美しく象徴的だったといえる。
Vo曲は佐咲紗花さんの歌うOP「奇跡なんか、いらない。」をイチオシしておきたい。
一回聞いただけで良曲と分かるのだが、クリア後に逢桜の気持ちに思いを馳せながら歌詞をなぞると、また違った良さを感じられる楽曲となっていた。


お勧め度
クリエイターによるクリエイターとしての恋愛劇を描いた作品で、少し特殊な設定ではあるもののシナリオに突飛な展開が少なく流れが追いやすい。
全体的な質の高さも相まって広い層の人間にとって楽しむことができる優等生のような作品といえるだろう。
一方で、作品を多くプレイして来た人―特に今作と似た傾向の作品をプレイした方にとっては、その予想を超えられる内容にはなっておらず、あくまで『良作』の範疇に収まっている作品と捉えられてしまうかもしれない。


総合評価
CGや音楽に関しては文句なしの出来ではあったものの、シナリオ部分に関しては看過できない問題点もあり、全体評価としては平均程度に据え置きとなってしまっている。


【ぶっちゃけコーナー】
最初に言っておくけれど、私が言うよりもかなりいい作品だったと思ってはいる。
結構評価が厳しめになっていて、それについて色々理屈をこねくり回しているけれども、素直に泣けなかったから評価が抑え目なのである。
それがこのブログの評価基準の基本なのだから仕方がない。

あと創作を取り扱った作品の性質上、作中では物語への想いなんかが様々な形で語られていて、多くは頷けることも多かったのだけれど、そうして語れば語るだけ、本作のシナリオへのハードルも高くなっていく。
今作がそうしたハードルを越えられたかどうかはともかく、創作上で登場する『すごい天才』の作戦を考えるくらい難しい事だなーと思う。

そういえば、共通ルートとかは某『冴えない~(以下略)』とかなり設定が似ているらしいが、まぁ物語が沢山出てきたら多少は被るのも仕方がないと思うんですよね。
重要なのはその設定で何を表現したいかで、それが変われば作品の雰囲気も大きく変わってたはず。
多分今作でそれを表現する最大のチャンスだったのは逢桜√だったんだろうけど、やっぱりクリアした後も心に残るものが殆どなかったのが痛いかなぁ。
結局メッセージ性というものに乏しい…というより、伝えたい事は物語の中で結構ストレートに描いているから、それ自体は伝わっているのだけれど、当たり前のことを人が言われても当たり前にしか感じない様に、新鮮さがない物語に感動は起こしにくい。
その新鮮さというのは舞台設定や物語の展開なんかもそうだけれど、当たり前のことを少し見方を変えて表現していたり、普段見ている展開の中に誰もが気付かないであろう魅力を見出していたり、そういった自分にはなかったものを見つけられるから、心が動くし、物語が好きになるのだろう。
少なくとも私はそういう風にして作品に向かい合っているし、そういう作品で感動することが多い気がするんだよなぁ。



タイトル : ハッピーライヴ ショウアップ!
ブランド : FAVORITE


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 15.5h)

キャラクター・シナリオ
とある切っ掛けから「ソフィー」と出会い、初心者の彼女の為に魔法を教えることとなった主人公。公園での地道な練習の最中、大道芸を披露する少女「ルー」と出会い、彼女の発した『一緒にライヴをやろう!』という一言から物語が始まってゆく。

この作品では魔法が存在する世界観が採用されているが、今作においてはあくまで観客を楽しませる特技の一つとしてのみ使われており、今作では魔法以外にもそうした観客を楽しませる特技を持つ人々が活躍する架空の街『ライカスク』にある『ライカスク学園』が舞台となっている。
ライカスク自体はロシアをイメージしたであろう架空の国『ラーシャ』にあり、作中では他にも日本を意識した『ヤポン』であったりと、今作固有の名称でありながら、現実から転用した設定が多く登場しており、独自の設定が多くある中でも素直に世界に入り込めたのはこのあたりが理由の一つとして挙げられるだろう。

物語は大きく第一幕と第二幕に分かれており、一幕ではヒロインたちとの出会いや、ライヴのためのチーム結成、そして初めてのショーまでを描いた共通部分に、二幕では仲間たちと共に列車で旅する様子が描かれ、関係の進展や各個別√への分岐部分となっている。

テンポが特段早い物語ではないものの、イベントには事欠かず、全体的に見ると長めの物語ではあるが常に新鮮な気持ちでプレイできる作品となっていた。
特に序盤ではライヴ開催にのためのメンバー集めから、ライヴ自体の内容の決定やその練習、そして初心者のソフィーに関しては魔法の手ほどきまで…ライヴに向けての課題が山積みとなっている中で、特色あるヒロイン達に囲まれて、退屈だったはずの日常がライヴに向けて少しずつ変わっていく過程が色鮮やかに描かれており、学園を舞台とした青春物ならではの雰囲気が形作られている。
加えて第一幕部分では各ヒロインについても結構踏み込んだ内容を描いている部分が多かったのも特徴的で、他の作品であれば個別√に入りそうな内容を描くからこそボリュームも多くなっているが、それだけに登場人物たちに深く感情移入できる下地が作られていたように思う。
また主人公を介して以外の部分での交流が描かれるシーンも作中では多く登場しており、そうした描写があったからこそ作中に登場人物がしっかりと息づいているかのような印象を受けることもあった。
第一幕に限らずだが、それぞれが変化や成長を繰り返し、掛け替えのない仲間として絆を紡いでいく、その過程が描かれていたことに関しては青春物として高い評価をしている。

一方で個人的に少しだけ評価を悪くしてしまったのが第二幕からの展開。
第一幕を踏まえ、第二幕の存在を知った時は非常に期待感が高く、実際序盤の滑り出しは見事なものだったのだが、各個別に入ってから折角作り上げた世界観が一気に小さくなってしまっていた。
これまでは一つのライヴを成功に導くため、それぞれが力を合わせて目標に向かっていたものの、恋愛にファクターが当てられると共に、ライヴの扱いが軽くなってしまい、同時に他のヒロインの扱いも粗雑になってしまっていた。
個別シナリオの特性上これ自体は仕方がない事でもあるのだが、今までに登場していた伏線や設定の数々が物語の動きを鈍くしていた印象が強く、加えて取り扱わなければいけないテーマも多くなってしまっていて、各個別に入った時にヒロインについて深く描いていても、それ以外の部分がなおざりになってしまっていた。
それゆえにどうしても全体的に締まらず、良い中身であったとしても微妙な評価になってしまっていた。
それぞれの√ではヒロインの可愛さはもちろん、攻略対象キャラ以外の失恋のワンシーンがしっかりと描かれていたりと、個別シナリオの中でも評価できるシーンは確かにあり、一概に悪い内容だったとは言えないものの、個人的に大好きだった第一幕での一体感みたいな青春成分が霧散してしまい、二度と戻ってくることがなかったのが残念でならなかった。


共通√【 ★★★★★  6h
ライヴ開催までを描いた第一幕部分がメインとなっている。
ライブを成功させるために集まった登場人物たちが努力し、ときには時に意見をぶつけあってはケンカし、最後には仲直りして仲間たちの絆が深まっていく、そうして最終的に一つの目的に向かって協力する姿を描いている。
共通ルートという事で主人公を除いたヒロイン同士の掛け合いも多く、そうした描写がしっかり存在している事もこのハラショウの世界観を作る一助となっていたのだろう。
また序盤によくある各ヒロインの紹介イベントとは別に、それぞれの内面にまで踏み込まれて描かれているシーンも存在している。
明るい日常シーンとそのシリアスなシーンとで起伏がしっかり作られ、分量自体は長いが世界観に引き込まれるように、時に悲しみ、時に感動し、時間を忘れてプレイ出来る内容となっていた。
舞台や世界観がが変わっても、変わらぬ魅力をもって存在する古き良き青春学園物であったといえる。


event_13
ソフィア・トゥーリナ√【 ★★★★☆ 】  3h
ライカスク学園普通科に通う恥ずかしがり屋の二年生。
本来であれば幼少期に見つかるはずの魔法の才能が、大きくなってから発現した珍しい人物。とある切っ掛けから主人公が魔法使いであることを知って、自身を変えるため弟子入りを依頼した。
何も特技のない自分にコンプレックスを抱えており、何事にも弱気で引っ込み思案な性格をしているのだが、自身の好きな事となると暴走しがちなことも多い。

序盤から想いを寄せていたソフィアだったが、一向にその想いに気づく事のなかった鈍感な主人公。
ジャンの発言をきっかけに彼女の想いに気づき行動することを決意するものの、ソフィアの控え目な性格や二人の過去、主人公と魔法の関係についてが複雑に絡み合い、なかなか一歩が見不出せない二人の描写が際立つ恋愛シーンとなっていた。
恋人どうしになってからもイベントは豊富で、特に後半からは新キャラクターであるミヤビも登場し、物語は他の√とは違ったテイストの内容にしあがっている。
前半から後半に至るまで物語の起伏が多く、どの局面においても目の前に壁となるような問題が発生し、恋愛や夢に対して進む中で思い悩んでしまうようなシリアスシーンが用意されていて、今まで以上に『表現者』としてあるべき姿について等に言及していた。
直面する問題に対し、今まで紡いできたポカポカのメンバーとの絆が未来に進むための力となって、ソフィアが成長し一歩ずつ前進していく展開は、思わず胸に来るものもあり、今作のグランド√のような内容になっていたといえる。


event_02
カーレンティア・ヴェリーベル√【 ★★★★☆ 】  1.5h
ライカスク学園音楽科の二年生で、旧貴族であり音楽の名門一族の一人娘。
幼い頃から親に娯楽を厳しく制限され、ヴァイオリンを弾くだけの日々だった。そのためヴァイオリンの関しては国内でも指折りの実力の持ち主ではあるのだが、それ以外の部分に関しては経験がかなり乏しいお嬢様で、良くも悪くも純粋な女の子。
また周囲から勝手に距離を開けられてしまうため友人が全くおらず、友人と遊んだり皆で何かを成し遂げることに強い憧れを抱いていた。

個別シナリオでは不注意により列車の旅から置いて行かれてしまい、カーチャと二人旅を行う事になるという展開に。
主人公に対し運命を感じ、その好意を受け入れてくれた主人公に積極的に好意を示してくれているカーチャ、その姿は無邪気ながらも妖艶でした。
他シナリオと違って、物語の流れ的に他のヒロインが出てくる機会が少ないものの、その分カーチャ自身について掘り下げて描かれるシーンが多く、特に旧貴族であるヴェリーベル家の事情、父親を始めとした家族との関係について触れられており、カーチャ自身の成長が丁寧に描かれている。
また共通√で多く見せていた明るく天衣無縫な様の他に、主人公の闇を受け入れてくれるような包容力あるシーンも見せてくれており、彼女の個別√ならではの魅力がつまっている。


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ルー・マオ√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
ライカスク学園普通科に通う1年生。
いつも明るく深く考えるのが苦手で直観的に行動するクセがある、よく言えば天真爛漫、悪く言えば気分屋で脈絡のない行動を起こすハチャメチャな女の子。
ジャグリングを始め多くの大道芸を身に着けており、その腕は中々の物らしく、放課後や休日は近くの公園でストリートライヴを行って、自身の芸を磨いている。
主人公とソフィーの魔法を見たルーが「いっしょにライヴをやろう」を声をかけた、その何気ない一言が全てを巻き込んでいく事となる。

今まで気ままに生活していて恋とは無縁の生活を送っていたルーだが、彼女の個別シナリオでは、純真無垢で素直な所に惹かれた主人公がルーへアプローチするという流れとなっている。
なかでもルー自身が恋心を自覚するまでの過程に重きを置いて描かれており、自分の中に生まれた主人公への好意によって生まれる動揺や羞恥、そして恐怖といった感情に振り回されつつも、それを受け入れてゆく様子が丁寧に描かれていた。
また恋愛描写と重ね合わせる様にルー自身の成長についても触れられており、なぜ彼女が大道芸を続けているのか、そのルーツとあわせて多少シリアスな設定も交えて表現されている。
きびしい指摘をするならば、作品のテーマの着地点が多少ありきたりだったり、物語の終盤に勢いが死んでしまっている事も挙げられるが、それでも共通√では決して見られず想像もつかなかった恋するルーの姿、その破壊力はとてつもなく、補って余りある魅力だったといえる。


event_04
クラリス・クローニャ√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
ライカスク学園芸術科のバレエコースの1年。
生真面目で多少気難しい所はあるものの、バレエに対しての熱意は本物で、努力と練習を欠かさない勤勉さのある人物。
バレエの腕前は特待生で入学できるほどの実力の持ち主なのだが、男性に対し強い恐怖を抱いており、それが原因で男性とパートナーを組む必要のあるバレエの「パ・ド・ドゥ」も上手くできず、現在はスランプに陥っている。

クラリスに対し「好きにならない」と約束する事で距離を縮めることが出来ていた主人公だが、個別シナリオではその約束自体がお互いの枷となっていく。
他の√でも主人公に対して浮かんだ淡い想いを胸に秘めていたクラリスだが、個別シナリオではそうした恋愛感情について振り回される彼女の姿がメインでがかれていた。
あと一歩が踏み込めずにもどかしい思いをしたり、友人に対して嫉妬し、得意のバレエにまで影響を出してしまう。二人きりでで夜明けの太陽眺めたりと、ロマンチックなシチュエーションも多くある一方で、恋愛をする中で見えてしまう自分自身にある醜い部分に振り回される姿が印象的。
付き合う過程までが比較的重めに描かれており、恋愛描写に関しては良いシーンも多かったのだが、付き合ってからの展開は予想しやすい展開で少し短かったのが残念であった。


event_08
ペチカ・モニカ√【 ★★★★☆ 】  1.5h
ライカスク学園普通科に通う演劇部部長の3年生。
普通科では珍しい演劇部に所属していたが、気の短い性格が災いし部員とはケンカ別れしていて、現在は一人で過ごす毎日を送っていた。
演劇に対して強い熱意を持っていたが故の不和なのだが、彼女自身の演技力はそこまで高くなく、練習を何度も行う必要もあり、アドリブ力は高くない。
背の小ささと幼い見た目にコンプレックスをもっており、その事をからかわれると烈火のごとく怒り狂ったりと、ドゲのある態度に隠れがちだが、意外と面倒見はよく、気は強いが繊細な一面もある女の子で、ツンツンした態度をとっては後から後悔してしまう事も。

ペチカの個別シナリオではペチカに好意を抱いていた主人公が、毎夜行われるペチカの酒盛りに付き合ううち、なし崩し的に告白してしまうという流れ。
今までの経緯もあり自己肯定感がかなり低くそれゆえに暴走してしまうペチカと、それに対して確かな愛でこたえようとする主人公の姿が描かれている。
また物語の後半では共通ルートでも出ていたペチカの抱えている過去のわだかまりについてがメインとなっていて、ペチカがずっと抱いていた悲しみや苦しみのわだかまりが解けていく過程を、ペチカ自身の将来と絡めて描いている。
シナリオの中で明かされずじまいだった設定や一部シーンにもう一押しが欲しかったな、と気になる点もいくつかあるものの、終盤のシーンの盛り上がりも良く、√中には思わず涙してしまうシーンもあり、良い内容だったといえる。


event_06
ミヤビ√【 ★★☆☆ ☆ 】  0.5h
主人公の過去に関連する人物であり、共通ルートでもその存在自体は示唆されていたものの、主にソフィア√の後半にて登場する。
彼女については公式でも明かされている部分が少ないため、
サブヒロイン√らしく内容は短く、問題の多くも未解決のまま終了しているため、クリアしても多少のしこりが残った形となっていたのは残念。


[主人公]アキト・ユキハラ
ヤポン人の父とラーシャ人の母を持つハーフ。
元はプロの魔法使いとしてライヴを行っていたりもしたが、諸事情があって魔法を使うこと自体を嫌って引退している。
現在は憧れだった学園生活を謳歌するためライカスク学園に入学したが、2年生になった今でも同じ留学生であるジャン以外の友人ができず寂しい想いをしている。


【推奨攻略順:クラリス→カーレンティア→ルー→ソフィア→ミヤビ→ペチカ】
ミヤビ√のみソフィア攻略後に解放される。
内容的にソフィア√は後半に回した方が良いのだが、上記の理由に加えミヤビ√の読後感が悪い事から、ソフィア以外のキャラクターを一人、最後に攻略する順番を推奨したい。


CG
優しいタッチで描かれた淡い塗りの柔らかな印象を受ける絵。
全体的に質は安定して高いレベルを保っていた。
枚数に関してはイベントCGはヒロインが5人となっているため、一人当たりの数がシナリオの量のわりに数が少なく感じてしまうが、ただプレイしていて気になるほどではない。
SD絵も数多く存在しており、こちらもSD絵でしか出せない柔らかさを感じられてよかった。


音楽
BGM曲、Vo曲4曲(OP2/ED1/挿入歌)という構成。
BGMに関して驚くべきはやはりその数だろう。もちろんバレエ曲や各Vo曲のアレンジBGMなども含まれており、純粋なBGMとして数えるなら多少圧縮されるものの、それでもなお大容量。
落ち着いたイメージの楽曲が多いものの、各ヒロインをイメージしたBGMからステージ上で使われるものまで、シナリオ内で舞台が大きく変わる今作の演出にとっては欠かせない存在となっていた。
Vo曲はどれも好きなのだが、やはり今作の主題歌といえる山本美禰子さんの歌う「MAGICAL∞SHOWTIME!!」がイチオシ。
特に転調が多い楽曲となっていて、Bメロ部分から雰囲気を盛り上げていきサビ部分へと繋いでいく部分は個人的にも好きな部分だった。


お勧め度
魔法が存在する少し特殊な世界を舞台にした話ではあるものの、大道芸やバレエに演劇、そして音楽や魔法といった各分野のエンターテイナーが集いライヴを開催するに至るまで、時に喜びを分かち合い、時に意見を違え、時に失敗し、それでももう一度絆を紡ぎ、切磋琢磨して前に歩き出す、その全容は王道の青春物といえ、共通部分の第一幕に関しては自信を持ってお勧めできる。
一方、各個別シナリオからの内容は決して悪いとはいえないものの、それらと比較するとどうしても威力不足に感じる部分が多く、折角の世界観や雰囲気を活かしきれていなかった印象も強かった。


総合評価
全体的に高いレベルで安定した作品といえる一方で、シナリオにおいては一長一短の部分があった。
しかしながら良作の範疇に十分当てはまる作品であるという事でこの評価としている。


【ぶっちゃけコーナー】
序盤の滑り出しから二幕の最初の方まではすごく好きだったんだけどなぁ…各個別に入ったあたりから急に心が離れていってしまった。
各個別の内容が嫌いってわけではないんだと思う、キャラクター的に一番だったクラリスを抜いて個人的にはペチカ√とかが内容ではすごく好きだったし。
自分なりに難でそう変わっていってしまったのか、一つはシナリオ評価部分にもあるテーマや設定がまとまり切っていなかった事で、もう少し長い物語になっていたら別なのかもしれないけれど、各個別は意外と短いからやっぱり恋愛に傾倒してしまっていて、第一幕であれだけ頑張ってたライヴができ等になってたのがすごい寂しかったし、折角の世界観を使いこなせていないようにも感じたんだろうなぁ。
あともう一つは今作の主人公は過去に傷のある主人公ということで、前半部分ではわりと受け入れられていたのだけれど、後半からはちょっと苦手になってきたかもしれない。
決定的だったのがソフィア√だったかな…ほかのシナリオでもまぁそうなのだけれど、決定的なシーンでの行動力が結構弱いので、本格的に追い詰められないと行動しない(この辺りはジャンにも指摘されてたけど…)と言う所に頼りなさと、もどかしさを感じてしまった。
ソフィア√自体は結構グランド√みたいなものだから、もっと今までを巻き返せるような爆発力が欲しかったというのもあるんだけれどね、どっちかというと個別シナリオにアフターシナリオをくっつけたような内容になってしまっていたからなぁ。
世界観も独特で、内容も決して嫌いじゃないし、最後まで飽きずにプレイできるとは思うけれど、じゃぁ他の名作レベルにまで上り詰めているかというと、色々な所が物足りなく感じてしまう、そういう作品でした。



タイトル : 眠れぬ羊と孤独な狼 -A Tale of Love, and Cutthroat- 外伝
ブランド : CLOCKUP


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 3h)

シナリオ
時を超えて、”やつら”が帰ってきた――

2017年に発売された同社作の『眠れぬ羊と孤独な狼』(以下本編)から4年の年月を経て、外伝として発売された今作。

シナリオは全5章仕立て、それぞれが読むと30min-1hほどの短編で構成されている。

本編にあったテーマとは別に娯楽性を追求し、『眠れぬ羊と孤独な狼』の世界観における歌舞伎町で息づく人々の日常に焦点を当てた作品となっており、共通ルート後の派生として本編とは深く関連しないような形で描かれている。
そのため本編では最終的に退場するキャラクター達も、今作ではしっかりと登場していたり、主人公が雲の娘であり、あざみの親友である美鈴と関係をもったりと本編をある程度、度外視したエクストラ的な要素も多い。

それぞれのエピソードは単体として楽しめるような独立性の高い内容となっており、1章は振り返りの意味を込めてか本編の雰囲気が強く出ていたが、以降の章では埋蔵金探しに罰ゲームをかけたボウリング、バッティング対決やユーチューバーをテーマにしたもの等、本編からはかけ離れて平和な日々が描かれていた。
内容こそ日常シーンがメインとなっており、一部のキャラクターなどはギャグ要員として登場しているものの、舞台である歌舞伎町やそこに渦巻く雰囲気はしっかりと踏襲されている。
ただ例外的に一番最後の5章に関してはダルマ女とあざみとの白熱した戦闘シーンが描かれていたり、他にも本編では触れられなかった主人公の過去についても短いながらではあるが描かれており、外伝という部分にプラスして本編の補完的な要素も付け加えられていた。

本編が発売されてから時間も経ち、作中には振り返りのシーン等はあまりないため、本編を忘れた人は少しだけ復習してからのプレイが望ましいだろう。


【推奨攻略順:ー】
作中に選択肢は無く、1本道のシナリオ。


CG
本編同様、シッカリとした線と濃く派手な色使いの塗り。
時代を経てはいるもののその質感は変わらず健在。
今作はFDという事で複数の登場キャラクターが描かれた日常シーン用の物が多いが、Hシーンも6つ存在している。
加えて新キャラクターもしっかり立ち絵付きで実装されており、FDという事を考慮すれば十二分だったといえるだろう。


音楽
BGMに関しても本編同様に使用数不明。
本編もそうであったが静かさを感じるBGMが主体であり、どちらかというとSE等を使用した演出が効果的に使われている印象も強い。
またVo曲に関しては1曲、本編の主題歌である「Dance of Wolf」のアレンジ曲が使用されていた。


お勧め度
FDという事からもわかるが、内容的にも『眠れぬ羊と孤独な狼』とかなり関連のある話となっている為、本編のプレイは必須となる。
作品自体がしっかり完結した作品であるため、ある意味では蛇足となる今作。
それでも本編ではあまり露わになってなかった登場人物たちの日常が描かれているという意味で、ファンにとって待望の作品といえるのかもしれない。
バトルシーンはあまり多くないが、本編をプレイ済みで作風や雰囲気が好きだった方には特におすすめしておきたい。


総合評価
シナリオの観点からみると見本のような綺麗なFDだったのだが、作品評価としてはどうしても平均的と言わざるを得ず、この評価としている。


【ぶっちゃけコーナー】
語るべき部分が無かったのでここで付け加えておくが、クリア後には本編と同様に各スタッフや声優のオーディオコメンタリーも含まれていた。
内容も短いけれど結構面白くて、外伝だからと省くことなく入れてくれていた部分も好印象なところかもしれない。

上記にもある通り、全体的に優秀で内容も本編とあまり密接になり過ぎず、それでも今作をやることで本編をより楽しめるようになる。良いFDだったな~と素直に思える作品だった。
本編が綺麗に終わっている(その内容自体に賛否はあるかもしれないが)中で、「どうしてこの作品の続きを?」という疑問はあるのだが、そう思わせてくれるくらい、それぞれのキャラクターが濃くて、自然と物語を紡ぎだせるのだろうなぁ。
もちろん、発端となった発言をした人はいるのだろうけど。



タイトル : 槇村葉月の恋語り
ブランド : あざらしそふと+1


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 3h)

シナリオ
今まで住んでいたアパートが強風の被害を受け住めなくなり、不動産屋の手引きでボロアパートの『招福荘』に住むこととなった主人公。心機一転の新生活のつもりだったが自身が原因の騒音トラブルにより部屋の壁が破壊され、隣人の『槇村 葉月』の部屋と繋がってしまう事になる。戸惑いながらも奇妙な同居生活を送る中で、彼女の趣味である映像制作を手伝う事になり…。

今作のヒロインは地味で自他共に認めるネクラ女子『槇村 葉月』。
映画作りが趣味で、普段は自信なさげでネガティブな女の子なのだが、趣味のこととなると止まらなくなる。そんな彼女と映画作りを通して心を通わせていくというのが今作の物語となっている。

ロープラ作品という事もあってボリューム自体は軽量。
作中にはいくつかの選択肢が出現し、そのうちのいくつかの選択を誤ることで5種類のBADENDへ分岐する形となっている。
ただし直前の選択で逆を選べばよいだけなので、難易度も高くない。
内容に関しても、今までのただ甘いだけのシナリオとは少し変化しており、多少のシリアスシーンが含まれていたり、上記にある選択肢を使用したBADEND芸を仕込んでいたりと、シナリオ的な面白さに関しては多少プラス要素があった。

今までもシチュエーションやキャラクターにこだわりぬいた作品を作り上げてきた、あざらしそふとのロープライス作品。
今作でも『地味だけど巨乳の女の子がエッチ』というコンセプトの元で作られた作品らしいのだが、そういう意味で今作のヒロインは、元々のネクラな性格もあって、恋愛描写は初々しくもたどたどしく表現されており、そしてそんな彼女が恋をして変化していく様子や、Hシーン変わる雰囲気など、可愛さからエロさまでヒロインの持つ魅力をしっかりと描けていたように思う。
加えてシナリオには直接関係ないものの、CVを担当した北見六花さんとの相性も良く、好きな事には夢中になってしまって、それでもどこか自信のない―そんな『槇村 葉月』というキャラクターを見事に表現してくれていた。

もう一つ、今作において今までと大きく違った部分がサブキャラクター達だろう。
今作では『招福荘』の大家や住人、主人公の母親などのサブキャラクターが登場しており、一人一人に設定が詰まっていて、作中でも大きく活躍してくれている。
そうしたキャラクターを物語に出した事で、物語における展開の幅が広がり、ヒロインのまた違った魅力を見つけることができるようになったといえるのではないだろうか。
今までのロープラ作品にあったような、1対1でキャラクターを掘り下げていく閉じた世界系の中での作品は、もちろんヒロインとの時間が増え、その甘い世界に耽溺できるという意味で効果的ではあるものの、こうした他者を交えることでしか表現し得ないヒロインの魅力も確かにあるのだと思っている。

公式でも『今までとは少し違う』と表現しているとおり、サブキャラクター達の活躍やシナリオ自体に起伏を作ったり、今までのロープラ作品シナリオと変化が見られた今作だが、少なくともプレイしていて、そうした変化した良い部分を感じることができていたし、受けた印象も良い物だったので、功を奏していたのではないかと、個人的には感じている。


【推奨攻略順:ー】
上記でも述べたように選択肢によってBADENDへ分岐するが、実質的なシナリオは1本道。


CG
しっかりとした線に濃い塗の絵で瑞々しさを感じる。
全体的な質は文句なしに高く、枚数に関してもCGは26枚となっており(うちHCGは12枚)、Hシーンは5シーン、SD絵も4枚ほど用意されている。
ヒロインである葉月はもちろん、登場機会が多いサブキャラクター達の立ち絵もしっかりと用意されているところは好印象。


音楽
BGM13曲、Vo曲1曲(主題歌)という構成。
全体的に落ち着いた印象の多いBGMなのだが、「ワタシノキモチ」のような感情を揺さぶる楽曲が用意されていたり、コンセプトに合わせてしっかりと演出ができていたように感じる。
主題歌の「君と紡ぐ恋語り」で歌手を務めたPricoさん。
作中ではED曲として使用される他、タイトル画面でも使用されており、彼女の歌は初めて聞くのだが、明るい印象で素直に良い楽曲だと思えた。


お勧め度
シチュエーションに突飛なものはないものの、映画作りを通してヒロインと交流していく展開や主人公の抱えていた問題にまで言及する、という部分に関していえば萌えゲー主体のロープラとしては珍しいくらいシナリオ部分には踏み込んでいるといえる。
そういう意味で今までの甘いシナリオが中心だったあざらしそふと作品との差が出来ているのは確かだろう、ただあくまでも主軸は萌えゲーであり、ヒロインの可愛さを見せるという事に特化した作品であることに変わりはないため、そこまで気にする必要はないといえる。


総合評価
今までの作風から少し変えられた部分もあるものの、総じての評価は変わらず安定したロープラ作品としてこの評価となっている。


【ぶっちゃけコーナー】
言いたいことは結構シナリオ部分で語ってしまっていたので、焼き回しになってしまうのだけれど、やっぱりシナリオ部分の変化が顕著だったかな。
どこか今までのロープラ作品にあった「この作品のためのキャラ・シチュ」という感じが今作ではなくて、あくまで一つの作品にある一つのルートを切り取ったような印象が強くなっていた気がした。
キャラクター自体の魅力だけではなくて、シナリオ自体にも割と読んでいて面白さがあるというか、メッセージ性が少し込められている気がした。
もちろん、主体である萌えゲーとしての部分に関しての魅力が減ったわけではなく、サブキャラクター達がしっかりと動いていたから、新たに見えるヒロインの魅力も際立たせることができていたのかなと思う。
ただまぁ、流石にロープライスとしての尺にも限度があるので、どうしても短くなりがちだけれど、その中でもできる限りのことはしたという印象を受けた。

あと作品に出てきた主なサブキャラは今回3人だったけれど、作中には多分今後の作品で取り扱われるだろうメイドさんとかが出てきていた莉、1作目にして「恋語りシリーズ」と銘打たれていることからも、同じ舞台を使ったシリーズ作品が出るんだろうなぁ。
今回のシナリオも割と好みだったので、これ自体は素直に期待できるかもしれない。



タイトル : 彼女は友達ですか? 恋人ですか? それともトメフレですか? Second
ブランド : DESSERT Soft


シナリオ : ★★☆☆☆ [2/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★☆☆☆ [2/5]
(総プレイ時間 : 6h)

シナリオ
トメフレ―友達以上、恋人未満のお泊りから始まる、都合が良くて居心地のいい関係、仲間―家出少女とそれを止める男子学生の姿を描く。

同社作の前作『彼女は友達ですか?恋人ですか?それともトメフレですか?』と世界観や設定を同じくした作品となっており、クラスの人気者やおしとやかなお嬢様、従順な妹に現役声優…はては金髪外国人と、バストにこだわりぬいた新規ヒロイン達との日々が綴られた作品。
根幹設定である『トメフレ』については前作に登場しており、それ自体は全く同じなので説明は割愛するが、今作でもその設定を活かしたハーレム物となっている。

前作にあったノリや空気感は健在で、旬の時事ネタを含め、各方面をネタにするパロディネタの豊富な日常シーンはやはり魅力の一つだろう。また後半に入るとHシーンが連続しているのも前作と同様で、ヒロイン達が主人公に見せる情欲をそそらせるような素振りの数々は決してシチュエーションによるものだけではなく、テキストライターの力もあって見事に表現されていた。

前作と同じ部分が多く挙げられる中、その中で違いを挙げるとするならば日常シーンが短縮されたところだろう。
トメフレという特殊な関係ではあるものの、恋の駆け引き…のようなものは今作に存在しており、特に前作ではそういう部分で女の子の魅力を表現していたように思う。
ただ今作では全キャラがより行為に対して積極的に描かれており、上記のような付かず離れずの距離感におけるやり取りが激減していたように思う。
また以前と比べると各キャラに対する掘り下げ自体はなされているものの、それでも一切事情が不明なヒロインがいたりと差を感じてしまう部分もあった。
個人的には前作において、こうした部分に新鮮さや面白みを感じていたので、残念に感じてしまう事は多かった。

後半におけるハーレム後の展開としては前作も今作も倫理観を失ったHシーンの連続がメインとなっているので、作品としてどこに魅力を見出すかによってここも評価は分かれるところだろう。
上記にあるような理由でエロを目的とするならシーンも増えて、楽しめるシーンが増えたと捉えられるが、シナリオ単体としてみた時は中身がなく、内容自体も焼き回しになってしまっていて、結果的に前作の劣化品と捉えてしまった人もいるのではないだろうか。

評価として前作と比較してしまう部分が多かったものの、そうせざるを得なくなる前作の要素を引き継げているあたり「Second」の名に恥じないものにはなっているといえる。


【推奨攻略順:ー】
選択肢は無く、一本道の物語。


CG
細い線に濃いめ塗りと、前作同様のテイスト。
ヒロインも5キャラではあるものの立ち絵差分が多く質も安定している。
CGに関しても前作同様、一般CGが少なくHCGが中心となっている。特にHシーン25シーンと全作よりも多くなっているのも魅力の一つだろう。


音楽
BGM26曲(Vo曲inst含)、Vo曲3曲(OP/ED/劇中歌)
全作と比較すると数は減少したうえ記憶に残るBGMも少なかったが、それでも各キャラのテーマBGMなどを始め、満遍なくそろえられている印象がある。
Vo曲では作中に前作のOP「Best Place!!」のアレンジが使われており、希薄な前作との繋がりのなかで、ファンにとってはうれしい所だろう。


お勧め度
前作との繋がりは全くないため、今作からのプレイも全く問題なく、ヒロインが気に入ったという理由でこちらからプレイするのは全く問題ないだろう。
一方で前作からプレイしていた人にとっては評価が2分するであろう今作。
Hシーンを目的とした人にとってはそうしたシーンへの突入はかなり早くなっており、シーン数自体も一応増加している。
一方、私のようにそれ以外の部分の要素に価値を見出していた人にとっては、そうした部分が(前作よりも)削がれた形となっている為、プレイした後に得られる満足感は低くなっていた。


総合評価
前作がしっかりと引き継がれ新規ヒロインと共に帰ってきてくれたと感じる一方、二番煎じという評価を否定できる要素が少なく、この評価となっている。


【ぶっちゃけコーナー】
前作との繋がりはないけれども、前作の設定や雰囲気、テキストのテンポなんかは引き継がれていたイメージ。
それだけに焼き回しのような印象を受けてしまう事もあって、違いと言えばハーレムに入るまでの流れが結構早くなっていた事。
前作はハーレムになるまで過程において、今作の設定だからこそ表現し得る女の子の可愛さみたいなものが詰まっていた気がして、シナリオにも楽しみを見出せていたのだけれど、結構今作ではそういう部分がそぎ落とされて作り直されていたイメージ。
だから抜きゲーよりなのかな、と思いそうですが、多分それ以外の要素が多すぎる…という感じになりそう。
確かにエロシーン関連の表現力には定評があるけれどね。
エロとギャグの融合という意味では某「ぬき〇し」とかの足元にも及ばないだろうし、どうしても不足感はぬぐえなかったかなぁ。
個人的に合わなかった部分や前作と比べている部分も多くて、評価としてはかなり抑え気味になっていますが、今作からプレイしていればそのあたりの不安はあまりないのかもしれない。



タイトル : Monkeys!¡
ブランド : HARUKAZE


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★★ [5/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 7.5h)

キャラクター・シナリオ
とある切っ掛けで自身が通う男子校が廃校の危機に直面している事を知った主人公『浮木々 猿吉』はそれを阻止するため、生きることに飽きた少女『月島 カラス』の手引きで、共学化に向けて男子のイメージ向上のため、女装をしてお嬢様女子校に通うこととなる。

シナリオを担当したのは同社作『ノラと皇女と野良猫ハート』でもおなじみの「はと」さん。
かなり特殊な設定の作品ではあるのだが、実はシチュエーションを細かくすると珍しくない。ただ、そこにプラスアルファされていく要素の一つ一つがHARUKAZEの作品らしさを作りあげているように感じた。

その一つは作品が会話中心で組み立てられている事だろう。
今までの作品でもそうした傾向はあったが、今作でも地の文が少なくなっていて、ギャグを中心とした軽快な掛け合いがメインとなっている。加えて、マンガのようなコマ割りがなされたCGをつかった演出効果もあり、全体の雰囲気がコミカルに仕上げられていた印象が強い。
こうした走り抜けるようなテンポの良いシナリオに仕上がっていた一方、シナリオ自体がかなり短く、ただでさえ短いプレイの体感時間は更に短くなっており、加えて勢いのみ進んでいく展開も多く、説明が少なくて分かりにくい場面に直面する事も多かった。
ギャグシーンが続いたかと思えば唐突なシリアスシーンに突入し、かと思えばギャグに立ち戻る等、起伏が激しい物語にもなっており、非常にクセが強く感じられる作品でもある。
それらに対して、自身の中で流してしまうのか、かみ砕くか、いずれにしても受け入れる作業が必要となるのだが、こうしたところが良くも悪くも今作の特色の一つとなっていた。

もう一つは作品に込められたメッセージ性。
ヤンキーの集う男子校とお嬢様学校、不良少年とお嬢様達、カラスとサル、嘘と本当、男と女…どの√でも事あるごとに意識させられる対比となっている、裏返しの関係。
今作の当初の目的は男子校と女子校の共学化なのだが、異なる立場、異なる性、異なる考え、異なる生まれ、そんな人が集まって「仲良くする事」というのはどういうことなのか、言及した作品となっていた。
上記でもすでに述べたが、一つの√を見てみた時にもシーン転換が唐突でぶつ切りに感じるのだが、各ヒロイン√を眺めても主張はバラバラに見える。
ただそうした一つ一つの話を拾い集めて、俯瞰で見ると一つの物語、一つのメッセージとして成立するところが今作の面白い所だろう。

またシナリオに直接関連している部分ではないものの、大きく寄与した要素として今作の演出も欠かせない要素の一つだろう。
コマ割りにすることで枚数をそのままに、より多くのシーンをヴィジュアル的に表現したCGや、重要なシーンで感情に最後の一押しを加える主題歌「明日を漁れ」の存在、カラスCVを担当した(美天羽礼)の名演等々、今作を盛り上げてくれていた要素を挙げれば暇がない。

そうした要素の一つ一つが、クセのあるシナリオを、涙あり笑いありの学園物に昇華させてくれていたといえるだろう。


共通√【 ★★★★☆ 】  2h
主人公がカラスと出会い、目的達成のため硝子ノ宮に通う日々がメインとなっている。
ヤンキー出身の主人公がお嬢様学校に潜入するという特殊なシチュエーションにおいて、女装がバレない様に活動しながら、学園で次々と出会う特殊なヒロイン達に振り回されることになる。
シチュエーションもさることながら、登場する各ヒロイン達の濃い個性に慣れる必要もあり、加えて主人公自身もかなり特殊な事情を抱えていたりと、説明は少ない割に設定自体が多い。
個人的には序盤から新鮮味溢れる演出や掛け合いなどが多く、今作の主たる魅力ともいえるギャグシーンにおいてもかなり笑えるシーンが多く、高い評価をしている。ただライター特有のシーン展開が続くため、この作品の作風に合うか否かの、ある意味では篩となっていると評することもできる。

20211117004153
霧灯 ユキ√【 ★★★★☆ 】  1.5h
演劇部に所属する常に男装をしている麗人。
女の園である硝子ノ宮の女子からは憧れの存在として評価も高く、本人もその期待を裏切らない様、まるで王子様のように立ち居振る舞いを行っている。
劇では主に男役をこなしており、男性の身体のつくりに興味を示している。次回演じる劇の役作りのため、男らしい(というか男だが)主人公の姿を見て興味を抱く。

ユキに興味を持たれた主人公が、彼女の内面に触れることで、次第にお互いについて考えるようになるという流れに。
恒例の女装バレシーンなどはかなり淡泊だったものの、代わりに女装した男子と男装の麗人の恋という部分にスポットが当てられており、
恋愛描写に関しては、素直になれない両者が男性役としてどちらがリードするかを争ったりと、恋愛シーンにおいてもユキらしさを活かしつつ、共通ルートからは想像できないヒロインの魅力を引き出している。そうして最終的にはギャグシーンとしても昇華させていたりするので見事という他ない。
中盤から後半にかけてはお互いの家族関係についても時折触れられており、描き切るにはいささか短いシナリオではあったものの、メッセージ性もある程度あり、今√のもう一つの軸にもなっていた。


20211120152211
硝子ノ宮 硝子√【 ★★★★☆ 】  1.5h
名家のお嬢様で、全会一致が原則のお茶会を仕切る生徒会長。
誰よりも硝子ノ宮を愛してやまない一人で、常にその生徒の模範たろうとしており、学園生たち妹と呼び慈しんでいる。
新しくやって来た主人公(ジュリア)に、硝子ノ宮恒例の試験の為にお嬢様としての立ち居振る舞いや知識を叩き込む。

全生徒の模範として完璧な姿を見せていた硝子、そんな彼女が主人公と関わる事で少しずつ綻びを見せてゆく。
共通でも少しだけあったが、個別シナリオではそれがより顕著に。
一見すると包容力のあるお姉ちゃんって感じで、共通からの流れと合わせて硝子が学園を愛しているのも伝わってくる。そんな大好きな学校だからこそ、共学化に対しても反対をし続けている、そんな彼女をどうやって説得するかが物語のテーマの一つとして存在している。
中盤ではシンデレラを彷彿とさせる展開もあり、物語としての最大瞬間風速がここにあったと言っても過言ではない程の名シーンとなっていた。
付き合った後も尽くしてくれる家庭的な女の子でありながら、それでもお嬢様特有の高飛車な所が出てしまったり、主人公についてノロケる姿が可愛かったり、コロコロと変わる表情がとても可愛いキャラクターでした。


20211121000526
メバチ√【 ★★★★★  1h
硝子ノ宮の夜学へと通う女の子。
お嬢様が通う学園にそぐわない風貌や立ち居振る舞いをしているが、元々は紛争地で育ったており、実家が突然裕福になった事で硝子ノ宮に入学した。
戦闘に関する各スキルが高く、特にナイフの扱いにも長けていて、日夜道を踏み外しそうな友人の護衛をしている。

ぶっ飛んだ面子がそろっている硝子ノ宮の中でも輪をかけて異色のヒロインであり、共通ルートでは全く全容のつかめないメバチ。そんな彼女の個別シナリオでは、戦闘能力の高さを見込まれたメバチが一人で主人公の男子校へ偵察へ行くという流れに。
始まりから終わりまで恋愛描写がかなり少なく、メバチ本人にスポットを当てた内容となっていたのが印象的で、中盤から終盤にかけては完全に予想出来ない展開の連続となっており、正しく怒涛と表現してよいだろう。
それだけにシーン間の繋がりが少しだけ雑になっていたが、最後までプレイした時に突き抜ける感情は確かにある。個人的好みもあるものの、本当に素晴らしい話だっただけに、物語がかなり短かったのだけが残念でならない。


20211121004925
月島 カラス√【 ★★★★☆ 】  1.5h
月島グループの正真正銘のお嬢様。
美人で聡明、 礼儀、礼節、マナーについても完璧で文句の付け所が無いのだが、
そんな境遇の中で現在の生活に飽き飽きしており、飽きすぎて死にそうになっていたところを主人公に起こされた。
主人公を人形扱いしながらも女子校へと手引きし、共学化にむけて男としてバレないようサポートしてくれる。

個別シナリオは他の3人のヒロイン√で起こった主要な出来事がすでに起こり解決した後の展開として綴られている。
カラスの可愛いシーンという意味では他の√でも垣間見える”お嬢様らしくない”反応の数々が挙げられるが、彼女のシナリオではそうした部分がより恋愛描写を絡めて描かれており、やはり可愛い。
シナリオ自体の内容も非常に良く、他のヒロイン√をすべて終えていてもなお予想だにしない展開がなされていた。しかし一方で、主要なシーンであっても話が前後していたりと、とにかく状況説明となる文が少なく、理解し辛くもなっている。
こうした部分をどうかみ砕くかが今作を楽しめるかにかかっているといっても良いだろう。
後半は盛り上がるシーンも目白押しで、彼女自身の境遇も絡めて主人公への深い気持ちが伝わってくる描写は特に印象的。
共学を目指すという事、女子と男子が一緒に仲良くするという事、そうした意味について、今作で伝えたい事がしっかりと詰まった正に集大成といえる内容となっていた。


[主人公]浮木々 猿吉
ケンカが強く、単純明快、真っすぐな性格をした今作の主人公。
いつも明るく、少し喧嘩っ早いが、情には厚く、困っている人を放っておけない。
その武力と性格から男子校では絶大な人気を誇っているのだが、そんな男子校を廃校の危機から救うため立ち上がる。
女子に対しての理解は極端に浅く、お嬢様の価値観は理解できていない。
いつも正直で、それ故に耐性のないヒロイン達を時に傷つけ、時にキュンとさせている。
実家は青果店を営んでおり、その家庭環境はかなり複雑らしい。


【推奨攻略順:ユキ→硝子→メバチ→カラス】
カラスのみ攻略順にロックが掛かっている。
その他のキャラは好きな順番からの攻略で良いだろう。


CG
全体的に線が固く濃い塗の絵。
立ち絵とイベントCGでの統一感もあるのだが、一部軽い違和感を覚えるようなテイストが違うCGなども交じっている。
なんと言っても特徴的だったのはマンガを彷彿とさせるコマ割りCGだろう。
これらは本作のCGの大部分を占めており、そういったCGであるためか各CGにおける差分を含めた際の枚数は少ない。
ただそれを考慮したとしても、まだCG数は多く、さらに作中では各コマを少しずつ見せていく方式となっていたため、実際の枚数以上にCGの枚数を感じられた。


音楽
BGM41曲、Vo曲5曲(OP1/ED1/劇中歌3)という構成。
とにかく多いBGMはお嬢様女子学校とヤンキー男子校、それぞれの雰囲気を作り出すためにフル活用されており、他にも「口笛」のような日常シーンのものから「シルバーロード」のような情緒たっぷりな楽曲など、今作の演出において重要な役割を果たしてくれていた。
Vo曲は各曲素晴らしく鑑賞画面でFull.Verが聞けるのも好印象。その中でもやはり日南めいさんの歌う主題歌(OP)「明日を漁れ」が本当に素晴らしい。
今作の内容がテーマになった楽曲なのだが、今作における主要シーンでは必ずと言っていいほど使用されており、またその効果が絶大であった。
全体的な質が高く量も豊富でBGMとVo曲、そのどちらもを合わせて今作の屋台骨となっていた。


お勧め度
生粋のヤンキーが女子校に女装して潜入する…という今作、似たシチュエーションの作品は確かにあり、そうしたものが好きという方であっても、それ単体でお勧めはできない。
勢いを重視したギャグ中心の物語が好きで―なにより次々と入れ替わり立ち替わるシリアスとギャグシーンに自身の心がついて行けるかが、今作を受け入れられるかの分岐点となっている。
演出・シナリオ・楽曲、それら一つ一つの要素を挙げて素晴らしい作品ではあることは揺るがないが、過去のHARUKAZE作品に触れた事がある人、好きな方にとっては慣れたものなのだが、人を選ぶクセの強い物語であることも否定できずこの評価としている。


総合評価
シナリオが短い事を始め欠点はいくつかあるものの、それ以外の部分に関してが弱点を補って余りあり、独自性と主張性のある名作として高く評価したい。


【ぶっちゃけコーナー】
良い作品は多くても、鮮烈なインパクトを与えてくれる作品は多くない。
そういう意味では今作はずっと記憶に残り続ける物語になっていて、そういう所はすごく高く評価したいんだよなぁ。
それぞれのシナリオでクライマックスシーンが分かりやすく存在していて、それら一つ一つがすごく印象的だった。
プレイを終えた今でも何度も反芻するくらいにいいシーンが沢山あって、もちろんプレイ中に何度も涙を流している。
いや「書き方を工夫すれば、もっと…!」みたいなシーンも確かにあるにはあったんだけど、それも含めてこの作品の魅力なのかなぁとおもった。

あとセンターヒロインともいえるカラスがずっと可愛いんだよなぁ。
完璧なお嬢様然としているところから、少しはみ出た本音みたいなシーンが所々あるんだけど、その時が声優さんの演技もあって本当に可愛い。
こういう部分はシナリオだけで普通に表現できる可愛さじゃないから、素直にすごい部分だと思っている。

あと今までに書いた部分でもあるけど、基本的にシーンは唐突で、中でも顕著だったのがHシーンかなぁ。選択肢次第でシーン自体が分かれていたりと、数をかさ増しする工夫も取られていて、結構物語の流れの中で無理やり入れられている印象が強く、そういったところは全年齢版を意識しているのかなと思った。

プレイしながら作中に出てきた女子校と男子校、どっちの学校も特色がかなりあって、どっちの学校行きたいかと考えていたんだけど、やっぱり男子校かもしれないなぁ。
命がいくつあっても足りなさそうだけど。



タイトル : アインシュタインより愛を込めて APOLLOCRISIS
ブランド : GLOVETY


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 4h)

シナリオ
前作「アインシュタインより愛を込めて」のアペンドシナリオを収録した作品であり、中途半端に終わってしまった前作の内容を踏まえてか、完結編となる今作は無料で配布されている。

制作陣はほとんど変わらず、シナリオを担当したのももちろん新島夕さん、前作でのGRAND√における「小笠原諸島で過ごしたひと夏の冒険」と呼ぶにはいささか壮絶すぎた出来事から1年後がこのお話のスタートラインとなっている。

目の前から居なくなったロミとこれからの未来に想いを馳せながら、漫然と日常を過ごす主人公。
そんな彼の元へ「久寿 苗蒔」なる謎の人物からのコンタクトがあり、それと時期を同じくして再び姿を現したのはいなくなったはずのロミだった。
再会の喜びも束の間、主人公はそんな彼女の助言を受け再び「科学特捜部」を立ち上げる事となる。

こうした流れもあって本作における前半部分は「科学特捜部」としての活動となっており、前作の共通ルートと同様、前作ヒロイン達との懐かしいやり取りが描かれていた。
ここで登場するキャラクターの多くは、今作の根幹部分に関わっていない事もあり、主人公が巻き込まれる”非日常”がメインとなっている本作において、短い間ではあったものの、”日常”の象徴的な部分として対照的に描かれていたように感じる。
そして後半、前作からの続きという事で、ロミの抱えていた秘密を踏まえて、中途半端になっていた数々の伏線の回収が行われており、これをもって「アインシュタインより愛を込めて」という作品自体の結末を描き切ってくれた、と感じた人も多いはず。
一方でそうした部分に関して、本編の批判を受けて後付けした印象を拭い去れない部分もある。加えて作品をすべて終えても、前作における一部記述等で謎が残っている部分もあり、どこまでが伏線で何処までが雰囲気造りのためのブラフだったのかは判然としない。
そうした点から純粋に評価できるかは、人によって分かれてしまうだろうが、それでも前作から引き継いだ雰囲気を損なう事なく、テーマをしっかりと見据えて物語を完結させたという点や、物語自体は少し走り気味ではあったものの、その品質自体は悪くなかった事に関して個人的に高く評価している。
テキストと雰囲気は良い一方で、物語の盛り上がりにおける戦闘描写が拙かったり、キャラクターの内面の描写が省かれ気味だったりと、ダメなところも目立つ今作だったが、作りっぱなしで放置せずに前作では披露しきれなかった多くの設定や展開を表現しようとする、今作をアペンドという形でも生み出した、そのチャレンジ精神自体は高く評価すべきだろう。

未完成に感じられた前作も今作と合わせることで受ける印象が大きく変わる。
非現実的なフィクションに翻弄され平穏を奪われ続けた少年がそれでも、と声を上げ不条理な世界の中で愛する人へ手を伸ばす―「街に明かりを灯す」とロミが繰り返し口にした、人との繋がりの大切さを唱えた中で主人公が出す答えがいかなるものだったのか、それをしっかりと示してくれるような作品に仕上がっていた。


【推奨攻略順:なし】
作中に選択肢は存在するものの、シナリオを進める中で全部選択することになる実質1本道の物語。

CG
前作に引き続き繊細な線に色鮮やかな塗りの絵。
新規CGは12枚存在し、そのうち通常シーン用は7枚、Hシーン用は5枚(回想3枠)となっている。
価格(無料)やシナリオの分量を考えると十二分すぎる程だろう。


音楽
作中では前作の物も継続して使用されているが、今作から新規追加となったBGMは5曲。数は少ないものの無料であったことを考慮すれば十二分な量といえるだろう。
何より担当されているのが水月陵さんということで、その質は言うまでもなく良質。
Vo曲はOPに使用されているLunaさんの歌う「アインシュタインより愛を込めて」、前作の


お勧め度
無料で単体のプレイが可能であるものの、シナリオは完全に続きとして作られているため、前作のプレイが大前提にあると言ってよく、また作中には振り返りシーン等も全くないため、既にプレイ済みの人は復習してから攻略に臨むことを推奨する。
今作をもって「アインシュタインより愛を込めて」は完結すると言っても過言ではないほど、多くの謎や伏線が回収される内容となっており、低くなった期待値を少なからず回復できる作品として、前作をプレイ済みの人には続けてのプレイを推奨したい。


総合評価
無料作品とは思えない程シナリオについては評価しているが、ある意味で前作で”入れるべきものが入っていなかった”という経緯などを考えると、手放しで評価できず、作品単体として考えると良い部分と悪い部分が綯交ぜになっているという事もありこの評価とした。


【ぶっちゃけコーナー】
今作をプレイすることで前作の評価が大きく覆るってのは悔しいけれどあると思う。
というか、現に少しだけ評価を上向きに変えたしなぁ…それくらいアペンド自体の質は悪くなかったんだよねぇ。
最初からこれを本編に入れておいてくれ、とは本当に何度も思ったけれど。

もちろん今作のアペンドで完璧だったかと言われると、まともにサイエンスSFとして捉えた場合にかなり都合の良い展開が多すぎたり、そもそも文章的に表現しきれていない部分も多かったりと、いささか疑問の余地も残っている。
ただ、上記にもあるように、中途半端だと多くの人が思った作品に対して、完結編として多くの人が納得する様な展開を見せてくれたこと、それを無料で配布したこと自体は大いに評価できるのではないだろうか。
まぁ、一方で作品として前作が完結していなかったことを公式的に認めたと考えることもできるのだけれど…。
そう考えてしまうと何故、前作と合わせて販売しなかったのか(未完成状態で販売してしまったのか)という事だけが悔やまれてしまう。
まぁ、過ぎた事を考えても仕方がないのだが。

何はともあれ、今となっては懐かしいキャラクター達のシーンもしっかりあるし、新キャラクターも追加され、より深く「アインシュタインより愛を込めて」の世界にある謎に踏み込んだ今作。
前作をプレイするなら今作も連続でプレイが必須な作品に仕上がっていたことは言うまでもないだろう。



タイトル : 我が姫君に栄冠を 将軍の誘惑
ブランド : みなとそふと


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   :       [-/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 1.5h)

シナリオ
本編「我が姫君に栄冠を」に登場するエスクド・パガンがヒロインとなったスピンオフ作品。

シナリオを担当するのは本編から変わらずタカヒロさんとなっており、作品の雰囲気は十分に踏襲されている。

今作のヒロインとなったエスクドは由緒正しい貴族の娘。
美人で常に冷静、学業も優秀で天眷により使用する盾を用いた戦闘力もズバ抜けて高い。皇帝であるノアの盾として育てられ、忠誠を誓っており、帝国屈指の戦力を誇る帝国五星の一端を担っている。
本編においてもサブヒロイン√という事で登場シーンも比較的多かったエスクドだが、スピンオフという形でヒロインに昇格した形となっている。

物語の舞台となっているのは帝国領であり、本編においてノアと出会い学園に通う事になったあたりからのシナリオとなっている。
そのため主人公の相棒であるミンジャラやエスクド以外にノアやフォル、ラスト、ノアの妹であるマニエラといったキャラクター達が中心となってシナリオを盛り上げていて、他にも連邦からはレイズが登場していたりと、本編と比較するとどうしても人数は絞られているものの、FDとしては十分に賑やかといえるだろう。
またFDということもあって、端々にあるギャグ要素はより強くなっており、特にエスクドの特性である勢力の高さによる暴走と、天然なシャオという組み合わせによる掛け合いは今作だからこそ楽しめる内容だったといえる。
そうした中で話自体もサクサクと展開していく事がシナリオにおける特徴の一つとして挙げられるだろうが、ボリューム自体が乏しく内容自体も薄いため、上記のようなギャグシーンとエスクドとのHシーンが本作のメインコンテンツといえるだろう。

【推奨攻略順:なし】
シナリオ中に選択肢無し。

CG
本編と同様にしっかりとした線に、少しだけのっぺりとした濃い塗の絵。
背景や立ち絵等にほとんど追加はないものの、新規CGで19枚(シーン回想枠8個)と、作品の短さに対して豊富な量が用意されている。


音楽
OPは特に存在せず、EDもBGMが流れる程度の物。
BGMに関しても30曲弱が本編からの流用されて閲覧できるようになっており(Vo曲は無し)、新規追加要素はなかったため評価無しとなっている。


お勧め度
スピンオフ(FD)という事で、本編をプレイした人の中でエクスドが好きだった人にはお勧めしやすい作品となっている。
また作中には必要な知識部分が詰め込まれたTIPSがある他、体験版という形でこの物語に至るまでの本編シナリオをプレイすることも可能なので、本作からのプレイも可能となっている(本編を知らずにエスクドに一目ぼれをしたという人がいるのかは不明だが)
しかしながら、世界観を十分に堪能するという意味でも、本編をプレイしてからのプレイが望ましいだろう。
初見プレイヤーに対して優しい配慮が行われており、値段的なハードルも低くなっている事から手を出しやすい作品となっているが、作品自体の短さはある事も留意しておくべきだろう。


総合評価
短くはあるもののFDとして必要な要素はしっかりと満たしつつ、みなとソフトらしいギャグテイストなシナリオも健在で、プレイした人がおおむね満足できるだろうという事で平均的な評価とした。


【ぶっちゃけコーナー】
本編はかなり登場人物が多い作品であり、今作のヒロインであるエスクドもサブヒロインとして登場している。
その他多くのキャラクターがいる中で、このキャラが選ばれた理由は定かではないものの、エスクド自体の特性があって、話が作りやすそうだったからというのはあったのかもなぁ。
その甲斐あってか、全体的に賑やかでエスクドの可愛い所なんかも良く引き出せていたように思う。
ただFDといえどもシナリオ不足というのはどうしても感じてしまうかなぁ…ほかの一般的なFDと比べて著しく短いわけではないのだけれど、どうしても大容量だった本編とかの印象を引きずってしまうから余計に思ってしまうのかも。



タイトル : 思い出抱えてアイにコイ!!
ブランド : HOOKSOFT


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 13h)

キャラクター・シナリオ
「ヒロイン全員が幼馴染」というコンセプトの元、軽快なギャグと魅力的なヒロイン達で描く青春学園物として描かれた今作。

物語の冒頭にはプロローグとして、主人公やヒロイン達の幼少期にあたる「過去編」が用意されており、主人公が街を離れるまでの幼馴染のヒロイン達との日常が描かれていた。そして時を経て、大きな変貌を遂げたヒロイン達と再会することとなる、というのが共通シナリオ部分の入り口となっている。
その後の日常シーンではキャラクター紹介の形を交え、幼少期と成長後のヒロイン達のギャップを感じさせつつ、新たに生まれた魅力ある一面を描き出していた。
共通部分ということもあって全ヒロインが集結しているため、ギャグシーンなどを中心に賑やかで豊富な展開が見ることができ、幼馴染特有の軽快なやり取りが複数のキャラクターと成立するという今作のコンセプトを最も活かしていた部分といえる。
こうした部分はギャグのおかげもあってかシナリオのテンポも良く賑やかで、話の展開自体もサクサク進むのは魅力の一つに挙げられるだろう。
ただし、途中には細かな選択肢が何度も出現していて、こうした部分はヒロイン達の色々な反応が楽しめる一方で、シナリオの流れをせき止めてしまう作用もあり、好みの分かれるところといえるかもしれない。

今作の特色の一つとして挙げられるのが恋愛部分だろうか。
共通ルートとなる日常編の後、特定のヒロインと関係を進める『進展編』という事で、気になるヒロインと一緒に下校したり、放課後のスマホでのやり取りをしたりと、学園物ならではのシーンが詰め込まれている。
どのキャラクターとも幼馴染の恋愛だからこそ劇的な変化はないものの、親密度が高まったがゆえに関係が変化するという過程を丁寧になぞっていた印象が強い。
ただ、どのシナリオも共通した流れがパターン化されており、恋人関係に至るまでの流れに差分が全くなくなってしまった、という不利益もあった。
ここはもちろんコンセプトと関連しているのだろうが、恋心へと変化するその過程自体は、恋愛学園物においても重要な要素の一つともいえるため、そうした部分が余り綿密に描かれていなかったのは残念な所だった。

共通ルートで幼馴染同士のギャグを交えた賑やかなシーン、個別では各ヒロインの魅力を堪能、作品の中で住み分けができていて評価できる部分があるのは確かだが、恋愛学園物としては全体的に”これ”というオススメの要素が無かったのもまた率直な印象であった。
そんな中で今作の評価をひっくり返したのが兎鞠√の存在である。
詳細は彼女のシナリオ評価で(ネタバレをしないように)語っているが、他の√とは全く違う話の様相に戸惑いながらも期待し、そしてキャラクターへの想いを馳せていると、流れるBGMとの相乗効果もあり、思わず涙してしまうシーンもあった。
今作の作品コンセプトからは少し外れた位置にある内容だけに、かなり好みが分かれる部分でもあったが、シナリオの流れ自体は個人的にかなり好みだった事もあって、ただの萌えゲー・ギャグゲーからより一歩踏み込んだシナリオとして高く評価し、全体的な評価を一つ押し上げた結果となっている。


共通√【 ★★★☆☆ 】  5h
幼少期となる過去編がプロローグとして全体の3割ほどを占めており、残りは学園編となっていた。
コンセプトが「全ヒロインが幼馴染」という事で、幼少期から学園編に至るまで複数ヒロインとの掛け合いがかなり多くなっており、それこそがこの共通ルートシナリオ部分の最大の魅力といえるだろう。
今までのHOOKSOFTよりも、よりギャグに重きを置いているように感じられるシーンも多く話もサクサク進むのだが、一方でそうした幼馴染達と過ごす日常シーンには時折細かな選択肢が出現するため、どうしてもテンポは悪くなってしまっている。
この辺りに関しては好みが分かれるところといえるかもしれない。

内容自体については、個人的には幼少期シーンが印象深かった。
ストーリーは比較的オーソドックス、ギャグは単純と余り褒めるところがなさそうではあるものの、そのシチュエーション自体の強さでストレートに泣ける内容になっており、事前情報が無ければないほど気になるヒロイン達の変貌など、シンプルな内容ではあるものの、コンセプトとしてある「ヒロイン全員が幼馴染」という強みを最大限に生かせる内容だったように思う。


20211024133057
栗山 兎鞠√【 ★★★★★  1.5h
家庭的で理想的な世話焼きな女の子へと成長した同い年の幼馴染。
子供の頃は泣き虫で、いつも主人公に面倒を見てもらっていた兎鞠。再開したのちはその恩を感じているためか、再会後は”ママ”を自称して何かと主人公の世話を焼こうとしている。
兎鞠自身が基本的に常識的である事に加え、騒動の中心にいる事は少ないため、ギャグシーンにおいてはツッコミ役に回ることが多い。

今作のセンターヒロインと言っても過言ではない兎鞠の個別シナリオに関して、ネタバレになるため深くは語らないが、シナリオの性質やその出来自体は他の√と一線を隔していた。
まずは前半から中盤にかけて。
ここは二人の想いを育むシーンに注力されており、ある意味手は他のヒロイン√と肩を並べていると言ってよい。
からかえば照れて、逆にこちらを慌てさせるような発言をすることもある兎鞠の反応は、とにかくその一つ一つが可愛いく、CVを担当した実羽ゆうきさんとの相性も非常に良かったように感じる。
本領を発揮したのは後半だった。
兎鞠の抱えていた「ある問題」を過去の出来事と絡め、彼女自身の想いをしっかりと描き出し、その感情としっかりと向き合うことで、より物語に深みを持たせた展開となっている。
その終わり方(展開のさせ方)に賛否が出るのかもしれないが、純粋に感動できる内容で合ったことは確かで、兎鞠自身の魅力をさらに高めていたように思う。
幼少期編でも存在感が抜群だった兎鞠だけに期待感はあったのだが、それに見事答えてくれたと言ってよいだろう。
ギャグ・萌え・感動の3点が上手く融和した秀逸なシナリオであったと個人的に高く評価している。


20211025015557
洲郷 千聖√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
ヤンチャなガキ大将から、皆の憧れる美人なお姉さんへ。
親友の姉であり、幼い頃からグループの姉として皆を引っ張ってきた千聖だが、そんな過去が黒歴史となるくらい現在では男子の憧れる高嶺の花に。
それでも主人公たちといるときは、昔ながらのお茶目で悪戯好きな所も見せてくれており、主人公はよく手玉に取られている。

個別シナリオでは好意をもった千聖が主人公へ強くアピールする展開に。
唯我独尊で王女様気質な所は少し残しつつも、それでも初々しさを感じさせる千聖との恋愛シーン、人気がある千聖と付き合うからこそのイベントなど、姿は変わっても騒動とは切っても離せない所も魅力の一つだろう。
終盤は変わりゆく時代の中で、それでも変わらないもの、変えなくないものをテーマとしており、「変化」が大きなモチーフとして含まれた今作の中だからこそ印象的な内容だったように思う。


20211025020037
所沢 郁√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
まん丸ぽっちゃりな幼少期から一転、スポーティな部活少女へと変貌を遂げた郁。
ヒロインの中では見た目において、最も変化したといえるものの、人懐っこくどこかマイペースな所は相変わらずである。
主人公を兄のように慕いついて回る事もだが、主人公との約束を果たす為に、頭脳を犠牲にしつつもバレー一筋で頑張り続けている姿からは忠犬のような印象を受ける。

恋人はバレーボールと公言するほど恋愛に興味が無く、周囲からは王子様として扱われている郁。
個別シナリオにおいてはそんな彼女と主人公が少しずつお互いに意識してゆく様子が描かれていた。
恋愛におけるはっきりとしたターニングポイントとなるようなシーンが存在しなかったのが印象的で、親密さが高まった結果として関係が変化したような印象を受けるシナリオであった。
そんななか郁の魅力としてコロコロ変わる表情が挙げられる。
普段の王子様のような態度と主人公の前で見せる我儘で甘え上手な部分におけるギャップ、可愛いと褒めると照れてしまうところなど、何事も素直に感情に現れる郁だけに一つ一つの反応がとても愛らしかった。


20211025020114
春ノ原 優菜√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
幼少期は負けず嫌いな同い年のライバルであり、悲劇のヒロインでもあった女の子。
再会した後、成長はしたものの短い身長など見た目に幼さが残り、いまだに子供に間違えられることも多い優菜。だからこそ、少し大人っぽいオシャレをする女の子に。
幼少期の体験が原因で男性にたいして苦手意識を持っているものの、その頃の主人公に救われたことからヒーロー視しており、そのため主人公に対してだけは気おくれせずに接することができる。

個別シナリオでは、いじられキャラという事もあってか主人公からからかわれることも多いものの、元来負けず嫌いで元ライバルという事もあってか、他のヒロインよりも対等な恋人関係を築いているように感じられるシーンが多い。
また後述の後半部分もそうなのだが、男性が苦手な優菜の為に主人公や幼馴染のヒロイン達が協力して行動したりと、付き合った後も周囲とのつながりがしっかりと保たれていたことも個人的に好印象だった。
後半では優菜の成長に関してスポットが当てられており、過去の約束を絡めつつ憧れだった存在に対し、並び立つように努力しようとする優菜の姿が描かれている。
エピローグで明かされる小さな設定も読後感をよくしており、個人的には評価したい。


20211025020247
西渓 静流√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
主人公が引っ越していく直前に引っ越してきて仲間になった同い年の少女。
幼少期から引っ込み思案であったため、引っ越した後に友人となってくれた幼馴染たち―特に主人公に対しては恩義を感じている。
大きくなっても性格話変わらず照れもあるようで、どうしてもツンツンとした態度をとってしまうが、そうしたところを含めて幼馴染達からは可愛がられている。

幼い頃と同様、恥ずかしがりで人見知りな静流。
今作のヒロインで最も幼少期からの変化が少ないキャラクターとして描かれていたのだが、だからこそ、友達から恋人へ関係が変わることで、変化してゆく静流の姿がより大きく感じられる内容となっていた。
心を許した人に対してはとことん素直になれる静流、恋人となってからそれがとても顕著に表れ、子犬のように素直に甘えてくる静流を堪能できる。
その性格を活かし、可愛さを前面に出したシーンの数々は流石という他ない。


[主人公] 酒匂 晴輝
面倒見が良く、困った人がいると放っておけないタイプの青年。
幼少期は兎鞠や郁、千聖といった幼馴染達と過ごしていたが、両親の転勤で引っ越すこととなった。
その後、何度か引っ越しを繰り返す中で、部活に所属できないが故に多種多様なアルバイトをおこなっており、人よりも多くの社会経験を積んでいる。
今回、良心の海外転勤を期に、大学受験に備えて幼少期を過ごした町で一人暮らしをすることとなった。


【推奨攻略順:郁→千聖→優菜→静流→兎鞠】
特に制限もないため好きなキャラからの攻略で問題ないだろうが、兎鞠√に関しては個人的に最後に回すことを推奨したい。


CG
細くしっかりとした線で淡めの塗の絵。
CGの枚数に関しては質も比較的安定しており、Hシーン関連が半分以上を締めてはいるものの、枚数自体は十二分といえるだろう。
立ち絵に関しては5キャラとキャラ数が多めだが、幼少期を含めそれぞれにしっかりと複数種類が用意されており、目パチ、口パク機能もついていた。


音楽
BGM27曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
全体的に穏やかな楽曲が多く、朝をイメージさせる「クロワッサンいっぱいのバスケットから」や「あなたとの毎日に祈りを込めて」など、どのシーンでも使える汎用性の高いものがそろっていた印象が強い。
そんな中、こちらの予想を遥かに超えてきたのが今作のOPのピアノアレンジ曲だった。
純粋に櫻川めぐさんの歌うOP「春は詩と共に」自体が素晴らしい物だったのだが、このアレンジBGMは一つ一つの音が優しさに溢れており、特定のシーンにおいて真価を発揮する楽曲となっていた。
シナリオと合わせて聞いてみてほしい本当にイチオシの楽曲である。


お勧め度
HOOKSOFTらしいギャグと萌えに注力した青春学園作品…なんですが、その中で異色だった兎鞠√を受け入れられるかどうかが、今作の評価を大きく分けていると言っても過言ではない。
それゆえに、純粋に萌えやギャグのみを楽しみたい人にはお勧めしにくい作品にもなっており、その部分を考慮してお勧め度を一つ下げた形となっている。


総合評価
ギャグは自体は多少弱めだが、キャラクタ―の魅力はしっかりと描かれており、何よりもシナリオ部分に関して、好みは別れるところだが個人的にシナリオが好みだったこともあり、少し高めのこの評価としている。


【ぶっちゃけコーナー】
同系列のブランドだから比較してしまうけれど、正直、最近のSMEE作品とHOOKSOFT作品の評価が私の中で入れ替わりつつあった。
そして今作でそれが決定的になりましたね。
HOOKSOFTはギャグが洗練されてきたし、何よりシナリオ部分の伸びが素晴らしい。
上記まででも折に触れて話題にだしているが、今作のキーポイントとなっているのは兎鞠√。
彼女ノシナリオに関しては、前半に伏線自体は存在していたものの、それをどう処理するかは個人的にあまり予想出来なかった。というのも、多くの萌えやギャグを主体とした作品ならば流してもおかしくない程度の物だったので、これを扱う事は無いんじゃないかな、と半ば諦めの気持ちでいたほど。(ただ、それは完全に杞憂だったわけだが)
個人的にすごく好きな話だった事を抜きにしても、あの話を入れてくれたこと自体に関して評価をしたい。
もちろん兎鞠のシナリオだけではなくて、優菜のビジュアルについてとか、色々と作りこまれていたところも評価している。

ただ、何度も蒸し返すようだけど、兎鞠√の話はハッピーエンドではないよなぁ…深く考えると結構ビターなエンディングだった気がする。
”彼女”の想いとかを考えると特に「めでたし、めでたし」と素直に言えない自分がいて、悲しい話があるからしっかりと幸せを感じられたような気がしている。
その中でエンディングの入り方も特別感があってよかったなぁ…。

純粋にギャグと萌えだけをこの作品に求めていた人にとっては、そうした部分がすごく後味悪く感じてしまって、評価が悪くなってしまうんだろうけどなぁ…。
この辺りは本当に難しい所だけれど、個人的な好みという事で、高めの評価を付けさせてもらった。
そこが合わないのなら、この作品に関して私がした評価もあまり信用しないほうが良いだろう。



タイトル : 俺の恋天使がポンコツすぎてコワ~い。
ブランド : Hulotte


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 10h)

キャラクター・シナリオ
ある日、道を歩いていた主人公の前に落ちていた1冊のノート。
『ラブノート』と書かれたそれを拾った主人公の前に現れた、恋天使を名乗る謎の存在「ラブミエール」。
そんな彼女から『90日以内に運命の花嫁を見付けないと、性機能を消失することになる』という事を告げられ、強制的に恋愛成就に向けて奔走する事になる――。

メインヒロイン5人、サブヒロイン一人、キャラクターの可愛さを前面に押し出した萌えが主体の作品で、基本的には学園恋愛物に分類される今作。
シナリオ自体は全体的にテンポよく、ヒロイン数は多いもののそれぞれのボリューム自体は控えめなので、サクサクと進められる作品となっていた。

そんな今作において特殊な存在として今作のキーとなっているのが『ラブミエール』と彼女によってもたらされた『ラブノート』だろう。

変わらない日常の中で突如として表れた怪しい存在である『ラブミエール』。
ポンコツながらも天真爛漫で、いつも一生懸命に恋愛成就に向けて行動してくれており、そんな彼女をずっと見ていたからこそ、いつの間にか温かい気持ちを抱くようになる存在となっていくのだが、そんな彼女に対して終盤でどういう思いを抱くか、その描き方の差が各√のテイストの差にもつながっていたように思い、同時に彼女の気持ちをどう汲み取るかで今作の評価も変化するのではないだろうか。

そしてもう一つ、某マンガの”死のノート”を彷彿とさせる、天使であるラブミエールよりもたらされた『ラブノート』。
名前を書くと運命度(好感度)が分かり、その上げ方を示唆してくれる便利な道具だが、今作では毎夜『ラブノート』を使用し各ヒロインを選択することで、各個別のシナリオへと分岐するという、仕組みの一つとして組み込まれ、最終的にはそれが各ルートへの分岐フラグにも使用される、といった役割を担っていた。
加えて、作中において普段なら二の足を踏むような選択や行動を後押ししてくれているシーンが多く、恋愛作品の中で発生しがちな躊躇や戸惑いといった停滞において、物語を展開させる起爆剤として、とても上手な使い方をされていたように思う。

深い部分に関してはぶっちゃけコーナーで少しネタバレしつつも触れているのだが、つまるところ、ストーリーに関してはあくまで萌えに注力するというスタンスを貫きつつも、その内容自体にも見どころがあったという事に対して、高く評価をしている。


共通√【 ★★★☆☆ 】  2h
天使であるエイルとの出会いから、バイト先で行われた全ヒロインが集合した歓迎会までが共通部分にあたる。
イベントとしては主に前半の状況説明から、一部ヒロインの登場イベントくらいとなっていて、上記でも少し触れたように、割と序盤から選択肢出現して各ヒロインシナリオへ分岐している為、その部分を除いた純粋な共通部分として考えるとボリュームは比較的短めとなっている。
そのため、選択によっては殆ど絡まないヒロインが存在してしまっているのは少し残念な所といえるかもしれない。


20211016172222
恋見 エイル√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
主人公の元へ突如やって来たポンコツ天使。
恋愛成就の為にサポートを申し出た、この物語の発端となった謎多き存在。
常にテンションが高く、自身の欲求に素直で、考えなしに勢いで行動しがち。それゆえにミスが目立ち、ひやひやとさせられることも多いが、そんな所が放っておけないという所は彼女ならではの愛らしさだろう。
今後の活動のためと言いつつ、私欲交じりで主人公の学校へ転校してきたため、主人公のクラスメイトとなっている。

個別シナリオでは、冗談のつもりでラブノートにエイルの名前を書き続けた主人公がだんだんと彼女自身の魅力にひかれてゆくという流れに。
無邪気な笑顔はこちらに元気を与えてくれ、どんなことにも全力で楽しみ、ストレートな好意を示してくれる彼女の姿からは、主人公でなくても多くの人を魅了する力が感じられるはず。
初々しくも元気いっぱいのエイルとの恋、二人が付き合うまでのそうしたシーンは比較的に比重多くとられているが、もう一つエイルが「恋天使」という立場である事を絡めたシナリオが後半に用意されている。
既出だったいくつかの謎や物語の根幹に関わるような新たな設定なども明かされてはいるものの、他の√と干渉が無いのは一つの魅力だろう。
展開自体も予想できる範囲内の物ではあったものの、主軸となるストーリーが良かったことや、丁寧に描かれている事もあって感情を動かされるシーンもあったほど。
ただエピローグにおける展開が割とサラッとしているので、情感深く感じ入っていた人にとっては少し肩透かしな展開に感じてしまうかもしれず、少々残念に感じた所でもある。


20211016191812
乾 依鈴√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
主人公の隣の家に住む、幼馴染みの少女。
明るく真っすぐで純粋な女の子。
陸上に所属していて、今は夏の大会に向けて練習を頑張っている。
主人公が陸上部に所属していた頃は一緒に練習するほど仲が良かったが、ケガを理由に主人公が陸上部をやめてからは疎遠になっていた。

幼馴染という事もあってか、序盤から運命度も高く相性の良い依鈴。
そんな彼女の個別シナリオでは、二人の共通の過去である陸上や主人公の怪我を発端とした二人の気持ちのすれ違いをメインに、依鈴の悩みや主人公の頑張りなど等身大の恋愛描写が描かれている。
オーソドックス展開ではあるものの、それゆえに二人の感情の動きが分かりやすく、各シーンが安定感のある内容となっていた。


20211018003608<西篠 琳果√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
成績優秀、容姿端麗の優等生で、西篠財閥のお嬢様。
幼い頃は身体が弱く入退院を繰り返しており、それが原因で成績を落としていたので、主人公たちと同じ学園に通う事になった。
教室ではいつも熱心に勉強をしており、どこか人を寄せ付けない雰囲気があるが、どうやら彼女は大きな秘密を抱えている様で…。

設定では隠されているものの、「カリン」という名前で秘密裏に動画配信を行っているという、昨今流行りのVtuberをテーマとしたヒロインである。
知り合いから友達そして恋人へと、すこしだけ関係の発展が駆け足になってはいたものの、琳果と大きな秘密を共有する中で、彼女の抱く希望を知り、そして現れた障害に対して彼女との未来のために頑張る主人公というのはオーソドックスで安定感のある内容になっていた。
琳果自体も魅力的なヒロインだったのだが、個人的には、物語の序盤においてカリンのガチファンである主人公のテンションがおかしくなって、ポンコツであるはずのエイルから突っ込みが入るという、立場の逆転が面白くてギャグの楽しめる話にもなっていた。


20211017152041
佐久真 詩√【 ★★★★☆ 】  1.5h
同じ屋根の下に住む、主人公の義理の妹。
両親がいない家で実質二人暮らしだが、一つ年下ながらも家では料理を担当してくれており、朝夕はもちろん主人公のお弁当も作っている。
基本的には素直で良い子なのだが、兄の事を心から信頼していて尽くすあまり、その想いが勢いあまって他の女性に敵愾心を抱くことも。

義理とはいえ長年兄妹として育った二人、個別シナリオでは『ラブノート』の力でそんな二人が意識し合う―というよりも詩の想いを知る事に。
控え目そうな見た目とは裏腹にいったん覚悟を決めると押して押して押しまくる、攻めの恋愛描写が印象的で、兄には見せない二面性があったりとコミカルな魅力も持つ詩でした。
主人公を好きになった経緯などもストレートながら良い物だったのだが、何よりも終盤のエイルとの関係やそのシーンが素晴しく、捻りが無いだけに素直に心に響く内容となって、思わず涙してしまったほど。個人的にシナリオとても気に入った部分でもあった。


20211020003455
峰越 琴雛√【 ★★★☆☆ 】  1h
紡たちのクラス担任で国語を教える若い女性教師。
ドジな所はあるものの真面目で、熱意をもって生徒たちと接しており、そのおかげか生徒たちからの人気も高い。
非常に美人ではあるものの浮いた話はなく、その原因は彼女が教師を志した事と関連しているらしく…。

エイル√で大まかな彼女の過去が明かされ、彼女のシナリオが攻略可能となるのだが、生徒と教師という関係もあって、初期運命度はヒロイン達の中でもかなり低くなっている。
そして何よりも彼女の抱えている「事情」が最も大きなハードルとして存在しており、琴雛√においてもそれが終始メインテーマとなっていた。
個別シナリオにおける琴雛はとにかく包容力が強く描かれていたのだが、そんな彼女の持つ弱さのような部分がそうしたテーマと合わせて描かれていたのも特筆すべきポイントだろう。
今作の根幹的な部分と関わっており、内容的にも濃かったのだが、他のヒロイン達と比べてもボリュームが短めで、内容に反して物語の起伏が無く折角の盛り上がりシーンもサラッと流されていた印象がある。


20211017154440
幸咲 来瑠√【 ★★★☆☆ 】  0.5h
読書好きで引っ込み思案な女の子。
主人公の妹である詩とは同級生でもあり親友で、バイト先では後輩として一緒に働いている。
察しが良いため、主人公が巻き込まれた事情を知り、ポンコツなエイルに代わって恋愛に悩める主人公を手助けしてくれることとなった。

サブヒロインシナリオという事で、自身が書く小説の為に恋のサポートを行っていた来瑠自身がだんだんと恋に落ちてゆく様子が描かれているが、物語はかなり短め。
とにかく小動物系で可愛い来瑠の魅力が詰まった話にはなっている。
エピローグで明かされるが、本作における恋愛のアンチテーゼのような要素を含んだ物語として、こういう話が存在していること自体に面白みを感じたことも追記しておきたい。


[主人公]佐久真 紡
恋天使のエイルと出会い、ラブノートの所有者となる事で、運命の人を探すことになる青年。
一年生の頃は陸上部に所属していたが、怪我を理由に引退して現在は帰宅部として、暇になった時間はファミレス『フェアリーテイル』でアルバイトをしている。


【推奨攻略順:琳果→依鈴→詩→来瑠→(まそら→)エイル→琴雛】
琴雛√のみエイル攻略後に解放される。
基本的にどの順番でも問題は無いだろうが、内容的にエイルや詩のシナリオは後半に回した方が読後感が良いはず。
また来瑠√は詩と琴雛√はエイルと比較的関係が深いためセットでの攻略が望ましい。


CG
線は細く淡い塗りで柔らかく、可愛い印象を受ける万人受けする絵。
立ち絵・イベントCG共に質は総じて高く、今作の売りの一つとしてもちろん挙げられるだろう。
枚数に関しても十分量あり、各キャラのHシーンは5シーン(来瑠、琴雛は2シーン)程。


音楽
BGM24曲、Vo曲2曲(OP/ED)
全体的に満遍なくそろっているBGMに加えて各ヒロインテーマなども存在しているのだが、中でも「運命度100の導」や「取り戻せない四季」など、グッと気持ちを掴んでくれる楽曲も存在しており、全体的に好みであった。
今作のセンターヒロインであるエイルのCVを担当したはちみつこさんの歌うOP「Love note」は初々しい恋を歌った楽曲。可愛らしいAメロBメロから、のびのびと歌われたサビ部分が素晴らしい。
Ducaさんの歌うED曲「Blessing day」も一押しで、両曲とも作品と合わせて聞いてほしい。


お勧め度
今まであった「ヤバい」シリーズに加えられるかは不明であるものの、Hulotteの持ち味であるビジュアルとシナリオの両方から描き出す萌えは衰え無し。
全体的にかなり安定しており、ユーザーが求めているものを100%返してくれる作品といえるだろう。
個人的には今回の作品は、シチュエーションを含めてストーリーが好みであったこともあり、そうしたところも高めに評価している。


総合評価
絵や音楽、可愛さを前面に押し出したキャラクター達だけでも魅力だが、加えてストーリーにも見どころがあり、総じての評価は低めではあるものの、評価以上に好まれるであろう作品であることは言うまでもない。


【ぶっちゃけコーナー】
全体的なストーリーの流れがかなり好きなんだけど、そのストーリーをみた時に一番好みだったのが詩√かな。
シナリオの内容的にもラブミエール、つまりエイルをどう表現するかによって物語の印象が変わるのだけれど、今作で一番効果的に彼女を使えていたのが詩√だったかなぁ。
どの√においても彼女との別離の瞬間は必ず訪れる、このシチュエーションが個人的に好みなんだけど、そうしたなかでそのシーンをどのように演出するか、そこに持っていくまでの流れも含めて重要だと思う。
詩√に関しては最初に高感度が低かったエイルと、主人公を落としに行く中で友情が育まれていき…という前提がしっかりと存在していたので、シーン自体もかなり盛り上がっていたのではないかな、と感じた。
下地となるストーリーがすごく良かったので、他のシナリオも(特にエイル√や琴雛√は)描き方次第ではかなり化ける内容だったと思う。
ただし、萌えを第一にした作品では、そうした内容も浮いてしまう危険性を考えれば、一概にそういった物語にしてよいかも悩みどころなのかもしれない。

そういえば、あまり作品では触れられないけれど、某男キャラクターをもう少し動かしてほしかったなーというのがある。
恋の起爆剤に使われるのかなと言われると、そうでもなく、だだいらないキャラかと言われるとすごく良い人だから、なんかもう少しストーリーに絡めてあげてほしかったなぁ。
どうしても立場的に舞台裏になっちゃうとは思うけれど、上記に挙げたシーンでも無関係じゃないと思うし、もう少しうまい使い方はあったのかなぁと思う。



タイトル : Princess×Princess
ブランド : Navel


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 11h)

キャラクター・シナリオ
『SHUFFLE! エピソード2』(以下本編)におけるFDとして制作された今作。
シナリオとしてはリシア√の続編となっており、無事にリシアと恋人同士になった頼斗だったが、一夫多妻制を望むリシアから側室を設けることを提案されてしまう。今までの常識もあって戸惑いを覚える頼斗だったが、そんな中で突如として学園のグランドに現れた謎の飛行機が現れる。その乗客だったという記憶喪失の少女との出会いを切っ掛けに、飛行機事故で亡くなった彼自身の父親の生存に希望を抱きつつも、仲間たちの手伝いのもとプリムラの手引きによって事態解決へ向けて動き出すこととなる。

物語自体はいつものNavelらしく短くシーンを区切ることで、テンポよくサクサク進んでいくイメージが強く、展開自体も比較的早い作品なので読んでいてストレスは少ないはず。
リシア√アフターを主軸としたFDという事もあってか、物語のシナリオは一本道となっているもののただボリューム自体は少なくなく、またそれに伴ってシナリオの形も少々特殊となっており、事態解決のためにランダムで出現する扉の先、現実とはほんの少し違う歴史を辿った世界線でのエピソードを体験する事となっており、それが各個別シナリオに相当していて、そうしてどの世界を選ぶか、その選択の如何によって5種類ほど存在するエンディングに分岐する(終盤のエピローグ部分が変わる)仕様となっている。

各異世界でのエピソードは多種多様ではあるものの、主軸にあるのはあくまで、主人公である頼斗が一夫多妻―ハーレムを受け入れるまでのお話となっており、この「ハーレム」というジャンル自体が今作のメインテーマともいえるだろう。
メインヒロインとして据えられているリシアを中心としたハーレムという作品の性質上、多数のヒロインと関係を持つ事となっている。中でもリシアを交えた複数シーンが多くあるのも特徴といえるだろう。

加えて挙げられる特徴的な部分としてはシナリオの後半、原作ともいえる『SHUFFLE!』(以下原作)に登場するヒロイン達が関係するとのシナリオが存在していることだろう。
特に亜沙や楓に関してはHシーンも登場しており、そのかかわりの深さが伺えるが、そうした中で原作をプレイしていなくてもある程度の流れ理解できるではあろうが、特に今作のハーレムへの考え方は原作である『SHUFFLE!』にも登場した考え方であることもあってか、原作ヒロイン達が関わる終盤のシーンでは今作のメインテーマの「ハーレム」について深く触れられるシーンがある。
これらは、今作におけるもっとも盛り上がる山場となるシーンの一つでもあるため、プレイしているか否かで本作における印象が大きく変わる可能性もあり、今作を真に楽しむためには今作に付属している「SHUFFLE! Essence+」をプレイしていることが望ましいといえるだろう。

[ 主人公 ]相生 頼斗
本作では『SHUFFLE! エピソード2』のリシア√後の主人公として描かれており、周りもあきれる程にラブラブな二人であったが、神族として一夫多妻制に積極的なリシアに対し、人間界の常識故かどうしても彼女以外を恋人にする事に抵抗感がある主人公という構図で、その将来について少しだけ意見の相違が起きている。


【推奨攻略順:リシア→藍→らぴす→セレナ→全員】
セレナ√はどれか一つのEDを終えた後に出現する。
基本的にどの順番でも問題はないものの、話の内容的には全員(ハーレム)√を最後に回した方が綺麗かもしれない。


CG
線が固く濃い塗の絵。
立ち絵(や壁紙)等の多くは本編からの引継ぎであるものの、新キャラクター・新衣装を含めていくつか追加されているものもある。
イベントCGに関しては使いまわされているものは殆どなく、その新規の物も原画担当は安定の西又葵さんと鈴平ひろさんという事で、Navelらしいテイストの絵になっていて、質・量共に文句の出ないレベルであろう。


音楽
BGM?曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
本編と同様、ゲーム内でBGM鑑賞がなく何曲使用されていたのかは不明だが、一部楽曲は引き継いで使用されているようで、新規楽曲もいくつかあるように思えた。
Vo曲は橋本みゆきさんのEDの「TimeLess」も素敵なのだが、美郷あきさんの歌う「DREAM」が個人的にイチオシ。
特にBメロからサビがお気に入りで、歌詞と合わせてぜひ視聴してほしいものとなっている。


お勧め度
SHUFFLE! エピソード2のFDとして作られた今作。
シナリオが本編をプレイ(特にリシア√)している事が前提になっていることは勿論なのだが、その原作ともいえる「SHUFFLE!」をプレイしてることも、加えて前提となっている。
それぞれの作品がとてもボリューミーであり、今作に「SHUFFLE! Essence+」が付属している事を鑑みても、ハードルとしては高めに分類されるであろう作品である。
ただFDとしての完成度は決して悪くなく、SHUFFLEシリーズが好きな人、もしくは好きだった人には今一度、本編と合わせてプレイしてみて良いのではないかと思える作品に仕上がっていた。


総合評価
FDとしての要素も強いため純粋な評価をし辛い部分はあるものの、本編以上にシナリオ部分を高く評価できる作りとなっており、平均以上のこの評価としている。


【ぶっちゃけコーナー】
原作のぶっちゃけコーナーでも触れているけど、このシリーズと「ハーレム」ってのは切っても切り離せない。
それは新旧の主人公がヒロインの皆からかなりの好感度を寄せられている事もそうなのだが、今作の設定にもある通り、この世界における神族が一夫多妻制を利用していることも多くなファクターの一つといえるだろう。
中でも今回は原作主人公が一夫多妻を採用しなかった世界線を主軸としていたことが最も大きくて、同時に伝えたいテーマに対して前作での設定を絡めてくるというのがシリーズ物ならではの面白いアプローチだなと思った。

一人を愛する純愛の形がストレートであり、ハーレムに対して忌避感を抱く人がいるというのは普通に理解ができるし、そういう人はこの作品をプレイするのを推奨しないけれども、これもまぁ確かに一つの愛のカタチなのかなという答えは示せていたように思う。

まぁ各ヒロインとのやり取り以上に後半のシーンが結構琴線に触れていたりして、個人的には本当に好みのシーンが終盤で怒涛の勢いでやって来た。
終盤ばかりを好みとして挙げているような気がするけれど、各異世界でのエピソードもそれぞれで登場人物の気持ちが丁寧に扱われているように感じられるシーンもあって、切なくも心温まると同時にそうしたシーンが結構好みだったりもする。
だからこそFDでありつつも全体的な評価は高めだし、原作や本編あってこその今作であるという前提の元、シナリオ単体としてみた時はそれらよりも今作の方が好きかもしれないと思ったほど。

シリーズ物という事もあって、本編以上に懐かしい原作との絡みが強い作品だったので、懐かしい気持ちと同様に、どうしても登場できないキャラクターなんかもいたりして、切ない気持ちにもなった特殊な作品でしたね。



タイトル : クロガネ回姫譚 -絢爛華麗-
ブランド : みなとカーニバル


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 33h)

キャラクター・シナリオ
2015年PS Vitaで発売された全年齢作品『クロガネ回姫譚-閃夜一夜-』(以下原作)がPC版移植に伴って18禁要素を追加した今作。
原作からの違いとしては、本文の一部追加修正や18禁シーンの追加、ヒロインとして「切丸 祢々」が追加され、それに伴い新規キャラクターも一部追加されている他、クリア後の各ヒロインのアフターシナリオが追加されている。
シナリオ以外にもCGの追加や立ち絵のLive2D化など原作をプレイ済みの人にとっても今作は追加となる部分が多く、プレイする価値が十分にあるといえる。

原作と今作共に企画自体はみなとカーニバルと言えばこの人あり、と言っても過言ではないタカヒロさんで、シナリオを担当されているのはさかき傘さん、全体的に勢いのある作品でありつつも、一つ一つに深みがあるシナリオは、独自の世界観で作られた今作と巧く噛み合っていたように思う。

物語の舞台となるのは経済特区ジパング。
とある事情により日米間に講和条約が結ばれて、あの爆弾が使われずに終戦が早まった世界観で描かれており、その後の日本を強固な経済力を持った大国として描き、そんな世界情勢の中で、特殊警察部隊を養成する学園「私立鏡ヶ原警察養成第一学園」に通う生徒の一人「白金 正宗」が今作の主人公。過去の事件により顔に大きな傷があるものの一般生徒として通う彼が持つもう一つの顔、それが「黒金班」副班長であり実働部隊のリーダーとしての顔だ。
今作の独自の設定として存在する「黒金」―一部の存在にしか認知されておらず、用いる事で特殊能力発動することができる―それらを使いテロ対策に奔走する「黒金班」に所属する主人公やその仲間たちが繰り広げる様々な「戦い」が今作のメインとなっている。

今作ではバトルシーン自体も魅力だが、そこに至るまでの展開や登場人物たちの心理描写も、その良さが際立っていた。
特に「正義」や「死」といった物と対峙することになるシーンも多く、刻々と変わりゆく状況の中で主人公や登場人物たちが必死に考え、成長していく姿には心動かされた人も少なくないはず。
他にも主人公やその周りの人物たちの絆を感じられる場面なども思わず鳥肌が出る程の出来となっていた。
各ルートに存在するバトル自体も主人公の性質上、頭脳戦などが多くなっていて白熱する展開が多い。状況的に劣勢に立たされたところからの逆転シーンや意表を突くような展開等、どのシナリオにおいても形を変えてはいるが燃えゲーとして欠かせない要素がしっかりと詰まった作品になっていた。

また今作では複雑に絡み合う立場や世界情勢も作品の一つとして楽しむことができ、特に独自の設定などの難しい部分はタイトル画面からTIPS画面でさらに詳しく調べることもできるようになっている。ただしその分量は膨大で、こうした要素が作品のシナリオ自体に関わりはしているものの、あくまでSFアクション部分が主軸であるため、ある程度流して読み飛ばしてしまっても十二分に作品を楽しむことができるだろう。

シナリオの総評として、既存の物語はもちろん追加シナリオ部分も非常に自然になじんでおり、一つ一つの物語は文句なしで上質であったといえる。ただどうしても物語の締めにあたる「回姫譚」の流れが個人的に肌に合わず、結果として評価を少しだけ落としてしまっていた。


プロローグ【 ★★★★☆ 】  5.5h
主人公たちの日常を描きつつ、幼馴染の「天」が転入したことを皮切りに、変化してゆく主人公を取り巻く状況を描いている。
基本的に共通ルートであるのだが、なんと言っても驚くべきは圧倒的ボリューム。
一つの作品といっても過言ではない程に圧倒的で、これがあくまでプロローグであることを忘れてしまう程であった。
また物語の導入部分ゆえに「黒金」を始めとした独自の設定が多数登場するものの、説明だらけになるほどではなくしっかりと話は進展していくので、読み疲れることはない。
ただ主人公たちが所属する『第一』以外の組織との関係もシナリオ展開に深く関わっており、そうした部分については、現実にも存在しそうな部署があったりと存外複雑で、ある意味では独自の世界設定よりも読み下しにくい部分もあった。
それでも読む手を止める程の障害にはなりえず、むしろ後半のバトルシーンを中心に次へ次へと読み進めてしまう程に魅力あるシナリオ展開となっていた。
物語としては綺麗に終わっていないが(ある意味当然だが)、しっかりと次のシナリオへの繋ぎを見せてくれているあたりも評価が高い。

20210904182057
村雨 伏姫√【 ★★★★☆ 】  4.5h
明るく元気で正義感の強い少女。
加えて責任感も強く、クラスでは委員長の様な立ち回りをしつつも皆からいじられたりと、誰からも好かれるようなクラスの中心にいるタイプ。
岐阜の田舎出身で季節になると実家から大量の野菜が送られてくるため、時折夕食がそれらを消費するためのレシピに染め上げられることも多い。
戦闘時は数珠型の黒金『八房』を操り、中遠距離からの攻撃やサポートをこなす。

性格から思想まで、その多くが主人公とは正反対であった伏姫、そんな二人がいつの間にか意識し合い恋に落ちてゆく様子はオーソドックスながらも微笑ましい。
作中ではムードメーカのような立ち位置の少女だったがゆえか、物語の中盤までは明るい展開が多くあったのだが、終盤にかけて物語の焦点が主人公に移ってからは一気に物語の様相が変わる。
分からなかった設定が徐々に明らかになってゆくと共に、紡がれる物語からは、それぞれの正義と悪に込められた思いや、命に正義と悪はない、といった強い主張が伝わってくる。
全体的に八房自身にフォーカスのあたるシーンが少ない内容ではあったが、それも最終盤においては解消され、そこにある恐怖を確かに感じながら、一歩踏み出す勇気を感じさせられるシナリオとなっていた。


20210904200229
和泉 天国√【 ★★★★☆ 】  4h
主人公の許嫁を名乗る幼馴染。
元々兄と一緒に「第二」へ通っていたが、間諜として主人公のいる「第一」へとやって来たが、主人公と再会し、その役目を忘れてしまっている。
昔は病弱だったが現在は実家の剣術道場を最年少で免許皆伝するほどの剣の天才となっていて、そんな身の上だからか世間知らずな所があり、真面目で一生懸命なためか空回りしてしまう事も多い。
剣の腕前はもちろん、水のある所へ瞬時に移動できる黒金「翡翠」と合わせた際の接近戦は脅威。

個別シナリオで印象に残ったのはやはり中盤以降、本作中に多く散りばめられた謎が少し明らかになりつつ、天国を取り巻くとある事実へとたとりつく事となるのだが、そこからの物語の魅せ方がとても素晴らしい。
バトルシーンはもちろん展開自体の良さもあるのだが、あくまで中心にあったのはヒロインである天国の魅力。何よりも印象に残る天国の生き方は、共通ルートからは計り知れないほどに気持ちが込められたキャラクターとして成り立っており、終盤の展開も天国らしい一瞬の煌めきが強く印象に残るシナリオとなっていた。
また、このシナリオでは天国以外にも焦点の当たっていた登場人物が一人おり、ネタバレの関係上で語ることは難しいがその内容も合わせて良かった事を付け加えておきたい。
総じて難しい物語展開ではあったが、締め方も上手で後味も絶妙な内容となっていた。


20210912173109
石神虎鉄√【 ★★★★☆ 】  4h
黒金班唯一の一年生。
常にスマホをイジっていたりとイマドキっぽい女の子ではあるが、一人でいる事を好み、人付き合いを嫌う傾向があり、友達も多くない。
黒金班とも仲間意識も乏しく基本的に素っ気ないが、仕草の一つ一つが可愛い所もあり、年下という事もあって皆からは可愛がられている。
戦闘は得意でないが、風を操る黒金を使って敵の位置を把握する等のサポートとして貢献する。

個別シナリオでは、変死体事件や連続通り魔事件に端を発する一連の事件に巻き込まれてゆく虎鉄と主人公が描かれている。
話が進むにつれ明らかになってゆく虎鉄が抱えていた事情、そこに絡めて起きる事件の数々はシナリオ展開としても面白みがあり、読む手が止められない程であった。
ただ虎鉄自身にまつわる話もよかったのだが、なんといってもこのシナリオでの見所は中盤「黒金班」としての魅力を芯から感じられるの熱い展開だろう。
黒金班の面々の心の温かさと確かな絆、そしてそんな彼らから愛されている虎鉄の魅力がしっかりと伝わる内容となっていた。

20210906004705
船阪 玉鋼√【 ★★★☆☆ 】  4h
黒金班の頼れる先輩。
伝説の軍人の家系の出で、彼女が所属する軍部に新しい風を吹き込むべく、特警養成学校に編入することとなった。
きびしい家柄の出身で凛々しい見た目通りお堅い性格ではあるのだが、その抑圧故か意外と可愛いものに目が無かったりと女の子らしい部分も隠し持っている。
黒金は使えないが、幼い頃から培った格闘技と銃剣道による近接格闘は班内でも1、2を争う程の実力者でもある。

個別シナリオでは、比較的早く玉鋼の秘密が明かされることとなり、詳細は省くが彼女自身がとても難しい立ち位置にいる事を知る事となる。
そうした中でとある事件に巻き込まれていき、少し違う視点でも主人公を見ていくことになるという、他の√と少し違ったテイストで描かれていた。
作中に少ない姉(年上)キャラだけに恋愛シーン等にも少し期待していたのだが、予想は良くも悪くも外れ、ヒロインである玉鋼よりもむしろ主人公の魅力的な部分が前面に押し出された内容となっていたのが印象的。
全体的によどみなく流れる川のようなシナリオ展開で文句なしだったのだが、唯一終盤の展開に関してだけは少しぶつ切り感があり、もう少し物語を膨らませてほしく感じてしまった。


20210915012944
大包 平【 ★★★☆☆ 】  1h
主人公の親友で幼馴染。
男気溢れる人格で周囲からも頼りにされているが、その見た目故に距離を置かれることも多い。そして喧嘩は好まず、普段はラーメン屋でアルバイトをしている。
主人公とはお互いにあまり多くを語らないタイプであるため、そうしたところの相性が良く、お互いに居心地の良い相手と思っている。
黒金は視力を強化するものとなっており、事故の影響でもともと殆どない平の視力を補正する程度に留まっているが、恵まれた体格による近接格闘で敵を圧倒する。

個別シナリオがあること自体に少し驚きだが、その完成度でさらに驚く事となった。
とある「兵器」に纏わる事件に巻き込まれる平と主人公の二人の物語は他のヒロイン√と比べるとどうしても短いものの、主軸にあるシナリオ展開はシンプルながらも読みごたえもあり、ギャグと戦闘シーンがバランス良く配合されており、非常に読みやすい内容となっていた。
いつもは主張が少なく気が付きにくいものの、スポットが当てられることで彼もまた今作に欠かせない魅力的なキャラクターであることが伝わってくる。
贅沢をいうならば、二人のなれそめなんかももう少し語ってほしかった所だが、贅沢を言うべきではないだろう。


20210905012044
切丸 祢々√【 ★★★☆☆ 】  4h
第一学園の教師であり、黒金班を指揮する主人公にとっての上司。
将来は出世が約束されたエリートであり、教師も一時的な物とドライでクールな人物を演じてはいるが、実は根っからのお人好しで生徒想いである。
戸惑った際の反応が可愛く、主人公を含め多くの人にとっては親しみやすい先生でもある。
主人公の姉とは幼馴染で、幼い頃の主人公に勉強を教えていたという過去を持つ。
戦闘については基礎的な戦闘スペックがずば抜けており、強力な黒金を所持しているが普段使用することはなく、謎に包まれている。

今作にてヒロインに昇格し、原作から新規シナリオが追加された祢々。
他の√でもすでに安定的に可愛さが散見されるキャラクターであったが、個別シナリオが用意されたことで、玉鋼にはない純然たる姉キャラとしての需要も満たしてくれていた。
シナリオ自体はとある事件が主人公の過去と絡んでいく流れとなっており、その過程で主人公と祢々関係が変わっていくと同時に、同じ幼馴染である「古河 八雲」との描写なども用意されていた。
事件自体の面白さはもちろん終始読む手が止まらなくなるほどで、他の√では見られない関係性が見られたりと面白みも十分。
後付けされたとは思えない程作品になじんだシナリオとなっていたのも見事という他ない。
主人公とは教師と生徒という関係もあって、恋愛描写は少なくなっているものの、祢々の可愛さが最大限にでる心理描写が多くなっている事も評価したいところで、祢々が好きな人にとっては内容以上に垂涎のシナリオだったといえる。


回姫譚√&アフター【 ★★★☆☆ 】  6h
全キャラ攻略後に現れる回姫譚は今作のいわばTRUE√という事で分量は約4h弱程度。
内容としては今まで明かされていなかった謎を含め全ルート分の伏線回収をしつつ、さらに過酷で大きな戦いへと赴くことになる黒金班、そして宿命ともいえる運命に巻き込まれてゆく主人公たちを描く。
戦いの内容に関しては、今までのシナリオを鑑みても予想だにできない程に悲惨であり壮絶、中盤にかけての雰囲気は最終戦に相応しい最も緊迫感のある内容になっていたといえる。
ただし全伏線を一気に処理しようとしているため、どうしても全体的な流れが駆け足気味となっており、一つ一つの事実は重い事に反して受ける衝撃が少なくなっていたのが悲しい所。
広げ過ぎた風呂敷をたたむことに苦慮したのか、終盤の展開も盛り上がるというよりは、あるべき形に向かうためのシナリオという意向を強く感じ、燃えゲーとしては少し肩透かしの内容になってしまっていた。
上記の理由もあって評価を高くできないものの、ここまで続いたシナリオの流れを考えたうえで、一つの帰結の形を描いたものだと受け止めるべきだろう。

絢爛華麗で新規追加となった各ヒロインアフターは4人それぞれ30分前後の分量となっている。
内容が殆どネタバレと直結している為詳細は省くが、少なくとも各ルートのアフターというわけではなく回姫譚後の日常として描かれている。
各ヒロインルートの大部分がHシーンを含むイチャラブ部分にあるため、シナリオとしての重みが無いシーンが多く、アフターの名前の通り後日談として受け止める程度にとどめておくべきだろう。


[主人公]白金 正宗
第一に秘密裏に存在する「黒金班」の副班長であり、実働部隊のリーダーを務める青年。
いつも仏頂面をしており、お金を何よりも大切と考え他に興味を示さないため、周囲と壁が出来てしまっている。
獲物は刀で戦闘もかなりの物だが、とある理由のために発揮する場面は限定的。むしろ状況に応じて戦術を組み立てる事を得意としている。


【推奨攻略順:伏姫→天国→虎鉄→玉鋼→大包→祢々→回姫譚→アフター】
1週目は伏姫か天国の固定となっていて、その後はその他ヒロインが解禁になり、回姫譚は全キャラ攻略後に出現する。それをさらにクリアするとアフター√が閲覧可能となっている。
基本的に上記を守ればネタバレを踏むことは少ないものの、上記の順番が最も安定していると個人的に考えている。


CG
線画が太くはっきりとした絵で、特に立ち絵にそうした風潮が強い。一方で各イベントCGは線が少し細く感じテイストが少し違ったものとなっている。
上記のような特徴はあるもののCG数は豊富で質も安定していたといえる。
またPC版移植に伴って立ち絵がLive2Dにより立ち絵が動くようになっている事も特徴の一つ。
ただし、初めての導入であるためか違和感が強く、終盤に離れてしまうものの、いい点と悪い点が混在していた。


音楽
BGM40曲、Vo曲3曲(OP/ED2)という構成。
数が多い楽曲は幅広いシーンをカバーしてくれており、切ないシーンにおける「過ぎ去りし時」などはオーソドックスなオルゴール曲ながらもストレートに心に来る。
他にも戦闘シーン用の気分が高揚するような楽曲が多かった印象で「剣舞・正宗」などは代表的だろう、そして中でも「クロガネ」は格別のものがあった。
Vo曲は何と言ってもOPの「Aim and LOCK ON!」がイチオシ。
燃えゲーといえば飛蘭さんといったくなるほどカッコよく歌い上げられたVo曲は盛り上がりも十分で、作中で流れなかったのを少し残念に思ったほど。


お勧め度
独自の歴史を辿った日本を舞台としたSF異能バトル物ということで、みなとカーニバル作品にバトル要素がある作品は存在しているが、ここまで燃えゲーに傾倒した作品は初めてではないだろうか。
さかき傘担当のシナリオということで、一つ一つの物語に深みがありながらもタカヒロ作品っぽさも出ている今作であった。
元々が18禁作品ではないため、全年齢対象となるバトルシーン等がしっかりと前面に出されており、シナリオを重視する人にとっては泣きに笑いにと感情を揺さぶってくれる作品となっている。
ただし分量が多いだけに初心者にとっては少し辟易するかもしれないが、その文章量さえクリアできたのなら、全体的にテンポよく読みやすい作品なので終始楽しむことができるだろう。


総合評価
全体的な完成度はとても高いレベルであったといえるが、終盤の展開はどうしても尻すぼみに感じてしまい、評価としては少し抑え目の物となっている。


【ぶっちゃけコーナー】
持っていない筐体の作品である影響が強く、みなとカーニバル作品でありながら、原作については存在自体を知らなかったのだけれど、「なんでこの作品を知らなかったんだろう」と後悔するくらいに良い作品でした。
原作をプレイ済みの人はその良さが分かってるとは思うけれど、原作未プレイの人は特におすすめしたい作品になっていましたね。
本当にタカヒロ作品っぽさを残しつつも、シナリオ担当であるさかき傘さんの味が良く出た展開になっていたと思います。

共通から各ヒロイン√(+友人√)を含め、文句の付け所は殆どないくらい、違和感のあるLive2Dなんか霞むくらいだった。
だた、そうして各ルートの質が高かっただけに、回姫譚に対して爆上がりしていた期待が完全に肩透かしに終わった印象も強かったんですよね。
本当に肌に合わなかった、というのがストレートな印象。

ネタバレが多いのでその部分を伏せて語っているからかなりわかりにくいけど、それでもストレートに書くと、各ルートでも結構衝撃的な展開ってのは多くて、その度に心動かされてたんですが、この回姫譚ではそれが本当に連続してしまって、途中から「消費しすぎでは…」と思ってしまった。
だからこそ、ここまで来ると後戻りができないだろうし、物語の性質的にも「こうなるんだろうな~」と予想がついてしまっていて、エピローグ部分はともかく、物語の片づけ方もどうしても独自設定による物が深く絡んでいたので、展開としてそこまで衝撃を受けることはなかったんですよね…。
この終わり方自体は、こうでもしないと読後感が最悪になるだろうし仕方がないのですが、関わっている人にしては珍しく、広げ過ぎた風呂敷の畳み方が雑になっているような気がして、今まである物語が良かっただけに勿体ないなと思ってしまった。

ただ終盤はともかく、それまでの各ルートの良さがそれで下がっているわけではないので、しっかりと名作に食い込める作品であったと太鼓判は推したい。