タイトル : どっちのiが好きですか?
ブランド : HOOKSOFT


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★★☆ [4/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]
(総プレイ時間 : 15h)

キャラクター・シナリオ
受験が控えている学園の2年生、そんな主人公が彼女を作るラストチャンスとして奮起する、夏休み前から秋口にかけての恋愛学園物。

なんといってもポイントは「リードする/される」選択肢による物語の大幅分岐。
各ヒロインとの分岐後、告白前に出現するこの2択によって同一キャラであってもその後の展開が大きく変わる仕様となっている。
そのためヒロイン自体は4人となっているものの、実質のとろこ8キャラ分のシナリオが詰まっているともいえる。

オーソドックスな設定のようにも感じたが、プレイ後の感想は全く別で非常に新鮮なものだったといえる。
一方では自然な彼女との関係が、もう一方の選択肢ではギャップを感じられる内容が各シーンで描かれており、その二つのサイドから彼女を知ることで、そこに『生きている』実在感が増す仕様となっている。
いつも自信ありげな彼女の裏に潜む不安や葛藤、彼女視点からだけじゃ見られない描写方法は他に類がなく、選択肢によって変わる展開によってそのキャラクターを普通ではありえないほど深く掘り下げることを可能とし、その表現方法に可能性を感じる物となっていた。
他にも「EXピロートーク」などHOOKSOFTならではの甘い恋愛シーンを演出するシステムなどもあり、甘酸っぱい恋模様や切ない恋愛シーンの演出に色どりを加えてくれている。

また今作ではギャグシーンも多く入っており、主人公やヒロイン達だけではなくサブキャラクターを含めた軽快なトークは平凡な学園生活にメリハリを与えており、ともすれば甘くなりがちな作品に勢いをつけてくれていた。
魅力的なキャラクターをさらに魅力的に見せるための手段として、使用した今回のシステムに関しては斬新かつ効果的だったといえる。
全体的なシナリオの質も高く、恋愛学園物が好きな人にとっては十分に楽しめる内容となっているだろう。


共通√【 ★★★☆☆ 】  1h
基本的にはオーソドックスな学園物の始まりとなっており、主人公と4人のヒロイン達との出会いのイベントや、すでに出会っているヒロインに関しては異性として意識するきっかけとなるイベントなどが描かれている。
展開自体は割とゆっくりなのだが、全体的にギャグテイストが多めでサクサクと読める内容となっており、笑いながらストレスなく読み進められる。


EMd9bMqVUAAzEuu
種村 小柚子【 ★★★☆☆ 】  3.5h
隣に引っ越してきた元生徒会長の1コ上の先輩。
面倒見がよく、豪快で力強い雰囲気から頼れる人として、美人な容姿も併せて周囲からの人気も高い女性で、その人気からか多くの男子が告白しては振られているという噂もある。
実は体を動かすのが大好きで、良くバッティングセンターに通っている。
美人で年上の憧れの先輩ということもあって、主人公も緊張をしているためかボケをする事が多いが、それに対するツッコミが小気味好いことも付け加えておきたい。

リードする展開では年上の先輩として接する小柚子に対して、張り合おう様にリードしようとする主人公の様子が印象的。
そんな行動が空回りが演出する背伸びの恋としての側面は勿論、後半にかけてはそんな主人公にトキめいたり甘えたりする一面を見せてくれ、変わっていく恋の変遷が描かれている。
リードされる展開では小柚子本来の年上としての包容力が感じられる内容となっているものの、完璧なようでどこか抜けたところがある所や意外にも子供っぽい所など、二人の関係が進むごとに見られる彼女としての小柚子らしさが感じられる内容に。
また、時折見せる主人公の行動にトキめいてしまう小柚子など、初恋らしさあふれる初々しい恋模様が描かれていた。


EMTchVpUUAUFYJe
上ノ山 芽愛√【 ★★★☆☆ 】  3.5h
学園でもバイト先でも後輩のいじられ系女の子。
いつも明るくテンションが高くポジティブで、しかし調子に乗ってしまう事も多く、そこにイラついた周囲からイジられることが多い。

自他共に認めるドM気質だけあり、いじられてる時が一番輝いており、特に主人公や英と絡むシーンでは特に顕著だった芽愛。
そんな彼女の個別√、リードする点展開では趣味のハンドクラフトなどをテーマに絡めつつ、いい意味でも悪い意味でも「子供」な芽愛の不安や嫉妬という負の感情が扱われており、そんな中で一心に愛を向けてくれる姿には誰しもが庇護欲を覚えるだろう。
一方、リードする展開では大人っぽい女性にあこがれる芽愛が背伸びした恋愛をする様子が描かれており、彼女らしく空回りすることも多いものの、そこにある努力がしっかりと表現されており、少しずつ成長していく様子が丁寧に描かれている。


EMYlp38U0AETEj2
四谷・グレンジャー・ハンナ√【 ★★★☆☆ 】  3.5h
隣のお嬢様学園「綴葉」に最近転入してきたハーフの女学生。
とびぬけた美人で、外国人由来の目立つ容姿から主人公の通う学校でも「姫」とあだ名がつけられているほど有名
主人公とは同じ塾であるものの、接点はなかったが日本文化――特に時代劇が大好きなハンナは主人公の名前でもある「忠臣蔵」を切っ掛けとして知り合いになった。

個別√では、女神を地で行くほど純真無垢でやさしさに溢れたハンナが描かれており、特にリードする展開においては、彼女の控え目な性格がそうした部分とマッチして、貞淑なお嬢様である印象を受ける内容になっていた。
また、同展開においては√終盤において「家族」をテーマにしたシナリオなども含まれており、思わずホロリとさせるワンシーンなどもあった。
一方、リードされる展開では主人公と接することで、徐々に活発的になっていくハンナの様子が描かれており、同じ「家族」というテーマに対しての答えを、リードする展開とはまた違ったアプローチで描き出していた。

またこの√では彼女の同級生であるお嬢様の紫子や、妹であるリサなどの魅力的なサブキャラクターも登場しており、特にリサに関しては彼女の個別√のテーマの関係もあって印象に残る登場人物となっていたことを付け加えておく。


EMJZW_8U8AAEZDB
英 摩耶√【 ★★★☆☆ 】  3.5h
ツンツンでドSな生徒会長。
主人公とは同じクラスであり、内心点を稼ぐために狙っていたクラス委員長の座を主人公に奪われ、結果として生徒会長になった経緯があり、何かと主人公につっかかってくる。
とにかく負けず嫌いで成果主義、だれにでもマウントを取りたがり、そんな性格が災いしてか生徒からは「氷の花」と呼ばれるほど恐れられており、同時に統治している。

ドSな彼女ならではの主人公へのキツい言葉の応酬、一見すると気の強い摩耶だがそうした軽快なやり取りにはしっかりと笑いがあり、同時に主人公への思いやりを感じさせてくれ、ツンツンな部分が多い彼女だからこそ、デレた時の可愛さは叫びだしたくなるほどの破壊力になっている。
そしてリートする恋愛とリードされる恋愛、その二つの展開によって見せられる摩耶の印象も大きく異なり、リードされる展開では彼女本来の自身に満ちた輝きが、リードする展開ではドSな彼女を振り回すことで照れる表情が、それぞれの演出によって描かれている。
また、明らかになる彼女の淡い想いや彼女の過去など、両ルートでの情報開示の方法なども巧みに変えられていることも高評価しておきたい。


[ 主人公 ] 辻堂 忠臣
夏休みを前に彼女を作ることを決意した、やるときはやる男。
内心点稼ぎのためクラス委員長になり、その後もモテるために良い顔をし続けたため、学園の風紀委員副委員長をつとめている。
基本的にノリが良く、男子たちとバカ話をすることは多いものの、立場的に諫めることも多い。

【推奨攻略順:摩耶(A→B)→芽愛(B→A)→ハンナ(B→A)→小柚子(A→B)】
リードするをA、リードされるをBとしています。
各キャラでの攻略順はなく、リードする/される展開に関してもそれは同様なのだが、個人的には上記をお勧めしたい。


CG
線が繊細で色使いも鮮やか、丁寧で高品質な絵。
1キャラに対しての枚数に関しても十二分といえ、またシステム上使いまわしが多いものの、差分などを利用してそれと分からないようにしている事も見事といえる。
立ち絵には瞬き機能付き。
SD絵も各キャラ1枚ずつ存在している。


音楽
BGM29曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
全体的に丁寧できれいな旋律をイメージした楽曲が多いBGM、日常シーンで使われていた「風に色を付けるなら」等は、様々な楽器が見事に調和した落ち着いたものとなっている。
Vo曲に関しては、安田みずほさんのED「イリデッセンス」も落ち着いていてよかったのだが、櫻川めぐさんの歌うOP「僕らのWatercolor」は学園物のフレッシュさを感じるものとなっており、個人的にお勧めしておきたい。


お勧め度
全体的に安定した造りで一般的な恋愛学園物として勿論楽しめる作品。
日常シーンでのギャグ等もあってサクサク読める内容に、リードする/される選択肢の効果もあってキャラゲーとしてもより深くヒロインの持つ魅力に踏み込無ことができる作品となっており、一般的な恋愛学園物として近年でも高い順位につける作品。
広く多くの人にお勧めしやすい作品といえるだろう。


総合評価
シナリオゲーとまでは言えないため評価は抑え目になっているが、評価以上の作品ということができ、創意工夫溢れるシナリオ作りは高い評価をしている。


【ぶっちゃけコーナー】
シナリオ、音楽、キャラ等に関してはうえで十分正直に語ってると思う。

しいて言うなら、結構いい子と書いているのに抑え気味の評価なのは、やっぱり自分自身の評価方法が「泣けるかいな否か」であることに注力してるから。
そういう意味ではこの作品は評価が低い。

ただ、この作品で最も重視しているのはヒロインの魅力に深く踏み込んでいく部分であって、泣ける重いストーリーではないということ。
もちろん全く泣けなかったかといわれると、感情移入とかは結構してしまう造りにもなっているので、実はホロリとくるシーンもあったりして、もう少し押されてたらボロボロになるシーンとかもあったのかもしれない。
ただそういう√も限られている事もあって評価としては抑えている。
この辺りに関しては今後も揺れることのない評価基準ではあるものの、こういった作品を正確に評価するにあたっては不適切といえる。

話は飛んでシナリオについてもう少し。
あんまり会社と会社で作品を比べたりしないほうが良いのだろうけれど、誰かの発言で印象的だったのが『tone work's』の作品が時間を縦に掘り進める作品なら、この作品は時間を横に掘り進める作品だった…みたいな発言を見た気がする。
正しくその通りで、選択肢によって大きく広がる物語の展開。
主に二つの側面からみられる彼女たちのいろいろな表情は同じ時間に違う行動をした場合のそれに当たる。
そうしたものが”ある”のはわかっていたが、それを現実として一つの物語に落とし込む方法がなかったのは確かだろう。
この作品で彼女たちの心情描写シーン(別視点描写)がほとんどないままで、ここまで彼女たちに深く知ることができる、そういう意味では斬新な評価方法だし、今までいろいろな学園物を作っていたHOOKSOFTならではの内容といえるのではないだろうか。