タイトル : 神様のしっぽ ~干支神さまたちの恩返し~
ブランド : DESSERT Soft


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]
(総プレイ時間 : 19.5h)

キャラクター・シナリオ
動物の言葉が分かる不思議な少年、天部秋成がある日見つけた不思議な石板。
「動物ともっと触れ合いたい」その思いが通じたのが、目の前に現れたのは12人の干支神様。彼女たちとの出会いから始まる賑やかな、”へんてこ”な『家族』との暖かな日常をつづった作品。

この作品の魅力の一つといえるのが賑やかな日常シーンであり、特にギャグシーンは共通部分や各個別部分の大きなウェイトを占めている。
 前作から引き続き、同会社作品からの出店は勿論、他の有名コンテンツや各作品からのパロディシーンも多く、豊富なヒロイン同士の楽しい掛け合いに加えて、賑やかな作品の雰囲気づくりに一役を買っていた。

今作の見どころの一つとして挙げられているのは攻略ヒロインの多さ。
その数はサブを含めると13人に上り、その一つ一つにしっかりと物語(とHシーン)が用意されているのはやはり驚きといえる。
 一方、その√の多さゆえなのかこの部分が作品自体の足を引っ張っている部分もあり、一部√を除いてそのシナリオの質自体はお世辞にも良い物とは言い難く、多くの√において「とりあえず用意した」という体が抜けていない。
これはこの作品が階段分岐という、メインシナリオであるTRUE√に向けて分岐していく形をとっている事も大きく関わっているだろう。
普通の作品であれば、その数も少なくある程度読み下せるのだが、今作は上記の通りその部分の分量も非常に豊富で、だからこそ読んでいてマンネリやダレることも多かった。
 上記の部分に加えて、序盤においては各部の設定について、力押しで流すことが多く、理由が分からない設定なども多い。そうした部分をなんとなくで流してしまわないと、物語の展開に乗り切ることができずに物語を進めてしまう仕様となっている。
全体的な分量の増加によるものか複数ライターの弊害か、各部門との連絡の不備によるものなのか…そのあたりは不明だが、他にもテキスト自体に誤字脱字も目立つ事や、CGと地の文との整合性が取れないシーンなど、総じて見た時にツメが甘く感じる部分も多く、そうした部分がリズムよく読み下せない所の原因にもなっていた。

また、今作は上記でも述べたように、階段分岐作品となっている関係もあり、一部ヒロインと共通ルートで関係を持つシーンもある。
そのあたりに抵抗がある人間にとっては忌避感のあるシーンともなっているが、そうした問題以上に全体的にHシーンを入れるために秋成の性格がゆがめられ、強引に感じるシーンがあったという事に注目してしまう。
 今作において恋愛シーンが希薄なことに加えて、そうしたシーン描写自体が作品への没入感を低くしてしまい、結果的に各ルートであまり楽しめなくなっていたように思う。

非常に多くの欠点を書いたが、そうした欠点を補って余りある名シーンがあったのも事実であり、作品のテーマでもある『絆』を描いたシーンの数々はこの作品の最大の魅力ともいえる。
特に共通ルート後半のちずの話や蓮華√後半の各干支神の過去回想シーンは、その切なく、悲しい描写に涙を止めることができないほどだった。
個人的好みの差があるとはいえ、そうした涙するほどのシーンがあったのは確かで、そうしたシーンや各個別√での描写があってこその、TRUE√への繋がり。
一連の流れという意味で非常にできも良く、心温まる展開は読後感の良い作品へと印象を一転させた。
ある意味、私はこの一点において強く評価しているが、動物の話が好きな人間にとってはたまらない作品となっていたといえる。


共通√【 ★★★★★  5h
前半では主人公と各十二支との出会いを描いたシーンを描いており、主にドタバタコメディ風味の明るい日常シーンをメインとしている。
一部謎の設定なども多くあり、疑問を残したまま進む部分には違和感を感じるものの、後半部分のメインに当たるヒロイン、ちずの話はとても感動的で、『人』というものに対して、あってしかるべき感情を素直に描いたそのシナリオからの展開は種族を超えた絆の片鱗を感じさせ、作品としても象徴的な部分といえるだろう。

なお、共通部分には各十二支の章が含まれているものの、階段分岐というシナリオの構造上、各章については各キャラ部分での評価としている。



ちず√【 ★★★☆☆ 】  1h
学園は前期課程の2年生に当たる、子(ねずみ)の干支神様。
ずるがしこく悪知恵が働き、人に対してイタズラを繰り返したり、授業にもあまり出ないなど問題行動も多く、主人公に対しても敵対的であった。
一方、姉であるはるかの事はとても慕っている。

ちづのシナリオとなる『子ノ章』について。
最初の印象から一転、なついてくるの可愛いちづ。
共通ルートでの関係とは一転して、そんな彼女と主人公のやり取りが短いものの描かれており、それまでの前提があるからこそ、一緒にイタズラしたりするシーンは心温まるものになっていた。


はるか√【 ★★★☆☆ 】  1h
のんびりマイペース、おっとりとした雰囲気の丑の干支神様。
常に眠たげで歩きながら寝てしまい、壁にぶつかりそうになってしまう危なっかしい所も。
学園では後期課程の3年に当たり、子のちづとは姉妹のようにとても仲が良い。

個別シナリオとなる『丑の章』ではちづの為にお菓子作りに奮起する内容に。
はるかの他人のためを思って行動する心優しい部分が良く伝わる内容となっている。また、主人公とはるかの過去の描写なども一部あるものの、基本的に恋愛描写は非常に簡素。



あまね√【 ★★★★☆ 】  1h
後期課程の2年生、学園の生徒会長を務める高飛車な寅の干支神様。
役職に反して人前に出るのが苦手で、挨拶などは副会長である戌のあきらに変わってもらうことが多い。
学園では猫を被っているが、興奮すると粗野な部分が見え隠れする。

個別√となる『寅ノ章』ではサーカスの来訪を切っ掛けとした、あまねのトラウマをテーマとしたシナリオになっている。
トラウマに対して向かってゆくあまね、彼女が魅せる寅としての誇り、そしてその輝きが感じられる内容となっており、漫然と横たわる恐怖とその裏にある身を焦がすような渇望を描いた物語は、シンプルながらも比較的で気も良く、また演出としても一手間加えられていたことも併せて良く出来ている。



みゆき√【 ★★★☆☆ 】  1h
後期課程3年にあたる卯の干支神様。
誰かのために奉仕するのを好んでおり、多くは学園長をサポートとして傍にいる事が多いが、その他に学園の謎メイドとして様々な場所でもお手伝いをしている。

『卯ノ章』では先輩メイドとして主人公に家事を教える所から物語が始まる。
普段フラットな表情であることが多いだけに、個別シナリオではコロコロと表情を変えてくれており、怒った顔など可愛い表情が印象的。
そんな彼女のメイドとしてのルーツを描いた物語には悲しい部分がありながらも、メイドとしてどう進んでいくか、そうしたみゆきの強い志を感じる内容となっている。



ききょう√【 ★★★☆☆ 】  0.5h
学園の学園長を務める辰の干支神様。
見た目こそ幼いが干支神の中では最も年長であり、そのためなのか古風な年寄りのような喋り方をする。
また尊大な態度と自由な振る舞いが目立つものの、それでも周囲からの評価は高く、干支神様たちだけではなく地元住人たちからも、信頼もあつい。

個別√である『辰ノ章』はサブヒロインという事もあって短めの内容となっているものの、主人公とお昼ご飯食べられてはしゃいだり、一人で悶絶したりと、今までは見られなかった乙女な一面を見ることができ、その可愛らしさが前面に押し出された内容となっている。



れいこ√【 ★★★☆☆ 】  0.5h
妖艶な雰囲気を醸し出す『巳』の干支神様。
学園の保険医として勤務しており、仕事自体はキチンとしているものの、気になった事があると熱中してしまう、専ら怪しい実験をしていることが多い。
特に主人公は実験台として巻き込まれることも多く、またその他にもお酒が好きだったりと自身の欲求に素直なダメダメなお姉さん。

個別シナリオの『巳ノ章』は、彼女と主人公が偶然開発した「惚れ薬」を発端とする小さな騒動のお話となっており、れいこがサブヒロインであるために短めではあるが、彼女の見た目通り妖艶な雰囲気漂うシーンがしっかりと描かれている。



じゅん√【 ★★★☆☆ 】  1h
主人公の幼馴染で『午』の干支神。
主人公と同じく幼い頃から浅葱家に下宿しており、元々は人であったが今回の騒動で突然姿が変わってしまった。
走ることが何よりも大好きで、毎日陸上部の活動に精を出している。

個別√となる『午ノ章』では彼女のある「トラウマ」がテーマになっている。
他の多くのヒロインとは違い、人の頃の記憶も強く残っている、という特徴はあるものの、基本的には予想を裏切らない物語展開で手堅く作られていた。
中でも恋人関係になった後に、照れてしまうじゅんの乙女な一面が見られるという点については王道的な反応ではあるものの、やはりギャップの魅力を感じるシーンとなっている。



さゆり√【 ★★★☆☆ 】  1h
引っ込み思案な『未』の干支神様。
前期課程の三年生であり、主人公の事も先輩として慕ってくれている。
まだ妹が小さいため一緒に暮らしており、彼女たちの前ではしっかりとした姉としての姿も見せており、放課後は牧場で健気に働く姿が良くみられる。
妄想癖が激しく、時折暴走しては赤面してしまうことも。

個別√の『未ノ章』では、奥手なさゆりとのストレートな恋愛が描かれており、加えて二人の妹「みるか・うるか」も比較的よく登場している内容になっている。



たかみ√【 ★★★☆☆ 】  0.5h
お調子者で好きなことに一直線、オタク趣味に精通する『申』の干支神様。
以前から浅葱家に下宿している主人公の悪友ポジションに当たる人物。
主人公とは同じクラスで、趣味のゲームの話で盛り上がったりと異性を感じさせない気の置けない仲だが、一方で戌のあきらとは気が合わず会うたびに喧嘩をしている。

個別√である『申ノ章』はとある彼女の「夢」をテーマにしており、"好き"に対して一直線に向かってゆく、たかみの自由で情熱的な部分が描かれている。
サブヒロインであるために分量は少なく、また一部の主人公の行動に無理矢理な部分があったりと違和感の目立つシナリオでもあった。



みそら√【 ★★★☆☆ 】  0.5h
主人公のクラスの新しい担任となった『酉』の干支神様。
年齢自体は前期課程2年生に相当するが、飛び級をしているため身体も小さく、ニコニコしているが子供扱いすると怒る。
理由は不明だが、力が安定しないために人間体を維持することができずに動物としての姿で授業をお粉y事も多い。
元の動物の関係もあって、3歩歩けば物事を忘れてしまうトリ頭でもある。

個別√『酉ノ章』でテーマとなっているのは、彼女のトラウマ。
高い所が苦手なその理由や再び空を目指すためのシナリオとなっているものの、サブヒロインシナリオという事もあって短めの内容となっている。



あきら√【 ★★★☆☆ 】  1h
あまねの執事として付き従う、『戌』の干支神様。
学園の後期課程1年生ではあるものの、生徒会副会長を務め、あまねの代わりに舞台に立つ機会なども多いため、学園生徒からの人気も厚い。
主人であるあまねに心酔しており、彼女を第一に行動することが多い。
また頭が固く冗談が通じないところもあり、申のたかみとはとても相性が悪い。

『戌ノ章』ではあきらにとっての執事のルーツに迫るシナリオとなっている。
彼女と主人公の過去にかかわる出来事や、主人であるあまねをも巻き込んだシナリオは起伏がありつつも纏まりも良く、サクサクと読んでいける。



あんこ√【 ★★★☆☆ 】  0.5h
猪突猛進、純真無垢な『亥』の干支神様。
干支神では一番年下で前期課程1年生のにあたり、身体は非常に頑丈なため、元気いっぱいに外を走り回るのが大好き。
主人公を「にーに」と呼び、出会った当初から主人公の部屋で寝泊まりしていたりと、本当の兄のようになついてくれている。

個別√、『亥ノ章』では恋愛の『れ』の字も知らないあんこが、無自覚に主人公を誘惑してしまうシナリオに。
展開としては多少強引ではあるものの、あんこの無垢な部分が前面に押し出されたシーンの数々はやはり癒される。
素直に好いてくれるその姿に癒され、遠くから優しく見守っていたい気持ちにさせられるキャラクターとなっていた。



蓮華+TRUE√√【 ★★★★★  2h
神社で巫女を務める幼馴染。
主人公とは小さなころから家族同然に育っており姉のように接することも、クラスも同じで後期課程の2年生に当たる。
誰にでも平等に優しく、それでいて間違っている時にはしっかりと怒ってくれる包容力のとても高い娘。

個別√である彼女のシナリオについては今作のグランドENDといえる、TRUE√ともある意味不可分なので同時に語ってしまうこととする。
(TRUEのみだと最後の展開が変わるのみで、15分ほどしかない)

今まで不明だった多くの部分が解説される部分となっており、そして蓮華だけではなく主人公である『天部秋成』という人物についての謎が明かされるシナリオとなっている。
それらの解説については半ば強引なものも多く、理由付けという部分においては十分だがロジックや伏線に驚きはしないだろう。
しかしこのルートの最大の魅力はなんといっても、十二支と主人公の関わりを描いた部分であり、ある意味この部分からの流れを書くために、今までの部分があったといっても過言ではないだろう。
なかでも過去の十二支の干支神との思い出を振り返るシーンはとても切なく、どの想い出も涙が止まらないものとなってきた。
そうした記憶があるからこそ、今まで積み重ねてきた絆をより強く感じることができ、この作品のテーマの一つでもある『家族』という物に対して深みのある描写ができていたのではないだろうか。

終盤の展開も心温まるものとなっており、読後感の良さも併せて高い評価を加えておきたい。


[ 主人公 ] 天部 秋成
動物の言葉が分かる不思議な青年。
赤ん坊の頃、天部神社の賽銭箱の近くで保護され、以降は浅葱家の一員として蓮華たちと暮らしている。
学園は天部学園後期課程の2年生であり、心優しく、成績や体育などは波程度にこなす。
生き物や動物が好きで、暇があれば動物と触れ合うことを日課としている。


【推奨攻略順 : ちづ→はるか→あまね→みゆき→ききょう→れいこ→じゅん→さゆり→たかみ→みそら→あきら→あんこ→蓮華→TRUE 】
攻略順にロックなどはないものの、階段分岐作品なので基本的には上記の順番が望ましい。


CG
全体的に柔らかな印象を受ける絵で、全体的な質は十二分といえる。
ヒロイン数が多いため、各ヒロインのイベントCGの数はどうしても少なくなっているものの、さすが13キャラもいることもあって、総じての枚数は中々のものといえる。
また、SD絵も数枚存在している。
 シナリオ部分とCGの連携が取れていないのか、一部背景やCGなどが使いまわしの考慮などを度外視したとしてもずれているものが数点見つかっており


音楽
BGM8曲、Vo曲5曲(OP2/ED1/挿入歌2)という構成。
アレンジを含めれば幾分か増えるものの、シナリオ量に対して曲数は少なく感じる。
それでも各シーンにおいて最低限のものをそろえているという印象。
一方、非常に豊富なのはVo曲。
1曲1曲の破壊力もなかなかのもので、個人的に薬師るりさんの歌う『いつだってそばに』はしっとりと歌い上げられており、作品の内容と合わせて心温まるものとなっていた。


お勧め度
十二支をテーマに、人と動物の種を超えた絆を描いた作品となっており、動物物が好きな人はぜひ手に取ってほしい作品となっている。
シナリオは癖があるものの、ギャグは豊富なためある程度退屈せずに読むことはできる上、最後までたどり着けばしっかりと感動できる内容となっている。
総じて心温まる内容と言え、読後感も良い作品である。


総合評価
欠点もあるが補って余りある良い所も内在した作品であり、そういう意味では特徴的。
泣けたという点を高く見積もってはいるものの、全体を鑑みてこの評価となっている。


【ぶっちゃけコーナー】
割とぶっちゃけてシナリオ部分の酷評は上記までに書いてしまったけれど、もう少しわかりやすく書ければと思い付け加える。

前作のトメフレは割とヒロイン同士の会話とかも面白かったし、各個別もそのユニークな個性を活かして面白いシナリオになっていたのかも。
一方今作は、ギャグシーンとしては弱めだし、各ヒロインに関しても十二支という特徴やキャラクターの多さといった点は特異といえるものの、ある意味一般人が多いので面白みという意味では弱かった。
それは各個別が短かったことも無関係ではないだろう。
しかしながら一方で、一連の作品としてみた時の主張性の強さや、もっとわかりやすく「泣けたか」という意味では今作が圧倒的な勝利を収め、それくらいTRUEまでのしっかりとしたシナリオの流れがあった。
その部分においてこの作品は評価していいのではないだろうか。
個人的に動物シーンはとても弱くて泣きやすいのだが、そうした点も鑑みて評価を高くしている。

そういえば十二支というと、マンガやアニメで有名な『フルーツバスケット』という作品があるが、やっぱりそのあたりをほうふつとさせる展開はあったのかも。
というか十二支作品を取り扱うにあたってあの設定は使わないといけないしなぁ…。
まぁ、ネタバレになりそうだからあまり語らないけど、前半で結構不明なまま物語が進行してたのは、いちいち気になって仕方がなかったな。
この辺りが気になるのかどうかは個人差なのかな…。