タイトル : 天神乱漫 -LUCKY or UNLUCKY!?-
ブランド : ゆずソフト


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]

(総プレイ時間 : 20h)

キャラクター・シナリオ

恋も○○も、最後はやっぱり神頼み!?

不幸体質な主人公の元へ神様がやってくる、という少し特殊な設定で描かれた学園ラブコメ作品。

シナリオはヒロイン4キャラとサブヒロイン2キャラの個別シナリオと+αの構成で、共通部分や各ルートの分量も十分にあるので、全体的なボリュームも十二分といえる。

テキストはテンポが良く読みやすい。
特に共通ルートを中心としてコメディ色が強い作品でもあり、笑いながらサクサクとプレイできるのはこの作品の大きな魅力の一つといえるだろう。
一方で個別シナリオにおいては、各キャラの設定は勿論のこと、主人公の『不幸体質』や文化祭の開催などをテーマに比較的しっかりとした内容の話が展開されており、キャラの魅力以外の部分でもしっかりと、その価値を感じられるものにしている。

言うまでもなく、ゆずソフトの最大の魅力であるキャラクターに関しては本当に文句が出ないほどで、今作のセンターヒロインである土地神の姫は勿論、兄の事になると暴走しがちな佐奈をはじめ、ヒロイン勢はキャラがちゃんと立っておりその中で萌えポイントがしっかりと作られている所は評価が高い。
そうした部分をしっかりと共通ルートや各個別で描けているところは、ゆずソフトだからこそだろう。

ゆずソフトの多くの作品に言えることだが、総じてキャラクターの魅力をしっかりと前面に出した、シナリオも楽しめる作品というのが全般的な感想である。
キャラクターが魅力的だからこそ、それぞれのキャラクターに対して熱狂的な固定ファンがいるし、そのなかでシナリオもある程度描かれているため、その話自体を楽しめることは勿論、そうした話の中で見えるキャラクターの行動や心理描写がキャラづくりの一端を担っているという事は間違いない。

そうしたことをわかっているシナリオだからこそ、発売から長い時を経た今でもその内容が楽しめる、それ程に洗練されている事を感じられるものあったことは素直に賞賛しておきたい。


共通√【 ★★★☆☆ 】  2.5h
卯花之佐久夜姫――以降は姫と略す――との出会いとなる新学期から夏休み前までが描かれている。

基本的には学園での描写が中心となっており、各ヒロイン達とのエピソードは勿論、特に序盤では転入生としてやってきた姫の突飛な行動に牽引されるような形で、物語が展開してゆくため、イベントに富んだ内容となっていた。
もちろん姫だけではなく、ヒロインやサブキャラクター達もうまく動かされており、テンポよく展開される賑やかな日常シーンが印象的にも強い作品となっている。
またギャグシーンなどが豊富なのも特徴的で、有名マンガ等のパロディやメタネタ等、その種類は広範囲に及んでいた。

今作では少し懐かしいMAP選択式の分岐が用意されており、対応するキャラクターのSD絵を選択することで、各個別エピソードが読めると同時に、その選択に応じて各個別√へと分岐する形となっている。


tensin (1)
卯花之佐久夜姫√【 ★★★☆☆ 】  3h
主人公の不幸を祓うためにやってきた土地神様。
神様らしく自信満々で大胆不敵、唯我独尊な人柄で、人を揶揄ってはその反応を見て楽しむ癖があり、良く主人公がその餌食になっている。

個別√は文化祭の開催を主軸としており、開催に際して発生する問題や姫の『神様』としての事情や主人公の不幸体質も絡んだ波乱のストーリーとなっている。
展開自体はネタバレになるため伏せるが、姫が神様だからこそ感じてしまう無力さと、それに対する主人公の成長によるカタルシスがとても気持ちよく描かれている。
恋愛シーンに関しては終盤で主に描かれており、コメディ色の強い展開の中にも主人公を揶揄っては楽しむ小悪魔のような一面や、意外と嫉妬深い可愛い一面など、彼女自信の魅力が現れたシーンが多くなっている。


tensin (2)
竜胆ルリ√【 ★★★☆☆ 】  3h
神様である姫を追ってやってきた狐耳の少女。
元々は狐であったが、とある理由のために姫と同じ場所で長い時を過ごしており、そのため人間の姿に変化することもできる。
しかしながら、基本は狐であるため行動は本能的であることが多い。
神様が苦労しているのは主人公のせいだと思い込み、一方的に敵視している。

個別√では前半、主人公と同じ時を過ごすことによって段々とルリの態度が軟化していく様子が描かれており、良くも悪くも本能的に行動するルリの魅力が描かれている部分となっている。
中盤から後半にかけては主人公が受けている『天罰』を絡めた内容となっており、その内容はストレートに感動させるような良い話に。
特にラストシーンに関しては、主人公の優しさやルリへの気持ち等が伝わるものとなっており、その演出を含めて鳥肌の立つような展開となっており、シーンとして切り取るのならこの作品でも一押しの場面となっている。


tensin (3)
千歳 佐奈√【 ★★★☆☆ 】  3h
主人公の妹。
両親が家に不在であり、不幸体質のせいで家事をすることができない兄の代わりに、千歳家の家事を一手に担っている。
基本的にはおとなしいのだが、大好きな兄の事になると暴走してしまう筋金入りのブラコンでもある。

個別√では共通ルートでも少し扱われていた佐奈の出自に関する話と、主人公の不幸体質を絡めたシナリオとなっている。
もちろん兄妹の禁断の恋という部分にも触れられており、家族愛と恋愛の違いについて思い悩むシーンなどが多く取り上げられている。
後半では佐奈と主人公がお互いを想い合う、その絆の強さを感じられるシーンもあり、感動的な展開を描き出している。


tensin (4)
山吹 葵√【 ★★★☆☆ 】  3h
主人公の幼馴染でクラスメイト。
誰とでもすぐ仲良くなれるほど明るく、それでいて困っている人は助けようとする優しい性格の持ち主。その容姿もあって男女からの人気も高い。

個別√では、とある切っ掛けで、葵が立候補することになった学園の会長選挙戦を主軸として描く学園物となっていのだが、そこに主人公の『不幸』要素がアクセントとして加えられている。

恋愛に対して鈍感だった彼女が『幼馴染』という近くて遠い存在に対し、想いを募らせ、そして初めての恋に思い悩む、そんな葵の乙女な一面がとても魅力的に描かれている。
ラストシーンでは葵らしさ感じる心温まるストーリーにもなっており、予想のしにくい展開は読んでいても面白みがある内容となっていた。


tensin (6)
常盤まひろ√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
主人公の学園で生徒会長を務める女の子。
穏やかで優しい性格をしており、生徒会長として真面目に取り組む姿もあって、多くの生徒から慕われている。
しかしながら不思議と一人でいる事が多く、生徒会室で仕事をしているか図書室で本を読んでいることが多い。

個別シナリオは特に前半に大きな盛り上がりを見せ、なぜか距離を感じさせるまひろの態度に関しての謎を絡めた、とある文学作品をテーマにした恋愛シナリオとなっている。
特にこの部分に関してはまひろの心情描写や主人公の行動などを含め、「知りたい、知ってほしい」という恋愛の源流をも感じさせるその内容は特に秀逸に感じる部分となっている。
物語後半では文化祭開催のために奔走する姿と同時に、主人公との日々によって変わっていくまひろが描かれており、その姿が日増しに輝きを増し、魅力を感じさせるように描かれている。


tensin (5)
烏羽 紫√【 ★★★☆☆ 】  2h
主人公のクラスの担任を受け持つ新人教師。
教師に似つかわししくない恰好や屋上でタバコを吸っていたりと不良教師のような言動が目立つが、その若さもあってか生徒からは人気は高い。
反面、先生たちからは便利に使われることも多く、思わず愚痴がこぼれることも多い。
自身の保身のため、問題を起こしがちな主人公に対しては特に気にかけている。

個別√は彼女が無理をして吸っているタバコの理由を絡めつつも、教師と生徒の禁断の恋をテーマにしたビターなシナリオとなっており、サブヒロイン√ではあるものの起承転結のハッキリとした良いシナリオとなっている。
その中で描かれる恋愛シーンは意外にも純情一途であるものの、総じての感想は驚くほどのドSっぷりであり、その妖艶さが光るシーンも多い。
特に後半からはそのドSな紫の魅力が存分に発揮されるシチュエーションや展開も多く、お姉さんに調教をされたいドMな方にとっては垂涎の内容ともなっている。


[ 主人公 ] 千歳 春樹
極度の不幸体質をもつ青年。
本人はいたって真面目なのだが、その体質によって問題を起こしがちなため、教師たちからの覚えは良くない。
街に出ると不良などに絡まれる事が多かったためか、喧嘩などにも慣れている。


【推奨攻略順: 紫→まひろ→ルリ→葵→佐奈→姫→α 】
とある√以外は攻略順に特に指定はない。
個人的には佐奈や姫√は後半に回した方が読後感が良く感じられると考えている。


CG
細い線に濃い目の塗、柔らかい線質。
発売された年代の差もあって多少気になるものはあるものの、総じての質は高く、特にイベントCGに関してはキャラクターの柔らかさが感じられる良い物がそろっている。
枚数に関しても、ヒロインは勿論サブヒロインに関しても十二分な量がそろっており、全体的な品質は高いといえるだろう。


音楽
BGM34曲(Vo曲アレンジ含む)、Vo曲2曲という構成。
幅広くそろえられたBGMの中で目立つのはギャグシーン用のものの多さであり、この作品のかなめともいえる日常シーンに多大な寄与していた部分であることは言うまでもないだろう。
Vo曲として注目しておきたいのはなんといってもOP楽曲「メチャ恋らんまん☆」はその映像と合わせて、非常に有名な曲となっている。
もちろん単体でも電波系の曲として、ノリとテンポの良い良曲となっている。


お勧め度
不幸体質の主人公を助けるために神様がやってくるという、突飛な内容である今作。
学園物という定番の舞台で繰り広げられるラブコメ描写は安定しており、その中に少しだけ特殊な設定を加えられたことがスパイスとなり、物語に面白みを与えている。
ゆずソフトの最大の魅力でもあるヒロインもよく、OPばかりが独り歩きして有名になっている作品の印象を受けるが、その中身も十二分に満足できるものであることが時間が経った今でも感じられる。


総合評価
全体的に安定した作品ながらもシナリオは広く多くの人が楽しめる内容になっており、抑えめではあるものの評価以上の内容といえる作品。


【ぶっちゃけコーナー】
OPで有名すぎる作品なんですが、作品的にはそこまでウェイトの重い部分でもないのであえて多くは触れません。

どちらかというと、個人的な最初の印象は『こんなかわいい子に囲まれているだけで幸運体質だろ!』というものだった。
ただ、そんな冗談みたいな想いにも、詳しくは語りませんが葵√あたりでなんとなく触れられていたことに驚きました。

それはさておき、文章の内容に反して少し低めの評価だった理由についてなのですが、ここは純粋に「泣けなかったから」の一言で済む。
実は結構泣きそうになるシーンが多かったのは確かなのですが、それでもやはり今作前面に押されている部分は『泣き』ではなく、『キャラクターの魅力』や『にぎやかで楽しい日常シーン』にあったため、そこまで涙腺にも来なかったのかも。
ただこうした雰囲気は私の評価では低くなりがちなんですが、プレイしていて楽しいのは楽しいし、以降の作品でも同様のテイストで作られていることから、多くの人にも評価されているのでしょう。
少なくとも、いい意味でライトに楽しめる作品として、幅広く勧めやすい作品であることは確かで、時間が経った今であってもその意見は変わらない。

二人だけの話が進みがちな各個別シナリオは結構重めですが、サブキャラやそのほかのヒロインが登場するシーンになると一気に明るい雰囲気に変化するのはこの作品のというよりゆずソフトの特徴ともいえるのかもしれないですね。