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タイトル : 君と目覚める幾つかの方法
ブランド : Navel


シナリオ : ★★★★☆ [4/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : -
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★☆ [4/5]


キャラクター・シナリオ

失いたくないモノ、失ってはじめてわかるコト

『つり乙』シリーズ以来初のNavel作品である今作。
舞台は近未来、AIを搭載し、見た目も人と見まごうばかりのアンドロイド――『オートマタ』が一般的になり始めた世界のお話。
主人公はオートマタの整備士であり、店の前で両足を失った少女を拾ったことからとある事件に巻き込まれてゆく。

Navelの良さであるテンポのいいギャグシーンは特に人の多い序盤で特に発揮され、にぎやかな日常にギャグという癒しがあることで、テンポよく物語を進めることができるようになっている。
ただ、今作ではモノローグ中心のシーンも多くなっており、扱うイベントの性質もあってか比較的暗い雰囲気のシーンが多い。
特に『悪意』というものに関しては今まで以上に描写や演出が上手になっており、悪意の気持ち悪い面や不可解な面を非常に良く描き出していた。
ギャグシーンの『陽』の部分とそういった『陰』の部分の対比がうまくとれており、作品としての緩急がある良い作品になっていたように思う。

この作品の魅力として他に挙げられる、ヒロイン達だけではなく登場するサブキャラクターの多彩さだろう。
作品テーマに関連している『アイル』や『マキノ』といった重要なオートマタだけではなく『伊奈モータース』に出入りする面々がギャグシーン要員という意味だけではなくシナリオ自体にも大きく貢献していたというのが印象的。
だからこそ、各キャラクター√が短く、ヒロイン達の話を描き切れていない印象があったのはこの作品の最大の欠点ともいえる部分であろう。

また、これに関しては微妙に好き嫌いも出そうではあるものの、シナリオ終盤のどんでん返しも作品の特徴の一つとして挙げられる。
この辺りに関しては『今までの作品以上に良く使われていた』という言葉を使わせてもらうが、そう思えるほど少々安易な使い方をしていたように思う。もちろん、展開として燃えるところがあったのは否定しない。


共通√【 ★★★★★  7-8h
初音が店の前で発見されてから、一連の事件の解決までが描かれている。
前半は暗めなシナリオ進行となっており、これは序盤に限ったことではないのだが、初音の悲しすぎる境遇とそれに相対する彼女の気高き優しさを感じられるシーンでは思わず泣いてしまいそうになる。
後半にかけては、意外な真実が発覚するほか、サスペンス物とまでは言えないものの、スカッとするような怒涛の展開であり、全体的に緩急がある非常に良いシナリオだったと言える。

序盤は比較的登場キャラが多く会話中心の物語展開で、各キャラクターの個性を把握しつつ、テンポよく物語を進めることができ、同時に『オートマタ』を代表とした今作の舞台に必要となる知識についても分かりやすく説明を入れていたあたりは評価したい。

なお全キャラクリア後に最終章が追加される。
短くはあるものの今までの伏線回収が見事に行われ、その展開自体も共通ルートに負けず劣らずの手に汗を握るものとなっている。
終盤の展開のみが少し違っており、各キャラの2ndEDとなっている。


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八雲 舞花√【 ★★★☆☆ 】  1.5+h
宗介の幼馴染で、警察官。
さっぱりした性格で運動神経のよいスポーツマンだが、推理小説も好きで、探偵に憧れて現在の職業に就いた。
現在のsy族はオートマタを使用した犯罪を防ぐ『人形課』であるが、極度の機械音痴であるため、専門家である宗介に頼ることが多い。

警察に協力することで個別√へと展開していく。
新キャラクターなども加えつつ、秋葉原で起きる事件の謎を追ってゆくことになる√で『オートマタ』という存在、AIについて考えさせるような内容になっている。
舞花は長年一緒にいる家族のような安心感が魅力のキャラクターだが、個別√においてはセリフの一つ一つがより等身大になり可愛く感じられるシーンも多くなっているのが特徴だろう。


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京橋 みこと√【 ★★★★☆ 】  1.5h
宗介の幼馴染で義肢装具士として動力技師の製作を行っている。
つねに飄々とした態度でつかみどころがなく、気まぐれで悪戯をしたりと破天荒な人物。
その為に本心が分かりにくくはあるものの、初音を気にかけたりと面倒見がよく、優しい一面もある。
相棒のオートマタ『あかさかくん』は彼女とは正反対の真面目な男の子。

彼女に協力することで個別√へ。
みことに関しては共通√のネタバレに関わる部分があり詳しく解説できないものの、いつも本心を隠すみことの主人公への想いや彼女自身の考えなどが明かされる√となっており、彼女の相棒である『あかさかくん』も巻き込んだ展開となっている。
特に最終章後のエピローグシーンでは彼女の内面に深く踏み込んでおり、みことに対しての評価を変える人もいるはず。


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枚方 初音√【 ★★★☆☆ 】  1.5h
伊奈モータースの店先に倒れていた謎の少女。
両親の借金が理由で両足を売ることになった壮絶な過去をもっており、その傷は彼女の心に大きく影を落としている。
遠慮がちで常におびえているような少女だったが、『伊奈モータース』で過ごす日々によって少しずつ本来の明るい性格を取り返しつつある。

初音に対して感じる最初の感情はおそらく保護欲であり、誰しもが『幸せになってほしい』と願ってしまうような純粋な存在である。
だからこそ奪われてしまった現実に涙した共通ルートであったが、個別√においては少しずつ幸せな日々を積み重ねていく様子が描かれており、悲惨な過去の後それでも前を向く彼女の強さに心惹かれる人も多いはず。
自分自身の心の成長に追いつけず、深く悩む初音と揺れ動く主人公の様子がじっくりと描かれており、モノローグの丁寧さも伺える。


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[ 主人公 ] 伊奈 宗介
オートマタ整備士であり、祖父の店『伊奈モータース』の現店長。
主にAI設計を担当しており、その腕はかなり優秀で大手企業からの外注などが仕事のメインにもなっている。
過去の事故で大けがを負った際に多くの人に助けてもらった経験があり、面倒見がよく、困っている人がいると見過ごせない心優しい人物。

元気いっぱいで時々ドジをしてしまう『マキノ』、常に冷静でしっかりものの『アイル』という2体のオートマタを所持しており、従業員としても家族としても大切に扱っている。


【推奨攻略順 : BAD→ノーマル1&2→舞花1→みこと1→初音1→舞花2→みこと2→初音2 】
各キャラ攻略後に最終章出現、その後各キャラEDが再度出現する形となっている。


CG
比較的淡めの色使いだが、しっかりとした硬めの印象を受ける絵。
3キャラということもあり、各キャラのイベントCGの枚数自体は多め。全体的に見ると一般的な分量と言える。
全体的に丁寧な絵ではあるのだが、『判子絵』と揶揄されるくらい、立ち絵は過去キャラを彷彿とさせることが多いのが難点と言えば難点だろう。


音楽
BGM鑑賞モードがないため詳細は不明。
一部BGMはしっとりとした泣きシーン用として優秀なものがあった。
Vo曲は割と印象が薄め。


お勧め度
短めのストーリーでよくまとまっており、近未来を舞台とした作品なのでそういった設定が好きな方には特にお勧めしやすい作品。
Navelの完全新作ということで『つり乙』シリーズとは毛色が全く違うためそういった人には少し物足りないものもあるかもしれない。

Getchu.comで購入

総合評価
大手会社の作品らしく完成度が非常に高い作品。しかしながら、名作と言い切ってしまうには今一歩及ばないところもあるためこの評価。


【ぶっちゃけコーナー】
Navelの新作ということもあって、ギャグシーンに期待しつつプレイした。
そのあたりに関しては十二分に答えてくれていた印象かなぁ…。
前シリーズ『つり乙』でルナという最強のキャラクターを作ってしまってから少々心配だったのだけれど、作品としての質はむしろ良い方。
特に初音はずるいよね…そりゃ誰だって守りたくなるよ…そういう意味ではルナとは正反対なのかもしれないけど。
彼女の今までの境遇から今の初音の心情を考えると、立ち絵でみられる眉間に刻まれた深いしわとかでも心にきてしまう
庇護欲を煽るんだよなこの子は…幸せになってほしいと願ってしまうし、だからこそ笑顔を浮かべたときはこっちも幸せになるのかも
泣きシーンも彼女に関連していることがほとんどだったかな。
作品としては事件を追いかける&解決するのがメインにはなっているのかな、サスペンスっぽい展開があったのはこの会社の作品では珍しい気もする。
その割によくできていたのでこの辺りはさすがというほかない。
暗めのモノローグ…とか、マイナスっぽい言葉も入れた気がするけど、それでプレイがしにくくなるというわけではなく、むしろ逆に結構繊細に描かれている部分もあるんだよな。
ふわっとしたギャグシーンにおいては、雰囲気だけではなく、こういう描写的な部分でも対比が取れているのかもしれない。
まぁ、共通がすごくよくできていただけに個別ルートが乏しいのは悲しかったな。
最初の各ルートはともかくとして…(それでももっとほしいけど…)特に最終√後は完全に敗戦処理だったからなぁ…。
みこと√の独白は個人的に好きなシーンではあるのだけれどもやっぱり短すぎかも。
出るのかは知らないけれどFDとかあとで出すくらいならちゃんと彼女たちの√を最初から作ってほしいというのが正直な感想かなぁ…。