a9ff5f08.jpg
タイトル : アメイジング・グレイス
ブランド : きゃべつそふと


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★★ [5/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]

キャラクター・シナリオ
ある日行き倒れていた主人公のシュウはユネという少女に助けられ、"オーロラ"という謎の高い壁に囲まれた閉ざされた"町"で目を覚ました。
そんな現代とは少し趣の違う場所を舞台に記憶を失ったシュウがアレイア学院に通う芸術を志す少年少女たちと交流していく日常を描く。

この作品のシナリオ部分に関して語るのだが、これほどまでに『ネタバレ』を避けて魅力を語るのが難しい作品はないだろう。
言い訳にはなるが、もしも分かりにくくなっていたとしても、そこはご了承を願いたい。

閉じられた世界という特殊な舞台、特に『芸術』や『聖書』をテーマとして扱うシナリオは非常に珍しいタイプであることは言うまでもないだろう。
そのあたりの説明について、分かりやすさを重視したためなのか、序盤は飽きさえ感る退屈な展開が多いのだが、ある場面を迎えてからは一気に物語を展開させている。

改めて、全編を通して鑑みるとこの作品は非常に精緻に考えられて組み立てられている。
張り巡らされる伏線、組み合わされるシーンの数々といったテキスト部分だけではなく全ての部分でその演出を補助していたことは高評価になっている。

評価したい部分の一つとして挙げられるのは登場キャラクター達だろう。
どんなゲームでもある程度省くことが可能なキャラクターというのは存在しうるが、このゲームでは登場するすべてのキャラクターにおいて、なにかの"意味"が与えてられており、誰か一人が欠けてもこのシナリオ、この作品が完成することはない、というのは他の作品では見られない魅力の一つだろう。
だからこそ個別√における選択の重みが非常に重く、それらが後からわかるという構図もこの作品ならではの魅力と言えるだろう。

最後に泣きシーンについて。
上記で熱く語ったように、シナリオゲーと言えるこの作品だが、泣きシーンももちろん存在している。
ここに関してはネタバレを含むため多くは語らないが、この作品だからこそあの演出が使えるのであり、あの演出だからこそあのシーンが輝くと言える。
正直未プレイの人間には何の事だかわからないだろうが、この部分だけは入れておきたい。

追記として、全キャラ攻略後にアフターストーリーが出現する。
これは本編における各ヒロイン√がシナリオの構造上かなり短くせざるを得ない状況から、そのヒロイン√の補填として作られている印象がある。
共通ルートに比べるとイチャラブメインなので、そこまで特筆すべきところもないのだか、基本的に明るく読後感の良い状態のものでまとまっているイメージが多い。


共通√【 EX!!-- 】  10-15h
各ヒロインルートや通常ED等が分岐していくツリー型をとっているため、この共通ルートは作品の根幹ともいえるメインシナリオ部分といえる。

序盤は基本的にはゆったりとした優しい日常シーンを主軸としながらも、特殊な設定や舞台背景の説明を行っている。
ギャグ等も結構あるのだが、割とスロースタートな盛り上がりの無い内容になっているのだが、、"とある事件"を切っ掛けとして物語の雰囲気はもちろん、作品自体の面白さも跳ね上がる様になっている。
物語の各所で登場する謎や展開されてゆく伏線はプレイしている人を一気にアメグレの世界へと引き込み、先の展開を期待する自分がいるはず。

公式ストーリーでも発表されているためここで明かしてしまうが、この作品はタイムリーム物である。
そして、その本領が発揮されるのが物語の後半。
今まで張り巡らされていた伏線の数々はもちろん、気づかぬように張られていた伏線の存在、そしてそれらから明らかになる真実は鳥肌物。
これらは非常にテキストとしてもシナリオとしても巧く表現されており、近年稀に見る高クオリティなシナリオゲーといえるだろう、

前半と後半で大きなギャップがあるものの、総じての完成度が非常に高く、最終的には誰しもが熱中できる所以がここにある。


748da609.png
ユネ√【 ★★★☆☆ 】  1-2h
行き倒れていた倒れていたシュウを見つけ、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた少女。
優しくて面倒見がよく、シュウが目覚めたその後も主人公と行動し、"町"についての様々な事を教えてくれていた。
専攻は音楽なのだが他に専攻している人がおらず、少し悩んでいる。

全編を通して感じた彼女の印象はまさしく「慈愛」の少女。
自身よりも他人を迷わず優先できる、そんなユネは本当に心優しい少女であり、その印象は最初から最後まで一貫して変わる事がなく、彼女の最大の魅力である。
余談だが、性知識が全くなくキスで子供ができると思っているようなレベルなので、そのあたりの主人公とのやり取りは可愛いので必見。


5ce4f8c6.png
キリエ√【 ★★★☆☆ 】  1-2h
ユネと同じリンゴ組の力強くて元気な唯我独尊少女。
しゃべり方が少し男っぽく、朝の礼拝をサボったりとアウトローなところもある為か、外から来たというシュウ相手でも気軽に会話をする。
"爆破"を好む彼女の専攻は映画であり、シュウを次回作の主演にしたいと目論む。

恋愛とかけ離れた性格のキリエ、そんな彼女だが恋愛シーンにおいては意外と純情で、素直に感情を示してくれる部分は彼女ならではの魅力。
そして「自分の思うまま素直に生きる」というのは一つの魅力として成り立つ、ということを彼女はシナリオ全編を通して感じさせる存在でもあった。


a358f524.png
コトハ√【 ★★★☆☆ 】  1-2h
清楚でお淑やかな先輩で、専攻する油彩画は学院でもトップの才能を持つ。
その容姿もあって学院内では多くのあこがれを得ているが、意外と朝が弱くキリエに起こしてもらっていたりする意外な所も。
また芸術の為に主人公をヌードモデルにしようとする悪癖を持つ。

彼女に関しては、何よりも注目したいのはその母性だろう。
ユネとは別ベクトルの包み込むような優しさは彼女の紛れもない魅力であり、プレイ中盤でのシーンで心を大きく動かされる人は少なくないはず。
あと意外にエロく、そのあたりの描写が書かれているシーンは面白くもあり、彼女の印象をガラリと変えてくれる所でもあるので注目しておきたい。


cce2df22.png
サクヤ√【 ★★★☆☆ 】  1-2h
シュウ達の1年後輩であり、服飾を専攻する少女。
その実力は確かであり頼めばどんな服でも作ってくれるほど
ユネと仲が良く、結果としてシュウとも行動することが多くなる。基本的に引っ込み思案なのだが、なぜかシュウには少しだけ懐いている様子。

彼女についてはシナリオを進めている上で、一番好感度と印象が乱高下、及び錯綜したキャラクターと言えるだろう。
しかしながら、慕ってくれる後輩キャラクターというポジションは彼女以外におらず、その純粋なまでの想いと行動には心動かされる人も多かったはず。


[ 主人公 ]シュウ
オンネトーという湖の前に倒れていたところをユネに発見された。
オーロラの"外"からやって来たという事以外はほとんどの記憶を失っており、アレイア学院の生徒として入学し、過ごしてゆくこととなる。


【推奨攻略順 : キリエ→コトハ→サクヤ→ユネ 】
主軸の√に対して各ヒロインが分岐していく形をとるため、基本的には流れに身を任せればよいのだが、攻略順を迷うのなら上記を参考にしておくとよい。


CG
細目の線淡い色でのっぺりとした塗りの絵。
質に関しては、数が少ないもののバランス等がおかしいCGも見られ、最近の製品と比較してもそこまで高くない。
しかしながら、枚数に関しては十分量あり、また要所要所の重要なシーンのCGは完成度も高いため基本的に気にならないはず。


音楽
BGM20曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
Vo曲で印象的なのはやはり『ave;new』のコールドボイスだろう。
佐倉紗織さんの特徴的な高音は健在で、また音だけではなくクリア後に歌詞を聞くとまた一味違った風に聞こえるのも魅力の一つ。
BGMでは既存曲やそれをアレンジしたものもいくつか含んでいるのだが、その中でエピローグ部分等でよく使われた「ライトフルワールド」は、明るいリズムに身を任せて聞いているとプラス思考になれるような、そんな力強さも感じる良曲。


お勧め度
同社の前作をプレイして忌避感を覚えている人は一切の考えを改めるべきだろう。
今作は全く違った設定である上、シナリオの質に関しては異次元のクオリティといえ、散りばめられた伏線の綺麗さは誰しもが称賛の言葉を残している。
シナリオ重視の人、泣きゲーが好きな人は初心者から玄人まで誰にでもプレイしてほしい、今年イチオシの作品と言える。
ただし、プレイするにあたって注意してほしいのがネタバレである。
この作品の魅力ともいえるネタ部分は分かってしまうと楽しさが半減するため、(それでも素晴らしいのだが)公式からも発表のある「タイムリープ物」という情報以外はあまり情報を仕入れないでプレイすることが望ましい。


総合評価
シナリオ部分の評価が非常に高く、他の部分で加点があればさらにワンランク上の評価を与えていたことは言うまでもないだろう。
名作と言って過言ではないレベルの作品。


【ぶっちゃけコーナー】
この部分に関してもネタバレはないので安心して読んでほしい。
正直、シナリオゲーとしての魅力はネタバレをしない限り十二分に語ることができない。
私から言えるのは、この作品についてネタバレを受けるとまったく楽しくなくなる…とまではいわないが、少なくとも魅力の半減する作品である。
その部分に気を付けてプレイをしてほしい。
個人的に語りたいのは、泣きゲーとしてこの作品について。
やっぱり、あのシーンであの演出はもうズルイとしか言えないわ、彼女の心情を考えるともうボロボロに泣くほかに選択肢がなさすぎる…。
言うまでもなくあの演出をあの場面"のみ"で行ったという、その事実、そして技巧を考えた人間は最高のエンターテイナーであることは言うまでもないな。
ぜひ"ED"まで余すところなく、楽しんでほしい。