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タイトル : 猫忍えくすはーと 3
ブランド : Whirlpool


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]


キャラクター・シナリオ
未来予知ができる妹を信仰する閉鎖的な故郷を変えるため、心躍らせながら新天地へとやってきた主人公、そんな彼の前に現れたのは、置いてきたはずの妹、瑠璃とそのお付きである幼馴染の鏡花だった。

あっぷりけではおなじみの桐月&オダワラハコネのコンビによるSF伝奇物で、また今作は2008年に発売された同会社の作品『コンチェルトノート』の続編という側面もあり、舞台もその作品の数年後という設定になっている。
作中ではコンチェルトノートのヒロインであった莉都なども出て来ており、後述の要素なども併せ、物語と密接にかかわる部分も多くプレイしていないとわかりにくい描写などもあるものの、説明は十分にされるためプレイ自体は必須ではない。

物語自体はセンターヒロインである瑠璃√に向けて各ヒロイン√が分岐していく、いわゆる階段分岐型の作品となっており、さらに大きく前半と後半、そして真相編となる瑠璃√から成る。
また条件を満たしたり、各キャラのENDを迎えると「Fragment」という形でショートストーリーが挿入される。
基本的には各キャラのHシーンを含めたアフターシナリオが中心となっているが、一部シナリオは物語の真相につながる描写であったり、本編で語られにくいキャラクターの魅力を描いた部分もあるため、クリア中に表示されたものはその都度プレイするとよいだろう。
またクリア後には特典として莉都視点の物語も描かれていることも追記しておく。
※詳しくは下記の莉都√欄参考。

前半に関しては、舞台の状況説明や主人公を含む登場キャラの説明に加えて、後半に向けての伏線などが多く仕込まれた内容になっている。
そうした中にサブヒロイン√が3本ほど用意されているものの、全体的に勢い重視に近い、無理やりシーンを挿入したような違和感を受ける内容となっている。
後半はヒロインたちのシナリオをメインとしつつ、同時に物語自体への真相に迫っていく内容となっており、上記のような不自然さこそないものの、瑠璃√へのつなぎということもあってか、全体的に簡素な印象を受ける。

そうした悪い点があった反面、作中で特に顕著に感じたのは瑠璃の「未来予知」という特殊能力の使い方だろう。
「未来がわかる」という強力な力を持った状態による安心感から一転、その状況を超えられている不可解な謎や巻き起こる多くの事件、そうした状況が伝奇物のシナリオと組み合わされ、エキサイティングに描かれ、そうした展開の数々からは確かな展開力の巧さが感じられる。
またこの能力自体の危うさなどもシナリオのテーマの一つとして挙げられており、瑠璃の心情と共に語られるそうしたシーンもこの作品の評価点の一つといえるだろう。

実質的グランド√ともいえるのが、最終版の瑠璃√。
詳しいことはネタバレになるため伏せるが、物語の真相部分ということもあり、展開自体への驚きや物語自体の完成度を伺わせる内容になっている。
ただ同時に、内部にある真相部分の説明に関しては、詳しく書きたいがゆえに書き手が暴走しているような印象をけることも多かった。
多数の誤字脱字は勿論、説明方法が婉曲的すぎたり分かりにくいものであったりと、整理ができておらずゴチャゴチャとしていた。
この辺りをすっきりさせてくれていると非常に読後感も良かったのだが、物語のある意味根本的部分でテンポが非常に悪くなっていたので、全体的な評価がどうしても振るわない結果となっている。


共通√【 ★★★☆☆ 】  3h
各ヒロイン√へと分岐する階段分岐作品であり、前半では美加、綾、香苗のサブヒロイン√が、後半では透子、未来、鏡花のメインヒロイン√が段階的に攻略可能となり、それらの√を攻略することで、物語の真相が明かされる瑠璃√に進むことが可能。
そういった事情もありシナリオとしては最序盤以外は各ヒロイン√に分類しても良いような部分もあり、そういう意味では内容が薄い。

上記にもあるが、今作では後半部分が物語の真相編として内容としても展開としてもメインとなっている。
そのため他の部分では、伏線中心の展開と展開をつなぐ部分となってしまっており、特に共通ルートに関してはそうした部分が占める割合も多い。
そうした理由もあって、この部分の魅力が相対的に低く見えてしまう。


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八重垣 瑠璃√【 ★★★☆☆ 】  3.5h
主人公の妹。
生まれつき視力がない左目を使い未来を見ることができるが、その代償として大きく体力を消費してしまう。
八重垣の家系は代々そうした未来予知の能力者を輩出しており、瑠璃は次代の後継者として村の皆から尊敬と畏怖を集めている。

個別√ではもちろん今作のメインとなる部分に深く触れられた内容となっており、多くの真相も明かされることとなる。
また中盤から後半にかけての物語の転調はすさまじくドラマチックで、瑠璃の切ない願いや兄の決意、そうした二人の絆を感じさせる物語の運び方はこの作品最大の見どころといえるだろう。
シナリオ自体には関係ないものの、普段は凛とした態度で、その出自からか一般人とは一線を画す雰囲気を感じさせる瑠璃ですが、そんな彼女が溜め込んだ思いを兄の前だけでは発露させる、そうしたシーンにも可愛さが詰まっていました。


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稲田 鏡花√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
主人公の幼馴染で妹の瑠璃に仕えるメイド。
代々『八重垣』の侍従を務めた家に生まれ、幼い頃からそう育てられたため、本人も八重垣に仕えることは使命だと感じている。
特に瑠璃に関しては従者という認識が強く「姫様」として敬っているものの、主人公と二人きりの時などは職務を離れ幼馴染としての一面を見せてくれる。

二人きりの時にポロリと出るお幼馴染としての側面がとてもかわいい鏡花、個別√では深まる伝奇部分と共にそんな彼女の侍従としての思いのようなものが伝わってくる内容にもなっている。
例のごとく恋愛部分は非常に短く、割と勢いで付き合ってしまうところが残念。


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初芝 未来√【 ★★★☆☆ 】  1h
いつも柔らかな笑顔でおっとりとした学園の先輩。
主人公たちが暮らすことになる寮の寮長を務める他、姉の香苗が学園の先生である影響もあってか学園の生徒会長にもなっている。
しかしながら、本人にとっては人に指示する立場にいることは本位ではなく、生徒会活動がない日はもっぱら趣味のオカルト研究会の活動として廃墟巡りなどを敢行している。

個別√では、物語前半部分で取り扱われていた問題をテーマに多くの真相などが明かされるシナリオとなっている。
恋愛描写は例によって少ないが、未来に関してはその優しさによって主人公を受け止めてくれるような母性感じるシーンが多くあるのは特徴といえるだろう。


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西ノ宮 透子√【 ★★★☆☆ 】  1h
新天地で主人公たちを迎えてくれた遠い親戚のクールな先輩。
口数が少なく何を考えているのかわからないところがあり知り合いも少ないが、本人も一人が好きで気にはしていない。
また動物が好きで良く面倒を見ていたり、親しい人間にも思いやりを持って行動したりと、一部の人からは良く慕われている。
彼女の実家である『西ノ宮家』は主人公たちの母親とも繋がりがあり、彼女がいたからこそ今回の入学も認められた背景がある。

物語としては中盤に差し掛かり、さらに多くの謎と少しの真実にぶつかりつつも真相に向けてひた走る部分がメインとなっている。
しかし透子との恋愛描写に関してはかなり短く、Hシーンも「fragment」として追加の3シーンがあるものの、全体的におまけのような印象を受けるものとなっていた。


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西条 美加√【 ★★★☆☆ 】  1h
ヒロインである初芝未来の友人で明るい性格の先輩。
オカルト研究会には所属しないものの、未来に付き合って活動を一緒に行っていたりもする。

未来に会うために寮に顔を出していた彼女。
サブヒロインではあるものの作品前半では彼女にまつわる事件を中心に展開しており、個別√前半部分はそうした部分をメインに描きつつ、一応の決着と共に少しの疑問としこりを残す展開となっていました。
個別後半は重い雰囲気を払しょくする恋愛シーンがメインとなっており、普段のサッパリとした雰囲気から一転、恋愛シーンでは初々しく照れる様子も多く、そうしたギャップが非常に魅力的な子でした。


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中野 綾√【 ★★★☆☆ 】  0.5h
主人公たちと同じクラスの女生徒。
いつも友達に囲まれているような社交的な性格をしている。
主人公たちにもとてもやさしく接してくれるが、それは町で男に絡まれているところを主人公に助けられた、という切っ掛けだけではなく、彼女自身の性質によるものも大きい。

個別√ではやはり物語の真相の多くは謎のままでなんとなくハッピーエンドになっており、綾自体のシナリオに関しては、綾が幼少から抱えていた悩みを描いたものとなっている。
しかしながら、短くシナリオとして特筆すべき点は少ない。


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初芝 香苗√【 ★★★☆☆ 】  0.5h
学園で主人公たちの担任となる女性。
実はメインヒロイン、初芝未来の姉であり、寮生活をしている妹とは違って近くにある実家で生活をしている。
マイペースな妹とは違って、しっかり者の姉という感じで、学園の先生として頼りになるシーンも割と多く描かれていた印象。

個別シナリオはシナリオ的な構造もあり、多くの謎を残したまま展開していくこととなっており、ボリューム自体も短め。
魅力的な年上キャラとして、もう少し堪能したかった所ですが、サブヒロインということなので仕方がない所でしょう。


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莉都√【 ★★★☆☆ 】  3h
同会社の作品「コンチェルトノート」のヒロイン。
正確には彼女の√は存在せず、全ルート攻略後にfragmentにて出現するシナリオにて、彼女の視点から見た今作を描く。
ボリュームは比較的多く、数々の描写から残っていた小さな謎やコンチェルトノートの「その後」の世界などがしっかりと描かれている。


[ 主人公 ]八重垣 悟
瑠璃の双子の兄。
本来は生まれる際に八重垣の巫女である瑠璃の『生贄』となって生まれてこないはずだったが、片腕のみが『生贄』として捧げられ本人は無事に生まれてきた。
その為に瑠璃の能力も不完全なものとなり、そうした背景もあり故郷では本家でありながら迫害に近い扱いを受けていた。
そうした逆光の中に生まれても他人を恨むことをほとんどせず、自身の努力にて回りを変えていこうとするポジティブな考え方の持ち主。
生まれつき無い片腕の代わりに高機能な義手をもち、それを操ることで時に常人以上の運動能力を発揮することもできる。


【推奨攻略順 : 香苗→綾→美加→透子→未来→鏡花→瑠璃→莉都 】
階段分岐作品であるため、下記のような大まかな攻略順がある。
(美加、綾、香苗)→(透子、未来、鏡花)→瑠璃→莉都。


CG
しっかりとした線質に淡い塗の絵。
全体的にふんわりとした印象を受ける絵で、時折バランスに気になるところはあるものの総じて美麗といえる。
枚数に関しても十二分に用意されており、センターヒロインである瑠璃を筆頭に特にメインヒロイン4人のCGの枚数が特に多くなっている。
SD絵も多数存在している。


音楽
BGM25曲、Vo曲3曲という構成。
伝奇物作品ということもあって、BGMの多くはそうした雰囲気に合わせた暗め・緊迫感のあるものが目立つ。
その中でも瑠璃のキャラクター的にハイソな雰囲気を感じる『瑠璃色の空』などを代表とする静かな曲もいい味を出している。
Vo曲では「Valuable eyes」が作中の演出もあって個人的な評価が高い。
多くはネタバレになるため語らないこととする。


お勧め度
あっぷりけの伝奇物をテーマにした作品。
前半部分こそ勢いに欠けるが、瑠璃の特殊能力『未来予知』を活かしたシナリオの展開はなかなかに巧く、また後半からの展開の盛り上がりが良い作品となっている。
反面、誤字脱字や不必要に難解な言い回しなどを含めて、読み下しにくい部分もあることや設定等に全体的な粗さが目立つ部分も。
また、今までの記述でもあったが同会社の作品「コンチェルトノート」に関しては非常に深くかかわる作品となっている。
プレイしていなくても作品を楽しむことは十分にできるが、できれば先にプレイを推奨しておきたい。


総合評価
伝奇物としては安定しており、特に展開自体に見どころが多くあるものの、同時に粗が目立つ部分もあり、評価としては非常に抑えめとなっている。


【ぶっちゃけコーナー】
展開自体は褒めていたりするのだけれど、全体的に評価が低い説明をしておきたい。
もちろん、作品自体に結構な驚きはあったんだが、伝奇物としては安定した内容で、そうした部分にすごい驚きがあったわけではないということ。
また上記でも少し語っているが、理論説明部分が非常に『ダレ』ていた。
この辺りは書き手が頭の中で作っているものを綺麗に出力できていないのが原因なのだと思うが、やっぱ璃それは表現者として問題といわざるを得ないだろう。
作品の最大の魅力ともなる部分なので、厳しめの評価となってしまっている。
また、物語の形として階段分岐は好きなんだけど、瑠璃以外のヒロイン達がかわいそうに感じるくらい粗雑に扱われていた。
各キャラの感想なんかを書くことがあるんだけど、本当に描くことを迷ってしまうくらいおまけに感じる恋愛描写。
fragmentを利用した手抜きのHシーン…ここまでヒロイン増やすのつらかったなら、最初から作らないほうが完成度が高くなるのでは? と思ってしまう。
あとは個人的にクロスコンチェルトとコンチェルトノートの繋がりについても、アフターを舞台にしているだけでそこまで密接でなかった事に残念さを感じている。
出てきたこと自体に嬉しさや懐かしさがあるのだけれど、そこからの発展がなかったのは悲しい所。