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タイトル : FLOWERS -Le volume sur automne-
ブランド : Innocent Grey


シナリオ : ★★★★★ [5/5]
CG   : ★★★   [3/3]
音楽   : ★★★★★ [5/5]
お勧め度 : ★★★★★ [5/5]
総合評価 : ★★★★★ [5/5]


キャラクター・シナリオ
FLOWERSシリーズ
FLOWERS −Le volume sur printemps− (春篇)
FLOWERS −Le volume sur ete− (夏篇)
FLOWERS −Le volume sur automne− (秋篇)
FLOWERS −Le volume sur hiver− (冬篇)
の3作目。
夏篇におけるTRUE後の秋を舞台として作品。
今作でも全体は6チャプターになっており、各チャプターには全体のモチーフでもある童話「オズの魔法使い」をイメージしたタイトルがつけられている。

今作での主なイベント。
ハロウィンや紅葉狩り、クリスマスなどが挙げられるが、なんといっても素晴らしかったのが合唱祭での演出だろう。
このシリーズにおける劇場を使用したシーンでの演出はいつもすばらしかったのだが、今作でネリネと譲葉によって歌われる「虹色の魔法(二重唱Ver)」は歌自体のすばらしさももちろん、彼女の心情を慮ると自然と涙が出てくるような物になっている。
もちろん歌だけではなく、各キャラクターにおける関係進展の契機ともなったシーンであり、初めて譲葉の人間らしい部分が見え始めるところであることも考えると、この作品においての最大の名シーンと言えるだろう。

『恋愛描写』について。
今作では今までの作品以上に重視して描いている印象を受け、登場人物たちの秘める想いが錯綜する様子が非常に細やかな描写にて描かれている。
イベントを重ねるごとに増える触れ合いの中、明らかになる譲葉のネリネへの想い、沙沙貴姉妹から向けられる譲葉への好意、それらを知ってゆくことで譲葉と同じように心を悩まされることだろう。
この物語における女性同士の恋愛というテーマにおける一つの答えのようなものが見える内容になっている。

今までの作品の作品の積み重ね。
今作の新しい所として、前作・前々作の積み重ねが活きている、というのも挙げられる。
日常シーンでは委員長の言動で笑いを誘うシーンがあったり、前作でのカップリングだったえりか×千鳥ペアの微笑ましいやり取りが垣間見えるのもこの作品ならではの魅力。
とくに先の二人に関しては、蘇芳を含めてキャラクター同士の繋がりを感じるシーンが終盤にあり、作品にとって重要なウェイトを占めている。

主人公の譲葉に関して。
前作のえりかからバトンタッチして主人公となった譲葉だが、彼女は漢っぽい語り口調などどことなく、えりかと通ずる所があり、テキストの雰囲気としては前作に類似していると言えるだろう。
しかし物語の序盤における譲葉の「つかみどころのなさ」というものは、今までにない主人公の特徴であり、だからこそ序盤において譲葉に感情移入することはは非常に難しい。
しかしながら物語を進めるごとに明らかになる譲葉の心を知ることで、誰しもが抱える心の弱い部分をリフレインし、そして譲葉にある確かな乙女心を感じることができる。
彼女をこの作品での主人公にしたこと、こうしたシナリオにしたこと、これらは個人的な好みがあれど手放しで称賛に価すると評価している。


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小御門 ネリネ√  0.5h
博愛主義のニカイアの副会長。
敬虔なカトリック教徒であり、穏やかで善良な好人物。
合唱部の部長も務めており、その才能に関して譲葉は彼女の体の中に音楽が流れていると評している他、千鳥もその実力を認めている。
本人は周りと触れ合いたがっているものの、蘇芳とは別の触れがたい美しさがあり、距離を置かれてしまうことが多い。
しかし、ニカイアの副会長としても合唱部の部長としても頼りにはされている様子。

個別はTRUEとほとんど変わらない流れではあるものの、終盤の展開の身が変わっている。
あまり書くとネタバレになるので書かないが、「あれ、え、これって…」という終わり方。
まぁTRUEがあるから仕方がない。


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沙沙貴 苺・林檎√  1h
1年生に在籍し、料理部にも所属している双子の姉妹。
姉は好奇心旺盛なトラブルメーカー、妹は怠け者気質のおっとり娘。
入学当初よりは多少落ち着いた雰囲気を見せる両者だったが、怪談系の探索等楽しいことは依然と大好きで率先して企画や行動を起こすことが多い。
姉の方は特に譲葉へストレートな好意を示しており、その変化に対して妹も思うところがある様子。

TRUE後、選択肢を変えることで各チャプターにて彼女視点での物語が追加されており、本編の出来事をもう一つの視点から眺めることができる。
苺ENDでは双子のその後が少しだけ語られており、語りも譲葉から林檎へと移っている。
かなり短いショートストーリーではあるが、TRUEでの双子へのフォローとなっている。
また双子ENDも存在し、こちらは譲葉との話になっており、どこか寂寥感を感じさせながらも、確かな温かさとやさしさを感じられるENDとなっている。


TRUE+EXTRA  1h
TRUEに関しては殆どが共通ルートといえるので、そこに概ね記している。
そのため内容に関しては割愛する。

EXTRAに関しては前作同様蘇芳視点から見た今作。
彼女の回想を含む次回への伏線であり、正直「えええええ!?!?」と、謎しか残らないものになっている、だからこそ次回作への期待が高くなる。


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[ 主人公 ]八代 譲葉
ニカイアの会の生徒会長。
芝居がかった言動が多く、エキセントリックな行動で周りを翻弄するが、これはわざと行っている事であり、その容姿も相まって周りからは男役を求められている。
努力せずにある程度の実力を発揮にすることができ、学業だけではなくその他の分野に関してもトップクラスの成績を収めているものの料理だけは苦手。
もちろん蘇芳やえりかに並ぶ知識力・推理力もあり今作ではそれをいかんなく発揮する。


【推奨攻略順 : TRUE→双子→林檎→ネリネ→EXTRA 】
個人的にはTRUEを最後に回してもいいのだが、完成度が高いので最初を推奨。
いつも通りEXTRAは全部攻略後となっている。


CG
繊細で上質なCG達は健在。
今までよりどことなく幼く見える譲葉も印象的で、特に髪型を変えるシーンなどではがらりと受ける印象を変える人も多いのではないだろうか。
また、沙沙貴姉妹の美麗なCGたちも印象的。


音楽
BGM20曲(Vo曲アレンジ含)、Vo曲3曲(OP/ED/挿入歌)という構成。
主人公にあわせてなのか、より静謐でいて神秘的なBGMが揃えられている印象で「選ばれた恋」などは中盤から入るヴァイリンが素敵。
そしてVo曲ではなんといっても「虹の魔法」が秀逸だった。
霜月はるかさんが歌うOPVerではサビにおいて舞台へとグッと引き込むような力を感じ、挿入歌として使われるピアノ二重唱Verは聞いているだけで涙が出る珠玉の1曲。


お勧め度
シリーズ3作目ということもあり、もちろん今作だけで楽しむことは難しい。
ただ前2作の完成度も高いことや、今作の完成度もかんがみるともう一段評価を上げても良い、そう思えるほど今作の内容は良かった。
女の子同士の恋愛について、複雑ではありつつも「純愛」という言葉を思い出させる、そういう内容になっていたのではないかと思う。

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総合評価
完成度は依然として高く、特にテキスト(シナリオ)に関してはそのレベルを上げてきており、作中で何度か涙を流すシーンもあるほどなのでこの評価。


【ぶっちゃけコーナー】
個人的な話だけど、いつもこの「ぶっちゃけ」は作品の一番最後に書いてるんだけど、今回はキャラクター・シナリオ部分を書く前に書いてる。。。
というのも、ここで発散させておかないとかなり私情が入りまくってしまうからなんだよね。(そもそもレビューなんて私情のかたまりだけどねw)
でも、そうしたくなるほど今回のシナリオは良かった。
そのシナリオに入る前に挿入歌としても使われた「虹の魔法」について語っておきたい、この作品は結構、劇場で行うイベントでの演出シーンに力を入れていて、今作では合唱祭がそれにあたるんだけれども、そこで歌われるのがこの歌なんだよね。
譲葉の原点ともいえる歌――これ以上はネタバレになるか――なんだけども、これが本当に素晴らしい、作品をプレイして聞いてほしいんだけど、流れている二人の声にここまでここを揺さぶられるとは思っていなかった、というかこれを書いている今も聞いているが本当に泣きそうになる。
と、曲の評価はこれくらいにしてシナリオについてだが、やはりこれも上を読んできた人にとっては同じことの繰り返しになってしまうのかもしれないけれど、今作の恋愛描写はすごくよかった、個人的に好きだということを差し引いても、今まで現実味の無かった「八代譲葉」という人物について、作品をプレイしていろいろなイベントを共に過ごすうちに彼女の心のうちを知ってゆくことで、知らず知らず自分の中でしっかりとしたキャラクターが作られていることに気が付いた。
そうしていくうちに、彼女と一緒に沢山の感情の中で揺れ動く自分がいた――後から気づけばそれは感情移入というものなんだろうけど――そんなことを意識せずに行っている自分がいて、一つ一つのシーンにとても心を揺さぶられ、時に絶望し、時に喜んで、本当に一喜一憂を繰り返した作品だった気がする。
かかとを三回鳴らすシーンとか、譲葉の心が弱い部分が見えるところは、こちらも涙を流さすにはいられないよね・・・。
ネリネとの関係、沙沙貴姉妹の暖かさ、ネタバレにならないなら言いたいことはたくさんあるのだが、キャラクターたちがそれぞれしっかりと絡み合い、そしてその中で成す純愛物語に浸れる時間というのは至高の一言に尽きる。
この辺りは今までの作品の積み重ねもあって…というのもあるのだろうなぁ。冬篇についての伏線もあって、そのあたりもかなり気になるところ。
言いたいことは尽きないが、素晴らしい作品だったと一言で〆ておきたい。