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タイトル : 言の葉舞い散る夏の風鈴(こえ)
ブランド : シルキーズプラス DOLCE


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★☆ [4/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]

キャラクター・シナリオ
新設の「声優部」を舞台として、声豚の主人公を始めとした個性豊かな登場人物たちが、部活を通して成長する様子を描いた青春学園ラブコメディ作品。

古き良きオーソドックスな始まり方をする今作は、テキストにおいても表現が簡潔でありスッキリとしているので読みやすい。
舞台となる『声優部』からわかるように、声で活動する部活動をテーマにした少々異質ともいえる設定ではあるが、そうした影響もあってプレイしていて戸惑うことはない。

今作では全編を通して、キャラクターの「成長」というものが特に重要なファクターとして扱われている。
恋愛シーンにおいても、それ以外のシーンにおいても、物語が進むにつれて変化してゆくキャラクター達の心の動きが非常に丁寧に描写されており、この「言夏」という世界へ読み手を引き込む効果的な役割を果たしている。
登場するキャラクター達と一緒に笑い、そして時には挫折し、最後には勇気を持って立ち上がる――作品をプレイすることで王道の青春物語を追体験できる、そうした流れをしっかりとなぞっているからこそ、本作における重要なシーンに心動かされ、感動で泣けるシーンが確かなものとして存在している。

上記に述べたような、感情を丁寧に描写したシナリオもこの作品の大きな魅力の一つだが、この作品の最大の魅力は作品のテーマにもなっている「声」だろう。
特に今作では、各キャラクターボイス担当の声優さんが非常に高いレベルの熱演をされており、各シーンでの神業的な演じ分けは、声優自体に興味がない人であっても度肝を抜かれるほどの迫力がある。
特にキャラクターの成長、という面においてはこの声無くしては表現しえなかった部分が大いにある事はしっかりと明記しておきたい。
シナリオだけではなく、そうした声優の熱演や作品自体の演出があってこそ、この作品の感動シーンにつながったといっても過言ではないだろう。

ラブコメディ作品というだけあってギャグパートについても高く評価できるものになっている。特に作品の設定を活かしたシチュエーションのものが印象的で、主人公の声が付いたエチュードのシーンはお腹を抱えて笑いたくなるほど秀逸で、こちらも高く評価した。

シナリオにおいて強いて欠点を言うなら、物語を俯瞰的に見た時の起伏の無さである。
現実的に冷静に物語を見た時に、この作品に起きる物語は少し事件性が薄く、どうしても興奮しにくい展開が多くなっている。
繊細な心の変化に重きを置いた作品だからこその弱点なので、仕方がない所ではあるものの、作品をプレイした人によっては評価が大きく変わる可能性もある。
また、誤字等を見る部分が多かった事も、少しだけ気になる所として追記しておく。

最後になったが、各ルートで扱うテーマは違うものの、繰り返す練習の中で伝えたい「声優」という仕事について、「自身と向き合うこと」の大切さ、その主張をブレることなく、作品自体に落とし込んで表現しえた事に最大の賛辞を送りたい。


共通√【 ★★★★☆ 】  3-4h
主人公の入学から、「学生声優グランプリ」へにむけて挑戦するところを描いている。

シナリオの分量はそこまで多くないが、サクサク読める文章なのでテンポよく話が進み、描かれた日数としては短いのだが、その中にも部の立ち上げや声優コンテストといったイベントが詰め込まれ、しっかりと中身が詰まっている。
中盤では泣きシーンなども存在しており、声優という特殊な部活をテーマにした作品だからこそ描けるギャグシーン、盛り上がるシーンも用意されている。
しっかり青春ラブコメディの導入部分の役割を果たしつつも、言夏の世界観にどんどん引き込むようなその内容を高く評価したい。


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真額 詞葉√【 EX!!-- 】  4h
CV : 桜川未央
大人気のプロの声優「日華こころ」として活動しているクラスメイト。
顔出しNGではあったがの、主人公に正体がバレてからは、主人公を声豚となじったりとからかってはそのやり取りを楽しんでいる様子。
演技はプロということもあり天才的なのだが、教えるのはうまくない。
仕事のせいで主人公と同じく1度留年している。

3キャラ攻略後に『真夏の卒業式』という形で√が出現し、誰とも付き合わずに全√を経た後の話という設定から話がスタートしている。
恋愛描写においては、詞葉がいつものように主人公をからかう、その中に少しの甘えを感じることができるシーンがあり、物語が進行するごとに近くなる主人公との距離やその感情の変化を丁寧に描き出していた。

個別√のテーマとなるのはもちろん詞葉のプロ声優として「再起」なのだが、同時に√タイトルにある「卒業」も物語に絡められている。
今までの全ヒロイン√を下地としたシナリオは部活をテーマとした青春学園物ならではの感動的なシナリオとなっており、複数の泣きシーンが存在している。
「声優」という仕事への情熱やその大変さを感じると同時に、甘酸っぱくも煌めくような青春の一ページがそこにある、そう感じさせる√となっている。


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野原 ゆう√【 ★★★★☆ 】  3h
CV : 遥そら
声優に強い憧れを抱く、あがり症の1年生。
基本的に控えめで、人前に立つと緊張からテンパる事も多いが、声優関係の事となると意外と押しが強く、一直線に向かってゆく行動力もある。
演じる事自体は好きだが、いつも一人で練習していたために棒読み。

ゆう√では、素人同然だった彼女が「声優のプロ」を目指すために頑張ってゆく、そんな「成長」をテーマにしたスタンダードな青春ストーリーとなっている。遥そらさんの見事な演じ分けの効果もあり、挫折を経験しながらも成長する王道ストーリーは感動必須。
もちろん、恋愛描写においても「野原ゆう」というキャラクターを活かし、本筋のシナリオに上手に絡めつつ、むっつりな所やおねだりの可愛いさという新しい魅力についても見せつけてくれていた。


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菩提樹 仰子√【 ★★★★☆ 】  3h
CV : くすはらゆい
2度も留年をしている、のんびりマイペースな世間知らずのお嬢様。
おっとりとした性格をしているが意外と頑固なところもあり、2年前に演劇部のオーディションに落ちた悔しさから『声優同好会』を立ち上げた。
しかし二年間の努力の甲斐もなく、縁起は完全な大根役者のまま。

仰子が主演を務めることになった「一花、行きます」の話を中心に進んでいく個別√。
恋愛描写においては、天然お嬢様である仰子にしか出せない独特の空気感や、無邪気に好意を示してくれるその姿が非常に魅力的で、特に主人公とのゆったりとした言葉のやり取りは見ていて心地も良い。
そして終盤のシーンも感動的で、声優というテーマを活かしつつ「友情」という青春要素をギュッと詰めた、多くの人が涙腺を破壊されるだろうシナリオになっている。
ある意味でくすはらゆいさんの新しい可能性を見た、そんな√になっている。


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百花 奏√【 ★★★★☆ 】  3h
CV秋野花
ひかえめな性格の車椅子少女。
主人公とは元々知り合いで先輩と後輩の関係だったが、今はクラスメイト。
生まれつき足が悪く、インドアな趣味を主に嗜んではいるが2次元の話題には疎い。
演技に関しては、初めて出場した声優コンテストで受賞するほどの天才肌。

個別√では「夢への一歩」を練習する中で奏が自分と向き合ってゆく事になる。
恋愛描写においては彼女の身体の事もあり、いつも控えめな後輩ポジションとして密かに主人公の事を慕う姿勢を崩すことはなく、他にはない魅力を存分に発揮している。

一方、奏での身体の事を重要なテーマとしているシナリオなのだが、それ以上に「声優の仕事」というものに対しての考え方等も深く絡ませた内容になっており、その道のプロであった詞葉を絡めたシナリオは、演出も相まりラストシーンで見事爆発してくれる。
共通ルートでも泣かしてくれた奏だけに、個別√の期待値も高かったが見事にその期待に応えた非常に良い内容となっている。


[ 主人公 ]波瀬 督
親の都合により1年間の留年を余儀なくされた少年。
二次元が大好きで、特に声優に関しては並々ならぬ情熱を傾けている、自他ともに認める声豚で「日華こころ」の大ファンでもある。
『駄目絶対音感』の持ち主でもあり、声優の声を聞き分けたり、高精度の脳内再生能力などがあり、作中では音監として動くことが多い。

ちなみに全編で演技時のみ声があり、声が出たときはギャグシーンとして秀逸


【推奨攻略順 : 仰子→ゆう→奏→詞葉 】
詞葉√以外は攻略順が自由であるが、とあるシーンの為にもこの順番で攻略することを推奨したい。


CG
細い線、淡い塗りの絵。
枚数自体は一般的な量数であり、質も全体的に安定している。
凄まじく美麗というわけではないのだが、しっかりと締めるべきところでイベントCGが用意されているために見入ってしまう事も多い。
背景の一部に実写のようなものがあったりと、その点だけバランスを考えると欠点と言えるところもある。


音楽
BGM25曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
OP「言の葉舞い散る夏の風鈴」は薬師るりさんが歌う、清涼感のある良曲で、一方のBGMは全体的にあまり存在を主張しない穏やかな曲調のものが多い。
しかしその中でも「感動」や「友情」、「卒業」といったBGMはシナリオの陰で声優の演技の邪魔することなく、しっかりとした感動できる場面演出をしていた。

お勧め度
「声優部」を舞台に繰り広げられる青春学園ラブコメディ作品。
「声」をテーマとした作品だけあって、登場するキャラクター(声優さん)たちの熱演はこの作品の最大の魅力と言える。
また王道ともいえる多くの人から愛される青春のストーリーは平凡な面もありつつ、その中で煌めく一瞬の輝きを良く描いた感動できる作品となっている。
声優が好きな人だけではなく、あまりこうしたゲームに触れてこなかった人にこそ強くお勧めしたい作品ではあるものの、アペイリアのイメージから来ると大きく印象が違うのでその事にだけ注意する事。


総合評価
部活を青春学園物の中では全ルートにおいてシナリオの質が良く、声優さんたちの演技との相乗効果もあり、名作と呼んでも問題ないレベルの作品となっているためこの評価。


【ぶっちゃけコーナー】
今作は正直好き嫌いの別れる作品なのかな、と思った。
個人的にはかなり押したい作品なのだが、それは私自身のプレイ状況や好みによるものが大きいようにも思う。(※感想というのは元来そういうものだが)
一つは、この作品は世界観にどっぷりと嵌れるかどうかで大きく評価が分かれる。
上記でも語ったが、物語として俯瞰的に見た時にこの作品は全然物語が大きく動いておらず、人によっては起承転結がない…という人までいるのではないだろうか。
ただ、こういうと語弊が起きそうであるが、この作品はどれだけ登場するキャラクターの心に寄り添えたかによって感動するレベルが変わってくる。
プレイしていて、詞葉の「声豚」と罵る声に次第に愛情が含まれるようになっていったり、自信がない ゆう がそれでも最初に声をかけるシーンから成長や仲間への想いを感じたり…全てを通してどっぷりとプレイした人間にだけしかわからないであろう、この作品の魅力はたくさんあるのだけれど、それは万人共通のものではない。
結局、作品として評するには「王道の青春学園物」と言うしかないのが悔しい所。
個人的な評価としては、感動させる要素は十分あるとして高い評価をしたものの、そうした感想を受けず無い人もいるだろう、そうした印象の差を避けるためにも、今作では体験版のプレイを推奨したい。
もしも体験版で感動しそうになったのなら、その人にとってこの作品はその後も大きく感動できる作品になるだろう。
逆に、まったく感じられなかったのならばあまり感動できない可能性も高い。
部活動を通した青春シーンや魅力的なキャラクター達との恋愛シーン、主人公の捧腹絶倒のギャグシーンなど、言葉を重ね、熱い思いで誰にでも推しておきたい部分はたくさんあるのだが、結局体験版をやってしまうのが速いのだろうね。