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タイトル : みにくいモジカの子
ブランド : NitroPlus


シナリオ : ★★★☆☆ [3/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★☆☆ [3/5]
お勧め度 : ★★★☆☆ [3/5]
総合評価 : ★★★☆☆ [3/5]


キャラクター・シナリオ
シコ男(醜男)と揶揄され、学園内で虐められる日々。
とある放課後、同じくクラスで虐めに遭っているみゆに校舎裏に呼び出されることでそんな日々は終わりを告げる。
誰にも秘密にしていた能力――顔を見れば相手の感情がわかる『モジカ』――この力を使って世界一醜い復讐劇を始める。

主人公のモノローグ中心で進んでゆくダークストーリー。
あまりにも凄惨な学園を舞台として行われるいじめの風景、能力の関係で足元だけを移すカメラワーク、主人公の顔を見た時の人々の感情…そのどれもが演出としては完成の域に達しており、一つの世界観を作り上げている。
特に印象的なのが選択肢であり、今作では行動を選ぶ選択肢は一切なく、とある場面において『顔をあげるか否か』、言い換えると『モジカを使うか否か』の選択を迫られる。
ただしその演出のために、もっさりとした動作になっているため、なかなか進まないテキストにイライラを感じる人もいるだろう。

シナリオは5割くらいがエロシーンで構成されており、その他はモノローグが多くを占めている。他にモジカの力もあってか、登場人物の心理は非常にわかりやすいが、文章については短文や、単語の繰り返しが多く武骨で非常にクセがある。
また、シナリオとしてかなり救いが無いために途中で心が折れる人もいるかもしれない。


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双葉 みゆ√【 ★★★☆☆ 】  3-4h
主人公と同じクラスの女の子。
九鬼のグループに所属しているものの、引っ込み思案で優柔不断なその性格をからかわれており、主に九鬼を筆頭として主に女子からのイジメに遭っている。

シナリオ分岐にて素直に行動するとたどり着く彼女の個別√は約4時間ほどの長さとなっており、作品自体の雰囲気などを掴むための話となっている。
作品の約7割くらいがエロシーン関連なのだが、その中でも物語はしっかりと展開しており、同じいじめられっ子である主人公に対していつも優しい言葉を投げかけてくれたみゆ、その彼女が抱える2面性を作品の根幹にある『復讐』というテーマと主人公の『モジカ』という能力によって描き出している。
評価はともかく、猟奇的でダークな話なため、BADENDと言われても否めないのは確か。


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四月一日 胡頽子√【 ★★★☆☆ 】  2-3h
主人公とは別のクラスで、目立たないオタク系の女子。
しかしPCにはめっぽう強く、フィルタリング機能のついた学園のタブレットを改造したりしている。

個別√はみゆと『復讐』を行わなかった場合の展開で、話の中心は学園の問題から胡頽子の抱える『欲望』というテーマにシフトしてゆく。
人が誰しも心の奥に抱える欲を解放させてゆく、何とも言えない感情を18禁だからこそできるテキストに乗せて表現した…と言えば聞こえがいいが、ザックリいうとドMの調教過程であり、基本的にBADENDのようなものでもある。


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九鬼 綺羅々√【 ★★★☆☆ 】  1-2h
主人公と同じクラスの女生徒で主人公やみゆを虐めている。
地元で有名なヤクザ一家の娘であるため、教師すらも言いなりに出来るほどの権力を持っており、クラス内でもリーダー的存在。

個別√は九鬼への復讐に固執した√であり、テーマとなるのはもちろん復讐なのだが、その根本にあるのは『虚構の愛』。
妄執のように愛しき人の名を唱え続ける九鬼の心を折る為に主人公がとる行動は現実を崩壊させ、理性を破壊してゆく。
いうまでもなく、他の√よりもさらに痛々しいBADEND√である。


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花 椿√【 ★★★☆☆ 】  1-2h
色白で感情を表に出すことのない女生徒。
神社で巫女として働いているらしいが、主人公のクラスとはかかわりはない。

みゆの告白に端を発する一連の流れを前半とするなら、彼女は後半にならないと姿すら出てこないキャラクターの一人であり、作品転換のキーパーソンともいえる。
そんな彼女の個別√では町の創立にも関わる物語のさらに奥、シナリオの中枢の話に関わるようになってくる。
感情を出さない彼女と、主人公の持つ「モジカ」という能力それらが絡み合い紡がれるシナリオは物語に一つの終焉のカタチとなっている。


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許斐 鳴子(TRUE)√【 ★★★☆☆ 】  2-3h
主人公の通う学園の生徒会長であり皆の手本となる様な優等生。
父親は有名政治家で、学園の名誉学園長でもある。

個別√ではあるもののTRUE√でもある鳴子のシナリオでは、主人公の過去を含めシナリオの中心的なことが判明する話となっている。
ただ後半はシナリオというよりも演出にこだわっており、話そのものは置いてきているような展開となっている。
他の√にくらべて明らかに違うEDであり、これも一つの話の終わりではあるものの、これをTRUEとして作品を消化できるかは謎。


[ 主人公 ]種崎 捨
醜い顔の男、その容姿からいつも虐められている。
人の顔を見ると相手の感情が分かる『モジカ』という能力を持つ。
しかし、その能力の為いつも下を向いて生きている。


【推奨攻略順 : みゆ→胡頽子→綺羅々→椿→鳴子(TRUE) 】
攻略する際に特にロック等はないが、ストーリー的にはこの順番が望ましい


CG
しっかりとしつつも細い線と淡い塗りの絵。
全体的に完成度は高く、足元中心のカメラワークのため、立ち絵などは存在しないが代わりに周囲の物の絵が多く使われているのが特徴。
なお、一部にはに流血等のグロCGも数枚含まれている。


音楽
BGM15曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
作風に合わせて暗めの曲が多いのが特徴的で、明るい曲は「風来」のテーマ(?)曲でもある「踊」くらいだろうか…。
OPの「憐」を歌うのはayumiさん(EDも担当しているが)で、気だるげに、囁くように歌われるこの曲はかなり作品に合致している。


お勧め度
ダークな世界観で人間の醜さを描いた刺激の強い作品で、一見すると心情描写などが多く、シナリオ重視のようにも見えるが演出重視の作品。
グロい表現やCGなども多く存在しているほか、序盤から中盤は調教(?)やエロシーンをつないだようなシナリオ構成になっていることに注意が必要で、はっきりとしたカタルシスが最後にあるわけでもなく、万人に受ける作品でないことは確か。

Getchu.comで購入

総合評価
演出もあり印象には非常に強く残る作品だが、シナリオの観点から見ると平凡な評価。


【ぶっちゃけコーナー】
これ言っちゃうとなんか言い訳っぽいけど、これまた評価しにくい作品だよな。
驚いたのはやっぱり演出だろうか。
こればっかりは最高峰っていってもいいくらい、世界観が作りこまれていることを感じた。
相手の感情がわかるという能力の表現方法としては非常に効果的。
足元中人のカメラワークも面白かったし、だからこそ選択肢における顔を上げるか否かみたいなのも面白かった。
ヒロインの顔がほとんど見えない作品ってのはかなり新しいよな。
色々あるんだけどやっぱり論点はシナリオだろうか。
ここまで下地がそろってるんだけど、結局結構シナリオは薄いんだよな。
…いやいや、色々と衝撃的なシーンはあるんだけれども、その奥の「何を伝えたいか」みたいな部分がまだ薄い気がする…。
というか最後は投げっぱなしジャーマンみたいな感じで、読み手が満足していないのに勝手にさくっと終わらせられた感じがするしなぁ…。
18禁だからこそ描ける世界観や展開、そこから来る強烈なメッセージ性、それは確かにあるのだけれど、だからこそそれに見合うシナリオがほしかったのかも…。
言ってしまえばほぼエロシーンのつなぎにしかシナリオ成分が入ってなかったしな…。
考察すればそりゃ色々と思うこともあるのかもしれないが、現状だとただのびっくりバコみたいな作品に感じてしまう。
だからこそ心動かされるような”中身”がほしかったのかもしれない。