タイトル :  pieces/揺り籠のカナリア
ブランド : Whirlpool


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 8.5h)

キャラクター・シナリオ

溢れた想いのひとつ。
それは、果てなく続く少女のソムニウム。
そして、生まれる。
祈りを結ぶ、揺り籠のカナリア。


前作『pieces/渡り鳥のソムニウム』(以下本編と表記)のFD作品となる今作。

物語は各ヒロインのアフターと今作でヒロインへと昇格した貴美香のシナリオ、そしてTRUE√である『Omnium』によって構成されており、それぞれの長さは1.5h程度と比較的短い。
特に各ヒロインのアフターシナリオに関しては軽いギャグも交えつつ、テンポよくサクサク展開していくため最後まで飽きずにプレイできる。
本編よりもより色濃くそれぞれのキャラクターの特色が前面に出されており、個人的な評価になるものの、デレが見えるようになった結愛の可愛さ、主人公と紬の掛け合い、空回りし続ける貴美香など、今作だからこそみられるヒロイン達の新しい顔という意味で、しっかりと描かれていた印象が強い。

今作においても結愛√とTRUE√であるOmniumは密接に関わっており、特に謎が多かった本編のTRUEシナリオについて、いくつかの事実などが説明されている。
そうした事も併せて、このシナリオをもって本編に欠けていた最後の1"piece"を埋めた、と言っても過言ではない内容になっていた。

特に今作では難しい設定の中で、ヒロインやサブキャラクターたちがしっかりと登場しており、閉じた世界系になりがちな今作を開いた世界の物語へと変えてくれている。
小さい事ではあるがそうしたことからどのキャラクターも大切に考えられている事が伝わってきており、個人的な高評価ポイントとなっている。

上記までにあるのようにWhirlpoolの強みともいえる萌えゲー・エロゲーの側面としてエロシーンやキャラを深める一方、新たにシナリオゲーの側面として本編TRUE√のアフターを描き物語を進展させている。
今作はその両者を明確に切り分けしつつも、しっかりと両立させており、FDではあるものの続編として捉えることもできる作品となっていた。
強気のフルプライス設定ではあったが、それでも前作が好きだった人間にとってはそれに見合った内容になっているといえる。


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君原 結愛√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
本編のセンターヒロインで、街外れの洋館に住むの少女。

物語は本編の学園祭でのイベント後からスタートしており、久しぶりに学園に復学するすることになった結愛と主人公の奮闘を描く。

本当に愛している結愛に対してどうしても引け目を感じてしまう主人公と、そんな主人公に対して感謝の気持ちや愛おしさを表現しようとしつつも素直になれない結愛。
お互いを想い合いつつも少しだけ噛み合わない、そんな初々しい二人の恋愛模様が、結愛のために新設された元昼寝部―もとい、新生ゲーム部の活動と共にたっぷりと描かれている。
また、物語としては核心に少し触れられつつも今作のTRUEともいえる『Omnium』に向けた繋ぎとしての側面もあり、中途半端な終わり方をしている。


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小鳥遊 紬√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
本編ヒロインで、世話焼きな主人公の幼馴染。

相変わらずの関係で主人公の面倒をみつつも、時折しっかりと恋人同士としての時間も過ごしている紬、今作ではそんな彼女の様子がおかしい事に主人公が気がつく事から物語が展開してゆく。

紬と主人公という、長い時間を過ごした幼馴染同士だからこその空気感で送るテンポのよう日常シーンは面白く、加えて本編以上に甘いシーンも多くなっていることから、全体的に恋人同士の雰囲気も強く感じられるようになっている。
特にとあるシーンにおいて世話欲を全開にした紬の様子は凄まじく、その母性の強さをひしひしと感じられるだろう。
また物語の後半では、誰もが気になっていてた『あの娘』の存在にも触れられており、物語の進展としても読む価値のある内容になっている。


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藍野 深織√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
本編ヒロインで、『眠り姫』として知られる学園の先輩。

本編の"あの事件"の後も眠り癖が抜けない深織。
今作のシナリオではそんな彼女が昼寝部を引退し、卒業に向けた受験勉強を始める、という内容になっている。
失ってしまった学園生活を取り戻すと同時に、彼女の夢をサポートしようと悪戦苦闘する主人公、夢のために努力を続けるものの、主人公に嫉妬したり、すぐに眠ってしまったりするダメっ子感マシマシの深織。
そんな二人の緩く、すこしエッチな日常が描かれている。


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美城 ありす√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
本編ヒロインで、主人公を兄のように慕う後輩の女の子。

街の新しい歌姫としてデビューを果たした本編アフターとして描かれた個別シナリオ。
マネージャーとなった主人公と共に、アイドル(歌姫)として活動に、学園生活に、と充実しつつも忙しい毎日を送っている。
主人公を振り回しながらも前のめりで甘えてくるありす、何時も全力な彼女とのドタバタな日々がいくつかのイベントと共に描かれており、騒がしくも楽しい日常を堪能できる内容になっている。


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伊集院 貴美香√【 ★★★★☆☆ 】  1.5h
高飛車な主人公のクラスメイト。
高い名家のご令嬢であり、プライドが高く思い込みの激しい所があり、自身を天使だと言ってはばからない。
そのため上から目線での言動も多く、紬とは友人関係ではあるものの、主人公とは言い争う事も多い。

攻略対象外キャラから、今作をもってヒロインへと昇格した貴美香、そんな彼女の個別シナリオは本編の序盤のシーンから分岐したものとなっている。
この√の最大の魅力は貴美香と主人公の掛け合いを中心としたギャグを交えた日常シーンであり、ギャグの質はもちろんテンポ自体がとてもよくサクサクと物語を読める。
特に誰よりも人の話を聞かない彼女だからこそ、いつもはボケに回る事の多い主人公がツッコミに専念するほど振り回される様子は見物といえる。
また貴美香自身の可愛さについても、本編では見られなかった部分からしっかりと描かれており、特に後半にかけて、主人公を含めプレイヤー全員が"勘違い"しがちな彼女の深い愛情についても触れられている。
濃いキャラクターであるがゆえに、本編ではあまり触れられなかった貴美香だからこそ、今回のFDによってその内面がしっかりと描かれたことで、まさにファン垂涎の内容になったといえるだろう。


Omnium√【 ★★★★☆ 】  1h
本作の結愛√の続きであり、今作のTRUE√。
その内容についてはネタバレを多く含むためプレイして確かめてほしいが、少なくとも物語の核心といえるべき点がテーマとなっている。
完成度としては非常に高く、特に終盤の流れは『pieces』という作品の締めに相応しい感動的な内容にもなっている。
この√自体が本編の続きになっていることは言うまでもないが、明かされていなかったいくつかの出来事や設定なども語られており、その内容と合わせ作品として完結させるためのシナリオといえるだろう。


【推奨攻略順:ありす→深織→貴美香→紬→結愛→Omnium】
TrueENDとなるOmnium以外は好きな順番でクリア可能だが、Omnium自体が結愛√と関わりが深いため連続しての攻略を推奨したい。


CG
本編同様の濃い塗の絵で、FDという事もあってイベントCGはHシーン用のものがが多くなっている。
量数自体は抑え目だが、質に関しては本編同様に高レベルと言って差し支えない。
SD絵も存在しており、こちらの量は豊富といえる。


音楽
BGM4曲、Vo曲3曲(OP/ED2)という構成。
基本的には本編のBGMが多く使われているものの、今作で追加された「夢紡がれた欠片、そして…」などは壮大さの中にどこか悲しさもある良曲となっている。
Vo曲はDucaさんの歌う『カナリア』がイチオシで、特にイントロのゆったりとした始まり方は使われていたシナリオの関係もあり、味わい深いものとなっている。


お勧め度
本編である『pieces/渡り鳥のソムニウム』の続編であるFD作品である今作、もちろん本編のプレイは必須の作りとなっており、画集として以外では単体でのプレイは推奨できない。
特に大きく雰囲気を変えることなく本編の流れはしっかりと踏襲されており、シナリオ的にも各キャラのアフター以上に作りこまれたシナリオも付随した作品であるため、プレイ済みで本編の雰囲気が好きだった方にとっては、十二分にプレイする価値のある内容となっている。

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総合評価
絵や音楽などのコンテンツは勿論、シナリオの観点から見ても、FD作品としてだけでなく続編としての価値を感じられる作品となっており、高い評価をつけている。


【ぶっちゃけコーナー】
FDと言う名の続編、本当に良く作りこんでくれました。

『pieces』という作品自体、凄く世界観が作りこまれていて、失礼ながら渦巻には珍しいシナリオも重視したゲームで印象的だったのですが、見事良作を作ってくれていて、今作でも心配は無用でしたね。

シリアスになり過ぎるとどうしてもキャラクターの魅力を書けなかったりと、萌えゲーとシナリオゲーって、個人的には相性が悪い印象が強いのですけれど、今作では前半にキャラ萌えを後半にシリアスシーンをもってきていました。
いやまぁ、他の多くの作品も基本的にそうなんですけれど、今作は結愛√以外が萌え・エロの部分を担当してくれていましたから、余計にそう思ってしまうのかもしれません。
もちろん、結愛自体もキャラクター的に魅力十二分なキャラクターですが、やはり全編を攻略後に考えてみるとシナリオ的側面の強いキャラクターだな、という印象です。
そしてそのシナリオが、今作でもしっかりと感動できる内容だったからこそ、今作の高い評価につながったのだと思います。

付け加えて…割と本編のTrueに謎が多くて、正直「?」ってなってたところも多いのですけれど(読み込めば分かったのかもしれませんが)、今作でそうした部分も明確に説明されていたのがうれしかったです。

総じて、凄く読後感が良い作品になっていました。
今作で『pieces』という作品自体は綺麗に締まった印象が強いので、なおさら次作もどうなっていくのかが気になりますね。